第124話 帝国民と貴族達の憂鬱 その1
第124話を投稿します。
第123話は内容がひどすぎるので書き直ししました。
暇があれば見てください。大筋は変わっていません。
誤字脱字報告ありがとうございます。助かります。
第124話と次回第125話は帝都民や捕まった貴族の話となります。長いので2つに分けました。
帝都占拠当日。
午前8時となり、帝都城門が開き始める。
突然、南門の外から並んでいる商人達を追い越し5台の(新)73式小型トラック改が入っていく。
「我々は日本国陸上自衛隊です。本日皇帝の親書に基づき帝都を占拠します。南門は破壊しますので並んでいる方は直ちに帝都に入って門から遠く離れてください。危険です」
とスピーカーから放送される。
商人達は急いで帝都に入り、目的地の倉庫や商店に向かっている。
その様子を南門に近い宿屋の主人、ハルスは見ている。
「あんた、今日は朝から騒がしいよ」
「ハンナ、あれを見て見ろ。南門に5台の黒馬車が止まって申告も無しに商人達を帝都に入れているぞ」
「あら、本当だ。あんた、あれ日本の軍隊じゃないかね。宿屋組合でも噂になっていたよ」
「ハンナ、どんな噂だ」
「それがね、皇帝が日本に捕まったと言うのよ。まさかね」
「そんな根も葉もない噂だが、あれを見るとホントかと思うな」
「そうね、警備隊が南門を開けてどこかに行ってしまったもの。今日はお客さん達も宿から出さない方が良いかもね」
「そうだな、食堂で伝えるか」
「そうね、早速伝えるわ。子供達にも外に出ない様に言ってね」
「そっちは任せろ」
・・
「お客達、さっき日本が・・・」「ドーン」「ドーン」
「な、なに事」
帝都南門が破壊され橋が落とされたのだが、ハルス達は見ていなかった。
「ハルスいるか」隣の宿のトマラだ。
「トマラ、あの音と振動はなんだ」
「ハルス見てないのか。日本軍が南門と橋を落としたらしいぞ」
「俺たちは逃げられないのか」
「ああ、日本軍は俺たちを帝都に閉じ込める気だ」
「あっお客達、そういう訳だ、今日は外に出ない方が良い」ハルスは食堂の客達に伝える。
「今日、リリコネに戻るのに、クソー」商人が叫ぶ。
「いやお客人。橋が落ちたらしいぞ、馬車が通れない」
「荷物が・・」商人はガックリ肩が落ちた。
「トマラも危険だから自分の宿に戻れ」
「いや、おれはもう少し外で見ておく、日本軍とは言え虐殺など直ぐにはしないだろう」
「えっ虐殺・・」
「50年前に帝国が王都に入った時に、市民が何十人か殺されたと聞いているぞ。王族は広場で処刑された様だしな」
「そんな・・大変だ。ハンナ「虐殺が起こるかも知れない」とトマラが言ったぞ。お客人達も朝食食べたら自分の部屋に戻って、今日は外に出られないから半額にするから」
「あんた。虐殺って本当なの」
「ああ、トマラが帝国はそうしたと言っているぞ」
「わわわ、逃げないと」
「どこに逃げる。橋は落ちたらしいぞ」
「港・・・港から船で」
「そうか、港なら帝都から出られるな」
「直ぐに支度を」
「そうしよう。子供達を頼む。俺は当分の資金と食料を・・」
それからハルスとハンナに子供2人が支度をして宿屋の裏から、お客達をほって港に向かった。
「お前達、港は閉鎖だ。逃げ出す者は警備隊が逮捕する」
「南門の宿屋「ひまわり亭」の主人です。虐殺されると聞いた。警備兵は一般人を捕まえるのか」
「ひどい噂だな。日本は帝都民に手出ししないと約束した。戻れ」
「だが・・・」「虐殺などない。我々が日本と話をしてまとめた。戻れ」
「仕方ない。ハンナ戻ろう・・・」
「仕方ないねあんた」
宿屋「ひまわり亭」のハルスとハンナと子供は元来た道を戻っていった。
「戻ったら子供たちは屋根裏部屋に隠して、ハンナも一緒についてやってくれ」
「あんたはどうするの」
「宿を守る」「あんまり変なことしないで・・殺されるから」
「ああ、わかっている」
・・・
帝国低級貴族のド・スルト男爵は兵士からの持ち上がり貴族だ。
「城下が騒がしいぞ。なにかあったのか」
「あなた、日本が攻め込んできたようです」
「そうか・・我々貴族の出番だな」
「あなた・・」
ド・スルト男爵は貧乏貴族である。執事にメイドなどもいない。もちろん子飼いの兵もいない。
男爵は単身で戦闘準備している。
「妃よ、これで最後になるかもしれない。生きて違う人生を全うしてくれ」
「男爵・・いえ、私は男爵が戻るまで家を守ります」
「そうか、幸い子供いないから、いつ迄も待つ事は無いぞ、自分の幸せを考えて欲しい」
「男爵、それでも私はお待ちします」
「そうか、すまんな一兵卒なら戦場で死ねるのに帝都で死ぬことになるとは」
「いえ、男爵は皇帝をお守りするのがお役目。私はお待ちするだけです。ご武運を」
「よし、準備は終わった。家を頼むぞ。マーガレット」
「久しぶりに名前で呼んで頂きました」マーガレットは今生の別れに涙する。
ド・スルト男爵は貧しい家を出て皇城に向かう。馬は無いので徒歩である。
・・
「ド・スルト男爵である。通せ、皇帝陛下をお守りする」
「ド・スルト男爵、親衛隊のトルです。皇帝ガリル3世は日本に保護されています」
「なんと、日本に捕まったと申すか」
「男爵・・皇帝陛下は日本に保護されています」
「保護とは捕まった事ではないか」
「いえ、暗殺が企てられ皇帝陛下は日本に保護を求め、ムリナ街にいるとの事です」
「皇帝陛下は無事なのだな。ならば城の守りをするとするか」
「いえ男爵。それも無用です。皇帝陛下は日本に城を明け渡すと・・その敗北したと宣言しています」
「そんな物、無理に書かせた偽物だ。直接、下知されん事には納得できん」
「男爵。皇帝陛下はムリナ街にいます。無理を言わないでください。すでに皇帝陛下名の花押紋付き親書が発行されています。これは「こぴー」と言う物らしいですが、本物の写しですご覧ください」
「これは・・皇帝陛下の花押紋・・なに・・負けた・・帝国が・・クソー」
「男爵。皇帝陛下から貴族は自宅にて待機をする様にと指示を受けています。お戻りください。ただし自宅以外に行くなら日本軍や警備隊に逮捕されます」
「お前たちは栄誉ある帝国貴族を逮捕すると言うのか」
「はい、皇帝陛下と帝国交渉役トーマス男爵からの命令です」
「なに、トーマス卿が・・解った、トーマス候は私の師匠だ。従うとする」
「はい、家で待機をお願いします」
「そなた達も死ぬでないぞ。帝都を、城を守るのは我々だからな」
「はい、心得ています」
・・
ド・スルト男爵はトボトボと来た道を戻っていく。
「貴族としてご奉公も出来ぬとは、情けない・・」
・・・
帝都で最大の商会。アリマスナリム商会の会頭アリマスナリムの屋敷である。
「会頭。帝都北門が破壊され日本が攻めてきます」
「トリナ慌てるな。家族を呼んでくれ」
「はい会頭」
アリマスナリム商会の副会頭は4人いるが、その内の屋敷詰め副会頭のトリナは城下での騒ぎを使用人から聞き、会頭に報告した。
「奥様とお嬢様をお連れしました」
「トリナ、急ぎ商会まで行きスカに連絡をして、「手筈通り進めろ」と伝えてくれ」
「わかりました。ただちに」
「お前達、ここにいて欲しい」
「お父様。怖い・・」「アンリついてやって欲しい。我々は帝都から逃げる算段をするからな。その時は一緒に行くぞ。使用人には話すな」
「あなた・・わかりました。用意します。ジョリナはお父様と一緒にいなさい」
「お母さま・・いや行かないで」
「ジョリナ用意をするだけよ。屋敷にはいますから。大人しくこの部屋で待ちなさい」
「わ・わかりました。お父様と一緒にいます」
「では支度をしてきます」「頼んだぞアンリ」
アンリは第2夫人である。貴族や豪商には複婚が認められている。ただし帝国に許可を貰った者しか許されていない。アリマスナリムは莫大な資金を帝国に上納して複婚の許可を貰っていた。
しばらくして商会からスカが馬車で屋敷に来た。
「会頭お待たせしました。お乗りください」
「うむ」使用人に向けて「少し遠出をしてくる。屋敷を守ってくれ」「御館様承知しました。お気をつけて」
「さて、用意はできたな。アンリ、ジョリナ行くぞ乗りなさい」「はい」
「会頭。予定通りマリアン様とジョシナ様は向かっております」
「トリナは商会にいるな」「はい予定通りでございます」
「よし、出発してくれ」
「あっあなた何処に」
「帝都から逃げるのだよ。静かに」
「はい。ジョリナ心配ないです。お父様に任せていれば」「はいお父様、お母様」
アリマスナリム商会会頭と第2夫人を乗せた馬車は古びた教会に向かっている。
「よいな、アンリ、ジョリナ。これから帝都を抜ける洞窟を通って東の山脈に出る。そこで迎えの馬車が待っている。それまでは自分の荷物は自分で持ちなさい」
「「はい」」
やがて馬車は教会に着いた。
第101特殊普通科連隊第3中隊ユリムス隊長と隊員が待っていた。
「お待ちしていましたよ。アリマスナリム会頭」
「スカ。やれ」
スカは腰から短剣を2本、両手に持ち、ユリムスに走って行く。
「暗殺者だな。こんな奴迄雇うとは、アリマスナリム商会も終わりだな」
突然スカが高く飛び上がる。
第3中隊隊員が小銃で受ける。「隊長お下がりください」
「いや、ここで怪我してはダメだ。俺がやる」
ユリムスは腰からP220拳銃を抜くと、拳銃格闘を始める。「やるな」
スカは無言で剣を付き刺し、飛びのく、また飛び上がりユリムスに剣を投げる。
「クッ」ユリムスは左腕で剣を払い、拳銃を2発スカに向かって発射する。
ダン、ダン。スカは横に飛びのき、弾を避ける。
スカに隙ができた。そこにユリムスは9mm弾を3発連続でたたき込む。
ダンダンダン。
スカは片膝をつく。「お前には聞きたいことが沢山あるのだよ」とユリムス。
スカは無言でいる。何かをまさぐっている。「退避、自爆するぞ」
ユリムスが言い終わらない内に爆発する。「バン」スカは腹に穴が開いて血が流れだしている。
もう意識はない様だ。
「やれやれ、アリマスナリム逮捕する。皇族の人身売買だ罪は重い」
「あっあなた」「お父様」
「何のことか知らん。逮捕などできる物か」
「いや皇帝の命令だ。全員逮捕」「了解」
第101特殊普通科連隊第3中隊は帝都からの抜け道を警備していた。
「必ず逃げ出す者がいるから逮捕」との命令を受け待機していたのだ。
「お前達・・金か・・金なら好きなだけくれてやる」
「アリマスナリム残念だな。給与は日本政府から支給されている。お前の帝国金貨は使えんよ」
「なに」
「よし、家族とアリマスナリムは離して拘束」
「隊長・・また馬車が来ました」
「やれやれ・・次はどいつだ」
アリマスナリム商会の黒馬車が止まっている古い教会に、黒馬車が3両もやってきた。
教会内に逮捕した会頭と家族を連れていく。
「止まれ」とユリムス。
「何者だ、帝国貴族ジョルナ・フォン・トリシマ伯爵の馬車と知って止めるのか」
「日本の陸上自衛隊だ。帝国貴族は逮捕する」
中からトリシマ伯爵がちらっと見て「やれ」と一言。
馬車の後ろに立ち乗りしていた兵士が2名、合計4名が対峙する。
「3台目の馬車を調べろ。抵抗する者は排除する。皇帝名の親書だ。皇帝は日本に降伏した」
トリシマ伯爵が馬車の窓を開けて「馬鹿な事を言うな、切り捨てて道を作れ」
兵士達は剣を抜き隊員に迫る。
「お前達、死ぬ覚悟はできているのか。帝国は敗北して、お前達が従う貴族はもうない。それでも抵抗するなら攻撃する」
兵士達は怯む。
「お前達、惑わされるな。帝国が負ける筈がない。命令書も偽物だ」
トリシマ伯爵が馬車を降りて来た。
「貴族トリシマ。逮捕する」
「何の容疑で逮捕する」
「帝国や帝都に何かあった場合は城に集まるのが貴族の習わし、ここ教会の抜け道に来る貴族は後ろめたい連中しか来ない。逮捕する」
そのやり取りの間、3台目の馬車が引き返そうとしている。
「しかたない。対処開始」
隊員は89式5.56mm小銃を3台目の馬車に向けて発射する。車輪を狙っている様だ。
馬車の車輪2つは木組みの車輪に胴の鉄板を薄くしたものを張り付け丈夫にしている。
この大きな車輪を目標に小銃を発射する。
走り去ろうとする馬車。
何発目かの弾が車輪に当たり木を砕いた。
馬車は大きく傾き、横倒しになる。
すかさず自衛隊員が走って近づき横倒しの馬車に乗りドアを開け小銃を突き付ける。
「外に出なさい」
馬車の中には貴族らしい衣装の老人が一人だけ乗っていた。
ユリムス中隊長が3台目の馬車に気を取られている。
「今だお前達やれ」トリシマ伯爵が命令する。
兵士達は抜いている剣でユリムスに切りかかる。
隊員は中隊長を守るために小銃で剣を横に払い、2発発射する。
ドンドン
兵士が腹を抑えて倒れる。残りの兵士3名は剣を投げた。
「お前達、主人を守らんか」トリマが怒鳴る。
兵士達はそのまま腹ばいになり、敗北姿勢をとる。
「お前はどうする?トリシマ」ユリムスが迫る。
「くそ、使えない連中だ」トリシマが剣を抜きユリムスに向かう。
「お前一人で向かうか」
「お前よりは鍛えている」とトリシマが言うと同時に剣を横に払う。
「おっと、危ないな」ユリムスはトリシマの足に1発拳銃から発射する。
「うお」トリシマが声を上げて倒れる。
「抵抗しなければ逮捕だけで済んだものを、逮捕しろ。衛生兵みてやってくれ」
トリシマは隊員に両腕を支えられ教会に運ばれる。
兵士達はその場で後ろ手に拘束され、同じく教会に運び込まれる。
「2台目の馬車は女性が2名乗っていました。二人ともトリシマの夫人だそうです。拘束しています」
「了解。連れていけ」
3台目の馬車に近づく。
「トリシナ伯爵との事です」
老貴族は大人しく馬車の外に出されて拘束されている。
「よし、使える馬車は集めて、横倒しの馬車は押し込め」
横倒しになったトリシナ伯爵の馬車は林の方に押し込まれ、道を空けた。
教会にユリムスが入ると貴族二人とアリマスナリムが右に座らせられていた。
左側に距離を空けてアリマスナリムの家族と貴族の家族。
中央奥には兵士が治療を受けている。
「これで終わりだとありがたいが」とユリムス。
「本部、こちら第3中隊長、送れ」
「ユリムス中隊長、こちらトリマだ。送れ」
「教会でネズミを3匹捕まえた。迎えが欲しい」
「了解。第2師団に連絡をする。待て。以上」
「第3中隊、了解以上」
やがて10分ほどで3トン半トラックが2台に96式装輪装甲車が3台やって来てた。
「第26機動化普通科連隊第1中隊第1小隊です。輸送トラックを連れてまいりました」
「ご苦労。第101特殊普通科連隊第3中隊長ユリムスだ。教会の中に逮捕者がいる。護送を頼む」
「了解」
第26機動化普通科連隊の小隊は3トン半トラックを教会につけて、逮捕した貴族二人とアリマスナリムを連行し、荷台に乗せる。隊員も監視の為に荷台に乗る。1台は第2師団の本部に向けて出発した。
家族や兵士が次の3トン半トラックに載せられ直接バロッサに運ばれていく。
トラックの荷台は話してはいけない雰囲気を漂わせ、誰一人口を開くものはいなかった。
要塞都市バロッサに向かうトラックは約100Km3時間の距離を進む。
第2師団本部に向かったトラックは本部で一度容疑者達を降ろして、1か所に集めている。
悪徳で有名な貴族のサンノルズ伯爵やトリヘル伯爵も捕まっていた。
貴族達は拘束されて目で語っている。「お前も捕まったのか」「お前もか」
ある程度の人数となった時に、要塞都市ミルドに向かって出発した。
要塞都市ミルドでは臨時の収容施設が彼らを待っている。
ありがとうございます。
第125話も124話の続きとなります。
ハイエルフに苛められる貴族・・即時解放される貴族。いろいろです。
帝都民達も不安な日々を過ごします。