第134話 緊急事態 その2
第134話投稿します。
皇帝とダークエルフが接近。なにかあるのでしょうか。
ドラゴンの波状攻撃に大ウミヘビ対処と大忙しです。
皇帝はとりあえず1日の仕事・・と言ってもいろいろ質問に答えるだけであったが。
終わってからホテルに送ってもらい、食事して風呂に入る。必要な物は一通りそろっている。
「すごいな、帝都の宿泊所でもこれほどの内容は無いな。
豪華であるがある部分はそれを強調しすぎない様に洗練されている。
特にこの洗顔所はどうだ、黒で統一されている。
置かれた白いタオルとのコントラスト・・凄い。
帝都は、皇帝宮は、高級貴族は金、中級は銀、低級は銅、平民は土と色分けされていたが、ここは、このホテルはそんな事は無いが、高級感を漂わせている。
これが高貴であるとの主張か。我々はお子様だな、トルフェイにも見せたいものだ」
言ってから皇帝は妃が東京の何処にいるのかも聞いてない事にびっくりした。
「まっ同じ東京だし、いつかは会えるか」
と言いながら寝る支度を始める。女中もいない中で皇帝は一人で風呂に入り歯を磨き、ベッドに横たわる。
「平凡だが、良い一日である」と呟きながら寝てしまう。
皇帝は帝都での夢を見た。黄金色の皇帝宮に着飾った貴族に女中の多さ、元々平民出身の皇帝には居づらい場所であったが、威厳を保つためにそこに皇帝はいた。
夢で問いかけられる。「お前は平民のくせになぜそこにいる」「平民なら貧しい村に帰れ」「お前は皇帝が務まるのか」「お前は・・・」
毎晩見る夢と同じであった。
だが今日は・・・「お前は平民に戻った」「お前は人の痛みを思い出した」「お前は人として大切な物を取り戻した」「お前は皇帝ではない」「安心して眠れ」
夢の中でも平穏が訪れていた。「神よ、いるならわが心を救ってくれ」と夢の中で祈りを捧げた。
実力主義で神を信じない皇帝が日本で、東京で、夢で神に祈りを捧げる。
夢の中のもう一人の自分が、祈る姿を見て「なんと醜悪な事よの、お前の願いは届かない。無駄だ」
と否定してくる。「もうたくさんだ、平穏な心を返してくれ」とまた祈る。
皇帝は魘され夜中に起きてしまった。
「なんとも嫌な夢を見た」皇帝は応接がある部屋の冷蔵庫を開けてピュアウォーターを取り出すとキャップを開けて飲み干した。
ふと嫌な気配が窓に映る。
『お前の仕事は終わった、これからは我らの番だ。ご苦労。』頭に響く。
・・はっハイエルフ・・・いや違う、この禍々しい感覚・・ダークエルフか。
「はははははははははは」笑いながら思念の相手はいなくなった。
皇帝はたった今水を飲みほしたのに、もう額に汗・・冷や汗が頬をつたう。
「ダークエルフ・・邪神の使徒・・・こんなものまでいるのか東京は・・・」
皇帝の生まれた島の言い伝えでは、この世の終わりにダークエルフが現れ、全てを「無にする」と言われている。
そんなダークエルフの思念波動は禍々しく、並みの人であれば気が狂う程だと聞いている。
もう皇帝は眠れなかった。
翌日、また外務省担当官はやって来た。
「皇帝おはようございます。今日は極秘で首相にお会い頂きます。お支度をお願いします」
と言いながら担当官はスーツ・靴・ワイシャツなど一式を取り出し皇帝に渡す。
「霞が関はこの方が目立たないのでお願いします」
一瞬、担当官にダークエルフの話をと思ったが、気を取り直して「解った支度する」とだけ言い、着替える。
外国人のビジネスマン風になった皇帝はホテル玄関に着けられたハイヤーに乗りこむ。
「お体悪いところありますか、顔色が優れないようですが」「いや大丈夫だ」
「そうですか。車慣れましたか。シートベルトをお願いします」と先に乗りこんだ担当官が指示する。
「うむ。これで良いか」「はい」と言うと出発した。
行き先は外務省庁舎の裏口である。表は担当記者が詰めていて騒ぎになるので裏から建物に入る。
エレベーターで7階のボタンを押すと担当者は「昨日はよく眠れましたか」と皇帝の見た夢の続きかと思う程の質問を、いや世間話を振って来た。
「ああ、よく眠れた。設備も一流で心地よい」と答える。眠れていないのに・・・
外務省では当壁総理と佐藤外務大臣が待っていた。
「お待ちしておりました。良く似合いますね、これであなたが皇帝だと思う方はいらっしゃらないと思います」
「そうか、着慣れないので落ち着かない」
「ではこちらにお座りください」
「すべては日本に任せている。これ以上儂を必要とする事は無いと思うが」
「確かに皇帝印もお預かりしました。錫杖も。ですがどこでも回帰派と言う物はいます。女神教をドーザ大陸から一掃したと思っていらっしゃる筈。しかし我々の調査で原理主義派が女神教回帰派が地下で活動をしています。
お解りだろうと思いますが、皇帝復帰を望む貴族や商人もいるでしょう。だから日本に招待をいたしました」と佐藤外務大臣。
「そんな輩がいるのか」
「ええ、どの世界でも必ずいます。まして帝国が形を変えていく現在、皇帝擁護派は勢力を拡大しなければジリ貧になります。それを食い止めるには皇帝を保護して皇帝復活を宣言するしかないのです」
「そうか、だが儂はもう面倒なだけだ」
「そのお心など彼らにはどうでも良いのでしょう。形さえあれば」
「人形か・・・今でも心を無くしていると言うのに」
「いえ、日本は民主国家です。皇帝に何かを無理にさせると言う事は、われわれの主義に反します」
「そうか」
「先ほどからお顔の色が悪い様に見えます。病気などですか」当壁総理。
「いや、大丈夫と思う」
「そうですか、でしたら本日お話に付き合って頂いて、明日はお休みといたしましょう。長旅でお疲れですし、休めないと思いますので、その様に手配します」
「左様であるか」
「やはり元気がないですね」
・・・・
「首相、こちらでしたか。官邸に至急お戻りください」
「なにか」
「ドラゴンアラートが発令されました」
「よしすぐ行く、佐藤外務大臣後を頼む」
「畏まりました」
「日本の大将軍も忙しいのだな」
「大将軍ですか、間違いないですが」
「続けましょう。我々のお願いなのですが、帝国再建を叫ぶ奴らに耳を貸さないでいただきたい。
それに、いろいろな人物が接近を試みるでしょう。これも我々が極力排除しますが、もし接触した場合には話を聞かない様にお願いします」
「そんな事、もう面倒事は頼まれてもやらん」
「ええ、それで結構です。その為にはガリルさんに東京に住んで頂いて、簡単な仕事をお願いしたいのです。よろしいですか」
「まぁドーザ大陸に戻っても儂の場所は無いから好きにせい」
「ええ、それに先に日本が保護しているスフィーナさんとソフィアさん共に暮らせますよ」
「妃と王女とも暮らせるのか。それは嬉しいぞ」
「ええ、お二人とも在日外国人として仕事をしています。スフィーナさんは日本語を勉強されて、大陸語と日本語の翻訳を、ソフィアさんは昼間花屋の仕事して夜間大学で学んでいます。お二人とも元気です」
「そうか、二人とも仕事しているか、ソフィアは昔から花好きで勉強熱心であった。そうか・・・」
「ええ、そのお二人とも暮らせます。ガリルさんも後3日いろいろお話を聞かせて頂ければお二人と再会できます」
「おお、そうか」
「ええその様に手配します。一つだけ、お二人には危険人物が近寄らない様にトルミスさん、ルルアミさんと名前を変えて頂いております。皇帝も偽名を使います」
「儂にか」
「ええ、帝国で比較的多い名前である、トーマスなんて如何でしょう」
「トーマス・・確かに帝国では多い名前だな」
「ではトーマスさんとして登録します。家名は先にトルミスさん、ルルアミさんにフレムと言う家名を付けさせていただきました。なのでトーマス・フレムさんとなります」
「うむ解った」
「ではこれで手続きしますね。本日はお顔色も悪いのでここまでといたしましょう」
「そうか助かる。ところで佐藤外務大臣はハイエルフに合ったかね」
「ええお嬢さん達を日本にご招待したのは外務省ですので、お会いしてしています」
「そうか、ハイエルフと連絡が取れるならダークエルフの事を聞いてみると良い」
「ダークエルフですか・・ハイエルフとは違うのですね」
「そうだダークエルフだ」
「どう言う・・」「ハイエルフに聞いたのちに答える。それで勘弁してほしい」
「お顔色が優れない事に関係しているのでね。解りました。聞いてみます」
「一つだけ話して置こう、儂の故郷の島では、ダークエルフが現れると災害が起き、全てが「無」となるとの言い伝えがある」
「皇帝のお生まれは、たしかミルダ島でしたね」
「そうだ、島々では同様な言い伝えが残っている」
佐藤外務大臣ははっとした。「昨夜見たとかですか・・」「そうだ、はっきりとはしないが禍々しい思念であった」
「ダークエルフもハイエルフさん達同様に思念が使えるのですね」
「そうらしい。我々に詳しい話は残っていない。なのでハイエルフに確認をして欲しい」
「そういう事でしたら直ぐに確認します」
皇帝は最初何でもなかったが、次第に頭が痛くなってきてた。
今は割れんばかりの頭痛である。
佐藤外務大臣との話は終わり、ハイヤーでホテルに送り届け貰う。
「頭痛が酷いようなら、お薬届けます。それで治らない様なら病院に行きましょう」と担当者は言う。
「ああ、お願いする」皇帝は我慢が出来ない程の頭痛であった。
・・
防衛省地下作戦指令室。立川統合幕僚長が奮闘している。
「ドラゴン依然接近中。コース変わらず網走市街」
「会敵はいつか」
「千歳と宗谷が先頭ドラゴンに3分後です」
「そのままコース維持。市街地や国民に被害が無いなら武器使用無制限」
「了解、武器無制限許可。ただし国民等被害は避ける事」
「宗谷基地了解」「千歳基地了解」「三沢基地了解」
「三沢7分後コースに入ります」
「F-15Jは有効打撃武器はあるのか」
「スパローだけです、炸薬量約40kg」
「仕方ない。対艦ミサイル積める仕様にしてないからな、F-2だよりだな」
「三沢F-16ブロック50、AGM-84ハープーン2基を積んでいるそうです」
「了解した。E767管制に入る様に指示」
「了解」「許可でました」
指令室にE767の無線が入る。
「ドラゴンスカイ、スカイガーダー1、コースそのまま会敵1分前、目視できたら攻撃」
「ドラゴンスカイ1了解。目視後旋回してコースに入る」
「司令室よりスカイキーパー1、2、スカイガーダー1の護衛に入れ」
「こちらスカイキーパー1了解」
F-15JはE767の護衛に2機張り付いた。
作戦指令室のモニターに文字が流れてくる。
E767と米軍F-16とのリンク16(TADIL-J)による交信だ。
「F-16ドラゴン補足、旋回に入ります」
「ハープーンで大丈夫か」
「米軍からの回答、ドラゴン用に近接画像センサー増設40Km以下でも使用可能との事。AGM-84Jだそうです」
「了解した」
「米軍は前回のブルードラゴンで2名戦死出していますから最新型を持ち出したのでしょ」
「ふむ解った。どちらにしろ心強い戦闘力だ」
「スカイキーパーが三沢F-35とF-16に後続ドラゴン会敵を指示」
「了解」
「F-35は翼下ポッドにドラゴンバスター2基を積んでいます」
「よく改造間に合ったな」
「ええ、航空研の成果です」
「ドラゴンスカイ1ファイアー1.2」「ドラゴンスカイ2ファイアー1.2」
「・・・」
「撃墜3匹、残り1匹再攻撃」
「ネプター1タリホー」・・「ネプター1ファイアー1.2」「ネプター2ファイアー1.2」
「松島基地よりF-2B、3機上がります」
「教導隊か」「はい」
「ドラゴンスカイ1ドラゴン4匹駆逐完了、RTB」「ドラゴンスカイ2copy」
「先頭4匹は対処完了」
「了解。海中はどうなっている」
「SS-504「けんりゅう」、SS-511「おうりゅう」海中生物コース変更なければ会敵位置まで60分」
「第2護衛隊、第8護衛隊出港完了。会敵位置迄3時間」
「了解」
「ドラゴン後続はどうか」「ネプター1RTB」「ネプター2copy」
「F-35Aネプター1と2が4匹全弾命中、F-16ブロック50が4発で2匹駆除しました。全機帰投」
「了解した」
「教導隊F-2B戻ります」「了解」「航空隊被害なし」「よくやった」
「E767は現在地点で監視継続要請」
「・・スカイキーパー1了解」
「沖縄にE767を向けろ、沖縄基地からP-3C派遣」
「了解。E767春日基地より発進」「P-3C、那覇基地より2機上がります」
転移してからなけなしのE767、4機は九州(春日)、宗谷、中部と三沢に配置換えしていた。
「各航空基地に下命、対ドラゴン武装でスクランブル待機命令」
「了解」各基地に第3弾、第4弾のドラゴン攻撃に備えさせる。
「もう来るなよ」心の声が出てしまった。
「P-3C感あり、海底音響ケーブルと同位置です」
「了解。そのまま様子を見る様に指示。潜水艦隊と2次元攻撃させる」
「了解」
「松島の教導隊は千歳に転進が必要だな」
「検討します」
ありがとうございます。