第152話 人質救出作戦 その2
第152話を投稿します。
富永サトさんと接触できました。
急襲計画の始まりです。
「まて、制服で行くつもりか、デイサービス「ときわの会」と話を付けた。彼らの制服と言ってもエプロンだがそれを付けて行け。下は平服だそうだ」
「了解しました。私服ですか・・持ってきてないですよ」
「うーん。「ときわの会」職員に相談してくれ。彼らはここの避難所にいる。至急だ」
「了解。すぐに行きます。そしてここに戻ります」
「了解した。準備にかかってくれ」
門真2等陸曹は乗ってきた高機動車を発進させた。相変わらずスピードが凄い。
4WDなのに門を出る時大きくドリフトする。普通の運転では4WDはほとんどドリフトしないのだが・・・・
コーナリング途中で思いっきりアクセルを踏んでいる事になる。
「やれやれ、彼女に安全運転を頼みたいな。対処前に事故りそうだ」と第1空挺団長の橋本陸将補は苦笑いをする。隣の空挺1中の石間2等陸尉も「同感です」と笑う。
あっと言う間に避難所指定されている「佐渡スポーツハウス」に到着すると「ときわの会」の職員を探す。
「はい、私が「ときわの会」職員ですが、なにか」
「自分は空挺団の門真2等陸曹と申します。「富永サト」さん86歳の介護を仰せつかりました」
「おばぁ助けてくれるのですか。まだ若いのに腰を痛めて歩けないのです」
「いえ、私が敵兵の中へ行き介護します。詳細教えてくれますか」
「そうだったのですね、薬は自衛隊の方に渡しています。サトさんは誤飲があるので起こしてから飲ませます。お茶が好きでお茶で飲ませています。渡してあるおむつは持っていますね」
「はい2枚頂いております」
「1日分ですね。まってくださいもう4枚差し上げます。それとゴム手袋。汚物袋を8枚。汚物入れたらジッパを締めてください。薬を飲ませる紙コップ。こうして先を細めて飲ませてください」
「有難うございます。「ときわ会」の姿で行きたいのですが、私服は持ってこなくて」
「うーん。松さ~ん服貸して」「家で良ければ。すぐそこですから」
本当に近かった。「佐渡スポーツハウス」の通りを超えて斜め向かいであった。
「お邪魔します」
「自衛隊ですよね。命の危険もあるのでしょ。これをきてください」
「もう少し動きやすい・・Tシャツにジーパンなどあれば・・・」
「オッケー、これとこれね」
「はい」着てみた。門真2等陸曹は普通の主婦的な姿となる。
「スタイルいいから似合うよね。そして「ときわ会」のエプロン」
「うん似合う。気を付けていってきてね」
「有難うございます。お借りします」
「エプロン以外は返さなくてもいいよ」
「そうはいきません」
「いいのいいの。気を付けてね」
「はい。ありがとうございます」
門真2等陸曹は着替えの制服を持ち団本部に戻る。
「準備出来ました」
「よし行こうか。制服が・・」
「一式本部で預かっておく」
「はいお願いします」
「では、第1空挺団団本部偵察小隊の飯島准尉と言います。私がお連れします」
「よろしくお願いします」
二人は白い旗を取り付けた高機動車で出発する。
「赤十字のバッグは持っているな」
「はい介護用具一式入っていますので忘れません」
「そうか、現地に行くと手枷と目隠しされるから抵抗するなよ」
「はい・・」
交渉の場所まで途中で車を降りて、あるいてきた。
ドルツ国からはトルーガが出てきた。
「それが介護要員だな。点検させてもらう」
と言うと全てのポケットやジーパンの裾を点検された。
「荷物はこれか」全てだせ。
「ここでですか。介護できなくなります」
「ちょっとまて」急いで走るとトルーガはテント布のような緑色のシートを持ってきた。
「ここに並べろ。全部だ」
門真2等陸曹は言われるがままに全て出して並べた。
ハサミも医療用の先が丸い物を持ってきた。
「これで全部です。残りは家にある物を使います」
「確認した。全てしまえ。目隠しと手を縛らせ貰う」
「解ったが、介護するうえで会話も必要だと思うので、この翻訳機を1台持たせたい」
「解った、まて」
トルーガは家に戻ると本部に電話した。
「看護師が翻訳機を持ってきたいと言っています」
「武器でなければ認める」
トルーガは急いで戻ってきて、「持ってきて良いそうだ」
飯島准尉は門真2等陸曹のエプロンに翻訳機をいれた。
「民間人だから大事に扱って欲しい」
「そんな事ある訳ない。こいつも軍人だろ」
「いや。介護には特別資格が必要なのだ。だからいつも世話している民間人を特別に用意した」
「ふむ。だが人質と同等だ」
目隠しされ手を前で縛られた門真2等陸曹は紐を引っ張られて歩いて行く。
家に入るのを見送ると、飯島准尉は車まで歩いて戻って行った。
「対処計画1が始まりました」と無線で報告する。
「了解。こちらも信号は鮮明だ」
門真2等陸曹が持っていた赤十字バッグと翻訳機にはGPSが張り付けてある。
上空のGPS衛星「みちびき」が門真2等陸曹の位置を10cmの誤差で監視している。
「これでどの位置に人質がいるか判るな」
「ええ、これで訓練の精度が上がります」
「そうだな、人質が移動されても門真2等陸曹も一緒だろう。常に位置が判ると言う物だ」
空挺団本部では、そんな会話が交わされている。
家に着いた門真2等陸曹は目隠しを取られ、手は縛られたままで、「富永サト」の元に案内された。
「まあ~」門真2等陸曹は主婦らしく声を上げる。
「手を解いて」と日本語で言う。
トルーガが、Aチームリーダーターナー軍曹に目で合図する。
ターナー軍曹は了解した。
手を解かれた門真2等陸曹は早速翻訳機を使って、「なぜ病人にこんな事を。動けないのですから解きますよ」
有無を言わせず縛ってあるロープを解く。
「富永サト」は敷布団と掛け布団に挟まれて、布団毎縛られている。顔も出さない様にしていた。
これでは赤外線探査も難しいだろう。
早速ロープを解き、敷布団を敷き直して、顔に当てられていた枕を置き、「富永サト」さんを寝かした。
上から寒くない様に掛布団をかける。
「つらいところはありませんか」
「あんた、「ときわ会」の人か、助かった。トイレ行きたくて我慢していた」
「サトさん大丈夫ですよ。パンツは持ってきましたから。少し待ってください下に防水ビニール敷きますから。それともトイレ歩けますか」
「歩きたい気分だ。布団饅頭にされていたからな」
「では言ってきます」
「すいませんドルツ国の人。さとばぁはトイレ行きたいそうです。いいですか」
「お前が介護役だろ、行かせろ」
「サトさんトイレ行けるそうです。一緒に行きましょう」
門真2等陸曹は赤十字のバッグを袈裟懸けしてサトさんを連れていく。
まったく歩けないとかではなく、一歩が遅い。トイレに着く前に漏れてしまいそうだった。
トイレはドルツ兵が使ったらしく、流されていなかった。
水洗式を知らないのか。
門真2等陸曹はトイレを流し、少し待って小窓を開けてサトさんを座らせる。
おしめをしているので、途中おしめを取って汚物入れにいれ封をする。
トイレのドアは開けっぱなしだ。
サトさんはしばらくぶりのトイレに上機嫌である。
ボケが入っているとも聞いたが、今のところそんな素振りもない。
トイレが終わり、布団に戻っていた。
「お薬飲みましょうね」
風呂場で洗面器を探し、水筒のお湯を入れ水を入れて適温にする。
タオルを固く絞って、お尻回りを優しく拭いて行く。
一通り拭き終わると、新しいおしめをして、体を起こし、水をいれた紙コップを細くして口に当てると少し流し込んだ。そして薬を入れまた水を入れる。ゴクンと飲んでくれた。
口の周りをティッシュで拭き、きれいにする。
「サトさんお腹すきませんか」
「すこし減った」と返事がある。
「家にあるもので作りますね」
ドルツ兵に「サトさんお腹空いたそうです。日本の伝統的なおかゆを作ります。台所使いますね」
門真2等陸曹は土鍋を見つけ、米をいれ水を米を炊く時の倍の量を入れ、昆布を置いて沸騰するまで強火で火にかけた。
隠し味にだしの素をいれている。
その間に冷蔵庫をみてみる。
ノリの佃煮がある。
「サトさんノリの佃煮すきですか」
「ずきだ~」
土鍋は沸騰している。火を弱めて弱火にして様子を見る。
お米を炊いてそれを再度水を入れておかゆにするのだが、それはうまくないと門真2等陸曹は思っている。
最初から水多めで炊いておかゆにしてしまう。火加減と時間が大事だ。
40分経過しておかゆが出来た。
それを茶碗によそって、うちわで冷ます。
ノリの佃煮を少し載せて。適温になりレンゲで給仕する。
「サトさん。できましたよ。冷ましましたから食べやすいですよ」
門真2等陸曹は時間をかけて「富永サト」さんに茶碗一杯分のおかゆを食べさせていた。
「おめえさんの作るおかゆはうまい。他のは不味くて喰えん」
「気に行って貰って良かった。まだありますが食べますか」
「もう少ししたら喰う」
「では少し横になって休んでください。起きたらおかゆ持ってきます」
「富永サト」さんは横になって眠ってしまった。
門真2等陸曹は台所に行き、土鍋のおかゆを鍋に移している。
温める時は湯せんをするのだ。
空挺団本部
「薬とおかゆ食べさせました。サトさんは寝たようです」
翻訳機に盗聴マイクが仕込んであった。
「部屋の位置は解ったか?」
「1軒目のここに寝ています。台所はここ。そしてトイレはここです」
「結構。詳細が解れば対処できる」
「他の様子は、フォース・リーコンが赤外線探査で位置と間取りが解っています。
避難所の人たちの話とも合います」
「よし。実行できるか。人質と門真2等陸曹は大丈夫なのか」
「渡した赤十字バックはケブラー繊維でできています。中に何か詰めれば盾になります」
「本人には言っているな」
「はい」
「夜明け前の04時に実行だ。各員連絡。各隊招集」
現地指揮指令本部に各隊が集まってきた。
ありがとうございます。