第125話 帝国民と貴族達の憂鬱 その2
第125話投稿します。
抵抗する貴族が多く難航します。
アリマスナリム商会第一夫人を乗せた馬車は港に向かっていた。
「マリアン様、ジョシナ様、もうすぐ港に着きます。船でハリタ郊外の船着き場まで参ります」
「フレセット、主人はアリマスナリムは何処に」
「はい奥様、会頭は仕事を済ませてから教会の洞窟から山脈に逃げ、ムリナ街に作った隠れ家に入ります」
「まぁ、家族がバラバラではないですか・・急ぎ逃げているのだから仕方ありませんが」
「奥様とご子息様にはハリタに屋敷を用意しています。しばらくはそちらに、帝都が落ち着きましたら戻ります」
「まぁ屋敷迄・・相当前から逃げ出す計画を・・わかりました。ジョシナ母としばらく暮らすのですよ」
「はい・・お母さま」
「まぁ元気がありませんね」
「はい・・その・学園に行けないと思うと、友達も帝都に残っているのに・自分だけ」
「何を言っているの、ジョシナは大商会アリマスナリムを継がなければならないの。その為には店の経理や接客を習う必要があります。それは店に出れば学ぶことができます。それに友達と言っても一時の者、店主になれば「じゃま」な存在になります」
「お母さま・・そんな物なのですか」
「ジョシナ、そんな物なのです」
やがて帝都の港に到着する。
「何者だ。名を名乗れ」
「兵士様、ロキン商会の店主の奥様と息子様です」
「了解したが港は封鎖している。戻りなさい」
「ですか・私は使用人ですが・・ハリタに用がありまして・・そのお母堂様がご病気で、奥様は介護に向かわれるのです」
「難儀な事だな。だが港の封鎖は決まった事。何人たりとも通す事はならん。ご母堂様には気の毒だが戻りなさい」
「病気でもダメなのですか」
「ダメだが、病気のご母堂様の家を教えてくれれば、日本の自衛隊が病気を治す手伝いをしてくれるぞ」
「そうなのですね・・もう老衰で長くないので向かう所なのですが・・」
「隊長、病気の母親に看病に行きたいと申すものが・・」
「どうした」港守備隊となった騎馬隊副隊長のリエラが来た。
「説明した通り、ハリタの母親の看病に向かいたいと申す者が」
リエラは馬車を一回り見てみる。うん?りっぱな黒馬車、さぞ財力のある商会の筈。それに・・御者どこか怪しい。中は・・ドアを開けて家族を、内装を見る。
「たしかロキン商会と言ったな」「はいそう聞いています」
おかしい、ロキン商会程度ではこんな馬車が買える筈もない。
それにロキン商会はアリマスナリム商会の系列で孫店のはず・・
「名前は、ロザリオ夫人と・・」「お前に聞いていない。中の者述べよ」
「ロッロザリオと・・」「ジョシナ」
ん!「ジョシナはアリマスナリムの息子の筈だが、夫人お前の本当の名前は」
突然、御者が隠してあった剣を抜きリエラに向かってきた。
「ボロを出すのが早くないか」軽愚痴を叩きながらリエラも剣を抜く。
リエラは御者の腕を切り落とし、剣を持てない様にした。その上で首を刎ねる。
「騎馬隊副隊長に勝てると思ったか」リエラは剣についた血を布で拭う。
「お前達、本当の事を言わないと、こいつと同じ目にあうぞ」その気はないがリエラが脅す。
「もっ申し訳ありません。アリマスナリム商会第1夫人のマリアンと息子のジョシナです。どうか御慈悲を」
「残念だが、慈悲はできない。アリマスナリム商会は皇族の人身売買主犯として商店全員の拘束命令が出ている。お前達馬車から引きずり出して拘束。その後牢屋に入ってもらう。兵士は馬車に積んである荷物を全て降ろして検査だ。全て没収する。リストを作ってくれ」
「了解いたしました」
夫人たちは拘束されて牢に入れられる。「御慈悲を・・御慈悲を・・」と夫人は叫んでいる。
息子は隅で両膝をかかえて小さくなっている。相当恐ろしいらしい。
・・・
「こちらは、ド・スルト男爵で間違いないですか」
異様な装束の兵隊がスルトの粗末な家にやって来た。庭がない家なので前はすぐに道である。そこに見た事無い鉄黒馬車が止まっている。その後ろに大型の幌付きの馬車が・・
皇城から戻るしか選択が無くなった、ド・スルト男爵はトボトボと自宅のある貴族街と帝都民街の境目へと歩いて、不肖ながら戻って来ていた。
「あっあなた。日本の兵隊が・・」
「マーガレット落ち着きなさい。目的は私だ、臣民として戦争の責任を取らされるのだ。今度こそ今生の別れだ・・・先も言ったがいつまでも待たなくて良いぞ、自分の幸せを一番に考えてな。どうせ私は絞首刑にでもなるのだろう」
男爵は他の貴族に習って妻を「妃」と呼び名前では呼んではいなかった。
しかし究極の状況に貴族の風習はどうでも良くなり、妻の名前を呼び始めていた。
「あなた・・大丈夫です。男爵は領地もなくお金もない。屋敷も見ての通り一般家庭と変わりません。
そんなあなたが、戦争の重大容疑者や犯罪者として処罰される訳がありません」
「マーガレット・・・そんな事思っていのか」すると男爵は、それはそれでショックだった。
「わかったよ。マーガレット行ってくる」「あなた早いお戻りを」「うむ」
ド・スルト男爵はドアを開け。「待たせた貴族のド・スルト男爵だ」
日本の兵隊が大陸語で「では聞きたいことがありますのでご同行願います。奥様、貴族の方々は要塞都市ミルドに送られ話を聞きますので、お戻りは遅くなると思います。4日は覚悟してください」
「「解りました」」
男爵はいつでも加勢できる様に鎧に剣を身に着けていた。
「男爵、武装解除をお願いします。戦う事は無いと思います」
「これは失礼した。少し待ってもらえるか」「お待ちします」
やがて平服に戻ったド・スルト男爵はトラックに載せられ第2師団本部に連れてこられた。
一角には数人の貴族がしょんぼり座っている。
「ド・スルト男爵はこちらでお待ちください。人数が集まり次第トラックで要塞都市ミルドに送ります」と隊員は言うとド・スルト男爵は空いている場所に座り、待ちとなった。
となりの貴族が何かぶつぶつ何か言っている・・「死にたくない死にたくない」
ド・スルト男爵は思う。「帝国を代表する貴族のくせになんだ此奴は・・こんな奴、戦場でも役に立たないではないか。真っ先に死ぬやつで役立たずだ」
そう思うのも仕方ない事である。隣のぶつぶつは皇城の司書長、フルトハイム男爵であった。
戦士ではなく官史からの成り上がりで戦場経験はない。
次々と乗り物にて運ばれてくる貴族、中には公爵になっておかしくない伯爵・・皇帝の親戚筋も含まれていた。
「みなさん大変お待たせしました。第3陣が30名となりましたので出発します。こちらの2台のトラックに奥から座ってください。乗り込む際に水をお渡ししますので道中時間がかかります。飲んで脱水は避けてください」
ド・スルト男爵は隣のぶつぶつ男に聞く。「脱水ってなんだ」
「体から水分がなくなり、しまいには動けなくなることだよ」
「お前は博学なのだな」「司書長だからな。本を読むのは好きだから」「そうか・・」
ド・スルト男爵はさっき「使えない奴」と思ったことを心の中で謝る。
やがてトラックに乗りこみ、最後に小銃を持った兵士も8名程乗りこんで逃げられない様に監視をしている。
ド・スルト男爵が「これどうやって飲むのだ」
兵士の一人が「これはペットポトルといって、上の色が違うキャップを回すと開くから飲んで、キャップを締めると倒れても水が漏れない。飲み過ぎには注意して欲しい。いまから3時間の道中だ、途中で休憩を5分入れるがトイレ以外はできないと思って欲しい。また拘束されている間の飲み物は全てペットボトルで出される。今のうちに慣れておいて欲しい」と言う。
日本の兵士は大陸語もできるかとド・スルト男爵は感心した。
帝国では相手を研究して弱点を、まして敵国語など喋る奴はいない。
もう戦争を始めた時点で負けていたのかと思うと笑いが込み上げて来た。
隣に座ったフルトハイム男爵がスルトの方を向いて「何かおかしい事があったのか」
「お前は判らないのか。日本の兵士はさっきから大陸語を話しているぞ。我々に日本の言葉は意味不明だ」
「お前の言う通り凄い事だな・・お前の着眼点もすごい・・」
「おい、会話は厳禁だ。大人しくしていろ。最悪口を拘束する」
スルトが慌てて「日本の兵は大陸語が普通にしゃべれるのが凄いと言っていただけだ。ゆるせ」
「了解した。内容も分かるから企みしても無駄な事だ」
「この状況でそんな事は思わない。帝国はお前達に勝てなかったのだからな。だから大人しくする」
ド・スルト男爵はトラックの荷台の簡素な椅子に座り無言になった。
だが・・この荷馬車、帝国の物と違って尻が痛くならないな。などと考えていた。
陸自では長旅の貴族達の為に椅子に薄いクッションを敷いていたのだ。
第2師団本部付近の貴族待機所では、悪徳で有名な貴族のサンノルズ伯爵やトリヘル伯爵も捕まっていた。
彼らは諦めが悪く貴族としての待遇を要求したのだが、他の貴族からこの期に及んでと、白い目で見られている。こうも図々しくないと肥え太る事は出来ないのだなと、他の貴族は軽蔑をし始めた。
聞いている噂程度だが、二人の悪党ぶりを、後に日本に伝えてやろうと思うのであった。
・・・
一方帝都で評判の大貴族と言われるジョン・デ・フォン・ジョシュア伯爵の元を訪れた、第5師団第4普通科連隊第2中隊第5小隊は伯爵の豪邸の門番と話をしている。
「日本の陸上自衛隊自衛隊である。ジョン・デ・フォン・ジョシュア伯爵の邸宅で間違いないか」
「そうですが、御館様に御用ですか」
「そうだ、内容は伯爵に直接伝える」
「解りました伯爵に聞いてきます」
小隊長は屋敷が大きい事に対し応援を呼ぶ。
「こちら第5小隊峰山、中隊に応援要請をします」
「こちら中隊本部、担当はジョン・デ・フォン・ジョシュア伯爵で間違いないか」
「こちら小隊。間違いありません。建物規模大きく小隊だけでの探索困難。現状は門番に取次ぎをさせていますが逃亡の恐れあり。増援要請」
「中隊本部了解。応援を向ける。以上」
「第5小隊了解。以上」
「第2分隊は屋敷裏に回って警戒。一人も逃すな」「了解」
1台の22式装輪装甲車(22APC)が裏に回る。
・・
やがて門番が戻って来た「しばらくお待ちくださいとの事」
第5小隊長は増援を待つ時間を稼ぐために「よろしい待ちます」と答える。
門の外から見た屋敷は1つの大きな建物に3つの小屋。1つの武道場のような鍛錬をする場所が見える。
「もしかしたら戦闘になる可能性があるな」
「総員戦闘準備、持ち物点検しろ、待機」曹長が命令を連絡する。
遠くから増援の22式装輪装甲車(22APC)が3台と3トン半が2台やってくる。
「ご苦労様です。第3中隊第2小隊熊田です」「第2中隊第5小隊峰山です。屋敷が大きすぎて手が足りないので助かりました」「では一緒に調査しましょう。現状は?」「伯爵から待てとの事。裏に1分隊を回しています」
「了解。ではこちらの1分隊を付けるので3分隊体制で調査願いたい。のこり2分隊で外建物を調べる」
「了解。お願いします」
しばらくしても呼びに来る気配がない。
「強制入場します」峰山は決断した。
「門番どけ怪我する」門の前で警備している門番の足元に小銃を1発撃ち、門からどかす。
「お待ちください・・・ヒィ」ドンと言う音で足元の土を撃たれた門番は飛びのく。
「車長、門を破壊する。前へ」
5台に増えた22式装輪装甲車(22APC)は門を破壊して中に入っていく。
窓から見ていた伯爵は「野蛮人はこれだから・・入ってくるぞ、戦いの準備だ」
時間を稼いで、修練場にいた兵士約30名を通路から本館に入らせ警戒をしている。
屋敷の車寄せに22APCを3台止めて、2台は小屋に向かう。トラックは中央の広場に待機する。
「扉の向こうは大抵兵士が待っているな」と峰山は言うと車手を残して扉前に整列する。
「合図あるまで待機」
「熊田から峰山。増援が必要なら行くぞ」
「扉を開けてからですね。多分戦闘になると思いますが」
「了解。押されたら言ってくれ」
「了解。助かります」
「こちらは小屋と体育館の捜索を続行する」
「皆警戒。扉を開ける」扉は固く閉ざされている。
「曹長、本部に連絡」「了解」
「本部こちら第5小隊。ジョン・デ・フォン・ジョシュア伯爵で抵抗に会っています。火器使用許可願います」
「こちら本部。火器使用を許可する。以上」
「小隊長火器使用許可でました」「了解。12.7mmで閂部分を破壊できるか」
「やります」曹長は22APCの上部から12.7mm機関銃を扉に向ける。
「左右に退避」
退避が確認でき、機関銃弾を2枚の扉中央縦に、縫うように何度も撃ちだす。
「撃ち方止め。入るぞ。小銃、単射に切り替え」
峰山は扉を蹴る。中には10名程の兵士が居た。
付け加えると。扉中央の延長にあった壺や絵画は12.7mm弾によって無残に破壊されている。
「抵抗するな。抵抗すると攻撃する。単射1発、射撃準備」最後は日本語言う。
峰山の後ろには11名の隊員が小銃を構えて並んでいる。
兵士は剣を抜き切りかかろうとする。峰山は横に飛びのき「撃て」
全員が足を狙われその場に転がる。「お前達、無駄な戦闘だと思わないのか、帝国は敗北し貴族はいないのだぞ」兵士たちは困惑して何も言わない。
小銃が発射された時、屋敷の遠くで悲鳴があがった。
「中央待機第1分隊。右第3分隊。左第2小隊3分隊。各部屋調査開始」
大きな屋敷である。1階には応接が4室。使用人食堂。使用人調理室。大きな倉庫、武具などの保管所などであった。メイド5名と執事2名を拘束した。
「奥に階段はあるか」「ありません」「了解」峰山は避難路が1つだけとは・・火事の時焼け死ぬぞ。
「よし第1分隊2名は捕虜をトラックに以後監視警戒せよ。2名はこの場で監視警戒」「「了解」」メイドと執事は連れていかれた。
「さて2階は今以上に激しいぞ、弾切れに注意しろ」「「了解」」
三峰を先頭に2階に上がっていく。この建物は3階まであるが、屋根裏部屋もあるのだろうと思う。
「2階の制圧に入る。第1分隊はここで待機。第3分隊右、第2小隊第3分隊は左。戦闘になるから十分注意して欲しい。必要なら閃光発音筒を使用する様に。行け」人数が監視で取られている峰山1人になった第1分隊は上の監視と左右の応援で中央に残る。
無言で隊員は歩き出す。手前から一つ一つの部屋を開けていく。
まず扉の向こうの音を聞き。いなければ罠を調べ、開けて確認していく。
音や気配が少しでもあればハンドサインで閃光発音筒を投げ込みその後突入する。時間がかかる。
やがて正面から左の大きな部屋に10名程の兵士がいた。第2小隊3分隊は小銃で応戦する。1分もかかならない間に制圧する。全ての兵士を武装解除させて拘束する。
「峰山から熊田。捕虜護送の応援を頼む」「了解4名送る」「了解」
屋敷一階では足を撃たれ動けなくなった兵士が10名に監視の隊員が2名残っている。
「ご苦労様です。2階左の奥の部屋です」
指示された通り4名は兵士10名を確認。みな足を撃たれて床に転がっている。
小隊無線で熊田を呼びだした。
「こちら第3分隊。捕虜足を撃たれて動かせません。監視だけになります。応援を必要としています」
「動けん兵士は何人だ」「現状1階10名、2階10名増えそうです」「了解した」
「中隊本部、第3中隊第2小隊熊田、送れ」
「中隊本部。送れ」
「現在ジョン・デ・フォン・ジョシュア伯爵邸で抵抗に遭っている。負傷した敵兵20名、2個小隊を増援で送ってほしい。護送トラックと衛生兵も要請。第2中隊にも連絡要請、調整して欲しい。送れ」
「本部了解。第2中隊と調整して伯爵邸に送り出す。以上」
「了解。以上」
やがて第4機動化連隊の第1中隊から2小隊と連隊本部管理中隊から看護分隊が到着。輸送用トラックも2台追加された。
「ご苦労様です。先に2階左奥の大部屋をお願いします」
看護分隊が2階に行き先に簡易手当を行い。増援の2小隊が引きずるようにして1階入り口広場に集める。
全員が移動させ終わった時に看護分隊は1階兵士の手当てを始める。
追加2小隊は負傷した兵士を武装解除しつつトラックに乗せていく。足に力が入らない者が多く苦戦する。
また2階でメイドを5名に執事3名と2階伯爵執務室にいた会計や書記、出納などの使用人を5名拘束した。
これも増援隊に渡しトラックに連れて行かせる。
「残るは3階と屋根裏だ、今まで以上の抵抗があると思われる。引き締めろ」
「峰山から熊田。1分隊を戦闘応援に来させて欲しい」「了解」
「トラックで監視している隊員は増援隊に監視を移管。1階で警戒している隊員も移管。全員2階に集まってほしい。以上」
「了解。すぐ行きます」
「しかし、伯爵が戦術の素人で助かる。抵抗になってないぞ」
「小隊長、油断すると刺されますよ」
「曹長は厳しい事を言う。はは」戦闘中でも余裕である。
「俺なら中2階や2階に集めて1階入り口や階段に集中や廊下角で待ち伏せさせるのだがな。矢とか痛そうだしな」
「そうですね。それなら抵抗にはなりますね」
増援や監視についていた分隊員が全て集まってきた。
「よし揃ったな、3階を捜索する。激しい抵抗が予測される。各自準備、小銃単射、では状況開始」
ようやく増援が到着して人数が揃った4個分隊は20名になり、3階への階段を登っていく。
「第1分隊と第2分隊は右へ、第2小隊2分隊第3分隊は左へ、進め」
屋敷の3階は主に寝室や家族の食堂や貴賓応接などがある。また、左はしには階段があり屋根裏の使用人寝室に繋がっている。
早速右側最初の部屋で兵士2名、女1名子供2名と遭遇する。
ドアを開け、廊下に兵士をおびき出し足を峰山が拳銃で撃つ。「ウッ」兵士は倒れる。
倒れた兵士の剣を踏みつけ、うつ伏せにして後ろ手に拘束する。
女子供たちは「ゴメンネ」と言いながら前で手首を縛った。一人を監視に残し先を続ける。
左側では手前の勉強部屋のような本と机と窓だけの部屋が4つ続き、廊下中央の扉まで進んできた。
先に扉が無いようなので大部屋だと判断した。
ハンドサインで閃光発音筒を投げ込むとドアを閉め2秒待って突入する。
兵士10名と伯爵らしいき人物が何かを喚いている。
簡単に武装解除させて全員を拘束する。喚いているのは伯爵の様だ。服装が豪華である。
無線で3階左終了を伝える。クリック音が返って来てた。まだ対処中である。
右側も各部屋(家族の寝室)を調査しながら、中に居たメイド達2名を拘束する。
屋根上への階段を慎重に登る。
屋根裏は大きな部屋となって仕切りは1つである。階段に近い小さい部屋と奥の大きい部屋。
手前が執事達で奥がメイドかとも思う。
執事の、つまり男部屋には人はいない。奥のメイド部屋には一人がベッドで寝ていた。
「どうした。病気か」峰山が尋ねる。
「はい2日前から熱が出ています」トイレも水もない屋根裏部屋では熱く大変だろうと思う。
おでこに手を当てるとかなり熱い。
「屋根裏に病人1名、つれて降りる」と無線で指示すると、峰山は「少しの間我慢して欲しい」と言うとベッドからメイドを抱きかかえ。隊員共に降りる。
3階右側も左側も拘束した人物は全て1階に連れていかれ、現在トラックの前に並ばされている。
「衛生兵、この子を見てやってくれ。熱が凄い。2日前から発熱だそうだ」
「了解」本部衛生分隊はメイドの体温と血圧を測る。
「体温38.1度、血圧112の61、心拍60。高いし弱いですね。本部に連れて行きます」「頼む」
衛生分隊は乗って来た高機動車の後部にメイドを寝かせ。全員で乗りこむと本部に向かって戻っていった。
「熊田小隊長、他の建物は如何でした」
「うむ。コックが1名食料品小屋にて拘束した。それから外のおたくの第2分隊、5名の使用人を拘束したからうちが応援に行き今トラックに乗せた所だ」
「有難うございます」
「そうは言っても裏口から合流しただけだから」
「では人数合わせしましょう」「おう」
「こちらは屋敷で兵士32名中負傷者22名。使用人5名メイド5、5、2、1で13名内1名病気で本部行。執事は2、3で5名。それに伯爵本人と夫人、子供2名だ」
「こちらはコック1名に逃げ出したコック3名とメイド2名だ」
「全部で伯爵家族も入れて65人か、凄い豪邸だったな」
「そうだな。日本に帰ると食料小屋程度の家だ。ははは」
「こちらはまだ独身ですからね。隊舎が住まいですよ」
「2等陸尉なら官舎から出られるだろう」「いや非常呼集がめんどくさいので官舎一番です」
感謝と官舎が・・
「そうか、官舎では出会いがないから結婚は当分ないな」
「熊田先輩期待していますよ」
「無理を言うな。嫁さん自衛官だぞ、しかも海上さん」
「どこで、そんな出会いが、これは監禁して尋問ですね」
「やるなら付き合うぞ。ははは」「やはり止めときます」
「では報告を頼む」「了解。本日は助かりました。嫁さんお願いします」
「だから女性率の低い海上さんだから。それに航海されると1年以上会えんぞ」
「ははは。報告します」
熊田と峰山は別れ、峰山は本部に報告した。
「こちら峰山。中隊本部送れ」
「こちら中隊本部。送れ」
「増援感謝。対処終了。伯爵と家族3名、兵士32名、メイド15名、執事5名、コック4名、伯爵使用人5名の65名拘束。トラックにて送り出しました。なお兵士負傷者22名、病気のメイド1名。なお第5小隊と応援の第3中隊第2小隊に負傷者なし。第1中隊の増援隊、護送トラック隊および看護分隊にも負傷者なし。以上」
「中隊本部了解。第5小隊も本部に帰還。以上」
「了解中隊本部に戻ります。以上」
ありがとうございました。
次話は続きになります。
ミルドの貴族はバロッサの貴族家族や使用人は・・
この話でハイエルフを登場と思っていましたが、ジョシュア伯爵の話が長くなってしまい次話にします。