第168話 南大陸侵攻作戦 その2
第168話投稿します。
正月明けなのですが、急に忙しくなり投稿が遅れました。すいません。
いよいよ運命の侵攻当日0800の10分前となる。
「諸君。日本に上陸し、民間人を人質にして恐怖を与えたドルツ国に対し、いまこそ侵攻し、その中枢を砕いて不幸な日本上陸などと言う暴挙の清算をする時である。
計画に従い、各隊は首都を目指して侵攻して欲しい。
ただし、ドルツ国は第二次世界大戦前期のドイツ国と同程度の技術力と生産力を有する。
決して侮る事無く、諸君らの奮闘を期待する。
なお、ドルツ国民間人については非戦闘員として手厚く保護をお願いしたい。
以上だ。健闘を祈る」
録音された南司令の訓示が各隊に流れる。
時は0800各隊一斉に行動を開始する。
米国海兵隊、第31海兵遠征部隊地上戦闘部隊(GCE)彼らは沖縄に第1海兵師団よりローテーションで入れ替わる部隊であるが、日本が転移してからは米国領事館の直轄部隊として、日本に残った第7艦隊揚陸艦隊と共に活動を行っている。
今回は日本に転移した500名の部隊が自衛隊に協力して作戦に参加している。
地上戦闘部隊(GCE)の移動目標は、東海岸からAAV7A1水陸両用強襲車を駆って南下し、森と海岸の間を走行して行き、首都に向けて森が薄くなった所を抜けて、直接首都に入る予定である。
水陸機動連隊は東海岸から、同じくAAV7を使用して街道を160Km南下し、街の手前10km地点で北の森に入り徒歩で街を包囲する予定である。これは街の周辺の森は濃く、車両が森に入れない為である。
なお、各隊に対しては上空偵察のF-35Bより赤外線画像が定期的に送られ、ドルツ国の布陣が解るようになっている。
「よし。森に入り進行する。全隊下車。各隊は対処隊形に従い展開。以上」
地雷も爆破撤去した街道を妨害なく街の手前10Kmまでに迫った水陸機動連隊はAAV7を街道の両方に寄せてから下車し、徒歩で森に散会していく。
アメリカ海兵隊、武装偵察部隊第5武装偵察中隊は水陸機動連隊に先立ち、街道を街手前9km地点で検問所を置き、向かってくるドルツ国陸軍を待ち伏せする。
また水陸機動団偵察中隊は、街道上に50Km毎、車両を障害物とした検問所を設置して、検問を機能させている。ここまで各偵察隊に対する組織的抵抗はない。
東海岸から街道に入った所にある陸軍航空基地近辺にて、生き残りが散発的に発砲をしていたが、全て水陸機動団偵察中隊によって武装解除され、「かが」に作られた捕虜収容施設に送られていた。
「かが」では「ミーナ」と1名のハイエルフが捕虜の思念を日本語で伝えている。
「失礼します。ミーナさん。ドルツ国東海岸陸軍司令官を捕らえました。尋問お願いできますか」
「はい。大丈夫です」
ハイエルフは何かあった時の用心として日本語はできないが強い思念を持つ者が同席していた。
『ドルツ国陸軍の司令官さんこんにちは。』
司令官はドルツ語で話す。
「ハイ・・エルフ・・・なにも話さんぞ」
『ええ。話さなくて結構ですよ。』
ミーナはドルツ国陸軍基地司令官の思念と記憶を読んで、同席している自衛官にも解る様に日本語で説明する。
「えーと、お名前はハンス・クレープスさん。ドルツ国東海岸陸軍航空基地司令官で中将ですね」
しばらくミーナはハンスの顔を見て、
「うーん。部下をお妾さんにしているとか・・・・」
・・
「ミーナさんドルツ国に関する事を何でもお願いします」同席している自衛官が、話しの方向を変える。
「解りました。少しお待ちください」
「・・・・では組織から、ドルツ国では陸軍と海軍があり、航空隊はそれぞれにあります」
「そして最高司令官はダークエルフ。次席はドルツ国首相であるハインリッヒ・ベトーラゼ。
首都には最高司令部があり、海軍と陸軍に命令を出しているそうです。
海軍司令部と陸軍司令部も首都にあり、最高司令部からの指示に基づいて司令を出していると言う事です。
海軍は東西南北の各秘匿港に海軍の基地と要塞があります。要塞は要塞砲として150mm砲が2門と防潜ネットと機雷が敷設してあります。
ただし配備していた戦艦類は日本で撃沈されており、補充はされていません。残っているのは作業艇のみです。
各秘匿港には門があり、それを内部から開ける事で艦艇が出入り。そして要塞上部には88mm対空砲が4門あります。
ドルツ国の都市ですが、首都東は「ドルーデン」、首都は「ハイデルバーグ」、首都の南には工業都市「クルプセン」が、そして少し大陸中央寄りには「ハイリン」があり、南大陸の作物は「ハイリン」で生産されています。ドルツ国は日本が近海に現れてから、各都市の住人を全て避難させ、全ての国民は「ハイリン」で生活をしています。
つまり、「ドルーデン」首都「ハイデルバーグ」「クルプセン」には住人は居ない、全て軍人のみとなっています。
んっ?!南大陸の南には秘匿基地とは別に造船街「ボン」があり、ドルツ国の全ての艦艇はそこで作られています。ここ「ボン」は地方艦隊として駆逐艦4隻があります。
ドルツ国が転移させられた当時の記憶では、転移先の南大陸は未知の大陸で、殆どは森に覆われており、人が立いる事がないそうです。元々ドルツ国は南大陸の東側に転移して、西側、北側は港を作る為の道路建設以外、開発は行われていないそうです。
ドルツ国陸軍は新型戦車を開発し、すでに15台が配属されているそうです。
主力戦車はツバイ型と言われる軽戦車で300台配備されています。
これは上陸用潜水艦から日本に上陸した戦車と同型と言う事です。
陸軍の航空機は戦闘機がメッサーシュミットBf109Bで100機、これが主力だそうです。
東海岸陸軍航空基地の30機は全て爆撃や攻撃されて全て失ったとの事。と言う事は残り70機ですかね。
陸軍基地は他には、首都「ハイデルバーグ」「クルプセン」にあると言う事。
新型戦車は首都の防衛に投入されているとの事です。
凍結前の記憶ですが、戦艦を含む海軍力だけで各港を制圧、そして空母から飛んだ航空機による爆撃を行い、各国を破壊していったとあります。
ただし、破壊後も常駐せず管理官と一部の海軍兵士のみ派遣していたらしいです。ドルツ国の目的はドーサ大陸に根付いた文明の破壊だそうです。
その為にドーサ大陸にドルツ国の兵器や武器は持ち込んでおらず、海から航空機による爆撃のみで破壊していったそうです。その時はドーサ大陸に国が2つだけと言う事。その国を両方共ドルツ国が爆撃し破壊したとあります。
なお、ドルツ国の南大陸に対して侵攻してくる国は無かったために、陸軍は首都のみを守る態勢を取っていると言う事です」
思念と記憶を長い時間読まれてドルツ国将校は弱っている。
「一旦休憩にしましょう。続けるとこの方の頭が焼けます。冗談ではなく本当に焼けてしますので休憩が必要です」
「了解しました。現在までに判明した所を全隊に流します」
「はい。お願いしますね」
・・
「報告です。「かが」よりハイエルフ達が捕虜から聞き出した、首都前街の名前は「ドルーデン」との事。ただし、ここには軍は駐留していなく東海岸と首都及び首都南工業都市にのみ陸軍基地はあるとの事」
「首都と例の工場がある地区だな。そんなに数はいない様だな」と南司令。
「はい、そのようです。なお国民は南大陸中央に近い「ハイリン」と言う街に集められているそうです」
「なに。首都や街に民間人はいないのか」
「はい。基地で働いている民間人を除いて、いない様子です」
「だが、東海岸の海軍基地と陸軍飛行場には民間人はいないと報告があった筈では」
「それも尋問により、日本が来る前に、先に首都に避難させたと報告があります」
「そうか。民間人は少ないのか・・それなら好都合。この情報を全隊に連絡」
「はい。直ちに」
ハイエルフ達の活躍によりドルツ国の南大陸概要が少しずつ明らかになっていく。
まずドルツ国首都は「ハイデルバーグ」との名称。
そして首都には陸軍と海軍の司令部に総合司令部とダークエルフの宮殿があり、そこから指令は流れてくると言う事。
首都前の街は「ドルーデン」と呼ばれ、元は陸軍司令部と基地があった場所らしいが、住んでいる人は今いない。
廃墟程ではないが、建物だけがある街で防衛上の施設もないとの事。
ドルツ国は転移した時に首相や官邸に各役所もあったらしいのだが、ダークエルフにより全て解任させられ、軍部から将校が集まり、首相と言う名の神官が決められ、ダークエルフを最高司令官とする軍事国家が発足したと言う事らしい。
なぜ神がドルツ国を転移させ、民主主義的ドルツ国を軍事国家とさせたかは不明だが、捕虜たちの話ではその様だった。
なお、軍事工場や造船街「ボン」も移転させていたので、Uボートや戦艦等も、こちらに移転してからドルツ国で開発途中であった物を製造したらしい。
また、南大陸では「ハイリン」以外では作物が成長しない為に、ダークエルフが最初は農作物や肉類を提供し、海軍が漁をしながら養ってきたと言う事らしい。
軍事工場の動力については、ダークエルフがどうやったかは解らないが、電気は大きな陶器を作らされ、それにダークエルフが電気を貯めて、それを使っていると言う事らしい。
つまりドルツ国はダークエルフがいなければ飢え、電気も無い原始的生活になっていたと捕虜は話す。
その為にダークエルフは神の使いとして、移転したドルツ国軍事基地群の最高司令として崇められているらしい。
「ひどいな。こんな事」と南司令。
「ええ。私もそう思います。国の一部だけとか生活に必要なインフラは全てダークエルフ頼みであれば、ダークエルフに誰も逆らえなくなる事は判ります」副官も同意する。
「そうだな。神は何を考えているのか凡人では理解できない領域だな」
「機会があれば聞きたいものです」
「そうだな。無理だと思うが」
「ハイエルフさん達なら」
「でもハイエルフ達も容易には神には近づけないと聞くぞ」
「ダメですか。こんなひどい使い方知ったら、ドルツ国に同情します」
「うん。見方が変わったな」
「ですが作戦は発動しています。今更の変更は混乱を招きます」
「よく理解している。作戦概要はそのままだ。要は首都司令部とダークエルフの宮殿を占拠する事が目的だから、そのままで良いと思う」
「はい」
ドルツ国は神の駒として転移させられたのか・・・
・・
「こちら第1空挺団団本部中隊、第1普通科大隊と共に降下地点に到着」
第1空挺団は作戦発動から5時間後に、「おおすみ」からオスプレイに搭乗して降下予定地点に到着している。
「了解。降下地点「ドルーデン」の街内部には陸軍部隊の展開はない。また、「ドルーデン」の北東から街道までを予定通り、水陸機動団戦闘上陸大隊が包囲している。
「ドルーデン」から街道3kmにドルツ陸軍が展開していたが、現在は武装解除を水陸機動団が実施している」
「こちら空挺団了解。予定通り「ドルーデン」南西2km地点に降下及び展開します」
「了解。空挺団展開と同時に水陸機動団が街の占拠を実施する」
・・
空挺団は連絡終了と共に降下に入る。
「降下準備」ブザーが鳴る。
「降下、降下、降下」
オスプレイのドアから一斉に空挺団が飛び降りる。
ドルツ国首都「ハイデルバーグ」郊外の陸軍基地は緊張に包まれている。
なぜなら、65km先の空にパラシュートが数えきれない程咲いているからである。
最初は渡り鳥かと思う程の多数であった。
「日本が来た。備えろ」とドルツ語が飛び交う。
基地の屋上から双眼鏡を覗いていた陸軍基地司令のドリア・シュナイザーは、
「あれが日本の軍隊か、とんでもないな」
「ええ、あれだけ大規模な降下など初めて見ました」と副官。
「あれは・・・車両もパラシュートで降下させている・・まずいな、すぐに来るぞ」
「迎撃準備させます」副官は屋上から降りると急いで警報を鳴らす。
「民間人は至急「ハイリン」に退避する。トラックに乗れ」
慌てて基地協力の民間人を乗せたトラックは発車する。
首都北東防衛拠点基地である陸軍基地では、すぐに戦車を含む車両のエンジンがかかり、兵士が乗りこむ。
首都「ハイデルバーグ」郊外の陸軍基地から、「ドルーデン」は67kmの距離であるので、1時間半もあれば敵は大勢やってくる。
ドルツ国陸軍基地では防衛態勢の為の出動が開始される。
兵士の数は約4000名の小規模師団である。2号戦車50両、移送用トラック20台。
他にけん引式の75mm歩兵砲5門、トラックに乗せた20mmFlak38(機関砲)が4台。
パンツァービュクセ対戦車ライフルが2門、そして新兵器のMG81機関銃(7.92mm機関銃)が20丁。
歩兵はKar98k(小銃:7.92mm、有効射程350m、最大射程500m、弾倉5発)を携帯している。
各部隊は急いで配備地点に向かう。
首都防衛の為に、陸軍基地から1km先に防衛陣地が作られていた。
なお対空対地砲である88mmFlaK18も4門配備されている。
街道上には障害物が配置されており、道が蛇行している。
「ドルーデン」は予定通り水陸機動団により占拠され、一部ドルツ兵士は捕えられ武装解除されていた。
空挺団は予定地点に集結し、首都に向かって発進する時を待っている。
「南司令、予定通り進行中です」
「了解した。もう少し人数がいれば首都近郊の工業都市から制圧するのだが、仕方あるまい。
偵察は念入りに頼むぞ」
「はい。現在30分毎に偵察しております。また首都に近付きましたら15分毎になります」
「それでも、念入りに頼む。隊員達の生命がかかっておるのだ」
「はい。重要地点は複数偵察する様に指示しています」
「頼むぞ」
南司令は侵攻部隊と偵察に対して祈る気持ちで指示をする。
ありがとうございます。
次話は首都前での攻防となります。