第129話 帝国民と貴族達の憂鬱 その5 貴族の黄昏その2
第129話を投稿します。
日曜日伊豆に移住物件を求めて行きましたが(こそっとです。因みにマスクは2重で殺菌ジェル2つ持って手を常に消毒)なかなか良い物件がありません。目を付けていた物は作りがダメで風呂がやり直しでした。
水回りの改装は高いのでお断りしました。でも途中晴れてて海が綺麗で心が現れました。
暑いかなと思いましたが、海風が快く冷房要らない感じでした。
日本唯一の機動師団として第7師団は1981年に機甲師団としての改編を実施した。
その機動力と打撃力で本来は北海道防衛の要として北海道の大地を縦横無尽に、敵を追い詰めていく役割であった。
第7偵察隊はその第7師団の機甲師団化に伴い、その強打撃力を生かした強襲偵察を主な任務としていた。
つまり他師団の偵察隊にはない編成により、戦車分隊、小銃分隊、迫撃砲分隊に本部分隊が合わさり戦闘偵察小隊を形成している。つまり偵察隊に90式戦車と迫撃砲(L16 81mm 迫撃砲)が小隊単位に含まれる。
しかも本部分隊にはレーダーや指揮通信車も含まれ、三次元の対応が出来る小隊である。
つまり富士教導隊の機甲化連隊をモデルにした第7師団、その中でも最前線に立ち続ける第7偵察隊は小規模の機甲化部隊として先陣を切って戦術を有利に展開する為の切り札である。
・・
フマラ要塞港町の攻略が完了して、第11普通科連隊(機甲化連隊なのだが、第7師団自体が機甲化師団なので特別の呼び方をしていない)第2中隊と第71戦車連隊は街を完全に掌握して街人を一か所に集めていた。
「我々は日本国陸上自衛隊である。皇帝は日本に対し敗北を認めた。ここの領主ソノム・ドン・ソリア伯爵は我々が皇帝の命により捕らえた。抵抗する者は皇帝及び日本国に敵意があるとみなし捕らえる事になる。
我々が今望むのはこの街フマラ要塞港の治安回復である。
その為には領主が戻らない現在において話し合いにて解決を図りたいと思う。
各ギルドの長並びに住人代表を5名選出して領主屋敷にて明日10時より会議を行う。
議題はフマラの治安回復と決定権についてだ。
各ギルド長は1名の同行者を許す。
街人はここに残って代表を決めて欲しい。5名程度が望ましいが多くても構わない。
また、この街の警護隊は全員が負傷している。死んではない。そこで隊が回復するまで我々が直接治安維持を行う。盗賊やその他犯罪があれば我々に伝えて欲しい。以上だ」
「田上隊長、平和に話し合いできますかね」
「そんな事、出来るに決まっているわい」
「凄い自信ですね」
「彼らは領主が逮捕された事を知っている。だから治安維持をしている我らを頼るしかない」
「なるほどお見事です」
「では、このフマラ要塞港の出入口は一つしかない。他は海だけだ。我々は第1中隊と本部中隊が領主屋敷を第2と第3中隊が港を警備する。第4第5中隊は門外の警備だ。
第11普通科連隊第2中隊は街中の宿屋を本部にして徒歩で警戒をして欲しい。
威嚇にもなるが、一番は犯罪防止だ」
「了解しました。第2中隊は宿屋を貸し切り臨時の警備拠点を作り街中を警戒します」
「よろしく頼む」
田上第71戦車連隊長は思う、慌ただしく領主を捕らえた第7偵察隊は次の要塞港町ドメステンに向かっている。第72戦車連隊も同行しているから大丈夫だろうと思っているが、フマラでの対応を見ているとドメステンでも一波乱ありそうだと思うのであった。
・・・・
第7偵察隊は、フマラ-ドメステン間の550Kmを順調に移動している。
休憩を入れながら12時間をかけてドメステンに到着した時は夜中になっていた。
「染谷時間が問題だがどうする」
「考えは野田隊長と同じですよ。第72戦車連隊が揃うのを待ち、夜間急襲を行います。
それに向こうさん寝てない様子ですしね」
「この領主はフォン・トリステ・ローリンソン伯爵だったな。子飼いの警備艇を破壊されたから怒っていると思うが」
「そうですね。先に皆に休憩を指示してよろしいですか」
「頼む」
「染谷から隊全員へ、これから対ドメステン戦となる。休憩60分。第2戦車隊にも連絡」
「了解」
「さて、野田隊長考えていても始まらないので、ちょっと行ってきます」
「大丈夫か」
「ええ、相手がどう出るか判らないと対応が決められません。行ってきます」
「車長いつもすまないな。ちょっと行ってくれ。ハッチ全部閉じ」
「全部閉じ確認」「車長前へ、交渉位置に付けてくれ。ついでに車長、機関砲起動。対戦車榴弾装てん」
「HEAT-T準備完了。観測装置温まりました」
「了解。門前にて待機」「待機。りょーかい」
染谷の乗る23式指揮通信車(RCV)は要塞港町の城門に向かって行く。
要塞港町ドメステンは帝国艦隊停泊の予備地として要塞砲を6門配備され海を睨んでいる。
それが過日の戦闘で日本の戦闘艦たった1隻が放つ砲撃により要塞砲は全滅し誘爆により多くの守備兵が負傷や死亡した。
そのにっくき日本が今度は陸から町に迫って来ていた。
その陣容は異様で、沢山の鉄馬車が集まり、その砲が我々を向いている。
我々も予備の要塞砲に台座を付けて陸を攻撃出来る様にした。
町の中から撃ちだすから相手に見つかるはずもない。
5kmで待機休憩している第7偵察隊と第72戦車連隊(配備車両は全て90式戦車)は何かが頭上を通過していく様子を見ている。
「敵襲、砲弾頭上通過」
「戦術レーダー特定できたか」
「特定終わっています」
「よし、1迫から3迫用意。座標指定、1迫は角度301度距離4121m、2迫は角度290度距離4111m、3迫は角度288度距離4051m」「用意完了、初弾半装填」「カウントダウン開始15、14」「スポーン」「スポーン」「スポーン」「・・10、9、8、7、6、5、4、弾ちゃーく、今」
城塞の中で爆発したはずなのだが爆発音が1つしか聞こえない。
迫撃砲でも自衛隊はTOTを行っていたのである。
すこし古い装備なのであるが85式地上レーダ装置 JTPS-P11(中を最新改修済み)は砲撃した砲の位置を計測して各隊に連絡をする。するとその発射点にある砲に対して攻撃を行える。これには野田隊長の23式指揮通信車に搭載された戦術コンピュータが計算して方向と距離を指示している。
因みに車載型地上レーダーはJTPS-P23に換装が始まっている。JTPS-P11が第2世代、JTPS-P23が第5世代である。
一度砲撃したのだが、何かが高く飛んできて、帝国兵士は砲が無残に破壊された事に驚いた。
何しろ相手からは障壁に阻まれ絶対に砲は見えない筈なのだ。
この攻撃で砲手が1名死亡2名の負傷者を出してしてしまった。
「こちらは陸上自衛隊だ、街の明け渡しについて交渉に来た。責任者をだせ」
砲撃を連絡された染谷は、「また抵抗するのか」とあきれた。
要塞港町ドメステンの守備兵士は現在20名にも満たない。
そんな貴重な兵士が反撃に会い3名もの死傷者が出てしまった。
警備隊長は城壁の上で矢を射る事しか思いつかない。
「全員城壁に弓を持って整列。敵に討ち出せ」
「ハッチ締め。逃げるぞ」「了解」
染谷は偵察隊本部に戻って来た。
「ダメでした。第72戦車連隊に任せます」「おうそれで頼む」
染谷は無線で第72戦車連隊長を呼び出す。
「こちら偵察隊染谷、連隊長、送れ」
「ご苦労さん。こちら連隊長赤沢だ。送れ」
「ドメステンの説得は失敗、繰り返す説得は失敗。送れ」
「了解した。事前の計画に従い我々が城壁と門を破壊する」
「偵察隊了解、戦術をお願いします。以上」
「赤沢了解、戦術送る。以上」
・・
しばらくして第72戦車連隊から戦術が送られてきた。対処開始は1時間後。
「時間だ、第72戦車連隊所定の作戦に従って対処を開始する。行け」
第72戦車連隊は全て90式戦車と補助要員で構成されている。14台を中隊で運用する。本部管理中隊を入れて6個中隊で84台もの強打撃集団である第72戦車連隊は赤沢が指示した戦術に従って、全車両で北側城壁を全て壊し門を粉砕する。その後本部管理中隊の赤沢が先頭に町に入り、主要通りを全て閉鎖。領民に領主館へ案内させて第7偵察隊が取り囲む作戦である。
「よし、上出来だ。所定の通り、第4中隊第5中隊で街道と町を封鎖。
第1から第3中隊で町の通りを全て閉鎖。第7偵察隊は通せ。俺が先頭で町に入場する続け」
「車長前へ人は避けろ」「りょーかい」
こうして、なけなしの長距離砲1門も失われたドメステンは警備隊が、立てこもった城壁を破壊され兵士達は弓を捨てて逃げて、今目の前を通り過ぎる鉄黒馬車を見送る事しかできなかった。
第1戦車中隊は特別班を作り警備兵達を一か所に集め拘束して地面に座らせる。
もちろん4台の戦車が12.7mm重機関銃M2(砲塔上面)にて警戒をする。生き残った警備兵は12名である。
多分6名程が城壁の瓦礫に埋まっているが、助け出すまで少し時間がかかる。
第7偵察隊は港に通じる道を丘に向かい、大きな屋敷の前にて止まる。
ドメステンは風光明媚で各貴族の別荘が丘の上にたくさん建っている。
これを一つ一つ調べて領主の館を特定する。
特定できた領主館はいちいち通告がめんどくさいので、そのまま門を破壊して庭に装輪装甲車を乗り入れ、偵察隊の斥候小隊が中心となって屋敷を調査する。
野田と染谷も斥候小隊に合流して屋敷のドアを開ける。
斥候小隊は片足付きで小銃を構えている。ドアを開けると急いでた退避する。
染谷副隊長が斥候小隊の後ろで
「我々は日本国陸上自衛隊である、抵抗は無意味である領主フォン・トリステ・ローリンソンを出しなさい」
「はい只今」執事が急いで主を呼びに行く。
2階から降りて来た主は「何事か」
「我々は日本国陸上自衛隊である。領主は同行されたし。皇帝名の命令書がある」
「やはりスルホン帝国は負けたと言う噂は本当だったのか。エルフ通信も黙っており心配しておった」
「奴隷エルフもいるのだな、探索開始。家人は案内をせよ。抵抗あれば反撃する」
野田と染谷は1階ロビーで伯爵を拘束して、事情を聴いていた。
「なぜ抵抗した。無駄に警備兵が死んだぞ」
「なぜって申すか、この皇帝直轄町であるドメステンはなにが有っても絶対死守なのだ。そんな事も判らぬのか」
「西側の港町は全てがそうなのだな。だが、我々はフマラを落としたぞ。抵抗は無駄だと思わんか」
「なにフマラが落ちただと・・そんな事・・いや・・」
「我々のやり方を見ていたのだからわかるはずだ」
「そうだな・・あんな物、反則の兵器だ」
「トリステ元貴族殿、貴殿を拘束して要塞都市ミルドに送る。しばらく旅となるが何もいらない我々が護送するからな」
「どうせ戦争責任と言って死刑なのだろう。好きにしろ」
「野田隊長、貴族は全て同じ反応ですね」と染谷が日本語で言う。
「帝国・・覇権主義なのだから、失敗や敗北は死をもって償う習慣が根付いている証拠だな」
「そうですね、ある意味扱いやすいですいですね」
「エルフ発見」と館に響く。「1階ロビーに連れてこい」と染谷。
「他にも奴隷や地下室を探せ」
「第2戦闘偵察隊および第3偵察隊は付近の邸宅捜査を下命、抵抗に会うと予測されるから慎重にかつ大胆にな。奴隷を探して連れてきて欲しい」
「「了解」」
結局、トリステの屋敷に奴隷はエルフ1名であった。
丘の上の別荘には獣人奴隷が3名、エルフが1名いた。全て日本が保護する。
第7師団本部に連絡すると、本部からトラックと隊員がドメステンに向かってきた。ただしミルドまでの距離は2100Kmもある。奴隷は宗谷特別行政区に送るのでドフーラから航空機による移送となる。
そんな中で良い知らせが来た。シルラ村に建設中の簡易飛行場滑走路1000m部分が使えるとの知らせ。
移送隊はドメステンからシルラ村に変更してと言うよりシルラ村は移送途中の村である。
そこでC-2輸送機によりドミニクに作られた簡易飛行場からトラックで領主はミルドへ、奴隷はドフーラ経由で宗谷特別行政区に移送される事になった。しかも第7師団各隊に支援と補給物資がシルラ村に到着する。
第7師団はトラックを出して各町の部隊に物資を届けていた。
「野田隊長、第5偵察隊は予定通りでしょうか心配で」
「染谷副隊長、うーん心配ではあるが、第5戦車連隊より第5戦車中隊が同行するのだろ、任せるしかないと思うが」
「そうですね我々に転戦命令が入りませんから順調だと思うよりほかないですね」
その頃野田や染谷の心配は当たっていた。
第5偵察隊は第5旅団の師団化編成に伴い全国から隊員を集め教育して現場に送り込んでいたが、元々旅団編成では各隊構成は中隊3個程度で、第5偵察隊も3個偵察小隊と本部小隊、本部付隊、電子偵察小隊で偵察隊としてはコンパクトである。これをドーザ大陸方面隊として編成した際に師団編成が行われ、各隊は5個編成となり戦車大隊や特科大隊は連隊に、高射特科、施設、航空の各隊は大隊へ増員されている。
ただし野田は2~3年の隊員が多く、慣れの点で不安を覚えていた。
ここはツール要塞都市には第5偵察隊と第5戦車連隊第5戦車中隊の13台が同行している。
ここが危険なのは、ツール要塞港が出城の様にツール要塞都市を攻撃すると背後からツール要塞港の兵士が迫ってくる事である。この2都市は戦略上の要所であり、戦力補完や戦術強化に役立っている。
第5偵察隊脇田2等陸佐隊長は考えている。彼らの隊員は全国から集まって来た隊員で教育は受けているが、戦闘経験が乏しく、かろうじて要塞都市バロッサにて籠城する帝国兵士と戦った程度ある。バロッサでは城門を戦車で破壊して市内になだれ込んで直ぐに鎮圧できたが、今回は2つの都市が補完しあっている。
「先にツール要塞港を叩くべきなのだが、要塞都市から兵士が出てくる可能性や砲撃される可能性も考えると慎重にならざるを得ない」
「隊長、私も要塞港を先にと思いますが・・・」時田副隊長も提言をする。
「せめて航空支援でもあれば良いが・・・」
「各島しょを回っている海上さんも、ここが最後ですからね」
「そうですね。我々だけでツール要塞港を占拠して、第5戦車中隊13台でツール要塞都市をけん制しては如何ですか」
「それも考えたが、砲撃でもあれば突入しないと話にならないぞ」
「最大の問題はそこですね。応援があれば楽なのですが」
「第5師団本部に要請してみよう」
・・・
「返事は良い物か」と脇田。
「あまり良い物ではないかと」と時田。
「で返答は」
「航空偵察を行い敵戦闘力の分析する。との回答です」
「妥当だな。だが時間がかかる」
「2面作戦ですから致し方ない事です。慎重に行きましょう」
「最大の問題は両町間が50Kmと短い事です。んっ並足で10時間、速足で2時間程度・・・できると思います」
「どういう事だ」
「町間の距離を馬で駆けつけても2時間以上はかかると言う事です。そこで港町を先に攻めて領主を偵察隊が捕らえます。その後戦車中隊を反転させて要塞都市に向かわせれば途中で迎撃が可能なのでは思います」
「そうだな、偵察結果がでたらその線で立案してくれ」
「了解しました。戦車中隊と詳細な打ち合わせが必要ですが、作ります」
「頼むぞ」
こうして翌日、偵察用OP-3Cが飛来し、最新動画と分析結果を第5偵察隊に渡すとドフーラの基地に戻って
いった。
分析によると、要塞都市内に長距離砲が2門、これは要塞港の予備を要塞都市に運び入れ台座を付けた物と判断された。
他には兵士達が約30名である。
一方要塞港は兵士が見当たらず建物に隠れている事が予測された。
「隊長分析結果が来ました。要塞都市には砲が門と兵士30名程度ですが、要塞港には兵士が見当たりません」
「そうか、戦力集中により要塞都市を守ると決めたようだな」
「一部要塞港の兵士が隠れている事も予測されます」
「この上空写真によると要塞港は十字の通りと丘に建っている屋敷ぐらいだな」
「ええ、通りに人が写っていません。避難したか要塞都市に匿っているかですね」
「なら最初の計画通り、港町を占拠してから要塞都市に向かう。して敵長距離砲の攻撃範囲はどの程度だ」
「ええ、船に積んでいた物を陸に上げたと思いますので最大15Km程度かと、それに台座は車輪がついています。反動が大きいので即連射は無理かと」
「了解した。ならいける。計画の一部変更だ、戦車は転進させずに射程距離圏外の港町で警備し、こちらの仕事が終わったら一緒に行くとしよう」
「ええ隊長のお考えが読めました。迫撃中隊を呼んで砲2門に効力射を行うのですね」
「それしかないだろう。はははは」
「ええ我々が対港町中に到着してくれれば一緒に戦えます」
「いや、別に待たんでも先に無効化してくれれば良い」
「はいでは先にデータを渡し対処して貰います」
この後第5師団にもデータを渡し応援を募った。
なんと第5師団のキャラ村防衛についていた、第5特科連隊第3特科大隊第5特科中隊が駆け付けてくることになった。
これにより5両の99式自走155mmりゅう弾砲とその補助車両がツール要塞都市に向かう事になった。
空港建設予定地からは550Kmの距離であり、最低1回の補給が必要ある。
時田は特科を含めた作戦計画を作り、各隊に飛ばした。
内容は単純である。要塞都市の砲撃は要塞港まで届かない為に帝国兵士は砲を移動するか待ち伏せをするしか方法はない。砲の運用になれていない兵士達が砲を移動させる事は30名程度では無理である。
従って再度要塞砲としての役目をさせる事になる。
砲が動かないなら自衛隊のチャンスである。砲の位置が動かない前提で計画を立て、対処開始当日に再度偵察を行ってもらい、砲が動かない事を確認して、特科は要塞都市の東側から、その99式自走155mmりゅう弾砲と93式長射程りゅう弾(通称BB弾)によって40Kmの最大射程により砲だけを潰す。
その間に第5偵察隊と第5戦車中隊は全車両で効率良く要塞港町を占拠する。
当然避難していれば領主も不在の筈なので早く終わる。
こうして第5偵察隊の作戦行動は師団本部から許可が出て、作戦行動開始となった。
・・・
OP-3Cが頭上を何度か旋回する。
「隊長時間です」「よし行こう」
「第5偵察隊および第5戦車中隊対処開始」
脇田の乗る23式偵察警戒車が前進を開始する。一斉に偵察隊と戦車隊は動き出す。
戦車隊2両が前に出て門を粉砕すると、各車両は一斉に要塞港になだれ込む。
「予想通りだ。誰もいない」
「予定通り戦車中隊は砲台跡を攻撃。我々は領主館に突入する」
「何をする、帝国貴族ジョルナ・フォン・トリマ伯爵であるぞ。こら縛るな」
今日帝国貴族で屋敷に篭り抵抗を続けていた伯爵が捕らえられた。
「我々は陸上自衛隊だ、皇帝からの依頼により貴族は全て調査をする。抵抗したあなたは重要取り調べになる。つれて行け」
「まて、話をきけ、まて、まて」
トリマ伯爵は第5師団第4機動化普通科連隊の第3中隊に捕まっている。
兵士30人が屋敷を警備して陸上自衛隊を待ち伏せしたのだが、逆襲に会い、伯爵は捕えられてしまっていた。そのまま第2師団本部のある帝都南門に連れてこられて、人数が貯まるとトラックで要塞都市ミルドに送り出され、氏名を確認した後にミルド郊外の収容施設にて取り調べが行われている。
伯爵は抵抗空しく、収容施設の小部屋に入れられる。
身体検査をした時に全ての服を脱がされ、簡易な服を渡され着ていた。
「伯爵なのにこんな惨めな・・・くそ」
一緒のトラックには、サンノルズ伯爵やトリヘル伯爵も乗っていた。
ただし騒ぐので口を塞がれ「もぐもぐ」としか聞こえない。
収容施設でも彼の猿ぐつわが取れる事は無かった。騒ぎ過ぎである。
1日後にトリマは収容施設の内にある取調室に連れてこられていた。
「こちらに座ってお待ちください」
そう言うと伯爵を連れて来た男は反対側の席に座る。あと一つ席が余っている。
「誰か来るのか」「来ます」
「ここで裁判か・・」「いえここはお話を聞くだけです。犯罪行為があれば裁判は別に行われます」
「どちらにしろ敗戦国は死刑が上等。ここで殺しても同じだぞ」
「少し黙ってお待ちください」
メイドがお茶を持って入ってくる。
「ずいぶん待遇が良いな」
「どうぞ毒などは入っていませんからお飲みください」と言って男は伯爵の前に置かれたカップを手に取り飲み始める。そして自分の前のカップを伯爵に置く。
メイドも自分の前にカップを置くと座って飲み始める。
「いつもながら、リナさんの入れてくれた紅茶は美味しいですね」
「あらおせいじを。うふ」おせいじでない事はリナが一番わかっている。
「このメイドも同席するのか」
「元伯爵、早く飲まないと冷めて美味しくなくなります」とリナは言う。
「そうか、頂くとしよう」旨い。伯爵は思う。
「良かった。今日は渋くアールグレイにしてみたの。気に入ってもらえました」
「帝都の紅茶ではないな。日本のか」
「正解です」「紅茶でも勝てないのか」「ぷっ」
「失礼。皆さん同じことを言うものでつい」
「儂は何の容疑で連れてこられているのだ」
「・・・・すこしお待ちください」
「・・・・・・」
「はい解りました。
奴隷売買、皇族売買の買い手、・・獣人虐待死、わいろ授受、一番重いのはエルフへの虐待と皇族売買かしら」
「そんな事証拠がないだろう」
「証拠ならあなたの頭にありますよね」
「何を世迷言を申す、そんな事あるわけ・・・・・ハイエルフ」
「はい、あたりです」リナは楽しそうだ。
「あわわわ」
「どうしました。さっきの元気は。それとも諦めましたか?」
「・・・」
「何も思わない考えない・・ですか無駄ですよ。貴方の記憶を読んでいます。考えを見るだけではないのですよ」
「わっ」
「はい取り調べにご協力ありがとうございます。戻りましょうか」
取調官とリナが後ろについて、元伯爵は収容所の個室に戻された。
「なぁ教えてくれ、儂はどうなるのだ」
「しばらくここで暮らして頂きます。バロッサの用意が出来次第移送されて帝国裁判を受けて頂きます」
「帝国裁判?裁くのはお前達ではないのか?」
「いえ帝国の裁判ですよ。因みに裁判長は日本人ですが皇帝の依頼を受けて行っている帝国の裁判です」
「皇帝が・・」
「ええ他の方のお話が終われば裁判対象者がバロッサに移送されて裁判となります」
元伯爵はガックリと肩を落とす。
・・
「ではハイエルフの皆さんお疲れさまでした。犯罪者が25名となりましたのでバロッサへの第1次移送を始めます。皆さんはゆっくりしていてください」
「「「はーい」」」
リナ、ナナ、ミーナ、レイナの4人は事情聴取に駆り出されていた。
現在、バロッサは抵抗した貴族や商人の家族と使用人を収容しているが、ヒナタひとりで対応している。
1回に10人づつ面接して、ダメそうなのを隔離。残った家族や使用人は1家単位で戻している。
隔離されているのは豪商の使用人が15人に家人は悪事を主にエルフの虐待なのだがこれが5人である。
まだ調べなければならない者は80人もいる。
ありがとうございます。
知っている方は知っていると思いますが・・・ミソラの冒険、戦闘国家日本外伝が始まっています。
1話2000文字程度の短い文書ですのでお気軽にお読みください。寂しいので評価もよろしくお願いします。