第122話 帝国解体 その2
第122話を投稿します。
日本が行う統治政策に質問が入ります。
旨く行くのでしょうか。
帝都には騒音に満ちた朝が来た。
「お前達、外に出てはいけない。日本軍が占領に来たぞ」
「仕事行ってる場合でないぞ、帝都中に日本軍が溢れている」
「今日はお外で遊んではだめです」
「教会の学校に今日は行くな」
帝都民の生活は陸上自衛隊によって、いつもの朝とは違う意味を持っていた。
陸自第2師団、第5師団による帝都制圧は、門の破壊と堀への戦車僑敷設により始まり、07式機動支援橋が来てあっという間に橋を架けてしまった。
帝都内に、北と南門にかけられた07式機動支援橋4本を使って90式戦車、10式戦車、それに多数の軍用車両、装輪装甲車が帝都中央広場に集結したと思うと、突然別々の方向に走っていく。
城にはオスプレイが城内広場に着陸して、通信奴隷エルフを次々と乗せて飛び立つ。
親衛隊は、呆然とその光景を見送るだけであった。
陸上自衛隊は城内部にいた家臣たちを全員捕らえ、城内広場に連行して座らせている。
城内部は一部の帝国親衛隊に案内され、効率よく尚書、法官、税務官達を捕らえていく。
城勤めの大臣などは、事前に情報が入ったと見えて、一人も登城して来ない。
だが、第101特殊普通科連隊が、事前に調査したマップには全ての貴族の屋敷が書き込まれている。
次々と貴族たちを拘束してトラックに乗せ、要塞都市ミルドに作られた収容所に送られて行く、貴族の家族はそのまま待機とさせる。
第101特殊普通科連隊は別動で悪名高い商家を急襲して、会頭を拘束していく。
「なんだお前たちは強盗か、この大事な時に何をする」
「我々は陸上自衛隊である。皇帝ガリル3世の命により商会会頭を拘束する。抵抗すると痛い目を見る事になる。また、後日行われる裁判で不利になると言う事を覚えていて貰いたい」
容赦なく拘束していく。なお拘束された会頭の商会は営業停止の張り紙を店の前に張り出して行く。
帝都最大のアリマスナリム商会と言え例外ではない。皇族奴隷化の罪は大きい。
アリマスナリム商会は会頭に番頭を始め従業員全員が拘束され、帝都3か所の店舗は全て営業停止となった。
帝都では拘束され営業停止の商会と営業を続けられる商会に別れたが、帝都民はその事になぜか理解をしている。価格が高い貴族向けの商会や市民相手に品質の悪い物を高く売っている商会などが、営業停止の対象となっている。一部の帝国民からは喜びの声が聞こえる。
帝国貴族は比較的大人しく拘束に従っているが、一部の貴族は抵抗を続け、雇いの兵士と戦闘になってもいる。「抵抗を続けると財産を含め全員を逮捕する。抵抗を止めなさい」
陸上自衛隊は呼びかけをするのだが、評判の悪い貴族達は抵抗を止める気配がない。
特にサンノルズ伯爵やトリヘル伯爵は、民衆からの評判も悪く、拝領地でも高い税金と、払えなければ娘を奴隷として連れていく等の悪辣ぶりである。
「第3普通科連隊本部、こちら第3中隊東山、送れ」
「第3中隊長、こちら連隊本部、感度良好、送れ」
「現在、帝都貴族地区南側サンノルズ伯爵邸、敵勢力の抵抗に会い、重火器使用許可願いたい」
「連隊本部了解。第3中隊、重火器の使用を認める」
貴族逮捕に際して小銃等の使用許可は出ているのだが、帝都民を不安にさせる為に重火器の使用には許可が必要であった。貴族街は商店がある地区より離れ静かである。これなら帝都民に騒がれる心配もない。
悪徳伯爵側も皇帝の動向を注視していて、降伏もあり得るだろうと秘密裏に用意をしていた様である。
サンノルズ伯爵は自分の評判が悪い事を知っており(確信)伯爵邸の物置小屋を拡張して雇い兵を50名も隠していた。もちろん剣、槍、弓矢で武装している。
「こちら中隊長、各員重火器使用の許可が出た。第1小隊は門を突入破壊し、第2小隊と屋敷前兵士を一か所に誘導し無力化。第2小隊はその後屋敷外の建物を全て探索。
第3小隊は裏に回り、裏門逃亡者を拘束。第4小隊、第5小隊は敵兵力無効化後、屋敷を探索、全員を拘束。
以上。対処開始」「了解、第1小隊門を破壊します」「門破壊、内部に入ります」
第3機動化普通科連隊、第3中隊は第1小隊及び第2小隊の96式装輪装甲車にて門に突入、これを破壊した。続いて第4小隊、第5小隊も突入して屋敷前を12.7mmで掃射して兵達を一か所に集める。
抵抗を試みようとした兵士が一名12.7mm弾の餌食となった。その光景を見た他の兵士は抵抗を止め大人しくなる。大型弾一発で兵士の上半身が無くなり、残りの兵士に恐怖を植え付けた。この恐怖は大きく、抵抗すると意気込んでいた兵士達は撃たれた途端に武器を捨てて腹ばいになって降伏の意思を表していた。
第1小隊は集められた兵全員を武装解除して拘束していく。
第2小隊は屋敷外の小屋等を1つ1つ調査して隠れている者はいないかチェックしている。
食料小屋にと燃料小屋(薪小屋)に執事とメイド達が隠れていたが、全員拘束している。
第4小隊と第5小隊は屋敷内部を両側から探索し、屋敷内全ての者を拘束している。
もちろん中にサンノルズ伯爵はいたのだが、すぐに取り押さえ拘束し、騒ぐので口も塞ぐ事にした。
この間15分程度の出来事であった。
悪評高い貴族は次々と陸上自衛隊により拘束され、抵抗を試みた貴族も直ぐに無効化されて兵と共に全員拘束されている。
帝都調査している各隊は奴隷解放の任も受けている。
各貴族の館を始め各商会も対象である。
通信奴隷エルフが35名、奴隷の獣人達が86名、他に人間奴隷を57名保護した。
また、各都市においても駐留隊が奴隷解放を進め、領主から通信奴隷エルフが帝都以外で14名、獣人奴隷が10名、人間奴隷が19名保護されている。ここでは帝都に異変を知られない為に、今まで、普段通り奴隷達に仕事をしてもらっていた。
帝都東側山脈の帝都側にある石炭鉱山では労働者の約2400人が日本より返還した元捕虜の奴隷であり、全員を保護した。
この奴隷達は各都市の宿泊施設や鉱山奴隷はムリナ街に送られ、次にドフーラ駐屯地に送られる事になる。
ドフーラではマリアとヒナタが待機して奴隷紋を取れた者をまとめて宗谷特別行政区に送り込む手筈になっている。
また、貴族や商人の取り調べ、使用人たちの取り調べの為に東京からハイエルフの4人(ナナ、ミーナ、リナ、レイナ)が要塞都市ミルドに向かっている。
この日だけで、拘束した貴族は240名、抵抗した貴族の家族が25名、執事やメイドに料理人が85名にもなっている。
貴族は全て要塞都市ミルドに集められ、事情聴取を行っている。
貴族の家族と執事やメイドは要塞都市バロッサに送られ、同様に調査を受けている。
なお、帝都の港から湖に逃げようとした者は貴族を問わず全員を帝国騎馬隊が捕まえている。
中には一般帝都民を装った者も含まれているのだが、有無を言わさず拘束している。
ここでは貴族が4名にその家族が11名、それに帝都民が3名拘束されている。
なお、漁民は前日に漁禁止の命令が発せられ、漁はお休みであった。
「ドーザ方面隊から各隊に連絡、各都市および村の貴族については屋敷にて謹慎とする。従わない者は逮捕を許可する。以上」
各要塞都市で陸上自衛隊に協力的であった者は、その屋敷から出ない事で拘束とした。後日事情聴取を行うのだが、十分に酌量される予定あった。
陸上自衛隊に抵抗した領主は拘束されている。例えば小規模要塞都市ドフーラのミトラーラ伯爵などは、第2師団との戦闘を起こした罪で伯爵邸に幽閉されていたのだが、今回は拘束されて要塞都市ミルドに送られていた。
また、中規模要塞都市ミリムソーマでは最初こそ対峙したのだが、方面隊総監の親書によりドリトルテ伯爵は全ての兵士に自衛隊に抵抗するなと書状を出し平和に都市を通行できる程の配慮を受けていた。
よってドリトルテ伯爵に対しては屋敷の敷地から出ない事を約束させて、後日担当官を屋敷に送り、屋敷にて事情聴取を受けると言う配慮を受けている。
これからの日本によるスルホン帝国統治に必要な人材であると認識されているのかもしれない。
・・・
「首相、帝都の貴族階級につきましては、概ね逮捕を終えました。現在ミルドにて取り調べをしており、過去の罪状が解った者からチロルの森駐屯地において軍事裁判が行われます」
「佐野官房長官、了解したが裁判は日本ではダメなのか」
「はい、距離と時間的問題がありまして、チロルの森駐屯地に裁判官と弁護士を送り込んだ方が早いとの結論となりました。それに・・軍事裁判ですので国民には見せられないと思います」
「そうか、君たちが決めたのならそれで良い。ただし・・」
「総理、国会対策と国民への報告ですね。本日18時からの記者発表を予定しています。原稿はこちらです」
「うむ。これは・・まだ統治方針と内容が書いていないが、大丈夫か。必ず質問が来るぞ」
「はい、その発表は現在の貴族取り調べが目途付いた時に行う予定です。なにしろ現在帝国側で使える人材が不明ですので、確定してからと思います」
「だが、ある程度の見込みを発表しないと世論が治まらんのではないか」
「ですが・・今の状態ですと人材が判らない事には、帝国を分割統治するにしても人材が・・」
「そうか・・これでは無理だと思うぞ。18時の記者会見は乗り切るとして、方針だけ言わなければならないと思う」
「さようですか・・なら、素案ですがこれは如何ですか」
「ふむふむ、これで案としては良いのではないか。そしてこれに使える人材次第で柔軟に変えると言う事で宜しいか」
「はい構いません」
「続いて、明日の国会対策用に所感を早急に作り上げて欲しい。基本的にはこの内容で宜しいのだが、日本側からどこまで手を出すとか決めないと」
「そうですね、私案ですが5年は教育含め時間が必要だと思います」
「5年も・・仕方ないか、中途半端では日本に危険が迫る事になるからな。その為の対策も考えてあるのだろ」
「はい、考えております。ただ経済に対するカンフル剤にはまだ遠く・・・」
「だが、何れ経済好転に対する起爆剤となるであろう。
特にアトラム王国と旧帝国は消費者としても多くの購買力が見込まれる。
とにかく各企業にはローテクでも皆が買える程の金額で販売できる便利な物の開発を推奨したい。
例えばライターとか着火剤やソーラーで充電できるランタンなど、皆の生活を便利にする物なら何でもチャンスだと思う。これから輸出が本格化するのだから、商材が無ければ話にならんだろう。
これも記者会見で言うとするか」
「はい・・・」
「佐野官房長官は慎重すぎると思うぞ。今は未開の2国に売り込むチャンスと思う。
生かさなければ国内消費経済は好転しないと思うがな。
軍需ばかりでは国民の生活は苦しくなるばかり、海外市場が無くなった現在は、新たなる市場開拓の良いチャンスだと思う。
商売人ならこれを生かさないと企業の将来は無いと思うぞ」
「はい、では経産省にも働きかけてその方向に、問題は国土交通省が運輸事業を認めるかどうかですね。
現在はODAでアトラム王国への輸出が動いていますが、戦争が終結したばかりの帝国に対しては慎重になると思います」
「それはそうなのだが、マーケットが待っている。
それに帝国民が生活が続けなられなくなってはダメなのだ、日本では奴隷以外の難民受け入れはしないと決めている。外務省にもその旨伝えて欲しい」
「それについては同意見です」
・・・
18時となった。国営放送や民放とはじめとした各社は、帝都戦争終結とその後に焦点を合わせ、論説員を交えていろいろな方向に話を展開している。
責任が無いだけに非現実的な事も言い始めている。
戦争が終わったばかりの帝国国内で最大限に注意しなければならないのは内戦である。
これを解説した放送局もあるのだが、日本人にはあまり響いていない。
「お待たせしました。第100代総理大臣 当壁高雄による発表がございます。
その後に、記者方々からの質問にお答えします。社名と氏名を述べてから質問する様にお願いします」
・・・
「国民の皆様「こんばんわ」総理の当壁です。
本日は帝国敗北後の日本によるドーザ大陸再建について、ご説明します。
皆さまに、ご報告申し上げた通り、2日前に帝都を制圧し無血開城を果たしました。
ひとえに自衛隊の皆さまのご努力に他なりません。
そこで自衛隊の皆さまに対して、厚くお礼を申し上げると同時に、犠牲者を出すことなくスルホン帝国を敗北させた功績は大きい物であり、経済好転のチャンスでもあります。
これに関しては、私自身がドーザ大陸で行われる式典に参加して、武勲を表したいと思います。
さて、懸案のドーザ大陸再建案ですが、日本の人材は重要でかつ貴重でございます。
また、平定は自衛隊の努力により保たれていますが、まだ一部の地区は不安定でございます。
そこで、帝国を1国と言う単位ではなく、今後5年間は日本の領地として細分化して県を置きしばらくは日本式の教育・行政・警察等の最低限の施策を施していく予定としています。
皆様には、5年間の御猶予を頂き、帝国貴族制度及び奴隷制度や異人種蔑視の恥ずべき制度を全て撤廃して、3年後までに民主主義を根付かせるべく最大限の努力をする事をお約束いたします。
この為に、ある程度の土地の線引きを行い、各主要都市に教育施設を、また、帝都がある大都市には大学までを建設予定でございます。
この計画は民主主義浸透の為の3年間と、その後に知事を決める為の選挙の準備期間2年間を含めて5年間と言う期間を設定させていただきました。
ここである程度の分割案をご提示いたします。
では用意をお願いします」
「ご存じの様に日本が転移し、大陸と接続した地図でございます。
最初は謎の大地との接続に混乱をして、さらに「ドラゴン」や「ワイバーン」に「大ウミヘビ」などの害獣に襲われ、自衛隊員17名もの尊い命が奪われ、23名もの自衛隊員がドラゴンの炎により負傷を負いました。
また、東北地方に飛来した大型の「ブルードラゴン」により、討伐に協力頂いたアメリカ兵士2名の撃墜、民間人7名が喰われ、その内2名のお子さんを救出する事に成功致しました。
この未知に満ちた大陸を調査してまいりました所、現地人とのコンタクトには成功していますが、獣人やドワーフにエルフなど、聞いた事も無い種族を保護し、宗谷半島に接続した大地と言う事で、「宗谷特別自治区」を作り彼らの生活保障と労働の提供をしてまいりました。
その後は御存じの様に、スルホン帝国兵士達が日本が作った自治領に攻撃を加えましたが、負傷はありますが、陸上自衛隊の方々が勝ち、帝国は一部地区の割譲を提案する事態となり、検討の結果ドーザ大陸への足掛かりとすべく受諾しましたが、帝国の策略であり、その後の大陸大戦に発展いたします。
ここまでの経緯は、わたくしや佐野官房長官、高野防衛大臣からご報告申し上げている内容であり、半年ほど前からの話であります。
その大戦も3か月ほどで終結して、スルホン帝国は敗北を宣言しました。
日本政府としては、この豊かな大地を手つかずで、ほっておくほど、御人好しではありません。
内需のみに頼った経済をアトラム王国とドーザ大陸を巻き込んで転移以前の水準に戻す事、そして発展させる事が政府としての使命であると思っています。
ここに日本国はドーザ大陸の安全でかつ日本経済の起爆剤となるべく、開拓を決断しました。
具体的には、3年間の猶予を設け、民主主義教育の実施と、差別や暴動等の一掃を働きかけ、安全な大陸にして、航空航路の開設、同時に空港も作り、人と物の流通を始めたいと思います。
そして海路を含む物流網で大陸を網羅して旧帝国民の生活が豊かになり、結果日本からの輸入品に対する購買力を増やしたいと考えております。
そして2年間の猶予を設けて民主主義的な選挙を実施したいと思います。それまでの間は日本国の属国としての位置にします。
具体的には・・次のスライドをお願いします」
「ご覧いただいた通り、大陸を8つに分けて、日本の直轄領土と7つの県に分けで統治を行います。
また、旧帝都はドーザ大陸全てを管理する目的で官公庁の設置をここに行います。
ドーザ大陸民におきましては全ての方にドーザ大陸民のパスポートを発行する予定であり、各県及び申請により日本への渡航もまた、アトラム王国の渡航も可能に致します。
各県同士の交流または人的移動については認めてまいります。
これにより各県が農業、漁業、林業、商業などの競い合いを行い、経済力をつけて発展させて頂ければ日本の意図は果たされると思います。
各旧世界の大使の方々については、国際連盟を作り参加頂き、ドーザ大陸の日本領土に個別に分割割譲を行い、国として認めたいと思います。
また、その国際連盟にはアトラム王国とドーザ大陸代表も入って頂き、それぞれの抱える問題点を解決していけたらと思います。
なお、国際機関としては世界保健衛生連盟に国際刑事機構及び国際裁判所、国際経済紛争裁判所も開設する事を考えています。
もちろん、日本人だけの統治では民主主義は根付きませんので、旧帝国やアトラム王国などからの留学生や、ドーザ大陸に開設予定の学校における勉強も受け入れをいたします。
ここまで大枠でのお話をしてまいりましたが、詳細については各省庁や内閣府に発足しているドーザ大陸プロジェクトにゆだねる物であります。
そして日本政府としては、この大きなプロジェクトに一般会計予算の半分の50兆円を5年間の予定で予算化いたします。その内容は次回国会にて説明をいたします。
日本の持つ技術や手法により、アトラム王国と旧帝国を大きなマーケットとして開拓し定着させる事が出来れば、平和で公平な世の中が実現すると信じております。
本日は簡単ですが、ドーザ大陸の今後計画と国際連盟を、そして日本のテクノロジーを使った物流によって近代的な生活をアトラム王国民とドーザ大陸民に寄与して頂ければ日本がこの世界に転移した意味があるのではないかと思います。これを日本政府は推進していく事で国内経済の好転を計りたいと思います。
ありがとうございました」
「では記者からの質問を受けますので、会社名とお名前をお願いします。では質問のある方挙手をお願いします」
・・・
「はい、最初に記者会見代表質問、東海新聞の杉本です。総理に質問させていただきます」「どうぞ」
「最初に、総理がお話された内容ですが、話題が多岐に渡っており受け止めきれない所がありますが、一つ一つ確認をさせてください。
最初に犠牲になられた民間人及び自衛隊員に対してお悔やみを申し上げます。
では、一昨日の会見でございますが、記者質問がありませんでしたので、そこから質問をさせていただきます。
一昨日は突然の戦争終結のご報告でした。この勝因についてお話しいただけたらと思います」
「では一昨日の報告について重複もありますが、内容を報告させていただきます。
スルホン帝国におきまして、皇帝ガリル3世暗殺未遂事件がありました。
スルホン帝国側交渉人も同席して、日本との停戦交渉に関する話を進めていた所に、サイネグ宰相を首謀者とする一派が皇帝と交渉人2名を殺害しようと襲い掛かった物であると聞いております。
交渉相手の日本国陸上自衛隊第5師団師団長から、スルホン帝国側交渉人に危険を感じ次第信号弾を上げる様に貸与されていました。
幸い暗殺者達は皇帝と交渉人と言いましても帝国第1師団騎馬隊隊長が武力による排除に成功しましたが、戦闘になる前に信号弾を撃つ事に成功し、控えていた陸上自衛隊の隊員が最終的にこの3名を捕虜として、サイネグ宰相を犯罪者として逮捕しております。
この事に皇帝は衝撃を受け、日本に対し無血開城を申し出て、その書簡により陸上自衛隊は帝都を占領いたしました。交渉役の陸上自衛隊第5師団長並びにその幹部の及び実際に皇帝城に突入した隊員達の功績であります。
この報告をした当日の現地時間で朝10時の事でございます。なお、この事による死亡者は暗殺者のみで、市民や自衛隊にも負傷者及び死亡者はおりません」
「総理、ありがとうございます。結果、帝国の皇帝を助けて帝都や城は無血開城に至ったとの認識で宜しいですか」
「その通りで結構です」
「有難うございます。では次の質問に移らさせて頂きます。
2つめの質問として旧帝国領を8分割して、その7つに民主主義教育及び差別の撤廃、もちろん奴隷主義などは以ての外ですが、3年と5年と提示されていましたが、この違いを具体的にお願いします」
「はい、5年間は日本が主体で統治を行う期間でございます。3年間に関しては今の帝国主義を払拭して教育に当てる時間であると認識しています。つまり3年間は民主主義教育に当てる時間であると思います。
この対象は全ての大陸人に及びます。これには日本国の特別予算と戦時補償の帝国資産から捻出をいたします。
これが浸透して頂ければ、日本の監視は入りますが、2年間で準備を行い民主主義的選挙によって各県の知事を決めたいと思います。これは基本ドーザ大陸の民衆でなければなりません。
これにより民主主義が浸透したと判断できるのではと思います。
以後も監視は続行しますが、大陸人は異種族も含めて平和で公平な世の中を作り上げて頂きたいと思います。十分日本の役目は済んだと判断できましたら、段階的に日本は自治権をお渡しする予定としています」
「はい、わかりましたが、自治権が委譲される5年以後は、日本の属国から外れてもやって行けるのでは思いますが。3つ目の質問にさせてください。最終的に日本はドーザ大陸の各県を国に昇格させて独自運営させるおつもりはあるのでしょうか」
「なんとも鋭いですね。おっしゃる通りいつまでも日本の属国として日本の予算を使うより、早く独立採算に移行して、国としてやって頂ければ申し分はありません。その為にも民主主義の浸透と、日本と同等の憲法など法律の施行を早めなくてはなりません。その上での独立はあり得る判断だと思います」
「有難うございます。なんとなく見えてまりました。では最後の質問でございますが、大陸やアトラム王国に対する物流網、特にインフラ整備についてはどの様にお考えでしょうか。空路や航路も考えられているとか、これが整わなければ発展も難しいと考えます。総理の御計画をお聞かせ願えればと思います」
「はい、その様に考えております。旧帝国には大都市も多く点在しており商業も盛んであります。
しかしその技術水準は中世程度、つまり日本の文明から1000年以上遅れています。
物流と申しましても現在は馬車や徒歩による荷物移動でございます。
ご存じの通り、魔物や野獣が溢れている世界です。その為インフラ整備は遅れており、現実的に自動車を通すのも一苦労であります。
政府といたしましては、ドーザ大陸については先に治安安定を行い、空港の建設、空港から大都市への道路整備を行います。これはアトラム王国で行っているODAに近い形となります。
これにより旧帝国の土木技術を底上げさせて道路網を整備できれば、航路、空路における荷物拠点とそこから延びる道路網による物流が可能と考えています。
それにより、日本の建設業は公共事業としての建設を請け負う事ができると考えています。
その先には、日本の技術を生かした製品の販売が考えられます。
現在のドーザ大陸では、煮炊きはかまどで行い、ラジオもテレビもございません。
先日、スメタナ王が来日された際にラジオ放送局と受信機についての導入計画が提示されました。
ドーザ大陸についても同様なニーズはあるはずで、長距離通信も機材や発電所を売り込むチャンスであると考えています。また庶民ニーズとしてファッションや雑貨、日用品などが輸出可能でございます。
輸入については、アトラム王国同様食料や各種材料にドーザ大陸は東側だけ開発を進めておりますが、西側は手つかずでございます。
旧帝都の東側には石炭鉱山があると聞いております。
この様に鉱物の調査と試掘を行えば、資材を日本が輸入して、日本から製品を大陸に送ると言うサイクルができると思っています。いかがですか」
「はい総理ありがとうございます。まだ先の計画ですが希望が持てる様に思います。
代表質問を終わります」
「では個別質問に入ります。質問の記者は挙手にてお願いします」
総理の記者会見は18時から始まり3時間を経過して終わった。
主に質問された内容は、民主主義や法律が根付くか、差別主義は根付いた物だから簡単に公平な世界になるのか、奴隷制度は地下に潜るだけで無くすことはできないのではないか、などが多く、総理は相当疲れた様子であった。
帝国分割統治案については議論の余地も残されており、国会対策が必要である。
また、スルホン帝国の人材活用もしなくてはならず、問題は山済みであった。
ありがとうございました。
次は国会対策となります。
・・・戦争以外を書き続けると作者の頭が・・爆発しそうです(笑)
沢山のご質問があると思います。感想でお願いします。最初から否定的な意見は作者が委縮するので・・控えめにお願いしますね。絶対ですよ(笑)