第128話 ミソラ達の講演
第128話を投稿します。
お口直しにどうぞ。
「ねえ、ミソラ、凄いお客様だよ」そっと緞帳から覗いていたミリナが言っている。
今日は日本政府主催の「アトラム王国と冒険者ミソラ達」の講演会であった。
最初の開催は東日本唯一の国立会議場「パシフィコ横浜」国立大ホールである。三階席までの約5000席は、ほぼ満員である。
準男爵となったミソラ・バレンシアとその仲間は日本政府主催の講演会に参加させられていた。
「ミソラ、このお仕事スメタナ王からも依頼されているけど、基本私たちがやりたいと言っていた仕事だよね」
「そうだよミリナ。私たちは日本にお世話になったお礼を込めてお仕事しますよ」
「はーい。でも魔力切れになったら・・」
「ソラがほっぺにハート書くのだったよね。ソラに言っておくから大丈夫よ」
「なら安心」
いよいよ講演が始まった。
司会が最初に説明する。
「本日は御足もとの悪い中、日本政府主催の「アトラム王国と冒険者ミソラ達」にようこそおいで頂きました。
このパシフィコ横浜の国立大ホールには5002席ございますが、本日は満員のお客様です。
では最初にアトラム王国について日本政府が作りましたビデオがありますのでご覧ください。
その後に冒険者ミソラさんと仲間たちをご紹介します」
司会者が言うと会場が暗くなり、中央のスクリーンにアトラム王国の大自然が映し出される。
日本とは規模の違うスケールに会場は息を飲む静けさである。
タイムラプスで陸上自衛隊が建設している、南ロータスと王都間の道路が次々と完成していく。
次に道路にバスが走り、バスの後を画面が付いていくと、アトラム王国の王都ブリシアシティーが見えてくる。
大きく綺麗な街並み、そして白い壁に赤い瓦の大きな城が現れた。
まるでおとぎ話のお城の様に綺麗である。
次にカメラは城の中に入って、王宮のスフィーナ妃とソフィア王女が現れた。
カメラに向かって微笑んでいる。これも物語に出てくるお姫様とお妃様の様である。
カメラは王宮を動きながらいろいろな部屋を写していく。
次に切り替わって、王都ブリシアシティーの外にでる。
広大な荒れ地が広がっている。
陸上自衛隊第8施設大隊が今度は広大な荒れ地を耕して、陸自とアトラム王国民で種まきを行っている風景となった。
またカメラが切り替わって、今度は中央ロータス街から魔の森に入っていく。
魔獣の森である。
陸自第42即応機動連隊の96式装輪装甲車(96WAPC)が数台で魔獣マンティコアを討伐している様子がスクリーンに映し出される。
12.7mm重機関銃M2からの銃弾や96式40mm自動てき弾銃から撃ちだされる40mm対人対戦装甲てき弾で牽制しながら、16式機動戦闘車の52口径105mmライフル砲から発射された対戦車砲弾(APFSDS)が突き刺さる。
魔獣マンティコアは咆哮をあげ、毒の尾を振り回すと毒矢の様に尾から棘が16式機動戦闘車に向かって行く。
だが防弾鋼板に覆われた16式機動戦闘車には刺さらない。
次々と陸自の攻撃を受けて、アトラム王国の天敵とも言える魔獣マンティコアが討伐された。
次にカメラが切り替わり、日本を訪問しているスメタナ王と天皇陛下が映し出される。
これはニュースでも流れた映像である。
そして、晩餐会ではミソラ達の徐爵と魔獣討伐の感謝状と勲章が防衛省に渡される。
最後にハイエルフ達が映りスクリーンは最初のアトラム王国大自然の画像となり終わる。
会場から拍手が起きる。
「ミソラ・・・アトラム王国あんな事になっていたのね」とソラ。
「ソラ、私も初めて知った。しかもSSクラスの魔獣マンティコアまで倒して・・私が倒したかった」
「ミソラ・・そこなの」
「うん、いつかアイツを倒すと決めたのに、陸上自衛隊に先を越された」
「そっそっか。頑張れー」ソラは小さく言うと離れていった。
「お嬢、魔法で「物理障壁」を覚えないとあいつは無理だぞ」とトムスが言うがミソラは聞いていない。
司会者が続ける。
「みなさんアトラム王国の大自然凄いですよね。
あの大自然を残したまま日本政府はアトラム王国に物流道路を作り、先ほど見て頂いた荒れ地を耕し、小麦や農作物を育て、まずはアトラム王国民の生活改善を、次に余剰作物の日本への輸出をしています。
現在日本も国内生産では自給率90%までに改善されました。
ですが、アトラム王国から輸入できる食材があれば、転移直後の様に食料不足にはなりません。
日本政府は広大な土地を持つアトラム王国に支援を行い、結果日本の食料事情も改善すべく頑張っています。
また、アトラム王国は日本製品の輸出先としても期待がもてます。
まだアトラム王国には電気がありませんが、魔法と魔石を合わせた便利な道具が売られています。
それに日本の技術を組み込んで、アトラム王国民の生活を豊かな物にと変えていきます。
それにより、日本の輸出先が無い現在、有力な輸出先となります。
前置きが長くなりました。
では皆さまお待ちの「冒険者ミソラとそのお仲間たち」にご登場頂きましょう。
拍手でお迎えください。
最初に冒険者ミソラ・ロレンシア準男爵様の登場です。
ロレンシア公爵家長女に生まれ、冒険者を目指して遠い国から船で日本にやってきました。
これが日本とアトラム王国が友好条約を結ぶ事になる一歩です。
日本での活躍は皆さんご存じですよね」
会場から緑のペンライトが振られる。
「ソラ会場なんか綺麗だね」「うん初めて見たよ。ミルネ」
会場舞台にミソラが登場すると大きな歓声が聞こえる。
ミソラは打合せ通り舞台の中央に立って手を振る。
「皆さまありがとうございます。つづいて剣士達を紹介します。
まずはトムス・ローマン騎士爵。
アトラム王国バーク流剣技の達人。両刃剣で近づく魔獣も一撃で退治します。
続いてはタトル・ローマン騎士爵。
アトラム王国では正統派のオーマス流の使い手。
その細身の剣から繰り出される体を貫く剣技。高速剣技の達人です」
トムスとタトルは順に舞台にあがり手を振る。二人の剣技はまだ後だ。
「続きまして魔導士を紹介します。
最初にミルネ・ローマン騎士爵。
ミルネ魔導士の魔法は「炎」。
炎の壁や炎の矢などで、敵を近づけません。
また、炎をトムス騎士爵やタトル騎士爵の剣に向ければ、その剣は灼熱となり、どんな敵をも切り裂きます。
次にソラ・ローマン騎士爵。
ソラ魔導士は水魔法。
大量の水を出して相手を見え無くしたり。また水魔法の派生魔法である氷魔法で相手に氷の槍を投げつけます。また、時には大量の雨を降らせ凍らせる事で多くの敵でも動けなくします。
生活に必要な水もソラ魔導士は作れますので、喉が渇くことはありませんし料理にも便利です。
このお二人が居れば料理の煮炊きや凍らせる事や冷やす事も簡単です」
ミルネとソラは舞台にあがると手を振る。ペンライトの色が赤と青に別れた。
ファンなのか・・・
「そしてアトラム王国でも貴重な上級ヒーラーのミリナ・ローマン騎士爵。
どんな怪我でもミリナさんに掛かればその場で治ります。
日本の医療技術より優れているかも知れません。
アトラム王国でも3名しかいない上級ヒーラーであるミリナさんは冒険者に取って心強い味方です」
ミリナはスタスタと舞台中央に歩いていく。食べること以外には興味が無いようだ。
でもペンライトは白が振られている。
「では最後に冒険者の心強い味方。ドネルグ・ローマン騎士爵。
彼は無限収納魔法の持ち主。
無限収納は魔法で作った空間に荷物を収納できます。
この無限収納は一部の空間を区切る事が出来て、そこだけ時間を進めたり、止めたりできます。
普段は肉や野菜の収納は時間を止めた空間に、特に肉などは時間を進めてエージングしたりできますが、何と言っても冒険者全員の荷物を収納する事により冒険者は荷物を運ぶ体力を使わなく、軽装になるので戦いも楽です。
それにミソラ達の冒険者の料理人でもあります。全ての料理素材を収納しており、3食も作るほどの器用な冒険者です。一家に一人ドネルグさんですね」
トネルグは真っ赤になりながら舞台にあがる。
「ねぇねぇソラ、ドネルグの説明だけ長くない」
「ミリナ。そうねぇ司会者が主婦だったりして」
「そっかー。納得。ドネルグみたいな家政婦私も欲しい」
7人揃ってもう一度礼をする。
ミソラがマイクを持ち挨拶する。
「横浜の皆さんありがとうございます。私たちが冒険者です。
日本に着いてからドーザ大陸まで冒険を許して頂いた日本政府および旅の途中でお世話になった方々に心よりお礼を申し上げます。
本日は私たちの剣技や魔法をいろいろお見せしますので最後まで見て頂けると嬉しいです」
拍手が沸き起こる。
司会が
「有難うございます。
では最初に剣技を披露させて頂きます。
最初はミソラさんからです。
ミソラさんはアトラム王国でも数少ない魔法剣士、ロレンシア流の達人です。
剣に魔法を纏わせて敵を刻みます。
そしてアトラム王国に戻ればロレンシア公爵家のご令嬢。
素敵な姫剣士でございます」
ミソラは司会を睨む。心では「姫」と呼ぶなと思っている。
ミソラは舞台中央に立ち「ハッ」と掛け声をあげると剣を抜き、剣に魔力を纏わせて炎を出した。
そこにバーク流師範の資格を持つトムスが切りかかる。
ミソラは剣で受けてから飛びのき、ジャンプしてトムスに切りかかる。
トムスは剣を剣で弾いて飛びのく。
そこにタトルが細身剣を抜いて高速で突きを繰り出す。
トムスはタトルに飛びかかると剣を振りかざし振り下ろす。
タトルは飛びのき、空中で1回転してトムスの後ろを取る。
トムスは右に横転してタトルをかわす。
ミソラが高く飛び上がると炎を纏った剣を体と一緒に回転させてトムスに迫る。
トムスはそれを見るとミソラとタトルから離れて飛びのく。
「はい素晴らしいですね。ミソラ、トムス、タトルの3人による剣技でした。
凄かったですね。空中で回転していましたよ。オリンピックがあればどんな点数が出るのか楽しみですね。
続きまして魔導士のお二人の実演となります。
最初はミルネさんからです」
ミルネは会場の1階席の上に炎を出した。今度はグルグルと炎を回して観客に熱さを楽しんでもらう。
続いて舞台に出て来た厚い板に向かってファイヤーボールを投げつける。
板は簡単に燃え上がる。
ソラが水魔法で板を消火する。
再度ミルネが会場に炎の玉を出現させてグルグル回す。ソラがウォーターボールを放ち、炎を消す。
次にソラは会場天井に薄く水を霧状にして撒く、次にそれを凍らせ細かい雪状にすると観客に雪が降ってくる。
「わーー」と歓声が起こる。
「熱かったですか。でもソラさんの雪は綺麗でしたよね。
アトラム王国は魔法国です。炎と水以外に土魔法とヒーラーの光魔法があります。
続いてはヒーラーのミリナさんです。怪我されている方はいらっしゃいますか。3名までミリナさんが直してくれます。参加されたお客様にはミリナさん特製の絆創膏を差し上げます。
非売品ですから大切にしてくださいね」
やがて舞台に3人の子供があがり、膝の怪我を直してミリナをキャクターにした絆創膏を渡す。
「ミソラ、いつの間にあんな物を作っていたんだ」
「トムス、私も聞いてないよー」
「そっか、またミリナが勝手に作ったのかと思ったが」
「あっそれ、今回の講演スポンサーが作ったらしいよ。違う物が会場で販売されていると聞いたぞ」
ドネルグが説明する。
「いつの間にそんな事に・・」日本おそるべし。
「有難うございます。
では最後に無限収納のドネルグさんです。
舞台に用意した品物を無限収納に格納して頂きます。では用意をお願いします」
ミソラ達は驚いた。舞台に小型のトラック・・軽トラだと思うが、運転されて登場する。
ドネルグは躊躇いなく運転手事収納する。そして出した。何度か繰り返す。
拍手が湧くが、主婦層らしい・・・買い物便利そうだなと・・
「皆さま最後までお付き合いありがとうございました。
日本政府主催の「アトラム王国と冒険者ミソラ達」は各都市で開催をいたします。
詳しくは特設ホームページで確認をお願いします。
また今回のツアースポンサーから皆様にお土産と会場ロビーでの物販を行っています。
ここでしか買えないグッズも沢山ありますので、お帰りに是非お寄り頂ければと思います。
ただ限定販売ですので無くなり次第終了となりますのであらかじめご了承ください。
本日は日本政府主催の「アトラム王国と冒険者ミソラ達」においでいただき有難うございます。
外はまだ雨が降っていますので気を付けてお帰り下さい。
では冒険者ミソラと仲間たちはこれで終わります」
拍手が歓声が沸き上がる。
一部のファンはロビーでの物販に群がっている。
舞台を降りたミソラ達は控室に戻っていた。
そこにいっぱいのお菓子をかかえたミリナが戻ってくる。
「よいしょ。みんな食べたらだめだよこれミリナのだから。ジュース取ってくる」
「ミリナそんなに食べたらお腹壊すぞ、光魔法でも治らないのだろ。自重しろよ」
ドネルグは注意をするが・・・「ふふふ♪」聞こえてない様だ。
やがてジュースを8本も持ってミリナが戻って来た。
「ミリナ。みんなの分か偉いな」とドネルグ。
「いや無いよ。全部飲むから」ミリナ・・・・
「ねぇ、おじさんおばさん。さっき考えたのだけどドネルグに車運んで貰ったら早く移動できるのでは」
「なに。おじさんだと」
「だって18歳以上でしょ免許取れるの。だからおじさんとおばさんは免許取ってね」
「却下」ミソラが怒った声で言う。「だって歩かないとミリナ太るからダメ」
「エー」
「ダメッたら、ダメ、以上」ミソラは「おばさん」と言われた事に怒っている。
ミソラ達のパーティーはミソラが18歳でトムスとタトルは共に19歳、魔導士のミルネは21歳、ソラは16歳、ミリナは15歳で荷物持ちのドネルグは20歳であった。
つまりソラとミリナ以外は免許年齢である。
控室に来客があった。外務省担当官である。
「本日は本当にお疲れさまでした。入場は5002席に対して4999名でした。ありがとうございます」
「今日の講演・・日本政府のアトラム王国に対する取り組みがメインで私たちは「おまけ」ですよね」
ミソラはまだ「おばさん」と言われた事に怒っていた。
「いえいえ、とんでもない。ミソラさん達が主役ですよ。私たちは少し日本のODAを説明させて頂いただけです。本当にお疲れさまでした」
担当官はミソラ達が疲れて怒っているのだと勘違いしている。
「そうですか、怪しいですが・・それにあれミリナの絆創膏ってなんですの」
「あっあれはスポンサーが是非にと言いまして、物販は20%がミソラさん達の取り分です」
「最初に契約を取り交わすのでは・・」
「ええ、基本的には日本政府主催なので、日本政府が各スポンサーとの包括契約をしており、その中にキャラクター使用料も含まれています。ですのでその版権使用料は日本政府が受け取ってミソラさん達に支払う仕組みとなっています」
「ああ・・はい。解りました」
「本来はミソラさん達にプロダクションとか事務所が付いて版権管理するのですが、今回は日本政府がその仕事を代行していますからご安心ください。それに講演会の出演料も支払われます」
「つまり、契約を代行してくれて、おまけに管理までしてくれると言う事ですね」とドネルグ。
「はい、その通りです。また、皆さんが作りたい売りたいグッズがあれば紹介しますし、スポンサーに話せば各社がやってくれると思います」
「はいその時はお願いします」とミソラ。あまり興味が無いようだ。
「では失礼します」
「ねぇミソラお腹空いた」ミリナがお腹を摩りながら何かを食べたそうにしている。
「みんなちょっと聞いてくれる」と突然ミソラが皆を集める。
「なんだミソラ」「うん聞くぞ」「ミリナが太ったらお仕置きって話?」「イヤー」
「みんなちょっと聞いて。日本にお世話になって恩返しとスメタナ王の依頼で講演をしたけど・・・
嫌じゃないの。みんな喜んでくれているし。ミルネやソラは子供に大人気でしょ。
そうじゃなくて・・・この講演会終わったら、また冒険したいなって思ったの」
「そうだなミソラ。このままだとミリナが太るだけだし、日本でも害獣駆除とかあるらしいし、体動かさないと弱くなりそうだ」とトムスが言うとタトルも大きく頷く。
「ミソラのやりたい様にしていいよ。私たちはミソラに付いていくから。心配ないよ。それにアトラム王国に戻るって言っても驚かないよ。昨日から顔がそんな感じだし」
とミルネとソラが同時に頷く。
「そんな顔・・そっか、みんな気にしてくれていたんだ。
なら決まり。講演会終わったら冒険しよう。今度は日本の東(南)に行きたいな。
なんか島もあるっていうし。
明日、日本政府に相談ね」
「おーミソラそれいいな」「海」「島」「食べ物・・」「南国はフルーツが豊富だぞ」「それ絶対行く」途中からミリナとトネルグのコントになっている。
「よし、みんな。講習会終わらせて冒険の旅に行くよ。講演終わったら東京から東に向かって歩くよ。
楽しみできた。これで残りの講習会も頑張れる」
こうしてミソラ達は講演会予定の旧西日本各地を新幹線や航空機を利用して講演会を続けていた。
日本政府から中部、関西、九州の各地方が終わったら、旧東日本のミソラ達が歩いて冒険旅行した大都市での講演も追加された。
ミソラ達は前のお礼を兼ねて講演会の追加をこなしていく。
日本政府から最終地点を「南西諸島」や「大南島」までの許可が出た。
講演会開始から約半年が経過していたが、ミソラ達は全ての日程を終えて東京に戻って、外務省の用意してくれたホテルに滞在している。
「お邪魔します」
「はい」
「ミソラさんですね。外務省から許可証と臨時パスポートが期限切れですので交換に伺いました」
「それは親切にありがとうございます」
「では皆さん。最上階のレストランに集まってください。食事とその他必要書類をお渡しします」
「了解しました。みんな呼んでいきます」
「ではよろしくお願いします」
ミソラは仲間の部屋を全てまわって最上階レストランに全員で乗りこんでいった。
「美味しい物食べられるかな」ミリナはミリナである。
「さっ着いた」
「ミソラ様御一行ですね。こちらにお客様がお待ちです。どうぞこちらに」
ミソラ達はレストランの個室と言っても30人位が入れる大きな個室に案内されていた。
「お待ちしていました。先ほど挨拶させて頂きましたが改めまして、外務省で皆さまのお世話をする石田でございます。以後よろしくお願いします」
「こちらこそ、またお願い聞いて下さりありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ。ありがとうございます」
「?」
「いえ、ミソラさん達の講演会大評判でした。日本に魔法ブームが訪れ、日本人も洗礼を受けて今10人の学生が放課後時間で魔法を習っていますよ。凄い事です」
「日本人にも魔法が使えたのですね。すごい」
「ええ、まだ趣味の魔法みたいになっていますが、その内ミルネさんやソラさんの様な魔導士になるかもしれません。そうすれば魔物の襲撃にも心強い味方です」
「ええ素質次第ではそうかも知れません」
「では皆さん揃いましたのでお食事でも如何ですか」
「わーい」ミリナだけが喜ぶ。
「はいご相伴に与かります」とミソラは覚えたての日本語で答える。
皆は高級レストランでフレンチのコースを食べた。旨かったらしい。
「こんな味付け、俺には無理」とドネルグは早々に降参した。
「ではお食事も終わりましたので本題に移りましょう」
コースのデザートと紅茶に移った所で石田担当官は話し始めた。
「これが許可書と狩猟許可と害獣駆除章。基本害獣駆除は各自治体から依頼が入ります。
害獣駆除する時は害獣駆除章を腕にはめて欲しいのですが、自治体関係者が現れた時に見せて頂ければ良いと思います。ミソラさん達は有名人ですからテレビの無い田舎以外は大丈夫と思います。
それから森林等の火災については注意をお願いします。ソラさんが消してくだされば問題ありません。
これが期限切れパスポートと交換する新しいパスポートです。古い物をお渡しください」
ドネルグは収納からパスポートを人数分出して渡す。
「はい、確認しました。これを無くさない様にお願いします。もっともドネルグさんの無限収納で無くすことはあり得ないと思いますが。ははは」
石田担当官は紅茶を一口飲み続ける。
「これが特別な書類になります。旅の途中で困ったときは、今度はこれを見せて警察や自衛隊に協力をしてもらってください。
更に東京と大阪にアトラム王国の大使館が設置されましたので、旅立つ前に挨拶をしておいてください。
強制ではありません。ははは」
「それからこれが新しい電話番号で私が出ます。もうスマホに登録しておいてください。
困った事が・・・現地の警察や自衛隊でも無理な事は私に連絡をお願いします。
それと、本日付で講演会の講演料とグッズの版権使用料が振り込まれています。
これが明細になりますので、後ほど銀行でご確認してくださいね」
「ミソラ・・これ500万円以上も振り込まれているぞ」ドネルグは驚きの声をあげる。
「そんなにですか」とミソラ。
「はい。グッズ殆ど売れきれました。売上順位聞きますか」
「えっはい」
「では10位から簡単に報告しますね。10位はトムスさんとタトルさんの剣2本セット。
9位はミリナさんの絆創膏セット
8位はミソラさんの剣レプリカ
7位はソラさんのキャラクターぬいぐるみ。
6位もミルネさんのキャラクターぬいぐるみ。 ミルネさんとソラさんのぬいぐるみは女の子の憧れの的です。もっていない子とケンカになったりしているので、第2弾を発売予定です。
5位はミソラ・ロレンシアの実家ロレンシア公爵家の家紋です。
4位はアトラム王国の紋章と旗です。
3位はドネルグさんが料理に使用するエプロン。主婦に大人気です。
2位はソラさんの魔導書と言う名のノートです。雪が良かったんだと思います。
1位はミソラさん達冒険者のプレートレプリカです。「これできみもAAランク冒険者だ」なんてね」
「ですが石田さんプレート偽造するとギルドから制裁が・・」
「日本にギルドはありません。それにアトラム王国大使館が特別に認めてくださったのですから問題ありません。大使館の維持用に版権使用料が入ります。プレートは皆さんの報酬には含まれませんけど」
アトラム王国大使館、チャッカリしすぎだろう。
「ですが売上順位なんて問題ないです。作ったグッズは殆ど売り切れで、残りも僅かです。
近い内に第2弾が発売されますよ。学校でケンカが起きても洒落にもなりませんから。
では皆さん明日から冒険旅行ですね。日本の良いところ、悪いところを沢山見て教えてください。
楽しみにしています。それから最初に東京のアトラム王国大使館に寄ってから冒険スタートさせてくださいね。報告は大事ですよ。もしアトラム王国に戻れと言われたらまだ日本での講演が残っているとお答えください。こちらで何とかします」
「はい、よろしくお願いします。ドネルグ準備して置くものある?」
「そうだなお嬢。丈夫なテントと新しい鍋と包丁かな。食材はまだあるし、それに日本国内なら東北の様に買えるだろ。心配は無いと思うけど。ミリナのお菓子以外は」
ミリナの目が光る。
「お菓子一杯お願いねドネルグ」
「なんかアメ横と言う所でお菓子一杯買えるらしいよ」とソラ。
だめだよ火に油・・・
「行く、絶対行くアメ横」
「あっアメ横ですか。実はアトラム王国大使館ですが静かで落ち着いた所が良いと言う事で、谷中の民家を2軒続きで買い取りまして、アメ横から直ぐですよ」
石田さん・・・それは・・・
「行こ行こアメ横」
「やれやれだわ。大使館に挨拶したら行こうか」とミソラも折れた。
「やったー。ミソラ大好き」「はぁー」ため息のミソラであった。
また冒険始まるらしいですね。
次は本当に帝国民と貴族達の憂鬱の続きを書きます。
強欲な貴族や豪商がどうなるのか楽しみです。