第15話 日本へ (改)
第15話を投稿します。
タイトルでばれてますね。
2020/05/29改訂
4月21日13時海上自衛隊佐世保基地を出港した使節団は翌日9時には島の沖合2kmに停泊していた。
「いせ」は、作業艇を降ろし外務省外交官と、特別に上陸班編成をして、作業艇2艇で向かう。
海岸では現地人が並びこちらを見ている。
念のためAH-1Sコブラを1機上空待機させる。作業艇が500m付近まで近づいて双眼鏡で確認すると。
まるで猿人の様な人間の先祖の姿をした者たちが、こちらに向かって石を投げていた。「だめだな」と外交官が言うと作業艇は引き返して行った。
次の寄港地を探して大陸の南側を探査する事も考えたが、なにしろ無線を中継する衛星が飛んでいないため、DDH-182「いせ」には急遽HF(短波:ハイフレケンシー)の無線機を複数搭載し、艦隊本部との間で高出力長距離通信を行っていた。
電離層を調べた結果、地球とほぼ同じであった。
電離層とは窒素や酸素などが太陽光を浴びることにより、イオン化して、高度60km以上に電波を反射する層として存在する。
電離層はD層、E層、F層と低い順に分類され、それぞれの電離層で反射する電波の周波数が違う。
また周波数が高すぎると電離層を突き抜けてしまい、宇宙との交信に主に使われる。
一般に言われる中波(MF)、短波(HF)、超短波(VHF)それ以上をマイクロ波と呼び、現在の地デジ放送では極超短波(UHF:ウルトラ・ハイ・フレケンシー)を使用している。(以前のアナログ放送はVHF)
この呼び方は波長の長さを表している。1MHzの波長は300mである。波長はそのままアンテナの長さに比例するが、300mの波長に対して300mのアンテナの方が利得、つまり効率が良い。
通信基地やラジオ電波塔が高く大きく広大な土地を使うのはこの為である。
もちろん1/2波長や1/4波長も電波を捉えることができるので、増幅の必要はあるが使用できる。
地デジに使われる周波数は約500MHzから700MHzであり、波長は0.6mから0.42mである。つまりアンテナの許容は1/4波長アンテナとすると15cmから10cmとなり屋根の上のアンテナは素子が短い事がわかる。周波数が高くなると波長は短くなるのだ。
話を戻すとDDH-182「いせ」と艦隊本部との音声通信に使われる周波数は16から17MHzのF層反射を使うようにしている。
D層、E層の周波数帯は地上や海上との反射回数が多くなり、電波がどうしても減衰してしまい、結果として遠くまで届かないのだ。
F層反射は出力さえ大きくする事で遠くまで飛ばせる。
ただしこれも1,000km以上離れるとどうしても弱くなる。
デジタル通信はできない。高い周波数が必要になるからだ。
高い周波数は遠くまで届かない、地球の丸さに邪魔されるし、電離層での反射もないのだ。
そんな事で音声無線通信にて艦隊本部と連絡を取り、失意の中、基地に戻る事となった。
・・
一方、『宗谷大地』の森林の中、4月22日午前9時「トメス」の駆除に成功した第3偵察小隊長は族長のもとを訪れていた。日本での保護に対する族長の返事を聞くためである。
「おはようございます、族長」
(おはよう)
思念ではあるが心なしか弱いように思われた。
(保護の件、みなで検討した)
「いかがですか」
(逃げ回るのも限界がある。
われわれハイエルフは長寿の種族、使徒にも匹敵する。
これからの長い人生無理がある。
だが、この場所は良い、生きていくだけの食料がある。
とくにわれら大人はもう逃げるのつかれた。
そこでだ、子供たちに違う世界を見せたいのだ。
ドーザ大陸や帝国、そしてこの場所しか知らない子供たちに。
われらは子供たちの帰る場所を作らねばならない)
「よくわかります。私も3歳の女の子がいます」
(そこでだ、われらの子供に見聞を広げさせてもらえないか)
「解りました。大丈夫と思います」
(そこで、我らの子供たちから100歳から200歳の若い者を5名選んだ。きなさい)
子供が年上か。と思った。
そこにはアイドルグループの様な女の子が5人並んだ。
(だからアイドルってなんですの)うわ、族長の娘がいた。
「わかりました、日本国政府が責任を持って、彼女らを保護します」
(そなたたちも日本と言う国の役に立てるようにたのみましたよ)
(族長さま。わかりました)
実は昨日の戦闘の後、偵察本部に無線連絡で状況を伝えたところ保護について快諾されたのだった。
「それでは娘さんたちをお預かりします」
(族長さま行ってまいります)お母さんとは言わないのかと思った。
(生まれた時から族長ですからね)娘は少しくだけてきた様だ。
(小隊長一つだけお願いがあります)
「なんでしょう族長」
(実はわれわれもある程度の武器や工具はあるのだが、そのあなた方が倒した木材を頂けないかなと)
「そんなことですか、簡単な事ですよ。山の麓からここまでの道を施設作業車が拡張工事していますので、戻り次第木材を集めるように指示します。それまでの間はわれわれはトラックで引っ張り運びます」
・・
「場所は広場でよろしいですか」
(お願いする。われらも手伝う。われらも覚悟を決めて、この地で定住することに決めた。
その為には元住んでいたチロルの森の様に畑や果樹園を作る)
「覚悟を決めたのですね。了解しました」
それから第3偵察小隊は12名の隊員とハイエルフの人たちで木材を運べる程度に切り分け。
ハイエルフの村の広場に積み上げていった。
直に施設作業車が戻ってきた。
施設作業車は背に折り畳み式のパワーショベルを収納しており、これを展開して木材を吊り上げられた。
昼までかかったが、ハイエルフと隊員の交流もできた様だ。
自衛隊員は糧食を用意して、ヒートパックで温め、ハイエルフの方々にもふるまった。
娘さんは白米だけしか食べなかったが、ほかの方々は一通り味見をして、一番人気はやはり白米だった。
ただし、みそ汁も結構飲んでいた。
族長から彼らの食料の一部をサンプルとして受け取り、自らも食べてみた。
「うまい」食べた事ない果物であった。「小隊長これはうまいですね」「サンプルだから全部食べるなよ」小隊長は思った。
「娘さん」全員娘だがと自らにつっこんだ。暗黙のうちに族長の娘を言った。
(なんですか)
「この果物と木の実ですが、ある程度は取れるのですか」
(とれますよ。私たちが生活する分程度は)
「いえ、日本に輸出できないかなと。珍しいし、なによりおいしい」
(なら果樹園が必要となりますね)
「うん考えてみましょう」
小隊長は偵察本部に考えを報告し許可を貰った。
「族長ありがとうございました。先ほど本部に連絡を取って許可を貰いました」
(なんのことです)
「私たちは国から装備を支給されています」
(帝国なら貴族の持ち物を貸し与えるのが普通です。
「そこで、農園をつくるなら農機具があると便利かなと、許可を貰いましたので、個人携行品のスコップと折り畳みのこぎりを置いていきます」
「それに私個人の持ち物ですが、このコンバットナイフを。りっぱな農園を作って、将来日本に果物を輸出していただけると、私たちもハイエルフの里を思い出します」
(ありがとう感謝します。娘たちをよろしくお願いしますね)
「わかりました、日本国が責任を持って保護いたします」
第3偵察小隊はハイエルフの里から帰還する為に乗車した。
施設作業車と73式中型トラック2両をもう一車線作るための工事に回し、小隊長と運転手にハイエルフ5名を乗せた高機動車は作ってきた道を40km程度で戻っていった。木の根が至るとこにあり、速度はこれ以上出せない。それでも来た時の倍の速度である。
ハイエルフの里から350kmを9時間かけて、特別分屯地に戻ってきた。
ハイエルフ達には悪いが、キャンプはさせられないので、夜の9時まで飛ばし続けた。休憩もなしで。
ハイエルフのみんなはくたびれている。
そこで、女性自衛官を2名付けて、稚内市内のホテルの最上階を貸し切り、5人の為にあてがった。
夜10時である。夜の食事はしていないので、白米と玄米、五穀米に豆腐、こんにゃく等々の植物性の食事を特別に用意した。
一番人気は白米であるが、ジャガイモをふかして塩をかけたものも人気であった。
塩が良いのか、ジャガイモが良いのかわからないが、実にシンプルである。
いつも評価ありがとうございます。