第167話 南大陸侵攻作戦 その1
第167話を投稿します。
少し遅れましたが投稿します。本年もよろしくお願いします。
167話は少し時間を戻りまして、作戦開始前の状況を書きました。
少し時は戻る。
旗艦いずも、南大陸遠征団の南司令居室。
ノックがされる。
「失礼します。報告です。南大陸に作りました物資集積所及び備蓄燃料タンク等の施設は確保及び稼働しています。
司令、南大陸侵攻第2号計画2項の実施を具申します」
南司令付きの副参謀からの報告と提案である。
「実施する前に、ドルツ国の対処状況を詳細に教えて欲しい」
「はっ。現在まで組織的反撃はありません。いくつかの部隊の生き残りによる散発的な発砲がありますが、遠征隊に被害は有りません。
また、ドルツ国の電波封鎖を実施していますので連絡手段は有線か伝令となり非効率と推測されます。
次にドルツ国からの航空偵察ですが、事前の我が団上空偵察と地形測定の結果、ドルツ国首都と思われる都市から南に40Kmにある航空基地より幾度か偵察機が飛来しましたが、何度か追い払った結果、現在上陸地点への航空機による偵察は諦めた様子。
ですが、首都らしき街の手前には陸軍基地があり、東海岸近くでの斥候偵察が何組か確認されています。
ただし、発見次第排除を実施中」
「そうか。陸戦では補給の効くドルツ国に有利だろうと思う」
「ええ、そう思います。我が団も東海岸を押さえましたので、重油と軽油、ガソリンは確保できています」
「燃料だけでは戦闘できない。無いよりはましだがね。第2補給艦隊は出港したか」
「はい昨日出港したと連絡がありました」
「了解だ。早くて6日だな。それまで第1補給艦隊で繋ぐしかないか。すこし不安だな」
「はい武器弾薬類は戦闘内容にもよりますが、少し不安で。ただし先の燃料と食料等については充分であります」
・・
「うむ。して敵の状況は」
「はい。街道の南側をアメリカ海兵隊武装偵察部隊第5武装偵察中隊が強襲偵察を実施中。
街道の北側を水陸機動団偵察中隊により同様に強襲偵察を実施中です。
これを最初の街手前30Kmまで実施します。
また、各港と言っても洞窟港ですが、ここには第3潜水隊と第5潜水隊の6隻で3か所を封鎖実施しています」
「地上軍事施設の状況はどうか」
「はい。各港が要塞化されていますので海軍の守備隊は駐屯していると思われます。ただし対空対艦砲のみで潜水艦に対する有効な攻撃手段はないと推測しています。
それからドルツ本国の陸軍ですが、首都南50Kmに大きな工場を発見。そこから出てくる戦車を確認しています。現在まで何台が稼働状況にあるか不明です。全隊に中型戦車警戒を通達しています。
因みに工場にて目撃された戦車は画像解析により、Ⅲ号戦車と確認されています」
「Ⅲ号?例の2号軽戦車ではなく、中戦車なのでは?」
「はい。ドイツ戦車と同一とするならば、全長6.4m、車体長5.5m、全幅3m、全高2.5m、重量22.7tとなり、速度は最高40km/h、最大移動距離は150Kmとなります。
なお初期型となりますと、37mm砲が主砲となります」
「不味いな。こちらの損害が大きくなる。それに移動しきれないとは言え、首都から6時間と少しでこちらに到達する移動力は脅威となる」
「はい。他の移動手段はトラックが主流ですが、これも40Km/h程度です。
因みに88mm FlaK18砲のけん引が確認されています」
「あれか、確かスペイン内戦の時に初めて対地対象を攻撃したと記憶しているが」
「はい、私も調べました。設計思想は対空対地両使用可能な砲と言う事で最初から対地攻撃を視野に設計されています。対地ですと有効射程1.5Kmで1分間に15発撃てるそうです。ただし重量が約7400Kgありますので移動が問題です」
「だが待ち伏せ攻撃などされたら、ひとたまりもないだろう」
「はい、早期発見及び上空からの爆撃及びコブラでの対処予定です」
「そうだな。120mm迫撃砲でも射程で負けているから反撃できまい。上空かあるいは01式軽対戦車誘導弾が現実的だな。コブラ2機しかないが・・Ⅲ号戦車対処で手いっぱいだと思う」
「はいそう思います」
「ところで空挺団の準備はどうですか。また水陸機動団は」
「はい。先に水陸機動団ですが、先ほど説明した通り偵察中隊が活動中です。
本隊の水陸機動連隊ですがすでに上陸済みで待機しています。
また兵員輸送のAAV7も集合して燃料補給済みです。
空挺団ですが、準備は終わりいつでも予定通り対処可能です。
第31海兵遠征部隊地上戦闘部隊(GCE)も待機済みです」
「侵攻ルートは北と東だったな。街道はどう抑える」
「はい。街道については先の偵察2隊分隊で現在は東湾から10km地点での検問と周囲監視を実施しています。ただし森が深いので車両による森中移動は困難と判断。監視装置による装置による対人警戒監視に移行しています。先ほどの斥候はこれで発見及び撃退をしております。
また、街道は障害物設置済みで迂回路を現在作成中です。
なお、首都近くは街道に対する地雷敷設もあると判断しています」
「車両による高速打撃も難しいか。首都なら当然だな」
「はい」
「了解した。その内容でこの南大陸侵攻第2号計画2項(改)なのだな。許可する」
「有難うございます。作戦開始は何時に設定しますか」
「ドルツ国に中型戦車が出現した以上、悠長に待ってもおられんだろう。すぐに侵攻開始だな。それから空挺団投入のタイミングは任せる」
「了解しました。では侵攻開始は明日0800とします。失礼します」
艦橋に戻った副参謀はいずも艦橋から各隊への指示を通達する。
「本、南大陸侵攻第2号計画2項(改)は明日0800を持って開始される。各隊は予定行動計画に従って対処を開始して欲しい。以上だ」
個別に連絡を入れる。
「空挺団、岩井陸将補伝達、発遠征団司令、空挺団は作戦開始5時間後、予定の降下及び占拠を実施、ただしドルツ国に88mm砲と中型Ⅲ号戦車の存在を確認。当団の長距離援護は届かない為、独自での対処をお願いしたい。
なお、01式軽対戦車誘導弾をはじめとする対抗手段全てについては無制限に使用を認める。以上」
いよいよドルツ国首都攻略が開始される。
各隊が待機している東海岸や「かが」に「おおすみ」では準備の喧騒が大きくなっていく。
・・
侵攻開始が発令された同時刻。
舗装はされていない街道を走るバイクが2台。
水陸機動団偵察中隊による強行偵察である。
突然バイクの後方3mが爆発する。
咄嗟に各バイクは左右に別れ、森に入り森中を駆け抜けていく。
同時に無線で連絡を入れる。
どうやら街道に仕掛けられた地雷をバイクが踏んだらしいのだが、対人用の小型地雷で隊列の真ん中で破裂する様に遅延させていたようだ。
バイク偵察班は 先に森中を15Km程度侵攻したが、野戦砲などの確認はできなかった。
爆発した地点付近まで戻ると、周囲にドルツ兵が展開していない事を確認して、徒歩で街道を調べ始めた。
通常であれば、地雷によって負傷した兵士の生き残りを、また地雷を無効化しようと来るであろう工兵を狙撃またはりゅう弾砲による制圧をするのであるが、ドルツ国は両方とも待機させてはいない、まだ連携が出来ていないのであろう。
偵察隊員は地雷を埋めたと思う箇所を発見するとマーカーを立てて行く、埋めた場所はよく見ると土の色が違っていた。通常は乾いた土を上からかけて擬装するのだが、それすらしていない。
歩いてくる歩兵なら容易に見つける事は出来そうだ。
そして、慎重にバイクまで戻り、詳細を偵察中隊本部に連絡をする。
地雷原は対人と思われる地雷のみである事、本来は対戦車等の重地雷を混ぜる物だが見つかっていない。
相当慌てて対人地雷のみ敷設した事が伺える。
地雷原となった街道を500m戻り、木にテープを巻いてマーキングする。
なお、咄嗟に森で迂回したが、森には地雷は仕掛けられていなかった。森に仕掛けられると非常に厄介である。
偵察バイクは本隊へと戻って行った。
しばらくすると、AAV7が2台現れ、マーキングした場所を時速60Km/hの速度で通過していく。
2台は横に並び、同時に街道に敷設された地雷を無効化していく。
即感応式の地雷でも対人地雷程度ならAAV7の運行には問題ない。
2台はマーキングされた場所を丹念に何度か往復して通過行き、次々と爆発させる。
一応街道に敷設された対人地雷は20個あったが、全て破壊処分されてしまう。
偵察中隊による地雷発見は「いずも」司令部にも連絡がなされる。
「南司令。首都に向かう街道に対人地雷と思われる小型地雷を確認。全て破壊処分されたと報告があります」
「そうか。何らかの対抗手段を打ってくると思ったが・・地雷か。して損害は?」
「はい。偵察バイク隊員が誤って地雷を起爆させたようですが、遅延爆発地雷でしたので偵察バイク隊員への損害はありません」
「そうか。全隊にドルツ国は地雷を有していると連絡。対人があるなら対戦車用の重地雷もある筈だから慎重に進んでくれと注意を流してほしい」
「了解しました」
「地雷か・・それでだけではないよな」と南司令は独り言を言う。
いよいよ南大陸侵攻作戦が開始される0800となる1時間前の0700にドルツ国陸軍航空基地を接収した「かが」飛行隊に下命。
「ドルツ国首都迄の広範囲を多数多方向同時偵察開始」
F-35Bは補修したドルツ国陸軍航空基地を滑走して2機ずつ飛び立って行く。
街道・北の森・南の森・首都手前の街と赤外線探知をしながら動画を送信していく。
「いずも」CIC及び「かが」陸戦司令本部は送られてくる位置情報と共に画像を解析し、敵部隊の展開がないか確認を進めていく。
すこし気になる箇所が発見される。
首都前の街は、首都から70Km北東の街道沿いに作られていたが、どうやら部隊が集結して、街から街道を5Kmいった所に大隊規模の兵員を確認した。
北の森では、森中を移動する人らしきものが赤外線探知にかかる。
「どうやらドルツ国も動き出したようだな。危険は排除する事だな」
「了解。いずも飛行隊が対地爆弾と焼夷弾を持って確認された地点に行かせます。作戦開始前ですが宜しいですね」
「うむ。許可する」
「了解。航空参謀頼む」
「了解。とりあえずドルツ兵士が確認された2か所に向かわせます」
「いずも」とA艦隊半数は米国海兵隊を支援する為に東海岸から南下していた。
やがて「いずも」を飛び立ったF-35B、4機は2機事に別れ、森の中と首都前街に向かった。
「シャーク01、タリホー。アタックを開始する」
森に向かったシャーク01と03が赤外線により集団を発見した。
「シャーク01、アタック01、02」「シャーク03、コピー」
森の上空で焼夷弾がばら撒かれ、ドルツ国陸軍兵士は木々と共に燃え上がる。
「くそ。なぜ見つかる。各員偵察兵を探せ」
ドルツ国陸軍第1師団第1大隊の第1中隊と第2中隊は森の中を来るであろう日本軍に対し銃撃戦とすべく森の中に掩体構築している最中であった。
第1中隊と第2中隊の約200名に対し、上空からの攻撃により、その半数が死傷してしまう。
それでも司令部からの命令により、再集結して少し後退し、再度陣地構築に入る。
それを上空から探知した偵察のF-35Bが再度報告する。
街の先5Kmで陣を作っていた、ドルツ国第1師団の第2大隊は、突然現れたF-35Bにより爆撃を受けていた。
ドルツ国第2大隊は街道に対しV字となる様に土嚢を積み、侵攻を阻止しようと兵を配置していた。
もちろん街道上だけではなく、森の中にも陣地を構築していた。
後方にはドルツ国が最近開発した重機が並んでいた。
森の中を掘るために小型のパワーショベル(ユンボ)の様な重機にブルドーザーである。
これにより効率的に簡単な無蓋掩体壕を短時間に作り上げていた。
ただし、掘った土の通路に土嚢を積み上げ爆風除けとした簡単な物である。
ここを上空から爆撃された。
無蓋掩体壕おいて爆撃は一番の弱点である。
備えた7.5cmleIG18歩兵砲や機関銃も破壊されてしまう。
「各員発見された様だ、2Km後退して再度構築する」
ドルツ国陸軍司令官は、なぜ森の中まで展開した掩体壕が破壊されたのか疑問にも思っていなかった。
よろしくお願いします。