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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第2章 セカンドインパクト(神々の戯れ)
162/251

第157話 ハイエルフ族長の決意と遠征隊出発

第157話を投稿します。

少し調子が戻ってきました。

ハイエルフ族長の決意・・・そして艦隊群の出港と南大陸攻略に向かって日本は動き出します。

 防衛省で行われた会議から1週間ほど前。

 まだ佐渡でドルツ国が人質を取り立てこもっていた時である。


「総監、司令です。発立川統合幕僚長。宛ドーザ大陸方面隊総監中野総監。読みますか?」

「頼む」

「はっ。内容はドルツ国侵攻におけるハイエルフ協力について、ドルツ国侵攻作戦発動に際し、ハイエルフ族の協力が不可欠である。

 その為に中野総監にハイエルフとの交渉を頼みたい。

 作戦の成否がかかっているとの事です」


「ふぅ。了解した。殿山幕僚長どう判断する」


「はい、現在ドルツ国が新潟村上、対馬に相次いで上陸、そして現在、佐渡にて人質を取って立てこもっています。

 ドルツ国の攻撃に理由はありません、全てダークエルフなる人物に命令されてやっている事ですから、

 そして、佐渡を解決しても次の攻撃があると容易に想定されます。

 ならば、日本上陸を阻止する為にドルツ国に対し攻勢をかけ、ドルツ国の上陸作戦を中止させる為の作戦と理解しています。

 この作戦の最大の問題点はダークエルフなる人物が思念で「のろい」をかけられる事だと判明しています。

 それを中和する為にはハイエルフの思念が必要であり、同行できなければ作戦自体は失敗の可能性が高いと思います」


「つまりハイエルフ同行が前提の作戦か、そしてハイエルフと仲の良い我々に指令が来たと理解して良いのだな」

「つまりは、そういう事だろうと思います」

「畠田幕僚副長、林幕僚副長も同じか」

「はい、幕僚長の言う通りだと思います」

「そうか。受けないと選択肢はないが・・・一番仲の良い畠田幕僚副長、特務でやってくれるか」

「はい。受領しました」

「そうか。大三角州の駐屯地にハイエルフとの無線もあったな」


「ええ。こちらに用事がある時は無線で連絡しているそうです」

「なら一旦大三角州駐屯地に行き、連絡してアポ取りしましょう」

「畠田幕僚副長頼むぞ」

「はい。成功させます」


 畠田幕僚副長はV-22で通称:大三角州駐屯地。正式名は宗谷特別行政区陸上自衛隊駐屯地に向かっている。

「久しぶりだ、帝国との戦闘時は何度か往復したが、街は順調に発展している様だな」

 日本山を越えると遠くに街が見えて来た。港湾施設も大きくなり、空港は大きなターミナルが作られていた。獣人などの協力で早く完成していた。


 宗谷特別行政区空港の陸上自衛隊駐機場にV-22が到着した。


 大三角州駐屯地までは迎えの車が来ていた。


「お待ちしていました。畠田陸将補」


「突然ですまない。駐屯地に行きハイエルフと連絡を取りたいのだが」


「はい、聞いております。ご案内します」

 一行は車に乗りこんだ・・とは言っても乗用車ではなく、1/2tトラックのパジェロである。


「すいません。こんな車で、乗用車などは配備されていないので、要人来訪時は民間ハイヤーを手配していたりします」

「いいや、かまわんよ。陸将補と言っても現場作業だからこれで充分」

「そう言ってくださると助かります。もうすぐです」

 そこには陸上自衛隊ドーザ大陸方面隊管理隊が常駐する大きなビルがあった。


「凄いな。前より建物が増えたな」

「ええ、北海道・東北方面隊とドーザ大陸方面隊の整備拠点と武器弾薬補給廠が追加されました。

 ついでですが、海上さんも航空さんも整備工場が倍になっています。

 特に海上さんはP-1基地を作りまして、旅客機の間を縫って飛び立っています」


「港湾施設は予定通り完成したのかな」

「はい。獣人さん達の活躍で、予定の納期が短縮し、一大貿易港として西南諸島や国内の物産を逆に輸出したりと軌道に乗っています」


「それは良い事だ。転移した日本には取引先の外国が無くなったのだから、少しずつでも輸出出来る様になれば経済も回るだろうし」


「そうですね。特に位置的に大三角州はドーザ大陸と南西諸島と日本の中間ですから、ここでの荷揚げは多いと聞きます」

「そうかそれは良かった。ドーザ大陸も今のところ平和だし、申し分ない。

 さて、ハイエルフに連絡を取りたいのだが」


「はい、駐屯地に着きました。隣が通信棟になります。司令に挨拶をと思いまして」

「そうだな。元第71戦車連隊田上戦車連隊長が駐屯地司令なんぞになる時代だからな。挨拶しておくか」


 二人は明るい廊下を歩いて駐屯地司令室に入る。

「鳥山陸曹長入ります」つづいて畠田陸将補も入る。

「田上司令元気か」

「おっ畠田陸将補。元気です」

「戦車乗りで終わると思っていた田上が駐屯地司令とは平和になった物だ」


「まっそう皮肉を言わんでくださいな。事務方は苦手であります」

「はは。田上ならそうだろう。1等陸佐殿」


「はは。出世はもっと苦手です。戦車に戻りたい・・・」

「気持ちはわかるぞ。私も普通科連隊長から幕僚になるとは思わなんだ」


「いえ、畠田陸将補は実力だと思います」

「そういう田上1等陸佐殿もここを2年やれば、昇進してどっかの幕僚長か参謀だな。ははは。もっと苦労するぞ」


「いやー遠慮したいですね。戦車乗りですから現場が一番です」

 二人の軽愚痴に鳥山陸曹長は黙っている。


「司令。ハイエルフへの無線許可をお願いします」と言って鳥山陸曹長は紙を出す。

「そうだな。防衛省からの任務だな。畠田陸将補成功をお祈りします」


「ああ。神と言われている種族との交渉だ。緊張する。それにこちらの考えは全て読まれてしまうから。

 交渉のしようがない」


「そうですね。こちらは依頼だけで、全ての判断はハイエルフにありますからね。

 一つだけ・・・誠実に交渉してください」


「了解した。すぐに連絡をしてくる」


「鳥山陸曹長案内と手配をお願いする」

 田上駐屯地司令は司令らしく命令する。

「はっでは失礼します。どうぞご案内します。畠田陸将補殿」

「おぅ。また遊びに来るぞ。ドーザ大陸方面隊に来たら飲もう」

「対処します。ははは。お気をつけて」


 大三角州駐屯地司令官室を出た畠田陸将補は、鳥山陸曹長に案内され、隣の通信棟に入っていく。

「お待ちしておりました。畠田陸将補殿。ハイエルフ族との通信回線は良好です。

 早速使いますか」

「頼む」


「了解。では回線を開きます」


「こちら宗谷特別区より、ハイエルフ族応答願います」

「・・・ガガ・・こちらハイエルフ族。応答願います」

 日本語で応答してきた。日本留学したハイエルフの誰かだろう。

「こちら陸上自衛隊宗谷特別区駐屯地。ハイエルフ族と交渉したいと人が来ています。行かせても宜しいですか」

「・・・了解した。受け入れする」

「了解しました。本日2人お連れします。よろしくお願いします」

「解った。手順は何時もの通り。以上だ」

「よろしくお願いします。以上」


「交信は成功です。さっ行きましょう」

「鳥山陸曹長も行くのか」

「田上司令の命令です」

「あいつめ。良い。行こう」

 

 運転手を入れて3名になったハイエルフ村訪問隊は車を「高機」(高機動車)に変えて駐屯地からハイエルフ村に向かっていた。

「すいません。ハイエルフ村は思念でバリアしていて、道に目印もないので私には行けません。

 この運転している三村1等陸士は何度か行っているので、運転を頼みました」

「そんな見つけにくいのか。一人で行くつもりであったが、無謀だったな」

「お一人で・・無謀と申し上げます」と鳥山陸曹長。

「そうか」畠田陸将補は樹木が続く道を行くが、変わらない景色を見て、ひとりなら無理だなと思う。


 車で30分位行くと

「この辺です。一旦停止します」

『まっていた。そのまま西に進め。』

「これが思念です」

 畠田陸将補もドーザ大陸方面隊でハイエルフ族マリアの協力でスルホン帝国を尋問していたので知ってはいたが、自分に向けられるのは初めてであった。

「なんか。脳に直接流れて来た。慣れないと不快だな」

「でもこれから、思念での会話になりますよ。慣れてください」

「そうだな」

 

 高機動車は道のない林の中を西に走り続けていた。


『とまりなさい』

 車を止めた。すると突然村が出て来た。

 ハイエルフ村は害獣の被害を防ぐために常時思念で隠している。

 思念バリアは、見えているのだが、見えている景色を他の景色と同化させて、見ているのに見えない様に隠していた。

 だから解除すると、突然村が現れる様に見えた。


「ここがハイエルフ村か」

「初めてですか」

「初めてだ。ドーザ方面隊でハイエルフ族のマリアさんやヒナタさんに協力して頂いたが、思念は捕虜に向けられていたので、自分に向けられるのは慣れていないな」


 一行は歩いて村に入る。

 歩く前に三村1等陸士は荷台から何かを持って歩いていた。

「入ります」と慣れている三村1等陸士が言う。

『入りなさい。許可する。』と思念が伝わってくる。


 小さな村であった。

 約30坪位の土地にテントの建物が5つ、一番大きいテントが族長のテントである。

「ここ、こんな小さかったのだな」と畠田陸将補。

「ええ。日本政府より約3000坪が割譲されていたのですが、村は住んで寝るだけだからと小さいですね。

 残りは全て農園にしている様です」

「有名な「神の雫」だよね。旨いよなあれ」

「ええここで作られています。しかも天然種であの品質ですから。改良したら恐ろしい事に。

 それに・・・種を取り出して栽培しても、この土地以外には成長しないと聞きます」

「最強の防衛手段だな」

「ええ。まったくです。「神の雫」が作れるのは世界でここだけですよ」


『内容は解りました。族長テントにおはいりなさい。』


「あの大きいテントです」と三村1等陸士が案内する。


「失礼します」3人はテントに入る。奥に寝床の様な区切られた場所があるが、手前は大きなテーブル2つと椅子である。

 三村1等陸士が説明する。

「ここは族長テントですが、村人の食事もここでします。だから食堂が大きく、台所もありますよ。

 陸自で水を引き蛇口を付けました」

「そうか。一応文化的になっているのだな」

「ええ、不自由を無くす目的です」


「そうか」


『よくいらっしゃいました。族長です。』

 畠田陸将補は初めて会った。35歳でも通るスタイルの良い若い族長であった。

『ふふ』

「あっ失礼でしたね。すいません」

『ふふ。516歳ですのよ。ありがとう。』

「あっ畠田陸将補、容姿や年を想像したのですね」

「ははは。すまなかった。族長殿とは始めて会ったのだ。若い容姿でビックリしていたのだよ。年は聞いていたからね」

「そうでしたか。516歳は人間なら老人通り越して仙人の領域ですからね」

「上手いこと言うな」


「族長。遅くなりました。これが要望されていた物です」

 三村1等陸士が高機から降ろした荷物をテーブルに置く。


「これは」

「はいハイエルフさん達から要望されていた作業着とゴム長靴に軍手です。お代は後ほど頂きます」

「必要な物があれば依頼が来ると言う事か」

「はい。仕入れてお持ちします。代金は「神の雫」の卸した金額があります」

「陸自でストックしているのか」

「はい。過去にはバイクなども」

「そうかマリアさん。オフロードに乗っていたな。偵察バイク貸していたのに」

「ええ。私が届けました。650ですよね。他には50ccのカブを5台」


 やり取りを族長はニコニコしてみていた。


『三村1等陸士殿ありがとう。呼びます。』

 しばらくして農園からリナとミーナが来て品物を持って戻って行った。


『喜んでいますよ。ありがとう。』


「いえ。何時もの事ですから。それより・・・」


『そうですね。話をしましょう。畠田陸将補。』

「あっはい。近い内にドルツ国のある南大陸に侵攻します」

『そこで、ダークエルフ無効化の為の協力要請ですね。解りました。明日同じ時間にいらしてください。』

「是非良い回答を期待しています。ハイエルフの皆様の協力が無いと作戦は失敗します」

『それも解っています。ですがハイエルフ族にもいろいろ不都合な事がありますので、皆で話し合います。』

「よろしくお願いします」

「畠田陸将補。明日また来ましょう」と三村1等陸士から言われる。

「では戻ります。よろしくお願いします」と畠田陸将補。


 結局交渉らしい話は一言で終わった一行は大三角州駐屯地に戻るのであった。

「いつもあんな感じで交渉しているのか」と畠田陸将補。

「はい。しゃべらなくても、その背景を含めて解られてしまうので、隠し事はできません」

「そうだな。あれでは無理だな。仕方ない。田上のおごりで飲むか」

「はは。何も申し上げません」と三村1等陸士。


 翌日、同じメンバーでハイエルフ村に向かった。


 族長のテントまでたどり着いた。

 今日は族長テントには10人のハイエルフが揃っていた。


「お邪魔します」

『我々は結論を出しました。この地を割譲頂いた日本国に報いる為にも、

 ですが、一つだけ理解して頂きたいと思います。


 ダークエルフの思念中和が我々の役目であると認識していますが、相手の思念が発せられる時に中和を行う事は、我々も生命力を削られます。

 最悪は何人かが死ぬかもしれません。

 ハイエルフの寿命は800年と言われていますが、戦場に向かえば一瞬で命が消える事もあります。

 ですが、我々が参加しないと作戦は実行できないと思います。


 なので、私は族長として決めました。新族長をマリアとして、私を含め10名が参加します。

 一番の理由は思念力の問題です。私が族の中で一番強いので、二番目の皆さんが呼ぶマリアを族長とします。』


「ありがとうございます。言葉もありません」

『我々10名の中で日本語が出来るのは「ミーナ」と「レイナ」』

「はいドーザ大陸ドフーラではご協力頂きました」

『ですが我々は思念を使いますので、自衛隊の装置に支障があるかもしれません、その点はご配慮ください。』

「はい、最優先で伝えます。作戦開始には私たち3名でお迎えに来ます」

『はい解りました。1か月後ですね。準備を進めておきます。

 我々も思念と中和の訓練をしないといけません。』

「よろしくお願いします」


 それから畠田陸将補は大三角州駐屯地に戻り、防衛省迄旅客機で飛んでいた。

 防衛省作戦指揮室で、各人にハイエルフの状況を伝え、海自には特別室を「いずも」に用意してもらう。

 偵察機や戦闘機にも搭乗する事を配慮して、1か月後に訓練を1週間程度行い、艦隊には新大島での合流を予定している。


 こうして、日本が攻略に晒されない様に先手を取るべく南大陸遠征艦隊及び強襲揚陸隊と空挺団は海自艦船と共に日本各地から出港していった。合流地点は西南諸島「新大島」沖50kmである。

 護衛艦・補給艦を入れて約50艦。航空機は米軍や戦闘機予備を入れて約40機、回転翼型は攻撃型ヘリのコブラを8機に輸送用V-22やMV-22が10機、全通甲板を持つ「おおすみ」などの耐熱甲板塗装を新たに施し積み込んでいる。

 他に救難ヘリや哨戒ヘリを加えると回転翼機は60機を超える事にもなる。


 戦後初の大戦闘集団となる遠征艦隊が米軍の協力を得て発足し、各母港では出陣式が個別に行われた。


 先だって1週間前には入間航空基地で総合出陣式が行われ、防衛大臣と共に当壁総理も訓示を行う。

 入間航空基地で行われた総合出陣式は秘密裏に実施されたが、一部マニアに写真が出回ってしまった。


 それもそうだろう。航空基地であるのに陸自、海自、空自に米国第7艦隊揚陸部隊/第7遠征打撃群に海兵隊が集まっているのだから、噂にならない方がどうかしている。


 こうして日本全国の港から護衛艦隊がひっそりと出港していった。

ありがとうございます。

次回も少し遅れますが、続きを投稿したいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 ダークエルフの『呪い』阻止の為、日本の『恩義』に身を賭して報いてくれるハイエルフ族長ら、参加有志の皆さんには頭が下がります。 ハイエルフの皆さんが誰一人欠ける事無く作戦…
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