第148話 欺瞞情報
第148話の投稿です。
先遣上陸隊の本当の目的は・・いや本人達にも知らされていない作戦とは
上陸目前です。
防衛省地下3階、指揮指令所。
「急ぎ関係各隊は哨戒海域を拡大して、直ちに移動を開始して欲しい。
引き続き海自は対象海域での対潜警戒を実施」
「立川統幕長。現在富山湾を含め近隣海域を3機の対潜哨戒機で探索を行っていますが、それらしき反応はまだありません」
「焦るな、優秀な隊員達だ、ここは任せるしかないと思う。それよりも陸自は間に合うのか」
「はい、富山駐屯地から第382施設中隊中心による小銃小隊を編成して市内巡回を実施しております。
なお武器等は施設中隊に配備している物全てを用意しております。
また、富山市、氷見市、射水市、中滑川市、魚津市、および近隣の町、村など富山湾に面する全ての市町村に対して避難勧告と警察と共同の巡回体制を組んでおります」
「そうか、わかった」
「いつ上陸するのか情報がありせんので、最低でも48時間の警戒態勢を維持します」
「頼む。国民に犠牲者は出したくない。先の人質でも言ったが、国民に死者が出てしまえば、我々の負けだ。何としてでも・・・」
「統幕長。充分理解しております」
「そうだな。焦っているのは私の方だな。引き続きよろしく頼む。動きがあれば報告を、私は高野防衛大臣に報告してくる」
「了解。お任せください」
「頼むぞ」
それから立川統合幕僚長は、高野防衛大臣と合流して、総理官邸に報告に出向いた。
「それは大変です。高野防衛大臣。対応は出来るのですか。国民に犠牲など許されません」
「当壁総理。それがドルツ国の狙いだと思います。
攻撃力では我が国及ばない事を知っているとしか思われないですし、現に本国艦隊はアウトレンジ戦法による攻撃で壊滅的打撃を受けています。
それもドルツ国が読んでいたとすれば、次の手は日本国民に対してインパクトが大きい捨て身の作戦に移行すると情報分析班は推定していましたが・・・ドルツ国の損害は後戻りできない程に大きいと思います。
状況分析からすると自殺行為であると結論を出していましたが、どうやらその自殺行為を実施している様です」
「そうか、高野防衛大臣。死を覚悟した者は強いと聞く。防衛できるのかね」
「いや、当壁総理。お言葉ですが、防衛しないと、国民に犠牲者が出た時点で我々の負けだと自覚しております」
「そうだな。すまん高野防衛大臣。一番現実を知っているのは貴方だ。本当にすまない」
「いえ、当壁総理。頭をお上げください。我々も必死で防衛する覚悟ですので」
「よろしく頼む。国民の為。そして政権の為にも」
「ええ、心得ております」
「して本題に戻そう。情報は上陸した将校達から覗いたと言う事で宜しいのですね」
「はい、一人は少佐階位で、もう一人は中尉との事です」
「そうですか。その者達が上陸先遣隊なのですね」
「はい」
「ところで、ダークエルフが率いるドルツ国が日本の軍事力・・コホ。防衛力を正確に把握していたと先ほど言っていましたが、なら先遣隊が簡単に捕まる事も想定の範囲だとしたら・・・いや専門家はあなた達だ」
「総理ありがとうございます。先遣隊が欺瞞情報を齎せたら、我々は翻弄されます」
「立川統合幕僚長、どうですか」と高野。
「総理ご慧眼痛み入ります。早速富山に絞っていた対潜哨戒を拡大します」
「いや素人の意見だ。そちらで詳細に分析して欲しい」
「はい承知しました」
二人は防衛省に戻ってきた。
・
「立川統合幕僚長。頼みます」
「はい、「お任せ下さい」とは言えない状況ですが、最大限の対応を実施します。
ですが、ドルツ国の対日本作戦が隙が無い程に重ねて対処してくるとは・・
それに当壁総理の慧眼には恐れ入りました」
「総理は時として我々の想定の上を行く方です。戦略や戦術に対して素人だと思ってはいけません。
ここだと思う所では、本当に真理を見極めているのではないかと思う所があります。
おっと。ここだけの話と言う事でお願いします」
「はい。了解しています。ですが欺瞞とは盲点でした」
「いや当壁総理なりのひらめきだと思う。それがないと総理大臣に指名されないと言う事だな」
「政治の世界は苦手で、ですがありがたいです」
「では早速手配をお願いします」
「高野防衛大臣。暫くは地下に潜りますので、ご連絡は地下に直接お願いします」
「了解した。ですが体や家庭は壊れたら元には戻りません。大事にしてください」
「はい。ありがとうございます」
・・
ドルツ国特殊潜水艦内。
「シュケム司令。日本のラジオ波から日本語で「つしま」と連呼しております」
「ウレタ副官。上陸先遣隊が役目を果たしてくれたんだと思う事にしよう。さて、我々の番だな」
「司令。まもなく転進点となります」
「了解だ。予定通り転進して欲しい」
「はっ。航海長、転進点にて北西85度に転舵」
「了解」
・・
「転舵。北西85度。上陸地点まで4時間となりました」
「了解。日本の大きな島を占領するぞ」
「そうですね、実際の上陸地点は我々だけしか知らされていない。ダークエルフ様の知略には頭が下がる」
「ですが、決死隊です。今までに何人の兵士が亡くなったのかと思うと」
「そう言うな。我々は決死隊なのだ。それだけだ」
「ええ、他意はありません」
「今は日本に気づかれない様に祈るだけだ」
・・
防衛省地下3階、指揮指令所。総理の会談後に大忙しとなった。
「警戒を日本海側全域と太平洋側西日本以南に限定して哨戒を実施しています」
「了解だ。最初の上陸がワザと日本に欺瞞情報を掴ませる事が作戦趣旨だとすれば、我々は乗ってしまったことになる。今から建て直すぞ」
「了解しています。統幕長は少しお休みください。いざと言う時に不調では日本の防衛が持ちません」
「大丈夫だ。これでもレンジャー記章を受けた身だ。体力には自信がある」
「そうは言っても休める時にお休みください。我々と違って統幕長に交代要員はいないのですから」
「そうか。ではしばらく頼む」
「了解」
・・・
防衛省地下3階、指揮指令所
目が覚める緊急警報が鳴り響く。
「何事だ」と立川統合幕僚長が飛び起きる。
「はっ。海自厚木航空基地第3飛行隊から緊急連絡です。佐渡近海に敵潜水艦と思われる感あり」
「了解。地点は何処だ」
「佐渡、真野湾沖20Kmにて補足」
「そうか、上陸させるな。対処開始だ」
「了解。各潜水艦は着底している様子。磁気反応での対処です」
「機種はP-1か」
「はいP-1が発見しております」
「近隣駐屯地には空輸での輸送を指示。P-1には出来る限りの対処を指示」
「了解。対処指示出しました」
「厚木からの追加派遣は如何だ」
「現在の「スカイ・シー・アイ・04」は帰投する為に交代機が向かっています」
「そうか帰投直前に発見したか。上出来だ。佐渡空港にて給油手配を同時に頼む」
「はい。すでに給油許可が出ています」
「そうか、対処後給油して交代して欲しい」
「厚木から交代機とは別に3機あがりました」
「了解した。すぐに対処報告をさせて欲しい。上陸は阻止しろ」
「はい、12式短魚雷12本と対潜爆弾を装備しています」
・・
佐渡真野湾海底。
「司令。海上から突発音。爆雷・・いや推進音。魚雷です」
「なに、上陸時間だと言うのに見つかったか。損害は無視して直ちに上陸開始」
上陸旗艦UT-0002「シュゲール」は着底状態からの急速浮上して深度30mでの最大速度に移る。
「司令。0004が撃破されました。海域は混乱により探知限界に来ております」
「構わん。上陸を優先」
「各艦従っています」
「行け行け。ここで沈められるわけにはいかない」
「機関長行けるか」
「バッテリーは大丈夫ですが、上陸手配の後に戻るには充電が必要です」
「いやディーゼルの直接続で後退させよ。もう見つかっておるのだ、これ以上悪くなることはあるまい」
「了解」
ドルツ国特殊潜水艦5艦は1艦が着底時に撃破され、残る4艦にて上陸すべく真野湾に向かっている。
夜の21時、佐渡島真野湾に「ズズー」と金属が擦れ合うような、いやな音が響く。
・・
「「スカイ・シー・アイ・04」から報告。1艦大破。海上の油を確認。残る上陸艦は4艦と思われる。引き続き対処を継続」
「まだ1艦か・・頼む」
「周辺海域での磁気が乱れています。分析に時間を・・」
「上陸阻止が先だ」
「はい」
「新発田駐屯地、第30普通科連隊がフェリーをチャーターし両津港に向かいます。
また、入間からC-2が新潟空港に向かい、高田駐屯地第2普通科連隊を乗せ佐渡に向かいます」
相互協力契約により、佐渡に有事があればフェリーがチャーター出来る。
「了解した。現地指揮は第12旅団に任せる」
「了解です。旅団本部新潟空港に移動しています」
「第12飛行隊がCH-47JA、4機で移送を開始します。また、UH-60J、8機による支援に上がります。途中新潟での給油となります」
「相手は軽戦車だ、速度の出る車両と01(ひとまる)で包囲網を形成して欲しい。ヘリコによる上空支援は必須だ、頼む」
「旅団本部に連絡済み」
上陸地点が判明した事で対処が可能となったが、ドルツ国の知略に翻弄されている日本国である。
関越高速道路をサイレンを鳴らした第12旅団本部が北群馬から新潟市内に向けて移動している。
民間人に犠牲者など出してはならないと、大いなる決意の元に速やかに移動している。
もちろん、すでに佐渡市全域に避難勧告が発令されているが、夜21時であり混乱も起こり始めている。
ありがとうございました。
投稿遅くなりました。水曜日に時間があれば続きを投稿する予定です。