第149話 佐渡攻防戦 その1
第149話を投稿します。
人質の国民・・・いるのでしょうか
「上陸隊は何艦やられた」
「シュケム司令。上陸できる艦は本艦を入れて2艦です・・残念です。日本は優秀過ぎます。上空から潜水艦を探知するなど未来技術です。我々はこんな相手・・・」
「言うな。そうか、たった2艦か。ウレタ副官愚痴を言っても状況は変わらん。作戦通り上陸して橋頭堡を築く様に指示してほしい。だが・・・無理はするな」
「司令もお気をつけて」
「ああ、みんなを死なせるわけにはいかない。必ず戻る」
「お待ちしております。では出撃します」
「ああ。たのむ」
生き残った2艦は真野湾に突っ込んで行き、前面のカーゴドアから軽戦車と兵員が飛び出していく。
上空では燃料の切れかけているP-1が周回して様子を赤外線モードのビデオに録画している。
防衛省地下3階、指揮指令所。
「立川統合幕僚長。3艦撃破確認。2艦が上陸します」
「市民の避難はどうなっている」
「30分前に警告を出しております。ですが・・・21時ですので老人子供など寝ている者も多いと思います」
「パトカーでも消防車でも構わん。すぐに起こして避難誘導してほしい」
「了解」
戦術オペレーターから報告。
「現在、新発田、第30普通科連隊、両津港到着30分後」
「第2普通科連隊は新潟空港に15分で到着」
「松島、小松からF-2とF-15DJが現地に向かっています。各ペイブウェイを搭載」
「だが、精密レーザー誘導は無理だぞ」
「GPS誘導で命中させると入電しています」「士気は高いか」
「民間人への配慮が一番だ、気を付けてくれ」
「連絡します」
防衛省地下3階、指揮指令所の中央スクリーンには、P-1からのビデオ映像が流れている。
「敵は軽戦車4両に兵士60名といった所でしょうか」
「民間人にとっては脅威だ、セオリー通りなら、まず橋頭保を作る筈。戦闘機による機関砲掃射で留められないか」
「連絡します」
「橋頭保内なら射撃も爆撃も許可する。なるべく民家等への被害は最小にする事」
「了解」
「陸自が到着するまでの30分留めておいて欲しい。頼む」
「小松F-15DJから攻撃許可求めています」
「逃げ込んだ森から出すなと指示。攻撃許可」
「了解」
「松島教導隊F-2Bから攻撃許可を求めています」
「同様」
副官が指示を代行する。
「了解」
真野湾。
ドルツ国上陸隊は長石海岸から50m進んだ森の中に集合している。
「固まるな、散会して上空の航空機をやり過ごせ」と上陸隊指揮官のウレタ副官が怒鳴る。
軽戦車も兵士も森に散会して出発の合図を待っている。
上空では甲高い音を出す航空機が複数機旋回しながら、少しでも見えると射撃を行う。
その為に、上陸隊兵士5名が犠牲になった。
F-15DJは赤外線カメラに切り替え、軽戦車を狙っている。
GPS座標入力が終わり、GBU-54を上空3000mから静かに切り離す。
防衛省地下3階、指揮指令所にパイロット達の交信が流れる。
「スコードローン。スターバスター1、タリホーアタック01」「スターバスター2、アタック01コピー」
「攻撃が始まります」
オペレーターから補足が入る。
「赤外線カメラにて計測。GPS座標入力。3000mで切り離しました」
「そうか。頼む」
「交代機のP-1が現地到着」
「至急赤外線動画撮影を指示」
「切り替えの間、赤外線画像は松島F-2Bから送られています」
「よし、中央スクリーンに出してくれ」
「だします」
黒い画面に点が動く。特に大きい点は軽戦車のエンジン熱なのか、移動はしていない様子。
「森に隠れているつもりか。チャンスだ、全ての軽戦車を撃破」
「撃破命令。松島F-2Bが爆撃コース入ります」
「松島01および02、アタックに入る」
「教導隊の教官たちです」
「松島01、アタックナウ」「松島02アタックナウ」
「先のF-15DJはGBU-54でしたが、松島F-2Bは91式爆弾用誘導装置を積み込んだMk.82 500ポンド爆弾を赤外線誘導で投下します」
「了解した。あそこの兵士が固まっている所もできるか」
「松島01ラジャー、セカンドアタック、コネクトナウ」
「攻撃許可する」
「松島01、アタック02ナウ」「松島02、アタック02ナウ」
森の中心部が大きく火を上げる。
ウレタ副官の傍で500ポンド爆弾が爆発する。
ウレタ上陸隊指揮官は空に舞い上がる。
「なってこった。隠れても意味が・・・」意識が途切れた。
F-15DJとF-2B、各2機の地上攻撃は爆弾が無くなるまで続き、上陸隊軽戦車4両撃破と兵士38名が死亡。
上陸隊を指揮していたウレタ副官も爆弾の直撃を受けて死亡してしまった。
ドルツ国上陸隊は残った人員で一斉に市内に走り込んだ。
指揮官が死亡しても指示は生きていた。
「日本国民を人質にして全国ニュースに出る事」これが目的であった。
今その目的達成の為に、各兵士が分散して走って市中に入ろうとしている。
だが、少しでも開けた所に出ると上空から機関砲で狙い撃ちされる。
「カメラを「スカイ・シー・アイ・06」に切り替えます」
「「スカイ・シー・アイ・04」は上陸隊を運んだ特殊潜水艦を撃破」
「これで特殊潜水艦は5艦やれたか」
「立川統合幕僚長。まだ最初の上陸隊を運んだ1艦が残っています」
「あの対馬に上陸させた奴か、必ず後続隊か物資を運んで戻る筈。警戒を厳となせ」
「了解」
その頃、TU-0001は九州から500海里の地点でドルツ国貨物船と合流して、物資を積み込み上陸本隊が待つ佐渡に向けて出発していた。
第12旅団、旅団長間宮陸将補は新潟空港近くの空き地に旅団本部を設営していた。
「ようやくか、状況はどうなっている」
「東部方面隊東部方面隊から戦術データと戦闘区域の様子をP-1が赤外線動画で流れています。
これによると軽戦車4両は大破。兵士約20名が散会して民家を占拠しています」
「して占拠された民家は何件だ」
「はい、情報によりますと3軒に対して6~7名が入っていると、民間人人質については情報が入っていません」
「現地にて確認しなければダメか」
「報告。第30普通科連隊両津港に到着します」
「よし、先着は第30普通科連隊だな。第2普通科連隊の到着はどうだ」
「C-2にてピストンしていますが、まだです」
「連隊本部と準備出来た中隊から現地に向かえと連絡」
・
「はっ第2普通科連隊の本部と第1中隊が出発しました」
「報告。第2普通科連隊偵察オートバイ現地到着。報告が入ります」
「・・・こちら第2普通科連隊、本部管理中隊偵察班です。現着。民家が並んでいますが、3軒から銃による反撃あり、特定できました。人質等については不明です」
「よし、よくやった。人質特定できるまで反撃は禁止、偵察のみを実施して特定して欲しい」
「2普本偵察班、了解」
「頼む人質いないでくれ」と旅団長間宮陸将補は声に出して祈っていた。
「第2普から警察及び消防に行き状況説明および避難所にて情報収集」
「2普-本が向かっています」
「こちら2普-本中隊、佐野3等陸佐。警察及び消防には非常線を設定し入らぬ様に協力要請。
更に避難所での情報収集には時間を要します。避難所5か所すべてに派遣しています」
「了解。ドルツ国が進軍して場合の阻止も頼む。ただし民家に被害は最小にして欲しい」
「了解」
とある避難所。
「あのー自衛隊さん。隣の「とらばぁ」がいないのですが、出る前に声をかけたのですが寝ているらしく返事がなく・・・」
「ご協力ありがとうございます。ところで「とらばぁさん」のご自宅は何処です」
住宅地図のコピーを出して印を付けさせた。幸いドルツ国兵士が占拠している住宅ではなかったが、逃げ遅れている様だった。
新潟空港近隣野営地。第12旅団本部。
「報告。2普-本から、当該戦闘区域に逃げ遅れている民間人あり」
「旅団本部了解。後続隊が到着までにマーキングして欲しい」
「了解」
避難所で第2普通科連隊、本部管理中隊が聞き取りした所、当該戦闘区域に5名の逃げ遅れが確認できた。
全て老人である。
まだ人質となっている人数も判明していない。
「旅団本部。第2普通科連隊本部、現地北1Kmにて本部設置完了。第1中隊と第2中隊が投入できます」
「まだまて」
「第30普通科連隊、対象西側に本部を設置します」
「了解した」
ドルツ国は長浜海岸から直ぐ近くの森林に潜んでいたが、赤外線攻撃を受けてから散会して西側30軒ほど民家が並ぶ地区に入り、3軒を占拠している。
「間宮陸将補、第2普通科連隊が500mで道路封鎖。北側にて圧力をかけています。
同じく第30普通科連隊は当該地区西側で全ての道路と橋を封鎖し、圧力かけています。
後続については東側に展開させる予定」
「了解した。住民情報は確定しないか」
「まだです。逃げ遅れ住人の内2名は2普-1(第1中隊)によって保護しています」
「了解、逃げ遅れの情報は5名だったな、まだ3名か・・・」
「マーキング情報が来ました。残留者3名。敵占拠住居。ここと、ここと、ここです。
「不味いな。咄嗟とはいえ北側道路を見渡せる住居と内部1軒と西側道路の1軒か・・よく訓練されている」
「ええ、2階で見張っているでしょうから、接近は困難です」
「しかたない。人質確認を最優先。小隊を出して逃げ遅れ民間人の確保。人質が判明するまでそれだけを実施。交戦は不許可。判明するまでまて」
「了解」
逃げ遅れ民間人の救出作戦が開始された。
「当壁総理至急の報告です」
「どうしました高野防衛大臣。例のドルツ国ですか」
「はい、上陸用特殊潜水艦を使用して佐渡に2個中隊が上陸しました。3艦は沈めたのですが、」
「そうか、残念だ。で人質はどうだ」
「はい、民間人の人質については現在調査しています。また、逃げ遅れた民間人も2名確保、のこり3名の救出を実施しています」
「そうか、国民に怪我をさせてはならない。ましてや殺害などあっては政権が持たない。頼むぞ」
「はい。全力でやっています」
「そうか。明日早朝に会見を設定するから、なにか進展があれば報告を入れて欲しい」
「了解しました」
「さっそく地下に行くからそちらに情報を頼む」
「はい、私は防衛省地下3階に入っています」
当壁総理は総理官邸の地下防災指令室に入る。
ありがとうございます。




