第13話 ハイエルフ (改)
いつもありがとうございます。
すこしファンタジー要素が出てきたみたいです。
2020/05/29改訂
日時は2022年4月21日昼12時、海上自衛隊佐世保基地に停泊している護衛艦に、外務省からの役人が乗り込んだ。
これは岩国基地から南西1,000kmの方向に大きい島影が発見され、人らしきものが生活している様なので、意思疎通できる事なら交渉を行うことが目的である。
佐世保基地より第2護衛隊DDH-182「いせ」(ヘリコプター搭載護衛艦ではあるが耐熱加工改修を行いF-35を4機搭載ほかは陸上自衛隊からコブラAH-1Sを2機借り受けていた)、DDG-178「あしがら」、DD-102「はるさめ」、DD-119「あさひ」に加え、佐世保基地所属の旧式艦、第13護衛隊DD-132「あさゆき」、DD-157「さわぎり」を併せて艦隊編成とし、外交団を結成したのである。他の艦艇は対海中大型生物監視を継続している。
13時となり、外交交渉団は約1,000Km先の島へ向けて出港した。
・・
4月20日午後3時頃、第1偵察小隊と別れた第3偵察小隊は、指定ルートに戻り、施設作業車により森林を切り開いていた。夜になり、進行を停止して交代仮眠に入った。
幾度か日中に『いのししもどき』の突進を受けたが、夜になってからはほとんど来ていない。まるで日中しか行動しない特性の様だ。
それとも、生息域を抜けたのかもしれないと小隊長は思った。
日が昇り、3回目の給油をしていた。早朝、無線により第1偵察小隊が夜間に襲われたとの連絡を受けたが、こちらはまだ平和であった。
そして第3偵察小隊は残り100km程度で山の麓まで行ける予定であった。
小隊長は少し油断をしていた。
いままで中型生物ばかりで、『いのししもどき』や『しかもどき』「しか」は色がヒョウ柄で派手であった。これらは施設作業車に突進するか逃げるかで進行の邪魔にはなってない。
確かに毒蛇や危険生物もいるのだろうが、現在までのところ何も問題はなかった。
なにしろ施設作業車の走破威力は「すごい」の一言であった。
給油を終えて出発後1時間近くしてから、施設作業車の前方に黒い何かが立ち上がった。立ち上がると5m程度の高さが確認された。
だが施設作業車に乗っている射手が3発、バースト切り(12.7mm重機関銃M2はセレクターが単発か連射しかない、そこで連射を3発だけ撃ち、素早くトリガーから指を離す事をバースト切りと偵察隊では呼んでいる)を行いあっけなく片付けた。他にも2頭が同じように現れたが、12.7mm重機関銃M2は非常に有効だった。「やはり森も奥地となると大型獣が現れるか」と小隊長。
その時、
(とまれおまえたち)
と頭の中に響いてきた。強いめまいも起きる。
(ここはわれわれのすむところ、たちいりはみとめない)
小隊長は高機動車内の他の隊員を見た。自分だけが聞こえているのかと思ったからだ。ほかの隊員も呆然としている。
小隊長はどうやってコミュニケーションをとろうか考えた。
(そこのおさひきかえせ)
考えが聞こえているか!
小隊長は無線で指示した。「全車停止、全周警戒、待機」
無線をつないだまま言葉にした。
「あなた方の領域に踏み込んだ無礼は謝ります。おしえてください」
(そなたたちにおしえることはない)
「私たちは、なにかの力で国ごと違う場所にとんできてしまいました。なにかご存じではないですか」
(なんにちかまえ、いやなしんどうをかんじた。おまえたちであったか)
少し間が開いて
(おまえたちには、かんしゃもしている)
「どういう事ですか」
(おまえたちは、もりのあくまをたいじした)
「森の悪魔とは何ですか?」
(ドラフマという、さきほどたおした、まものだ)
「先ほどのおおきな『くま』ですね」
(くまというものは、しらないがわれわれは、あくまのドラフマとよんでいる。われわれのなかまが、なんにんもたべられた)
小隊長は話をかえた。
「ここはあなた方の国ですか」
(くにではない、にげてきてここにすんでいる)
小隊長は不思議な状況にもかかわらず、受け入れていた。
「われわれは、ただ国がないか調査していたのです。よろしければお互いに話をしませんか。しりたいこと、いや知らないことばかりですから」
(・・・・・わかりました、そのまますすめ)
無線マイクに向かって「全車時速10kmで前へ」
再び施設作業車がうなりをあげ、前進した。
そこから10kmほど進んだ。
木々の間からかすかだが、森林の中に広場が見えた。
(そこでとまれ)
広場の手前500mで停止した。
(おさはあるいてこい)
小隊長は部下に本部へ無線にて状況を連絡するように指示。
P220のみ持って歩いていく。小隊無線はONのままだ。
広場に女性が立っていた。長い銀の髪に良いスタイル。8等身である。どこかの人形なのか。
さきほどよりは弱い思念で(あなたがたのことばは、はつおんできません)
(このままつづけます)
「この村の名前はありますか?」
(われわれは、はくがいうけてにげているみ、おってがきたらにげる。あなたがたを、おってとおもったが、ちがうようだとすぐわかった)
「われわれは日本という国の自衛隊。ここ謎の大地を調査しに来ました。貴方がたは何から逃げているのですか」
(われわれは山の西、チロルの森に住んでいた、ハイエルフと呼ばれる種族。
ある日、帝国と名乗る軍隊が村を包囲して、奴隷を差し出せと言ってきた。
われわれは過去も迫害を受け、チロルの森に移り住んだ。だから翌日返答をすると言い、地下道から全員で逃げた)
「ここは6,000m級の山が西にありますが」
(にげる為に普段より渡れる道を作っていた)
「それでも山越えは大変なはず」
(つかまって奴隷ならまだ良い、つかまり「心の臓」を薬として取り出すこともあいつらやる)
「それはひどい。ひどすぎる。人権を無視する『帝国』と名乗る国があるのですね」
(そうだ、やつらは有無を言わさず人間なら奴隷、獣人なら虐殺、エルフやハイエルフは需要があるから生け捕り)
「その『帝国』についておしえてください」
(やつらは最初このドーザ大陸にいなかった。どこからか船でやってきて、国をいくつか滅ぼし『帝国』と言う国を作った。
なんという『帝国』なのか知りたくもない)
「なるほど危険な存在なのですね」
(やつらはそれでこの大陸の西を全て征服していった。我々ハイエルフは強い思念が使えるので逃げられた。次はだめだろうとおもう)
「私たちは日本国としてこの山に興味を持っています。あなた方の村を迂回して山の麓まで行きたいのですがよろしいですか。もし他に害獣がいるのなら駆除します」
(やまの麓に大きな獣が住んでいる。われわれも何人か食べられた)
「わかりました村を迂回して麓までいきます、大型獣への道案内を頼めますか」
(娘に案内させる)
「お聞きしますが、あなたのお名前はなんと言いますか。娘さんも」
(私はハイエルフの長、娘は娘。思念で会話できるからなまえはない)
「失礼ですが娘さんの道案内はうれしいですが、「危険」なのではないですか」
(われわれのことをしんぱいするのか、そんな人間に久しぶりに会った)
(・・400年ぶりだ)
「えっ」400年前なら一体いくつだろうと思ってしまった。
(われは513年生きている)
「すいません。女性に年を聞いてしまうなんて本当にすいません」
(おもしろい奴だな、気にするな)
「その、娘さんも思念は使えるのですか?」
(弱いが、ハイエルフ全てが思念を使える。わたしがいちばん強いので、族長となっている)
「向こうにかわいらしいエルフが見えましたが娘さんですか」
(こっちきなさい。聞いていた通りこの人たちを山の魔獣へと案内をしなさい)
小隊長は「よろしくお願いします」と言うと、ハイエルフの娘はにっこりわらった。
「日本ならトップアイドルになれるな」と思った。
(アイドルってなんですの)娘の思念だ。
「やばっ」声に出ていた。笑われた。
「娘さんは指揮車の後ろに乗車してください」娘は高機動車の後ろにちょこんと座ってキョロキョロしている。
「珍しいとは思いますが、触らないでくださいね。ドラフマを倒す程の力ですからね」
小隊長はノリが良くなった。
無線で状況を連絡して、村に協力する意味で害獣駆除を行う事に了承を求めた。
そんな強力な害獣なら宗谷岬臨時分屯所が襲われないとも限らないので、許可がでた。
娘さんの案内で森を迂回して山の麓まできて、全車停止の上、遅い昼食をとった。もちろん娘さんにも渡したが、白飯だけ食べていた。他は匂いがダメなようである。白飯は少し塩分を含んでいるので、味があるのだ。
少し狭い山道を施設作業車で切り開きながら進む。
(あの上)娘が言う。
「全車停止、装備点検、戦闘用意、01式軽対戦車誘導弾も準備」
01式軽対戦車誘導弾は赤外線追尾式の対戦車ミサイルであり、携行でき、対象物をマークすると熱源を追って行くので、撃ちっぱなしができる。
短距離で低空低速でなら対空火器としても使用できる。『ドラゴン』にも有効な武器であった。
指揮車から乗り出し、小隊長は8倍双眼鏡で対象物を下から見上げた。
なんとドラフマを5倍にしたような獣であった。他の獣との比較ができない。
何しろ高さ15m、全長(4つ足で)25mの化け物だった。
「全員下車、散開し、下方よりアプローチ、01式軽対戦車誘導弾を準備」下からはつらいな。つぶやく。
「5名01式軽対戦車誘導弾を持ち対象物上にアプローチしろ。下から先に引き付ける」
だめなら施設作業車を前進させて、陰から01式軽対戦車誘導弾を撃ち続けるつもりである。
本部への無線通信と航空自衛隊の要請も行った。
一部が稚内空港に転進しているのでF-15JとF-2は第3偵察小隊から約400kmの位置にいた。
偵察本部はF-2による空爆を稚内空港航空自衛隊特別基地に要請をした。
航空自衛隊は対地攻撃の有効な手段を持っていなかったが、陸上自衛隊の戦闘ヘリでは遅いので、前から開発していた、旧式である80式空対艦誘導弾のプログラムを変えて、純粋に目標をセミアクティブレーダーホーミングにより追尾破壊する様に変えていた。
対地攻撃が必要な航空自衛隊稚内臨時基地に運び入れていた。航空自衛隊装備研究所の作成であるが試験はしていない。
複雑なプログラムを単純なアルゴリズムに変えるだけなので、実は次元転移する前から密かに作っていた物である。
稚内空港より2機のF-2が80式空対艦誘導弾(改)を1機4基、計8基を持って飛び立った。15分後の到着予定である。
小隊長は娘に聞いた。「あれはなんと言う獣?」
(山の悪魔、「トメス」)なるほど。
森の悪魔に山の悪魔か、『ドラゴン』はなんて言うのだろう。
すかさず(空の悪魔)うえ、しまった。姿の脳内映像を見られた。
後続の73式中型トラックから偵察用オートバイを2台降ろし、マーカーを準備させる。
色付きの発煙筒で、黄色と赤で侵入経路を指示する為に、偵察用オートバイにて少し戻りセットさせる。
第3偵察小隊の位置は青である。近づきすぎている為に誤爆を防ぐ目的である。
遠くからジェット機音が聞こえた。
さて対象の脅威判定をするか、最初は施設作業車の12.7mm重機関銃である。
距離は500mと十分威力範囲内だ、だめなら01式軽対戦車誘導弾を最初1基、次は4基同時攻撃である。それでもだめなら下と上から同時攻撃だ。
時間が過ぎていく、対処合図はF-2からのアプローチ無線である。
対象物を確認して、旋回してからの攻撃となる。
アプローチ開始の無線と共に第3偵察小隊の攻撃開始、近づいてくれば足を狙って01式軽対戦車誘導弾を撃つしかない。時間は迫っていた。
ハイエルフお会いしたいものです。
この作中の自衛隊の方々、政治家の方々は皆さん「まじめ」な方々です他分。