第121話 スメタナ王とハイエルフ
第121話を投稿します。
ハイエルフとの和解に持ち込みたいスメタナ王。
ハイエルフとの約束を交わす事に・・それはそれで大変なのだが
皇居での祝宴の義が終わった翌日。
朝10時である。
「スメタナ王。あと10分で女神様が到着なさいます」
スメタナ王は、すでに汗をかいている。
「儂も迎えに行こう。妃と姫も迎えに呼んで欲しい」
迎賓館、玄関で迎えに並んだ王達の前に、黒塗りの高級車が2台車寄せに入ってきた。
「いよいよだ」スメタナ王は皆に言う。「最礼を持ってお迎えするように」
すーと車が滑り込んでくる。
すぐに白手袋をした運転手がドアを開ける。
「女神様、本日はお忙しい中おいで頂き光栄にございます」
『お迎えですか、そんなに大げさにしなくても良いのですよ。』
「いえ、女神様をお迎えするのは国王の務め。良くおいで頂きました。さっこちらに」
スメタナ王自ら女神たちを案内する。
やがて館内を歩き、迎賓館の応接間に通した。
「女神様方は、紅茶で宜しいでしょうか」と執事が尋ねる。
「はい、それでお願いします」ナナが大陸語で答える。執事は大陸語も理解できた。
「では女神様、紹介させていただきます。私がアトラム王国スメタナ王でございます。隣が妻の」
「スフィーナでございます。女神様にお会いできて光栄でございます」
「次が」
「娘のソフィアと申します。今日の日を楽しみにしておりました」
「次は家臣です」
「女神様、お会いでき心より嬉しく思います。アトラム王国交渉団団長のゾリアスでございます」
「では私たちの番ですね。すいませんアトラム王国の言葉があまり得意ではないので、通訳をお願いします。思念でも良いのですが、人間が強い思念を受け続けると脳が焼けるので、私は族長の娘「ナナ」と言います。こちらが「レイナ」、となりが「リナ」、「ミーナ」、皆日本に付けて頂いた名前です。こちらが私の母で族長です。ハイエルフには元々名前がありません」
『よろしくお願いします』
「いえ、とんでもない。こちらこそよろしくお願いします」
『今日の話とはなんですか』
「ハイエルフの族長様、我々はハイエルフ様を「女神様」として崇めていました。
ところが女神教教会が勝手な事を始め、「女神様」にご迷惑をおかけして、今に至ります。
心よりの謝罪と、アトラム王国に一度訪れては頂けないかとのお願いでございます」
とスメタナ王は丁寧に説明をする。
『その様に申されても、私たちはドーザ大陸に住むハイエルフ。元々アトラム王国に住むハイエルフとは違います。それにアトラム王国のハイエルフが何処に行ったか、判らないのです。』
「はい、それは充分に心得ています。ですが、ハイエルフ様は我々の心の支え、国教でもあります。
お許しいただけるのであれば、お越し頂けると国民が喜ぶと思います」
『そうですか・・』
「確かアトラム王国もマーリック魔法王国も女神教が国教だったと聞いています」とナナ。
「はい、マーリック魔法王国は大陸西の北、トライト島が領土の国でした。早くに魔法に目を付けた帝国に侵略され、我々も援軍を向けましたが敵わず今に至ります。マーリック魔法王国は事実消えてしまいました。
その時、マーリック魔法王国のハイエルフ様達もどこかに・・・」
「確か、アトラム王国の女神教は女神シャリゼーナを祭っているとミソラから聞きました」
ナナが説明する。
「はいその通りでございます。女神シャリゼーナ像が女神教信教シンボルとして、像を飾り祈りを捧げています」
「なんでもミソラが像とハイエルフは違い過ぎると写真を撮っていましたね」とナナ。
「はぁ、私も女神シャリゼーナ像を祈っていますが、違います。明らかに違います。
それと言うのもハイエルフ様がいらした時は直接ご挨拶できたのですが、お隠れになってからは教会が作った女神シャリゼーナ像が唯一の女神像となりまして、これにお祈りしています」
『魂の入っていない像にお祈りしても形骸化するだけとは思いませんか』
「族長様のおっしゃる通りです。ですがアトラム王国民としては形骸でもお祈りせずにはいられないのです」
「難儀な事ですね」ミーナが呟く。
『少し考えさせてください。私たちも王国や魔法国のハイエルフが何処に旅立ったか知りたいと思っています。その為には通路を使える様にして痕跡をたどる必要があります。以前通路からアトラム王国の戦車が出て来たとか聞いています。』
「はい、お恥ずかしい事に我々がドーザ大陸東の端にある「神々の洞窟」から帝国に侵入を試みました。
あえなく日本軍に全滅され洞窟も閉じられて、アトラム王国からは開ける事が出来なくなりました。
浅はかだったと反省しております」
『その考えに偽りは無いと思いますが、私たちの洞窟を戦争に利用しようとしたのは許せません。』
「はい、一度ならずも2度まで女神様に不快な思いをさせて申し訳ありません。言い訳は致しません。
わたくしが王として全ての責任を負っています。この場で罰をお与えください」
『洞窟を使用すると帝国の奴隷達を解放できると思っていましたか。洞窟を利用しようとした事は許せない事です。ですが、帝国に捕らわれている人々の為だと思うのであれば、今後の行動で示して頂ければ宜しい事です。』
「女神様ありがとうございます。アトラム王国は日本国と友好関係を築き、これからはアトラム王国民と日本の役に立てる様に努力いたします」
『そうですか。私たちには、言葉の真意が解ってしまいます。その通り進みたければ行動で示してください。』
「はい、仰せのままに」
『わかりました。通路は族長が神から与えられた役目を果たすための物、あなた方がルミナス王朝から預かった鍵も破壊しました。通じさせるためには私自身が通路に行かなければなりません。その上で通路を開き王国や魔法国のハイエルフの痕跡を探します。』
「おお、通路を通って来て頂けるのですか、アトラム王国は歓迎いたします」
『アトラム王国側の通路は・・・・アトラス大陸東側、ルミー湖の山にあるのですね。』
「はい、アトラム王国王都から馬車で1000Kmの距離にあります。山を迂回いたしますのでその距離です」
『そうですか、その時は日本の方に協力をお願いします。それから島、「サービウエル島」に・・神殿ですか。』
族長は笑ってしまった。
『しかも怒りに触れて禁忌地区にされてしまったとか。愚かですね。私たちは全て同じ考えではありませんが、神殿は人間の物、私たちは静かな村で生きるだけの果実があれば満足なのです。』
「はい弁解のしようがありません。教会は女神教の神聖なる地として、サービウエル島に女神教神殿を作り、信者巡礼の地にしてしまいました。我々は猛反対したのですが教会の勢力に屈し建設を許しました。
これも私の罪でございます」
『教会の方々は・・トラスミト枢機卿ですか、なにをしたかったのでしょう。人間の考える事は不思議で理解に苦しみます。』
「多分ですが・・・権力かと・・」
『ですか。女神教の枢機卿とは言え、ハイエルフがいたのだから単なる執事ですよね。それが女神教を利用するとは許せません。即刻辞任させなさい。もし私がアトラム王国に行けば枢機卿や関係者を焼き殺します。』
「わかりました・・その様に手配いたします」
『女神教については国教なのでしょうから、本心は辞めさせたいのですが、国王の立場としてそうもいかないのでしょうから、国教から外して信仰は全ての物に感謝をさせてください。つまり信仰は自由であると宣言をしてください。
日本をご覧になりましたか?、日本は信仰自由の国です。神もいれば死んだ英雄や偉人を崇拝する宗教もあります。外国の宗教も同様に同じ国民に浸透しています。
私が聞いた話で、一番良いと思ったのは、日本には神を模した像もあるのですが、「八百万の神」と言い、道の草や食べ物、使う物全てに神が宿って感謝をする、との信仰は好きです。私たちハイエルフに似ています。』
「はい、戻り次第、仰せの通り国教ではなく女神教も信仰の1つだと宣言いたします」
『ハイエルフは神ではありません。使徒であると私たちは教えられてきました。
神が作ったこの世界の秩序を正しく導く者であると。
ですが・・・人間は勝手に解釈や侵略をして、結果、女神を騙す事も過去に多くありました。ですので人間に直接介入せず好きにさせていました。
なぜなら、私たちには神から与えられた「いかづち」があります。それで世界を作り直す事が。一から作り直す事が出来ます。』
「ハイエルフ様、「神のいかずち」については神話で聞いた事があります。人間が好き勝手なことをして世の中が乱れると使徒様が「神のいかずち」を持って全てを焼き尽くすと、この世界も何回か作り直された物であると。聞いております」
『それは神話ではありません。事実です。私が教えられているだけで3回過去作り直ししています。
この世界は、私が思うに、日本が別の世界から神に召喚されてここにあるのだと思います。壊して作り直すだけでは、同じことの繰り返し、神がそう判断したのでしょう。
それゆえに、皆さんは命が続いてい事を神に感謝をしてください。』
「ハイエルフ様、神とはどうゆう存在なのですか。私たちも神を感じる事は出来るのでしょうか」
『神は遠い空にいます。私たちも直接会う事はありません。ですが時々感じるのです。神の意志を、それだけです。何かを指示されたり、何かをされたり、と言う事は全くありません。』
「良く分かりました。人間は神に背かない様に、この世を乱すことなく皆で生活をする物だと言う事ですね。よくわかりました」
『王が解ってくれたのなら、私の今の役目が1つ終わりました。』
「神にハイエルフ様に感謝をいたします。導いて頂き感謝申し上げます」
『いえ、日本に感謝を、神が日本を選んだのですから、何か意図があるのだと思います。私たちにはそこまでは判りません。ただ・・』
「ただ・・何でしょうか」
『神は喜んでおられます。神の読み通りになったと、これで壊さなくて済むと、伝わってきます。
私が判るのはここまでです。神の思慮は深く一部も理解できません。ですが今の感情と言うか喜び、悲しみ、怒りは感じる事が出来ます。少し前まで怒りの感情がありました。』
「では、日本が神の意図通り動き、神は満足していると言う事ですか」
『なんとも言えませんが、その様な物です。』
「有難うございます。私たちは、神様の御慈悲と使徒様、日本国に生かされたのだと改めて国に伝えます」
『時期が来れば、洞窟に向かいましょう。ですが今はその時ではありません。王は国に戻り民たちの考え方を変えさせてください。少なくとも神や私たちが許容できる範囲まで、それが使命と思ってください。』
「本日は貴重なお話ありがとうございました。
謹んでハイエルフ様のお話を国民に伝え、今後の糧とする事をお約束いたします。女神教については私の責任において宗教の一つとさせます。
ありがとうございます」
王族とゾリアス公爵は立って最礼を尽くす。
『それから私用なのですが、ミソラ達にまた遊びに来なさいと伝えてください。ではこれで帰ります。』
「おっお送りいたします」
王と王族は玄関で見送りをした。車が見えなくなるまで・・・
「お父様大丈夫ですか・・お体が震えています」
「お前こそ大丈夫だったか、すごい思念で儂は体が震え始めた。昔女神様を近くで見た事があるが同じだった。近寄りがたい思念とオーラで、若い内はその場でしゃがみ込んだものだ。それに比べ姫はしっかりしている」
「いえ姫も震えていました。昨日はあまりお話しませんでしたから今日もその様にしましたら・・思念が来るたびに震えが起きました。するとナナさんが笑いかけて頂き、それで落ち着きました」
「そうか・・ハイエルフ様が、お前は加護を受けたのだな」
「母様は如何でした」「私は女神様を見る事もできませんでした。折角近くにいたのに、体が固まってしまって見上げられませんでした。ですから床ばかり・・・」
「そうか、戻ろう」
「ゾリアス公爵大儀であった」
「陛下、ハイエルフ様があの様な存在であったと知り、嬉しく思います」
「そうだな、儂はまだ震えている。威厳に満ちた高貴な存在だった。女神教もあながち間違いではないと思うが、お約束した以上は実行する。ゾリアス公爵手順と方法を考えて欲しい。いっしょに励もう」
「陛下、お力になります。陛下のお約束必ずや実現させて見せます」
「そう、力を入れすぎるな、教会に謀反でも起こされたら面倒だ。
ハイエルフ様との話を中心に枢機卿を説得しよう。儂が国に戻るまでは内緒で頼むぞ」
「畏まりました。陛下がお戻りになるまで、宰相にも報告は致しません・・
それより王が直接下知されてください」
「それが良いな、そうする。皆の者、よく耐えた。感謝するぞ。今日は早く休むとしよう」
・・・
それから3日ほどして・・
「王様、スメタナ王様、一大事でございます」
「どうした、なにを慌てている、アナウム」
「はい、・・ゾリアス公爵もいらしたのですね。良かった」
「早く言ってみろ」ゾリアス公爵が急かす。
「はい、驚かないでください。本日20時に日本国外務省から連絡がありました。
スルホン帝国の皇帝ガリル3世が負けを認め、日本軍が帝都を占領し、貴族や大商会会頭を逮捕しているとの事です」
「なに。それが本当なら戦争は、20年にも渡る戦争が終わったのか、しかも儂らが日本にいる間に・・
何と言う事だ。日本は何れ帝国を負かすとは思っていたが、こんなに早くとは・・・ハイエルフ様のお告げ通りだ」
「アナウム。詳細の報告をして欲しい」ゾリアスが先を急がせる。
「はい、本日10時に皇帝ガリル3世から「日本軍に敵対するな」との書簡を持ち、日本軍が帝都を占領したとの事です。
どうやら皇帝と帝国交渉人を暗殺しようとの動きが帝国にあり、日本に助けられたとの事」
「やはり、内部分裂か、そうなると思っておった。あのやり方では目に見えている」
「スメタナ王もそう思いますか、私も日本からの情報で予感はありましたが、予想より早かったと思います」
「そうだな、感慨深いな。一時は押されもう少しで上陸を許すところだった。我々も反撃に上陸して全滅に・・痛ましい事だ」
「スメタナ王。犠牲者への報告もできると思います。国が豊かになれば死んだ者達の家族にも生活費が支給できます」
「ゾリアス、そなたの言う通りだ。早急に日本の援助により作られる農園からの収穫が楽しみになって来た」
「まだあります。アトラム王国留学団ですが殆どの者が大学や専門施設、また職人の元に弟子入りしております。アトラム王国の技術力も高まる事が見えております」
「日本に感謝だな」
「スメタナ王、早速タイラグ宰相に報告を」
「うむ、呼び出してくれ」
ゾリアス公爵は長距離魔道通信機で宰相を呼び出す
「はい、タイラグです。ゾリアス公爵。スメタナ王は御健在か」
「はい御健在です。スメタナ王に代わります」
「タイラグ息災か」「スメタナ王様お気遣いありがとうございます」
「して、いまは何処だ」
「はい、スメタナ王。3公爵家との打ち合わせをしております」
日本とアトラム王国の時差は12時間である。
「朝早くからご苦労。報告がある。皆の者に伝えよ」
「はい、かしこまりました」
「本日、と言っても日本の時間で朝10時に帝都が陥落した。日本が無血占拠したとの報告だ」
「スメタナ王・・・それは願ってもない・・ですが早すぎます」
「それだけ日本の軍事力は素晴らしいと言う事だ」
「ええ、それは理解しているつもりですが・・そうだ王都西の大平原おきまして、昨日魔物は殆ど駆逐されました。残るは北の森だけとなります」
「おお、そんなに早くか、だが森となると強い魔物がいるから油断できぬな」
「自衛隊は強いです。我々の騎士団の比ではありません。確実に森を安全地帯にするでしょう」
「そうか、念願の開発も進むな」
「はい、スメタナ王。早速国民や臣民に知らせたいと思います」
「うむ、タイラグ宰相頼むぞ、儂も直ぐに国に戻るつもりぞ」
「お待ち申し上げております。どうぞ安全に戻られることをお祈りいたします」
「うむ、以上だ」
・・
「妃と姫を呼んで欲しい」執事を呼びに行かす。
「アナウム。ミソラ達も呼んでくれないか」
「畏まりました。すぐに電話して来させます」
「うむ、電話は便利だな。我が国にも欲しい一つではある」
「スメタナ王、いろいろ調べましたが持ち運びできる電話は膨大な資金が必要です。
そこで、最初は「らじお」なる物が安く国土を網羅できると聞いております。
日本のテレビの様に画像はありませんが、声だけの放送だそうです」
「そうだな、いきなり、このテレビは無理であろう。「らじお」についてなら聞いた事がある」
「ええ、これです」
と言うとゾリアス公爵は部屋に付いているラジオのスイッチを入れた。声と音楽が流れる。
「これなら大きな投資なしに、遠くまで王の話を伝える事が出来ます」
「そうだな、検討の余地があるな」
「手配させていただきます」
・・
「お父様、国に戻ると聞きました」
「王様、戻れるのですね」
スフィーナ妃やソフィア王女が部屋に入って来た。
「そうだ。二人とも戻るぞ支度をして欲しい」
「お父様・・ソフィアは日本でアトラム王国の為に勉強がしたいと思います」
「なにを学ぶのだ」
「留学団も来ていますし、経営を学びたいと思います」
「スフィーナはどう思う」
「姫は本気だと思います。日本に来てから日本語を勉強しだして、大学教授に難しい質問をしていました。
その内に、通訳なしで日本語を話し出すと思います」
「そんなにか。姫は勉強熱心であったか」
「いえお父様、日本に来てからです。知らない事ばかり、アトラム王国では普通だと思っていたことが日本ではさらにその上を行く事ばかり。例えばこのグラス。ガラスはアトラム王国でも貴重で高価な品です。ですが日本では普通の家庭にもある物だと聞きました。その日本の進んだ経営学を学び、将来は婿と共にアトラム王国を豊かな国へとして見たいのです」
「そんな事を考えていたのか」
「王様、ソフィアは日本で遊ぶことも最初だけ、後は難しい本を読んだり、専門家に聞いたり、私も驚きました」
「姫は日本に残りたいと申すのだな」
「お父様が許してくだされば、日本の知識をアトラム王国の為に役立てたいと思います」
「そうか・・姫ももう20歳だ、婿を貰う時期なのだがな。ははは日本に魅せられたか」
「そうかも知れません。アトラム王国しか知らなかった時期と比べると、わくわくが止まりません」
「はぁ、寂しく思うぞ父は」
「お父様、ときどきゾリアス公爵様に魔道具をお借りして連絡いたします」
「そうであるか・・仕方ない」
「ゾリアス公爵、紙とペンを」
「はい、こちらにございます」
・・・・
「これをゾリアス公爵に渡す」
「これは・・」
「ゾリアス公爵を駐日大使に任ずる。公爵家は家督を継がせて欲しい」
「スメタナ王、受け賜りました。必ずアトラム王国の利益に繋げて見せます」
「頼むぞ。そしてこれを」ゾリアス公爵にもう一通渡す。
「これは日本政府宛ですね。姫様の留学を認めて欲しいとありますね」
「仕方あるまい。これだけ言われては」
「父上、姫は嬉しいございます」
「しっかり勉強して戻ってまいれ。期待しておるぞ」
「ソフィア、母も寂しいです。早く戻って来て下さいね」
「お父様、お母様、ソフィアはこのチャンスを見事に生かしてアトラム王国の発展に寄与できる姫となります。姫も寂しいですが、お待ち頂ければ新しいアトラム王国にして見せます」
「うむソフィア姫、国民全員でそなたの帰りを待つとしよう」
「ゾリアス公爵、姫を頼む、して日本に大使館を作る件なのだが早急に頼むぞ」
「陛下、畏まりました。お任せください」
・・・
「失礼します」
「おお、来たか、ミソラ準男爵と一行」
「はっ陛下お呼びと伺いまいりました」
「そう固くなるな。伝言が3つある」
「はい、承ります」
「1つはハイエルフ様からだ、「村にあそびにこい」」
「はっハイエルフ様はそんな言い方ではありませんよね」
「儂のアレンジだ。時間を見て会いに行って欲しい。なにしろハイエルフ様はミソラ達を気に入っているからな」
「そうですか・・日本国の講演スケジュールとの戦いになります」
「戦っているのか。ははは。次だ、ゾリアス公爵を在日大使に任命した。大使館も作りミソラ達や留学団の面倒も見てもらう予定だ」
「それはありがたいです。全て外務省経由ですから、そちらに疲れます」
「そして3つ目、我が娘ソフィアが日本に留学をして経営学を学びたいそうだ。ミソラ達も面倒を見てやって欲しい。それに歳も近いと思うのでよろしく頼む。ただし日本人や騎士爵の婿は要らないからな」
「承知しました。姫に近づく虫どもはこのミソラ・ロレ・・ミソラ・ローマン準男爵が燃やします」
「斬るのではなく、燃やすのか。ははは」
「お父様、なにを笑っているのです。ミソラの燃やすとは骨も残らない様に業火で燃やす事です。かわいそうです」
「姫よ、そなたが心がければ良い事である。ミソラ準男爵に面倒をかけぬ様にしてくれれば良いだけ」
「はぁーい」姫は不満そうだ。
「あまり遊んでばかりいると、ハイエルフ様に言うぞ」
「お父様、それはあまりです」
「冗談に決まっておる」
ミソラ達は王族コントを目の前で見せられていた。
「ミソラ達よ、私たちはアトラム王国に戻る事を決めた。姫をよろしく頼むぞ」
「はい、心得ました。それでお戻りはいつに?」
「明日か明後日には戻るつもりである」
「そんなに早くですか、まだ日本を少ししかご覧なっていないのでしょ。次はもう少し長めにして頂いて日本の温泉にでも行かれると宜しいと思います」
「温泉か。自衛隊が王都に温泉施設を民の為に作ってくれたぞ、その事を言っているのか」
「いえ王様、日本は様々な温泉がわき出し、観光の目玉となっています。その事を言っております」
「温泉は1つではないのか、次の来日が楽しみである」
帰る前から次の旅行が楽しみとか・・
ともあれ、スメタナ王一行は海上自衛隊に守られ、また民間輸送船団も引き連れて、アトラム王国に戻っていった。
スメタナ王の心残りは「ハイラム」をお披露目できなかった事である。
横浜を出港して、大島付近で船団合流を待っている間に、スメタナ王はチャッカリ大島上空をハイラムで飛び回り、警察と消防に魔獣出現の電話が鳴りやまない結果となった。
ただし、スメタナ王は満足していた。「ハイラムよ次も一緒に来ような」
などと物騒な事を言っている。
ありがとうございました。
姫が日本に残るようです。
ハイラム・・・お披露目して欲しかった。多分外務省に断られたのでしょう。
次回は帝都の現状になります。よろしくお願いします。
誤字脱字有難うございます。過去話で大丈夫ですので誤字脱字報告お願いします。