第154話 ダーク・ナイツ(Dark Knights)
第154話を投稿します。
ドルツ国側、日本・海兵隊・SATの動きを作ってみました。
「諸君集まってくれてありがとう。前にも自己紹介したが改めて、第1空挺団本部、橋本陸将補である。
本日はまるよんまるまるに開始される、対処作戦「ダーク・ナイツ」についての説明をする。よく聞いて役割を理解して欲しい。
つづきは、冴島1等陸佐、第1空挺団参謀(高級参謀)により説明する。以上だ」
引き続き冴島1等陸佐が説明を続ける。
「今回のミッションは敵占領地(民家)からの排除および人質救出が目的である。
時間は明日0315に開始する。
民家の分担は、ここ人質がいる民家は第1空挺団で対応する。
そして2軒目、本部機能らしいとされている。ここを「フォース・リーコン」に任せたい。
3軒目は警視庁神奈川県警合同「特殊急襲部隊」に任せたい。
作戦概要は、「フォース・リーコン」特殊狙撃班2班による3軒連続で見張り2名の同時排除を実施する。
なお射殺については当壁総理より秘密裏に許可を貰っている。法務省も認知済みである。
では作戦の流れと担当の確認をします。
0315に集合地点から各隊移動開始。
0350に「フォース・リーコン」特殊狙撃班2班による民家ABCの2階監視員を無力化します。
「フォース・リーコン」の「クリア」を合図に3隊同時に急襲を実施。予定は0400と予測していますが早くなると思います。合図次第です。
Aチームを第1空挺団として、民家Aを対処します。
内容は人質救出班と急襲拘束班の2班で突入します。
Bチームは「フォース・リーコン」強襲1個小隊が突入します。
海兵隊武装偵察部隊と言われていますが、特殊部隊経験者によるチームであり、間取りが解った時点で訓練を開始しています。
Bチームは本部機能を持った民家ですので、有線の切断を実施してください。
Cチームは警視庁・神奈川県警合同「特殊急襲部隊」の16名による制圧となります。
C民家は10人と人数が多いので慎重にお願いします。
各民家は「フォース・リーコン」の特殊赤外線装置により、現在は常時2階に見張り2名。約8時間交代です。
A民家は1階に8名。B民家は同じく6名。そしてC民家は打撃力を温存する為と思われるが、1階に10名を数えています。
人数的に「特殊急襲部隊」(SAT)は大丈夫ですか?」
「見張りがいないのなら、問題ありません」と警視庁SAT隊長の岡野が回答する。
「了解した。確認ですが「特殊急襲部隊」の主武器は9mmではないですよね」
MP5でない事を確認していた。
「近距離なら9mmの方が取り扱いが楽ですが、今回狙撃も考慮して我々も89式5.56mm小銃を持ってきました。予備は9mm拳銃ですが自衛隊と同等です」
「了解した。大丈夫だと思う。各隊は占拠民家と同等間取りの民家を訓練施設として使って頂いているが宜しいか。不都合はあるか」
「「特にありません」」
「よし。0315に移動開始。0350を過ぎれば「フォース・リーコン」による消音機付狙撃ライフルでの制圧を実施。その後に突入である。
各隊は日ごろの訓練の成果を見せて欲しい。
そして国民が知る前に鎮火させて頂きたい。以上だ」
「では補足だけ」冴島1等陸佐が補足する。
「隊内無線は周波数自由。混線はしていないようなのでそのまま使用をお願いします。
本部無線は450MHz帯のFチャンネルとします。
問題が発生した場合はFチャンネルでお願いします。
それから制圧完了もお願いします。3軒とも制圧完了後に第2普通科連隊が拘束したドルツ国兵士を引き取りに行きます。
引き渡して終了となります。その後各隊は隊本部で待機願います。
夜明け後の0700に合同ミーティングを予定しています。
負傷者はここ本部の衛生小隊にお渡しください。ドルツ兵でもです。
その場合は負傷者回収の車両を出します。以上です」
「では各隊解散。突入準備を引き続きお願いする」
「解散」
合同ブリーフィングは終わり、作戦概要と手順が公開になった。
各隊は訓練している民家に戻り、突入訓練の手順を繰り返す。
・・・
「なぁ日本軍、静かすぎないか」とドルツ国上陸隊隊長代理となった、タルガ先任曹長が言う。
「先任曹長。人質もいるし、われわれの武器を見ていますから恐れていると思います」
と生き残りの第3小隊軍曹タリームが答える。
「いや日本軍は優秀だと聞くし、こんな卑怯な作戦を展開しなければならない程の相手と聞いている。
これは静かすぎる」
「タルガ先任曹長。日本は人命尊重していると聞いています。軍隊なのにですよ。人質がいる手前、手を出しにくいのではと思います。現に介助の人員までだしてきています。人質が増えるだけなのに」
「そうかもしれない。しかし看護まで差し出すとは日本は考えられない」
「そうです。戦術的には負い目を増やすだけですから、我が国なら人質を無視して攻撃開始します」
「それがドルツと日本の違いなのかも知れない。だがお人好しは時として手枷足枷になる」
「まったくです」
タルガ先任曹長は戦場電話のスイッチをきり変えて各班に確認をしていく。
「第1班異常ありません」
「第3班異常ありません」
「第3班、人質は如何だ」「送り込まれた看護兵が全てをしています。我々が手伝う必要はありません」
「了解した。だが看護兵の監視と武器を渡さない様に2名以上で対処して欲しい」
「こころ得ています。以上」
「ふぅ今のところは異常なしか。日本は食料も水も差し入れてくれるから助かる」
「そうですねタルガ曹長。食料探しに付近民家を探る必要もなく拠点を作れていますから大助かりです」
「だが・・それが日本の狙いとは思えないか」
「まさか、そこまで読んではいないでしょう。ダークエルフ様ではないのですから」
「そうだな。考えすぎかもな。まもなく4日目が終わる。人質を取って7日目昼に表に出て全員で人質射殺後に全員自爆だ。ダークエルフ様らしい作戦だ。だれも生き残らない」
「その為の精鋭部隊です。死ぬことは神の元に行くだけですから怖くはありません」
「そうだな。もう教会の石碑に全員の名前が彫られている頃だと思うぞ」
「家族の自慢話が1つ出来ます。父は神の為に死んだと」
「そうだと良いが・・・とにかく気を引き締め、最後の時まで生き延びて日本人にドルツ人の生きざまを見せつけようぞ」
「おぅ」
悲しい話である。
0300となり、集合地点である合同本部に隊が集まっていた。
「点呼をとる」
「Aチーム」
「救出と強襲全24名全員揃っています」
「Bチーム」
「Ok、総員14名に狙撃班2班は準備に入っている」
「了解。Cチーム」
「総員20名揃っています」
「了解した。徒歩にて襲撃待機地点に向かえ。時間までに攻撃位置について欲しい」
「「「了解」」」
「では時間は0315になった。対処開始」
各隊は一斉に歩き始める。
空挺団と警察は隊列を組み歩き出すが、「フォース・リーコン」はバラバラに歩き出す。
「あれ大丈夫なのか」と橋本陸将補。
「あの隊がここで一番強い隊ですから。それに海兵隊ですし」と副団長の三橋1等陸佐が苦しい言い訳をする。
空挺団は空挺レンジャー訓練優秀者。その中でも要人救出や施設攻撃での成績優秀者の中から志願者で構成されている。
警視庁・神奈川県警の特殊急襲部隊(SAT)は特殊車両事空輸されていた。
対テロに特化した部隊である。
各隊は移動していったが、命令や号令は一切なく各自が自分の役割をきちんと認識しているようだ。
0330 各隊が攻撃開始位置にて控える。
特にSATは畑を横切る事になり、匍匐第5で移動している。
日本上陸隊のドルツ国はライト等の持ち込みは無く、目視で監視をしている。
いよいよ作戦開始となる。
フォース・リーコン、アルフォート隊長は空挺団長の合図を待っていた。
「対処開始」
アルフォートは無線に向かい短く「01」と指示する。
狙撃手は決めていた通り、左右どちらにいるかで優先権が決めていた。
A民家2階にて見張っていたドルツ兵の一人が突然崩れた。同僚はそちらを見たと同時に頭を射抜かれている。
各スポッターからの合図がアルフォート隊長に入る。
続いてアルフォートは「02」と指示する。
C民家の2階で見張りをしていたドルツ兵2名が射殺された。
つづいて「03」
B民家の2階で見張りが倒れる音がする。
アルフォートは共有周波数に「クリア」と流す。
各部隊が一斉に作戦に入る。
・
本部機能のB民家では2階でかすかな音がしたので、タリームが2階に上がり様子を確認しようと階段に足をかけると同時に窓が割れ、何かを投げ込まれた。
「なんだ」
次の瞬間大きな音とまばゆい光が2回起きるが1回に聞こえた。
階段を登ろうとしていたタリームはその場で倒れた。
まぶしすぎて目を開けられない。耳もキーンと耳鳴りがして立てない。
その時。「フォース・リーコン」急襲部隊が突入してきた。ドルツ兵の銃身を足で踏み、全員をうつ伏せにして次々と腕を拘束していく。
念のため全ての部屋を回り、一番大きなドルツ国兵士が本部としていた部屋にうつ伏せで並ばされている。
タルガ曹長も例外なく拘束されてならばされた。
「なんと言う事だ。ドルツ国でも特殊訓練を受けていたが、たった10秒で拘束されてしまった。
しかもあの音に光。まだ何も見えない。聞こえない。なんて奴らだ」
タリームも拘束されている。
タリームとの会話を思い出した。
「日本人は優秀と聞く・・・優秀・・くそー手も足も出ない」海兵隊であるがタルガには見えない。
ふと2階の見張りは何していたのかと思うが・・・もう死んでいるだろうと思い直した。
タルガ曹長は抵抗を止めた。まだ耳が聞こえないので喋る事に自信がなかったのである。
隣のタリームも気配で解るだけで目もまだ見えない。
その時、海兵隊員が「B民家制圧完了。捕虜6名異常無し」と共通周波数に流した。
タルガは本部なのだからもう少し人数を揃えていればと後悔したが・・・
10人+2人の人数を揃えていたC民家はAやB民家(呼称は日本が付けたもの)に何かあれば応援を出す決まりであった。
このC民家はSATの目標である。
合図があると同時に閃光発音筒を1階の2部屋に4発投げ込んだ。
ほぼ同時に爆発して、1階2部屋にて交代で睡眠していたドルツ兵達は起きると同時に目が見えなくなり、耳鳴りがして布団から起き上がれない。
玄関を破りSATが急襲してきた。
2人で1組になり、ドルツ兵士達をうつ伏せにして拘束していく。
口には自殺防止の器具を入れて上からガムテープで巻いて行く。
あっと言う間に10人は身動きできなくなる。
警視庁SAT隊長の岡野が共通周波数に「C民家制圧完了。拘束者10名。以上」と流す。
A民家も同様に第1空挺団24名が突入している。
ここもあっけなく閃光発音筒にて制圧され、拘束されていた。
救出班の4名は「富永サト」さんの部屋に入ると、介護していた門真美幸2等陸曹が
「布団事お願いします」と言う。「歩けるか」との質問に「なんとか大丈夫です」と答える。
救出隊は布団事「富永サト」さんを担ぎあげると、軽々と混乱した現場を離脱していた。
門真2等陸曹も自力で歩いてついて行く。
外に出ると「人質救出完了。門真も同行しています」と入れる。
「了解。すぐに車両を向かわせる」と本部。
家ではまだ拘束が続いている。
門真美幸2等陸曹は2階で狙撃されたドルツ国兵士に冥福を祈る。
やがて高機動車が到着して、後部荷台に布団事「富永サト」さんを横にして、門真2等陸曹が付き添う。
「富永サト」と門真2等陸曹は念のため衛生小隊にて医師による確認を行い、避難所につれていかれる。
各隊の制圧は完了して、死体を死体袋に詰めて1階に移動させていた。
やがて空挺団本部の要請により、第2普通科連隊から大型トラックが拘束されたドルツ兵を回収していく。
次のトラックでは射殺されたドルツ国兵士を回収していった。
・・
第1空挺団橋本陸将補は
「よし、作戦および対処終了」を宣言した。
こうして日本上陸を果たして、作戦通り人質まで確保したドルツ国上陸隊であったが、あっけない程全員が射殺か拘束されてしまった。
・・
「立川統合幕僚長。報告が入っています」時間は0430である。
「読んでくれ」
「はっ。第1空挺団本部発、立川統合幕僚長宛、ダーク・ナイツ作戦0430に完了。双方に負傷者なし、射殺者は6名。予定通り。以上」
「そうか。上陸隊全員拘束したか。よかった。早速高野防衛大臣に報告を」
「優秀ですね。特殊部隊が混成していたのに。やりますね」
「そうだな。かれらは役目さえ明確ならやり遂げてくれるよ」
「予想の上を行く成果です。しかもSATまで加わって・・・」
「SATも実戦経験が積みたかったのだろう。高野大臣へ法務省にも礼を頼まないとな」
「ええ。迷惑と思っていましたが、やりますね。自衛隊もうっかりできないですね」
「うむ。だがテロの危険性は我々よりも警察の方が神経使っていると思う。少し今回の件でSATを見直したな」
「はい。相当強いです。合同訓練なども考えられますね」
「そうだな。それも高野防衛大臣に提案してみるとしようか」
「ですね。習志野のテロ組織対処訓練所が使えますね」
「うむ。書類にまとめてくれるか。私は少しだけ休む」
「了解しました。お休みください」
一連のドルツ国攻勢が治まり、立川統合幕僚長はつかの間の休養をしていた。
よろしくお願いします。
本話は第153話の補足です。