第139話 情報
第139話を投稿します。
ドルツ国の兵士達から貴重な情報を得られたようです。
新潟駅に着いたナナは元の南口、現在は東口となっているタクシー乗り場付近まで歩いていた。
「ナナさーん」元気に手を振る若い隊員が見えた。
あんなに手を振って、気づかれて・・・もう遅かった。
ホテルや駅前ショッピングモールから人が集まってくる。
こんな時、逃げると追いかけられるのを経験で知っている。
「みっみなさん、落ち着いてください」
「ハイエルフさんですか・・えーと」「ナナ」です。
「ナナさんファンです。握手して貰えますか」名前も解らないのに・・・
「良いですけど、怪我しない様に並んで頂けます」
「はーい」たちまち新潟駅の広場に60人以上の行列ができていた。
何事かと新潟県警駅前交番から警官が3名も走って来た。
交番は駅の反対側である。同時に笹口交番からも2名が走って来た。こちら側の方が近いのだが、建物を迂回しなければならない為に距離は同じ程度であった。
「はぁはぁはぁ、何事ですか。はぁはぁ」
「すいません。新潟に来ましたら囲まれてしまいました」
「あっハイエルフの・・・」「ナナです」
「すいません。人気だとは知っていましたが。皆さん同じ様なお顔で爺には区別が・・」
「あっ慣れていますから大丈夫です。それよりお迎えが来るのですが、さっき見つけましたが人で隠れて・・・あっいました」
「解散させましょうか」
「新潟に来るの始めですから、皆さんもお会いしたいと思うので」
「そうですか、では整列させますので、お願いします」
「はい並んで、特別にハイエルフのナナさんが握手してくださるそうだ」
ナナは「クス」と笑う。
中々に呑気な警察である。東京なら即解散なのに、整列迄してくれている。
一人10秒で15分もかかり、最後に警官全員と握手した。
「やばい、手洗えない」若い警察官が言っている。
それを見て、また「クス」とナナは笑う。
「ナナさんやっと解放されましたか、一抹の不安はあったのですが・・・なんにしろ新潟に有名人はあまり来ませんから。どうぞお乗りください」
ナナは見慣れた高機動車の助手席に慣れた感じで座った。後ろの席にも3名が座っている。
後ろで何か無線に話している。
「この疾風特別車だな。連隊長の許可もらってハイエルフシール貼っておこう」
「いや怒られるだろ」
ナナは、また「クス」と笑う。
一番年上と思う自衛隊員が言う。
「お忙しいところすいません。実は捕らえたドルツ国兵士を拘束して監禁しているのですが、ドルツ語が解らない物でお願いした次第です」
「そうなんですよ、ドルツだからドイツ語に近いのかなと思ったのですが、全然違う言語でした。
我々では尋問できなくて・・」
「はい、外務省からも状況は聞いております。その兵士達を尋問すればよろしいのでしょうか」
「ぜひお願いします。詳しくは本間連隊長にお願いします」
「はい、わかりました」
新潟市街から新発田市に抜けて、新発田駐屯地に到着した。
早速玄関で、本間連隊長が待っていた。
「お待ちしておりました」
「まぁ偉い方なのに・・初めましてナナです」
「あっいや、噂には聞いていたのですがお美しい。どうぞこちらに」
「連隊長、ハイエルフのナナさんが乗られた疾風にハイエルフシール貼っても宜しいですか」
「よろしい、ただし内部の目立たない所だぞ」「やったー」
「ハイエルフさんは有名人ですからね隊員達も喜んでいます」
「はぁ」
「ところで仕事の話ですが、車内で説明があったと思いますが、先日村上市の海岸に上陸したドルツ兵達を捕らえまして、言葉が通じないのと、騒ぐので自殺の可能性もあり、猿ぐつわで拘束しています。
尋問大丈夫でしょうか」
「直接、考えている事を読みますので拘束していた方が楽です。相手が抵抗する場合があるので」
「そうですか。凄いですな」
「気を付けてください、ドルツ国にはダークエルフが居ます。捕まれば同じように考えを読まれてしまいます」
「十分気を付けます」
・・
「ではこちらの部屋に1人ずつ入れます」
「では連れてきます」別の自衛隊員が去っていく。
「準備は宜しいですか、書記官も入れますのでよろしくお願いします。この模様はビデオ録画と中継をしています」
「構いません」
「では中継と録画スタート。電話します」
「はい、本間です。今から始めます。はい、よろしくお願いします」
こうして中継画像と音声は、第12旅団本部と東部方面総監部、そして防衛省地下の指令指揮所にも流される。
やがて一人目が連れてこられる。拘束はしているのだが、両足、両腕に包帯を巻いて戦闘服は一部を破いて治療した事が伺える様子でストレッチャに縛られている。相当暴れたのだろう。
「ナナさん一人目です。新人兵士らしく先に海側に一人で歩いて離脱していました」
「はい、・・・・海で明日1600に沖合300m付近で合流予定。・・潜水艦。・・日本に関する情報の持ち帰り、なにでも良い・・できれば民家を襲って地図とか本とか入手したい・・日本語の解読も使命・・失敗した場合は自害を・・爆死ですか・・・危ないですね。・・・ダークエルフからの命令・・命令は絶対・・また時を止めると脅かされ・・・作戦は失敗・・・捕らえられるのも誤算。ドルツ国の最新小銃を配給・・・爆薬も最新の手りゅう弾型・・糧食も試作品・・・」
「ふぅ、この方はこの程度ですね」
指揮指令所ではP-3Cを当該海域への派遣で大騒ぎであった。
それからしばらく画像を見ていた立川統合幕僚長は、一行の隊長と思われる者から重要な情報を得る事となった。
1.ダークエルフはハイエルフがいる日本に攻撃を命令。命令は絶対である。攻撃意図は知らされていない。
2.ドルツ国は重工業国で、戦車や戦艦、大砲は30cm級までも作れる技術力がある。
3.ドルツ国の技術は、他国持ち出しをダークエルフにより禁止されている。よって古代遺跡に残る古代兵器はドルツ国の物を模倣した偽物である。
4.ドルツ国が保有する兵器類はハイエルフが教えた物と同じである。
5.ドルツ国は日本に奇襲的上陸作戦を予定している。その為の事前潜入であり日本の地理や文化に軍隊の規模と兵器類を知りたかった。
6.ドルツ国の住人は約1億人。高層住宅や車もバスもある。
7.そして肝心の上陸作戦は、内容は高官にしか知らされていない。場所も日時も・・
8.ドルツ国陸軍は約60万人、海軍は20万人、空軍は6万人。軍隊は全て国防軍、親衛隊等はない。陸軍は装甲師団化され、海軍は空母を建造中、レーダーについては試作が完成している。
9.潜入部隊は6名。第1特殊戦闘隊第1特殊潜入班。
「立川統合幕僚長。これは・・大変な事になりました」
「高野防衛大臣に直ぐに連絡。至急ここに来てもらって欲しい」
「了解。連絡します」
・・
「何事ですか統幕長」
「高野大臣、大変なことになりました。ダークエルフは交戦を命令して、日本へのドルツ国上陸を狙っています。ただし作戦内容は高官にしか知らされていないと言う事です」
「なに、上陸だと・・日本が戦場になるのか」
「水際防衛しますが、どこから上陸するのか不明です」
「しかも・・ドーザ大陸で1個方面隊を取られていますから、残った我々で防衛をしないといけません」
「それは防御が薄くなることだと判断して良いのですか」
「はい現状は」
「して特別防衛予算によって作成した武器、兵器類はどうしたのです」
「兵器類は最新式に変更しています。順次ですが。武器類外国製を国産に切り替えています」
「そうか、して日本の防衛力はドルツ国に勝てるのか」
「大臣それはなんとも、特別な兵器などが無ければ良いのですが。特にドイツでは原爆も開発していましたし、それにV2の様な大陸間弾道弾となる物の開発も進んでいると見ています」
「例のハイエルフが言う神の知識ですか」
「その通りです。もし大陸間弾道弾を使われるとある程度防御兵器が限られてきます」
「そうか、だが国民を守るのは自衛隊しかいないのであるから、防御は穴の無い様にしなくてはならない」
「ええ、2020年に防衛白書を刷新して、ある程度の大陸間弾道弾の追撃が可能とはなりましたが、数が問題です。イージスアショアについては今だに実現しておりません」
「この世界に転移してからすっかり忘れていた。してドルツ国がV2を使う可能性はあるのか」
「それも推測になりますが、上陸作戦を取るのであれば、陽動の為に撃ちこむはずだと分析しています」
「つまり、他目的に目をそらさせて上陸は違う場所と言う意味ですか」
「我々が上陸作戦を行う場合をシミュレーションしました。ドルツの武器を想定して」
「で結果は」
「はい、上陸を許してしまう確率が67%と出ました」
「それは・・国民に犠牲者が出てしまう結果になる」
「ええ、現在AIを駆使して上陸地点と上陸規模をシミュレートしていますが、不確定要素が多く難航しております。いろいろ要素を変化させていますが、決定的な物はまだです」
「ですが立川統合幕僚長。揚陸船とか発見できれば対処も可能なのではと思うが」
「はい、それなら哨戒で発見も出来ると思いますが・・・そんな簡単な手を使うと思わないのですが」
「だけど他には手がないのではないですか」
「ええ、実はシミュレートには武器兵器開発も入れて考えています。核兵器開発も」
「それは・・・」
「ええ、実際には今はそんな兵器はありませんが、シミュレートでは可能性ありと出ています」
「だが、ドルツ国には戦艦もあると聞く、なら空母もあるのでは、航空兵力を集中してくれば大都市でも揚陸できそうだが」
「いろいろ考えられます。そして防衛する側としての対処として、P-3Cによる沿海哨戒とE767による24時間監視ですね。衛星もドルツ国だけでなくこの地球全てを探査しています」
「ドルツ国の目的が我が国だと言うなら、直接向かってくるのだろうか、アトラム王国やドーザ大陸を人質に取られると不味いと思うが」
「それは一番危惧する問題です」
「アトラム王国には警告を出していますが、王国の戦闘力では持ちこたえられないと判断しています。
反対にドーザ大陸ならドーザ方面隊がいますのである程度は対処できると考えています」
「うーん。多発的同時上陸と言う線はありませんか」
「兵力の分散になるので好ましくありません」
「そうですか、どちらにしろ、前回ハイエルフ族長の話は総理にも伝えています。今回も伝えます」
「高野防衛大臣、よろしくお願いします」
こうして日本の防衛強化の方針が承認され、日本近海の哨戒とレーダーによる監視は本日より24時間体制で行われた。
新潟県村上市沖に潜入兵士回収の為に来た潜水艦は発見されると同時に逃走を図り、貴重な日本の潜水艦探知能力がドルツ国に知られる事となった。
なお、ドルツ国潜水艦が発した中波信号は、佐渡の第46警戒隊が傍受しており信号は記録されていた。
ただし、暗号で作られており、解読はできていない。ドルツ語をAIが学習して解析を始めればわかる物と思われた。
一方、新発田駐屯地では
「ナナさんお疲れさまでした。異例ではありますが、兵員食堂にて歓迎会を開きたいと思います。ご参加いただけますか?」
「はい、3日間はこちらに泊まりますので大丈夫ですよ」
「では早速呼集かけます」
新発田駐屯地にサイレンが響く。「本日は東京よりナナさんが当駐屯地に来て頂いた。本日は歓迎会を開催する。参加できる者は参加をするように。以上だ」
非番の者が隊員食堂に集まってくる。
「おお、本当にハイエルフさんだ」「始めて会えた」「後で握手して貰おう」「うぉー明日からの訓練頑張れる」「哨戒でなくて良かった」
考えが素直に言葉に出ていて、ナナは笑ってしまった。
「本間連隊長、顔が赤いであります」
「ばか言え。本当か」
「本当であります。ははは」みんな仲が良い。
酒は出ないがケーキとジュースで宴会は盛り上がった。
ナナも楽しいひと時を過ごしていた。
ありがとうございました。
新潟でもナナさん有名人でほっこりしました。




