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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
124/251

第120話 帝国解体 その1

第120話を投稿します。

帝国解体の一歩が始まりました。

楽しみですね。

「総理、当壁総理。大変です。皇帝ガリル3世を捕らえました」

「本当ですか高野防衛大臣。なにがあったのですか」


「はい、途中経過しか報告に上がっていませんが、皇帝と帝国側交渉人の打ち合わせに、宰相・・サイネグ宰相が兵を引き連れ皇帝と交渉人を殺害しようと企んだそうで、交渉人と皇帝により排除されました。

 その後、なりゆきで日本に保護を求め、現在は陸自第5師団にて身柄を保護しているそうです。

 詳細な経緯はまだですが、防衛省は例の作戦実施を求めています」


「んっ高野防衛大臣、例の作戦とは帝都の占領と帝国貴族の逮捕だったような」

「総理、その通りです。皇帝がいない今がチャンスと捉えている様です」

「確かに組織的反抗は無いのだろうが・・どしたもんか。悩むな」

「私もチャンスなら今しかないと思いますし、帝都を占領してしまえば西側の皇帝に近い貴族たちも援軍が無い事に気づき抵抗を辞めるのではないかと思います」

「うむ・・そうか、やるしかないのか・・・許可しよう。本日18時の会見に資料を間に合わせる様に防衛省にお願いする」

「かしこまりました。直ちに実施します。これで失礼します」

 ・・・

「高野防衛大臣も忙しい人だな」と総理は呟き、佐野官房長官を呼ぶ。


「佐野官房長官。防衛省が帝国帝都占領計画を発動する様だ。戦争は直ぐに終わると国民に伝えたい」

「防衛省から資料は来るのですね。なら問題ないでしょう」

「うむそうだな、それで・・例の計画は進んでいるのかね」

「はい、半年前から総務省に特別チームを作り、終戦処理と戦費等の賠償について詰めております」

「よろしい、国会を通す準備と我が国に対する恩恵や利益部分の強調も忘れずに、そして時期を見て移住者についても募集も行う」

「ですが総理、その前に治安維持と日本国憲法を守らせませんと、その為の警察、海上保安庁の派遣が急務と思いますが」

「佐野官房長官。それについては防衛省の作戦の中に入っていた筈だが」

「そうでした。「ストーム作戦」の2項と3項がそうでしたね。うっかりしていました」

「佐野官房長官も多忙だが、もう少しで帝国の事は終わる。頑張ってほしい」

「かしこまりました」


 こうして防衛省はドーザ大陸方面隊に対し「ストーム作戦実施」の下命を行った。


 ストーム作戦は帝国全土を対象にした市民以外の貴族や悪徳商人の拘束。奴隷の保護。及び奴隷犯罪者の処罰について取り決めた作戦である。

 貴族は皇帝の臣民として全て拘束し、一部の日本に協力的な貴族は即時解放、財産没収も無し。中立立場の貴族は、拘束し解放、一部財産の没収、そして日本敵対的貴族は拘束、財産没収とする。そして裁判を受けさせ投獄となる。

 また帝都を含む各都市に自衛隊を派遣して治安維持を行う。後に警察機構と入れ替わるが、それまでのテロ等も自衛隊の対処項目である。


 ・・・・

「師団長、ストーム作戦開始が発令されました」

「そうか、準備はできているな。作戦司令室に行こうか」

「はい」

 方面隊中野総監から命令を受理した陸自第2師団団長の平沢陸将は呼びに来た、幕僚長中野1等陸佐と共に、作戦指令室に向かう。

「団長、いよいよですね。これまでの努力が実るときです」

「そうだが、帝国民に危害が及ばない様に細心の注意をお願いする。そして悪徳商人や貴族の確保だ。これが進まんと統治はできんからな。地方で蜂起などとの悪夢は要らぬ」

「その通りですね。早く平定して治安回復を優先させましょう」


 ・・・

 二人は作戦指令室に入って来た。

「第5師団長、南野陸将を呼び出してほしい」オペレーターに伝える。

「出ました」

「今回は共同作戦、よろしく頼む」

「こちらこそ、平沢陸将、ドーザ大陸方面隊結成以来だな」

「そうだな、ようやく終わりに近づいてきているな。ここで我々の共同作戦力を見せてやろう」

「もちろんだ、それに第5師団は帝都に協力者ができた。これを使い帝都内の抵抗は排除する」

「例の第101特殊普通科連隊だろう。それは理解している」

「いや、交渉係の騎馬隊副官が帝都で治安の指揮を執っているから、それを支援しつつ、第101特殊普通科連隊の情報により貴族と商人を拘束していく予定だ」

「了解した、統幕の作戦計画に従っていれば良いのだな」

「概ねその通りだ、我々は事前に協力者に連絡をして間違って抵抗ない様に手配しておく」

「では、そうして欲しい」

「そうだな、では対処開始するとするか」

「もちろん同意だ」


 ・・・・

「第7師団から入信」

「おい混ぜて欲しいと思うぞ」

「北野陸将、帝都攻撃チームの打ち合わせだ。(笑)」

「知っている。だが我々も西側都市の制圧を開始するからな。帝都の予定を知りたいと思う」

「了解した。第7師団にも詳細なデータは行っていると思うが、我々第5師団が作戦に先立って、帝都内協力者に連絡を付ける。なので作戦開始は明日8時で予定している。平沢陸将もそれで宜しいか」と南野。

「問題ない。手順は作戦通りで良いのだな。第2師団は南側なので帝都内部の事は情報でしかわからん」

「第2師団なら問題ないでしょう。すぐに市内中央広場で第101特殊普通科連隊と合流して、北と南で探索、それに2個連隊を出して城の探索と接収を行う」

「我々も同様に2個連隊で城探索を行う。他は市内探索と治安に全力をつぎ込む」

「第7師団は、同様のタイミングで西側都市制圧を開始して欲しい」

「了解した、第7師団も同時に制圧を開始する」

「以上で宜しいですか」と南野。

「大丈夫だ」と平沢。

「では同時刻に合わせて第7師団も攻略に出発する」

「北野陸将、第7師団に対する航空機支援は当分ないと思うが、大丈夫か」

「問題ない。それより、第5師団が航空基地建設も行っているのだろ、早めに仕上げて欲しい。補給路が陸上だけだと、われわれ遠征団は心もとない」

「北野陸将、我々第5師団が構築するが、第2師団施設大隊と第3施設団も向かっている。問題ない」

「了解した」

「では方面隊の作戦開始カウントダウンに従って行動を開始する」「武運を」「武運を」


 こうして3師団合同の遠隔会議は終了して、それぞれの作戦準備に入った。

 なお、ドーザ方面隊からの下命、「ストーム作戦」は帝都解放と貴族の捕縛、奴隷商人の捕縛、そして奴隷の救出が人道的に行われる。

 また、皇帝居城の接収と城内奴隷エルフ解放、人質救出も行われる。

 作戦開始時間は、翌朝7時である。


 ここは第5師団の簡易会議室である。

「さて、皇帝にトーマス男爵、予定外ではありますが交渉の続きを始めたいと思います」

 と第5師団、副団長崎田陸将補が始める。参謀長田森1等陸佐も同席している。

 すこし遅れて第5師団長南野陸将が入室する。「遅くなりました」


「来て早々なのですが、参謀長ちょっと良いか」「はい」

 二人は廊下に出て、「明日帝都攻略を行う、ついてはリエラ殿に抵抗は無用と伝えて欲しい」

「了解、直ちに向かいます」


「お待たせした。では帝国停戦交渉から帝国敗戦処理に移りましたが異論はありますか」

「ない、儂も覚悟の上だ。重臣に裏切られもう維持はできないと考えておる」

「皇帝・・・」トーマスが声をかける。

「では、トーマスさんにお渡しした条件の表に付け加える事はありますか」

「いいや、何もない。帝国は日本に無条件降伏する」

「そうですか・・でしたら条件は少し変わりますが宜しいですか」

「そうか、トーマス続きを頼む」

「皇帝、承知しました。南野殿、以前に頂いた交渉内容についての異議はありません。

 ただし、ひとつお教え頂きたい。帝都より我々騎馬隊が皇妃と皇女をお守りしてリリコネに向かった筈なのだが、連絡が一度も来ない。何か知っているのなら教えて欲しい」


 ・・・・

「では少しお待ちください、日本政府と話をしてきます。それからで無いとお伝えする事はできません」

「わかった、何か知っているのだな、待つので伝えて欲しい」と皇帝。

 と言い、南野陸将が部屋を出て、作戦指令室に入る。

「第5師団本部より方面隊、送れ」

「こちら方面隊殿山幕僚長です。送れ」

「こちら第5師団本部南野です。保護した皇帝より、皇妃と皇女及び騎馬隊長より護衛の副長達の情報が欲しいとの事、確認して貰えるだろうか」

「南野陸将、騎馬隊生き残りについてはミルドにて保護しています。引き渡しもできると思いますが」

「いや抵抗勢力になられても敵わんから、落ち着いたところで良いと思う」

「皇女と皇妃については日本で生活を始めている。平民として」

「了解。保護しているとだけ伝える」

「それでお願いします。方面隊以上」

「第5師団本部、以上」


 南野陸将が作戦指令室を出て会議室に入る。

「お待たせしました。我々が直接かかわった事ではないので確認をしてきました」


「・・・・で皇女達は殺されたのか。・・・」

「皇帝はリリコネのユリナリス商会はご存じですか」

「知っている。確かリリコネの代表もしている人物と思うが、商会の代表者、確かユリナリスだったかな」


「はい、ご存じで助かります。では我々に入っている情報をお伝えします。

 皇帝が皇妃と皇女を帝都から退避させようとしましたね。

 その時、何方が手配されましたか」


「それは、サイネグ宰相に手配・・・あっ」


「そうです。その時、騎馬隊も10名程護衛されていますか?」


「その通りだ。副隊長のサリエルと9名を護衛に付けた。宰相から目立ってはならないと言われ」


「そして、一行はリリコネに着き、ユリナリスの手配でホテルグランディアの最上階に宿泊・・・

 問題はこの後です。

 一行は夕食に入れられた眠り薬でホテルから運び出され、ユリナリス商会の倉庫に運ばれました」


「なっなんと・・連れ去られたと言うのか」と皇帝。

「警備は如何したのだ」とトーマス。

「二人ともお待ちください。まだ先があります」


「眠らせられた一行は、ユリナリス商会により奴隷市場に売られる所でした。

 我が軍の潜入部隊が発見し奴隷市場を第7師団が急襲して、全ての奴隷と捕らわれた者達を救出しています」


「日本に助けられていたのか・・」とトーマス。

「それで、妃と娘は・・・」

「皇帝、もしこのまま帝国が日本に敗北するとどうなりますか、以前のルミナス王朝の王やお妃はどうなりました」


「儂が・・処刑した」

「もし、ガリルさんが処刑しなくても民衆によって滅ぼされるかも知れません」

「そうかも知れない」


「日本政府は奴隷を全て解放してある街に住まわせています。この度保護した奴隷達は全てその街で暮らしています。最初は勉強からですが、あるエルフなどはバスを運転して毎日働いています」


「誤解して欲しくないのだが、儂は奴隷などと言う制度を認めていたわけでは無い。

 奴隷も必要だからと言う事なので、ルミナス王朝にあった奴隷制度を人間以外に広げただけなのだ。

 いい訳ではない。それにより帝国を支える労働力が確保できると思ったのだ。

 決して慰めものにするつもりも、命を奪うつもりも無いのだ。

 捕虜になった帝国兵士達も奴隷になり、鉱山での労働をする罰として行ったまでなのだ」


「皇帝、臣民である私が言うのも無礼であるとは思いますが、皇帝が考えている奴隷制度と重臣達が行った奴隷制度は大きく違います。特に獣人などは殺害しても罪に問われないと皇帝名の御触れにあります。

 これは如何に」


「そうか、そんな事に・・・奴隷に関する政策についてはサイネグ宰相とドメスアルム領主長公爵に任せていたのだが・・そんな事になっているとは。だが全て皇帝ガリル3世の責任である。何とでも罰を受けようぞ」


「それで先ほどの話なのですが、皇帝のご家族は日本の東京と言う首都で暮らしています。今はいろいろ勉強して頂いて、仕事を見つけて暮らしてほしいとの配慮です」


「そうか・・家族は生きておったか、しかも日本で暮らしていると・・・ありがとう。全てにおいて日本には敵わないと実感した」

「それから、トーマスさんの部下については現在ミルドにて預かっています。戦後にお返しします」

「あいわかった。生きているだけで充分である」


 ・・・・

「では肝心なお話をさせて頂きます。日本は明日帝都を占領します。皇帝不在でもあり、警備する兵士も少ない事から、交渉により打開しようと考えていましたが、皇帝を保護する事になり状況が大きく変化しました。

 そこで、先にトーマス卿と話した案を元に実施をいたします。

 具体的には明日から始めますので、宜しければ皇帝ガリル3世自書による命令書を発行して頂けると助かります。無駄な死人が出ない事になります」


「して、何を計画されているのか教えて頂けますか」とトーマス。


「帝国は、これだけの話でも相当腐っている事が判明しています。リリコネのユリナリス商会をアリマスナリム商会が操っていたと言う事が判っています。それに何人かの貴族がこれに加担をしています。

 何しろ奴隷市場で買い物するのは貴族ですから。

 ですので、これらの商人や貴族を全て拘束します。もちろん一般民については我々に抵抗しない限り、なにもしません。そこで皇帝の書が生きてきます」


「アリマスナリム商会と言えば帝都を代表する大商会、あのアリマスナリムが儂の家族を・・・」

「もちろん良い商人も悪い商人もいますので、捕まえ状況調査して裏稼業が無ければ解放します」


「わかった・・・あの大商会がサイネグと・・・リリコネのユリナリス・・許せん」


「皇帝、私は前から不思議に思っていました。なぜ島の人々に人間らしい生活をさせたいと言っていた皇帝がこの帝国の腐敗を望んでおられたのか、ほんとに不思議でなりません」

「トーマス候、全ては儂の責任である。望んでいない結果が現れたとしてもそれは儂の、儂一人の責任であると思う。だから・・・言い訳はしない」


「では、帝都解放の為の親書を頂けますか。それにより腐った貴族と商会は駆逐され、残った商会は健全な物となります。また全ての奴隷を解放して日本が保護します」


「よし、スルホン帝国は日本に全てにおいて敗北をした。抵抗しない様に書こう」


「では、皆さんはしばらくここで生活して頂きます。ご不自由おかけしますがお許しください。勿論貴族であるトーマス男爵もここにて保護されます」


「わかりました」「わかった、裁判でも受けよう」「それはもう少し先になります」


 ・・・

 南野陸将は皇帝から親書を受け取ると、コピーを各隊に渡し、FAXで関係部署や第7師団も第2師団にも送った。

「早速で悪いが田森参謀長もリエラさんにも伝えて欲しい。翌朝の作戦の要だ」

「了解しました。直ちに向かいます」

 田森1等陸佐は帝都の橋が渡れるように(新)73式小型トラック(通称:パジェロ)に12.7mm機関銃M2を装備した車両3台で帝都に向かった。

 当然帝都北門で止められる。警備兵は剣と槍で威嚇してくる。

 田森は車両を降りて、皇帝の親書を見せる。

「皇帝ガリル3世より預かった親書である。リエラ殿に会いに来た。通せ」

 門の警備兵は慌てて開門をする。通常は横の通用門しか使用していない。

「ここに騎馬隊がいるはずだが、港のリエラ殿まで案内を頼みたい」

「はっ呼んできます」

 ・・

「敵襲か・・」

「騎馬隊兵か、私は日本の田森と言う者だ、リエラ殿までの道案内を頼みたい」

「た・も・り・聞いた事があるような」

「これを見て欲しい」皇帝の親書を見せた。

「直ちにご案内します。ついて来て下さい」

 田森は門に通じる橋の強度を確かめながらゆっくり進む。

 どうにか2トンの(新)73式小型トラックは通れるようだ。

「明日の作戦は決行だな」と田森は無線で第5師団に報告する。


 ゆっくり先行している騎馬隊兵は、急に速度をあげたパジェロにびっくりして、馬も速度を上げさせた。

 幾度か角を曲がり大通りに出て、そのまま湖に向かう。

「田森殿、到着しました」

 湖の港施設に急いで入っていく。

「なに、田森殿が・・」外まで声が聞こえる。


「田森殿、急に来られたから驚きました。皇帝とトーマス隊長は無事ですか」

「はい、リエラ殿無事です。今日はこれをお持ちしました」

「皇帝の親書ですね。花押紋が皇帝の物です。なになに・・・解りました。警備兵と騎馬隊を全員集めますのでお待ちください」

「よろしく頼みます」

「集まるまで時間がかかります。中でお茶でも」

「はい、ありがとうございます。ですがここで待たせていただきます。変に騒ぎにでもなると大変ですからね」

「そうかも知れません」


 ・・・

「田森殿、そろそろ集まる時間です」

 大通りからぞろぞろと兵が集まってくる。


「皆の者整列。これから話がある」

 集まって来た兵達は部隊ごとに整列する。

「初めまして、日本軍の田森と言います。(ざわざわ)これから大切なお話しますので良く聞いてください」

「皆、田森殿の話をよく聞いて欲しい。そなた達の命がかかっている話だ」とリエラが補足する。


「リエラ殿ありがとう。皆さんここに皇帝の親書があります。皇帝は本日重臣の裏切りにより殺められる所を、このリエラ殿とトーマス殿によって助けられ、そのまま、今朝見たと思うがヘリコプターと言う空とぶ乗り物で日本が保護をしている。


 では皇帝の親書を読み上げる。

「皆の者、余は皇帝ガリル3世である。日本とスルホン帝国の戦いについてはスルホン帝国の敗北を認める。ここに日本軍が明日帝都に入る事になるが、決して邪魔や抵抗をしない様に通達する。守る事を命ずる」


 とあります。突然で戸惑っていると思いますが、皇帝はこの国を日本に任せて作り直したいとの考えです。

 明日我が軍は帝都に入り皇帝の城を接収します。

 その際に門を開放して市民を抑えて欲しい。騒動が起これば死人が出ます。

 今は、その必要がありません。我々は皆さんの日常を奪うつもりはありません。

 ただ、我々の法の元に明日より入りますので、従って頂きたい。我々の力を見くびっている者もおられると思いますが、我々はこの武器以上の物を持って入ります。抵抗しても無意味です。

 帝国軍人としての規律を明日は見せて頂きたいと思います。以上です。リエラ殿試射しますか」


「湖に向けてお願いします」

「目標湖、連射10発用意、てっー」

 ダダダダと湖の先2Km位に着弾していく。帝国兵はしゃがみ込んでいる。音が怖いらしい。

「用具収め。安全確認」


「よろしいですか。先ほどの話は脅しではありません。明日は北と南から侵入します。皆さんは開門後港を警備願います。逃げ出す貴族や商人がいれば全て皇帝の名の元に逮捕監禁してください。

 後ほど受け渡しに来ます。よろしくお願いしますね」

 (ざわざわ)


「皆の者、宜しいか逃げ出す者を全て捕まえよ。帝国を腐敗させた本人だ。逃すな」とリエラ。


「リエラ副隊長殿、質問があります」

「どうした第2小隊長」

「我々は負けたのですか」

「皇帝の親書にある通り、我々は負けた。たが死ぬことはない。いやかえって新しい秩序ある街を作るのは我々だ、間違っても妨害をしない様に。

 生きて次の街を、新しい国を作ろう。それだけの気概をスルホン帝国兵士にはある筈だと確信している。宜しいか小隊長」

「はい、心得ました。腐敗した逃亡者は一人残らず捕らえます」


「ありがとうリエラ殿、明日、北と南の各門は我々が開門後閉鎖します。

 逃げ道は港と通用口だけですので、皆さんは全隊を持って港の封鎖を、我々は通用門を閉鎖します。

 「怪しい者」はとりあえず逮捕して頂きたい。後で皆さんと取り調べします。貴族も爵位にかかわらず同様です」


「その任務引き受けました。良いな皆。皇帝の代理として日本軍を導き入れ、帝都からは逆にねずみを1匹も逃すな。以上だ」


「リエラ殿ありがとう、ところで親衛隊の掌握はできていますか?」

「田森殿、それが問題なのだ。あ奴らはプライドが高く騎馬隊の言う事など聞かぬ」

「そうですか、ではリエラ殿親衛隊に案内して頂きますか」

「城の西門が本部になっています。行きましょう」


「では、お乗りください」

 リエラもパジェロの後部座席に座る。


「全車前へ、目標城西門、到着後ただちに展開、警備行動」「「了解」」3台のパジェロは城の西門に向かう。

「停車、展開。安全装置解除。命令あるまで待機」

 田森とリエラは城の西門親衛隊詰め所に向かう。


「騎馬隊リエラだ、隊長を呼んで欲しい」

 親衛隊はトネグ副隊長が隊長殉職の為に持ち上がっていた。


「トネグだ、何用なのだリエラ。そやつは誰だ。敵だな。今朝の変な飛ぶ機械と言い、変な兵士共と言い。何なのだお前たちは」トネグは相当怒っている。

 皇帝救出劇も親衛隊に知らされずに、城北門と南門を敵兵に制圧されてしまい、西門には犠牲者迄出てしまった。

「こちら日本軍の田森殿です。親衛隊隊長のトネグ殿です」


「始めましてトネグさん。今朝は失礼しました。一刻を争うもので、皇帝はご無事です」

「皇帝が・・」

 リエラが尋ねる。「トネグさんは今朝の騒動ご存じですか」


「聞かされていない。各城門を大人数で制圧されて、この西門では妨害しようとした親衛隊員が死んだ」


「それは不幸な事です。起きた事をお話しします。

 私とトーマス隊長が帝国と日本との交渉を行っている事は聞いていますね」


「聞いている」


「今朝ですが皇帝に謁見の申し込みをして、お会い頂きました。そこにサイネグ宰相が買収した帝国兵を連れて皇帝を暗殺しようとしたので、私とトーマス隊長は体を張ってお守りしました。

 事前に日本より逃げられなくなった時は信号を上げる様に渡されていましたので、使用した所、城の各門から日本軍が入り、皇帝を保護して連れ去りました。皇帝のご無事は保証します」


「本当か・・それは。宰相が・・それで城内警備より門警備を増やさせたのか」


「そうですか・・道理で城に入った時に親衛隊の皆さんが少ない様に見えたのはそれなのですね」


「そうだ、宰相からの指示だ」「それで皇帝が・・」

 ・・

「親衛隊の恥だな。で、それとこの日本軍に何が。まさか・・」


「ではこれをご覧ください」と田森が皇帝の親書を渡す。

「こっこれは・・・」「皇帝の親書です」リエラが答える。

「負けたのか・・帝国が・・」


「トネグ隊長。その通りです。皇帝のお言葉に従ってください」


「わかった・・親衛隊宿舎が全て破壊されてから、この日が来ると思っていた。一方的で抗えない攻撃は神のいかずちかと思う程だった。それでトールスト隊長が・・・」


「日本と戦争をしたのはスルホン帝国です。我々は平和を求めていました」と田森。


「そうかも知れない。帝国は盲目的に攻撃する事があるからな」

「では明日。よろしくお願いします」


「だが、兵士を抑えきれないかも知れない。何しろ日本に一方的に殺害されたのだからな」


「私がよろしいですか。もし、明日抵抗する事があれば死体が増えるだけです。

 逆に帝国が日本によって新たな国に生まれ変わる瞬間でもあると、生きていれば良い事があります。

 トネグさんは兵士達を説得して頂きたい。無駄な死を望む事は無いと思います」

 田森はさらに説明を続ける。


「そうか・・少し良いか。我々の銃と言う物。これは30m以上飛ぶ。そなたの持っている物も同じような物であると見るが、どの程度飛ぶのだ」

「お見せする方が宜しいのでしょう。向こうの壁で宜しいですか」


「3名整列。10発連射許可。標的向こう壁。構え。用意。てっ」小銃から連射で10発が連続で壁を削っていく。

「収め。安全装置確認。戻れ」


「田森殿・・・皆を説得する。勝てる見込みがない事は判った」


「トネグさん。人の命がかかっています。よろしくお願いします」

 この後トネグは親衛隊員全員を集め、皇帝の親書について説明すると共に日本の銃について説明した。


「見て見ろ、あの位置からここに撃ってこれだけ壁が削られている。しかも連射だぞ・・。

 皆も銃を持っているからと反抗すると反撃で死ぬぞ。覚悟しなさい」


 自衛隊が壁に開けた穴を皆で見て震える。凄すぎる。

「しかも馬車にもっと太い銃があったぞ・・あれはどの位なのだ」

「いやそんな事より、帝国最新の銃がこの程度だ、最初から勝敗は決まっていたのではないか」

「そういや、第1師団から第5師団まで全滅したと聞いている」

「いや俺は帝国艦隊が全滅したと聞いた」

「城に太い矢が刺さった時にもう負けていたのだよ」とトネグは苦笑いする。


「確かにそうだ。「いつでも狙えるぞ」と言う警告なのに誰も見ない振りを」


「そうだ、あれだ」「日本軍は狙った所に爆弾を落とせるのだろう。それでワイバーン基地が全滅と聞いた。他に被害もなくそこだけ破壊されたと・・立ち入り禁止に俺たちがしたが、あれは人のできる事ではないぞ」

「宿舎にも正確に・・・しかも他の建物もあるのにそこだけ・・」


 翌朝、戦術コンピータが表示するカウントが0に近づいていく。

 野営地から目標までの時間がマイナスで表示される。

 すでに第2師団と第5師団は作戦行動を開始している。

 第7師団は全隊発進している。


 ・・・・

 第2師団は先行させた(新)73式小型トラック改(パジェロに12.7mm機関銃M2を載せた)にて帝都南門を開門させて6台、帝都内部に入っていく。

 (新)73式小型トラックは門から50m離れて、人払いをする。

「この門を破壊します。危険ですから家の中に入っていてください」とスピーカーで流す。


 ・・・

 第2師団は第2戦車隊の90式戦車から1発を放つ。門が吹っ飛ぶ。

 帝都を防衛する門なので、太く大きいのだが、戦車砲1発で両方の扉が吹き飛ぶ。

 実は次に門にかかる橋を戦車砲で吹飛ばす予定である。戦車僑を渡すのに軟弱な橋が邪魔になるのだ。

 両岸の強度は十分である。第2施設大隊から07式機動支援橋が堀に掛けられる。長さは10m程度で2本をかけた。

 第5師団も第5施設大隊が拝領した07式機動支援橋を架けていく。


 帝都の南と北の門には重さ60トンまで耐えられる戦車僑が2本づつ掛かり、90式や10式が次々と帝都に侵入していく。もちろん機動化普通科連隊の22式装輪装甲車(22APC)も中央広場に集まってくる。

 第101特殊普通科連隊の第1トリマ中隊長が最新の帝都地図を各隊に渡し、貴族と商会に丸と名前が書きこんであるコピーを複数枚渡す。人物については写真付きである。


 第2師団、第5師団の各機動化普通連隊は作戦通り、貴族や商人達を拘束していく。

 また、宰相の自宅も捜査が入り財産については没収していく。

 同時刻城に対する接収も始まっていた。

 親衛隊も抵抗する事無く、陸上自衛隊の隊員達を遠くから見ているだけであった。

 騎馬隊リエラは、港に逃げ込む貴族を次々と捕まえ、牢に入れていく。

 宰相から貸し与えられた、エルフに書いてもらった城内部の地図にある通り、通信室を抑え通信奴隷のエルフ達を保護した。その後、地下牢に向かいエルフ達の家族を牢から保護したのだが、弱っており全員が宗谷特別行政区の自衛隊病院に送られることになった。

 ・・・一部の家族は間に合わなかった・・・


 奴隷エルフ達を送るためにドフーラからは方面隊の方面隊飛行隊が城の中央広場にオスプレイを迎えに送っている。各師団飛行隊からは、湖に逃げる者がいないかUH-60JA(ブラックホーク)数機による監視を続けている。もちろんキャラ村からもボートによる哨戒が続いている。


 こうして帝都は朝から自衛隊による車両が走り回り、次々と貴族が逮捕され連行されていく。彼らは要塞都市ミルドに作られた収容所に入れられ、しばらくは尋問の日々を送る事になる。


 ・・・

「総理お時間です」


「国民の皆様、異世界と思われる知らない世界に飛ばされ、突然スルホン帝国との戦争に巻き込まれ大変ご心配をおかけしていたと思います。


 アトラム王国との国交条約もようやく締結までこぎつけ、お約束の食料危機は2か月もすると回避できる様になります。

 ただ、いまだ戦争の渦中に巻き込まれ、景気は好調ですが、消費動向はインフレを抑制できていません。

 これも戦時下における不安感がある為であると分析しております。


 国民の皆様に申し上げます。

 本日10時よりスルホン帝国首都である帝都に対し無条件降伏を皇帝ガリル3世が意思表示し、陸上自衛隊が帝都の治安維持に入りました。

 なんとか自衛隊の皆さんのご努力により、長い争いは本日終結を迎える事が成りました。

 これも国民の皆様の賢明なご判断によるものと確信いたしております。

 先々の不安もドーザ大陸を開発する事による燃料不足、資材不足解消、そしてアトラム王国開発による食料輸入の目途が立ち。危機も先が見え始めています。

 この先は、ドーザ大陸やアトラム王国に対する輸出を考え、世界ネットワークを作り、全ての人々が飢える事の無い様に調整していきたいと思います。

 いろいろご質問もあろうかと思いますが、まだ現地では作戦の継続中であり、機密もあります。


 ここに今の時点でお話しできる事だけ、ご説明いたします。

 昨日、帝国の皇帝ガリル3世は陸上自衛隊により救出され、それが元で帝都解放作戦を短時間に実行する事が叶いました。

 これからはドーザ大陸の広大な大地及び広大な海を元に様々な産業や農業が発展していく事でしょう。


 国としても、この大地に入植希望者の募集をして、更なる発展を目指して行くつもりでございます。

 ただし、その前にドーザ大陸に対して日本と同様な憲法を含む法を根付かせ。警察機構による取り締まりを実施し、平和が担保されたと判断できた場合にのみ、入植を認める所存でございます。

 いましばらく、ドーザ大陸における治安活動に注目して頂き、日本の新たな領土と、旧帝国領全てが友好な関係になる事を望むものです。

 現在は帝国における犯罪者の逮捕と尋問を行い、最終的に裁判を行う事をお約束いたします。


 わたくしのご報告は以上になりますが、後日、決着がついた所から防衛大臣より発表があると思います。

 ありがとうございました。


 そのニュースは12時に合わせて開かれた総理会見の特別放送で各チャンネルは同じ内容となった。

 ただし、例の7チャンネルを除いてではあるが・・・強いぞ7チャンネル。

ありがとうございます。

今回も12,248文字 だそうです。読み返すと不要部分が沢山・・・

語彙が少ない・・痛感しています。

誤字脱字報告いつもありがとうございます。些細な事でもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 『帝国』の大掃除開始!! 皇帝も、妃と皇女二人の無事を知って、その経緯に憤りと安堵が最後の一押しとなったかな。 さて新たな帝国の統治は連合軍占領下の日本を手本に日本独…
[一言] これで、日本とスルホン帝国の戦争は実質的に終了。 元凶だった宰相サイネグは生きて捕らえられたようですが、もはや処刑を免れそうもありませんね。
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