第158話 使徒ハイエルフ族
第158話投稿します。
ハイエルフが南大陸攻略に力を貸してくれることになり、いよいよ出発の時がきました。
いろいろ衝撃の内容が語られます。
ハイエルフ村への訪問から1か月程経過した。
畠田陸将補、鳥山陸曹長、三村1等陸士を先頭に4台の高機はハイエルフの村に向かっている。
「ハイエルフさん達の覚悟、見習いたいものだ」と畠田陸将補。
「普段はとっても良い方々なのですがね。残念です」と三村1等陸士。
無線を使い「各車そのまま前進」と三村1等陸士が指示する。
ハイエルフ村は秘匿されている為に、三村1等陸士以外は正確な場所を知らない。
「各車、速度落とせ」ハイエルフの思念が流れてくる。
『そのまま真直ぐきてください。』
無線で確認する。「思念波の影響で気分の悪い者はいないか」
「2号車平気です」「3号車大丈夫です」「4号車すこし・・」
「一人当てられたようです」当てられるとは三村1等陸士が呼んでいる思念酔いである。
「4号車大丈夫なのか」鳥山陸曹長が直接無線で連絡をする。
「はい、なんとか。村で少しだけ横になれば・・」と応答がある。
「酔い止めはあるか、なければ渡すぞ」「有難うございます。初めての経験で・・大丈夫だと思います」
「諄いようだが、酷くなるようなら早めに言ってくれ。3号車、4号車の後ろに回れ」
「3号車了解」「4号車。頑張ります」
「了解」
「各車停止」30分程度で村入り口に到着した。
高機は村の外で待機する。4号車運転手は座席で横になる。
「大丈夫か」鳥山陸曹長は確認する。
「ご迷惑おかけしてすいません。回復してきています」
「そうか。無理せず酔い止め飲んでおけ。帰りは荷物だけにするから」
「有難うございます」
畠田陸将補、鳥山陸曹長、三村1等陸士の3名は村に入り、族長テントに入る。
「失礼します」
『お待ちしていました。どうぞ。』
族長以下1か月前に見たメンバーとハイエルフ族全員がそろっていた。それに・・
「お待ちしていました。新族長を承りました「マリア」です。畠田陸将補お久しぶりです」
「お久しぶりです。前回はいらっしゃいませんでしたが」
「ふふ。海自さんの要望で佐世保におりました。機密ですよね」
「そうでした。仲介したのは我々だったのにすいません」
「ふふふ」新族長のマリアは自衛隊に協力してくれて、独学で日本語も話せるようになっていた。
しかも650ccバイクで日本山を越え、ドフーラや元帝都まで行き、陸自の依頼を、いやドーサ大陸方面隊の仕事をこなしている。
「まだ、ナナさん、ヒナタさんは厚木ですか」
「そうですね。いつ戻るのか。ドルツ国の捕虜が多すぎるのではと、それに佐渡から厚木に追加されましたからね。14名も」
「そうでした。捕虜尋問は現在厚木中心で行われていますから、でもすぐ戻ってこられますよ。もう終わります」
「そうですか。良かった。農園の手伝いが足りていないのです」
「もし、良ければ大三角州で農園手伝いを募集しますか。エルフ族なら神と崇めるハイエルフさん達に歯向かう事はないと思いますが」と三村1等陸士。
「そうね。三村さんそれも良い考えね。でも施設が・・」
「そうですね。人数が寝泊まりするだけの設備が必要ですね。通う訳にはいかないでしょうから。
でも「神の雫」を出荷してお預かりした金額は相当なものになっています。それで施設を追加されては如何です」
「ですが、ハイエルフの村は秘密にしたいのです」
「ならば、少し離れた場所に施設を作ってそこから通わせれば良いかと」
「ふふ。新族長になるといろいろ大変そうです。老けそうですわ」
『マリアよろしい?』
「失礼しました」
『畠田陸将補達を待ちぼうけにさせてしまっていますよ。』
「そうでした。出発ですね。お見送りいたします」
『すいませんでした。』
「いえ。我々もハイエルフさんが「神の雫」で自立されて、農園を大きくされる事を強く望んでいます。
お力添えになれるのであれば、喜んでいたしますよ」
『そうですか。始めて助けられたのが、あなた達自衛隊の方々で良かったと思います。「トメス」を一瞬で消し去った力。日本の皆さんは正しく使われている事を誇りに思います。』
「最初の接近遭遇でしたね。報告は読んでいます」
『さっ行きましょう。訓練の予定もあるのでしょ。』
「隠し事はできませんね。偵察機などに乗って頂く事も考えて1週間程耐圧訓練を行います」
『ふふ。過去畠田陸将補も経験あるのですね。苦しい気持ちが伝わります。』
「お恥ずかしい。きつい訓練でした」
『さっ皆。後を頼みますよ。私たちは南大陸に行き、神との対話を試みます。』
「そんな事を・・・」畠田陸将補は、また絶句であった。
自衛隊の作戦計画ではそこまでの計画は記されていない為である。
『族長様達、お気をつけて、お戻りください。』
『マリア頼みますよ。』
思念で返答する代わりに、マリアは族長の両手を握って頷く。
ハイエルフで内緒話する時は体を繋いで会話する。
マリアの頬に一筋の涙が流れる。
何を言われたのかは誰にもわからない。
『さっ行きましょう』
「はい。ご案内します」畠田陸将補は改めて話す。
村の外に駐車している高機3台にハイエルフを乗せ、荷物を4号車に積み込んで一行は出発する。
ハイエルフに手を振る習慣はないが、マリアは高機が見えなくなるまで手を振っている。
元族長は1号車に乗りこんでいる。
畠田陸将補はさっきの話が気になった。
『気にしていますか』
「あっはい。神との対話は可能なのでしょうか」
『私たちのドーザ大陸に神はしばらく来ていません。それで神は遠くに行かれたと説明したと思います』
「はい、覚えています」
『ですが、いたずらに満ちた子供の様な無邪気な気配が突然流れ込んできて、その後にダークエルフの事件が起きました。
私たちは、神は南大陸にいてダークエルフに直接指示をしているのではないかと思っています。』
「と言う事は一連の攻撃は神が指示しているのではないかと思うのですね」
『捕虜達を尋問した者達から聞いた話では、時の番人であるダークエルフの言うとはいえ、自分の命を賭して攻撃を仕掛けると言った事は、果たしてダークエルフの命令でできものであろうかと考えていました。』
「なるほど、本物の神がいるなら命を懸ける意義があると言う事ですか」
『エルフ族は根本的に合理性を大切にしています。使徒以外のか弱いエルフ達さえも、帝国に捕まり奴隷に落ちても、自分の中で合理的な理由を見つけて従います。
つまり非合理な命令を出すエルフ族はいないと考えています。
それが根拠ですが・・・エルフ族にしか解らない事です。』
「そうですね。戦争自体が非合理ですから、それを指示できるエルフはいない筈だと言う事ですね」
『少し違います。攻撃をすれば、自分の住まうとこに日本が逆に攻め込む事を想定していないエルフはいないと言う事です。
だから、攻撃すれば自分に返ってくると判断できないエルフはいない筈・・だからそれを指示できるのは神自身ではないかと想像しています。』
「うーん。凄く難しい事になってきました」
『神は自身で、本来、直接指示を出さない筈。
順序としては啓示として受けた内容に、使徒達が整合性を取って人間に指令を出します。
だから本来は啓示を受けた使徒たる私たちハイエルフ族やダークエルフが、神の啓示に従って動くことが本来の役目。
なのに不合理な命令を出すダークエルフは・・エルフ族の基本から逸脱した存在になります。
だから神がダークエルフに細かい指示をして、その通りダークエルフが動いているのではと邪推しています。』
「それも推測ですか。どの程度の確度なのでしょぅ」
『わかりません。ダークエルフが邪神に取りつかれて自分で行っている事も考えられます。
私の考えがすべてではないのです。
ですが、神が南大陸にいるのであれば、ハイエルフは神と対話を望みます。』
「いるのであれば・・・ですか。作戦上の脅威となりえますか」
『その真意を含めて確認したいのです。』
「了解しました。一緒に伝えます」
『ありがとうございます。
過去、神はこの世界に直接的には手を出していません。
それは使徒と言われるハイエルフも終末兵器使用については人間たちを慎重に見定めます。
決して興味や趣味で発動している物ではありません。
それが、今回の一連の事件は、趣味・興味の気持ちを感じます。
それが前に説明した、「あそび」であると思います。』
「はい、そうおっしゃてましたね」
『ええ。過去に神が啓示した「新世界創造」の意思は、ハイエルフにより良き人間を集め、それ以外の地は終末兵器により破壊しています。それが繰り返されてこの世界は歴史を繰り返します。』
「前にお聞きしました。その「新世界創造」は過去4回行われ、3回は終末兵器によって、4回目はドルツ国によって行われたとお聞きしました」
『その通りです。今回は状態が異常です。第5回目の「新世界創造」として日本国を召喚し、帝国の発展を阻止して、ドーザ大陸も日本流に民主的自主統治に切り替え、皆が平和にやっている時に、ドルツ国を溶かし動かし、戦争状態を作り出している事が異常なのです。過去戦争に介入した事が無い筈なのに、今回はダークエルフを崇めるドルツ国が動き出して、日本に攻撃を仕掛けるなどとは、本来あってはならない事です。
それが可能なら、神が直接統治する世界が可能となり、そこには争いは起きない筈です。』
「そうかも知れません」
『ですから、ダークエルフを含めて確認をしたいのです。』
「そうですね」
『これは言うか迷いますが・・・神との対話が可能なら、日本を元に戻す事も可能なのではと思っています。』
車内の自衛隊員全員が「えっ」と言ってしまう。
「戻れる可能性があると言う事ですか」
『あくまでも、神との対話ができればと言う前提ですが・・可能性は0%ではありません。』
「ですが、ドーザ大陸やアトラム王国に行っている者もいます。可能なのですか」
『相手は神とだけ申し上げます。』
「それも報告に入れて良いですか」
『可能性の問題なので、過度な期待が無ければ入れてください。』
以後、車内は無言になった。
大三角州駐屯地に到着した一行は、特別民間便の羽田行きが飛び立つ時間まで、駐屯地で休憩をしている。
時刻は18時となった。
航空自衛隊より差し向けられたバスに一行は乗りこみ、特別機に向かう。
畠田陸将補も同行する。
後に防衛省に畠田陸将補から、衝撃の報告が舞い込む事になる。
ありがとうございます。