第117話 日本街と国交樹立記念式典
第117話を投稿します。
金曜日の大掃除で筋肉痛が・・・日曜日も疲れで半日以上ぼーっとしていました。
ですが約束したので頑張って知力0までに・・
なんと18000文字近くになりました。会話形式は長くなります。
大会議室でミソラ達やハイエルフ族長達とお別れをしたソミアちゃんは、まだ半泣きのままで佐竹3等陸尉に連れられて、宗谷特別行政区の建物3階に降りて来た。
「さっソミアさん、ここで手続きをします」
「佐竹さん、ここが日本街の住人になる所ですか」
「そうですよ。ソミアさんは難民と言う事で、ここで教育と支給品と支給金額の手続きをします。
そうすると、1か月間の日本語教育に2か月間の職業訓練、そして勉強期間3か月間の宿舎と衣服、そして3か月分のお金が支給されます。後で日本街を案内しますね」
「よろしくお願いします」
ソミアは恐る恐る3階のドアに入っていく。
女性の担当者が「こっちこっち」と手招きする。
「ソミアさんね。そこに座って。あっ自衛官はそちらに」「はい」
「ソミアさん手続き終わるまで付き合いますから、わからない事があれば聞いてください」
「佐竹さん、手続きはこちらでやりますから、座って待ってて大丈夫ですよ」
佐竹は居場所を失った。
「では最初に生まれはドーザ大陸のどちらですか」
「はい、元々ルミナス王朝の王都にいましたが、しばらくして帝国が攻めて来て、人間以外は奴隷にされると噂が入り、いつまでも母が戻ってこないので、隣のミミとソミリア街に逃れようとして商人に捕まり、奴隷紋を・・・それからいろいろ連れていかれ、盗賊に会い私とミミは逃げられて、東の山脈を南から回って森の中をさまよっていました」
「それで、半魔人化してミソラさん達に助けられたのですね」
「はい」
「お母さまとはそれっきり?」
「はい、いつまで経っても戻ってこないので捕まったと思い、ミミと逃げました」
「ミミさんもエルフ人ですね。ミミさんのご家族を聞いた事はありますか」
「いえ、ミミと家族の話はしませんでした。寂しくなるから」
「すいません。思い出させる事を言いました。これも必要な事ですから許してください」
「いいえ、奴隷紋を消してくださった事だけでも感謝しています」
「はい、ありがとうございます。では続けますね。お歳はいくつですか」
「はい、150歳は超えていると思います」
「正確には思い出せないですか」
「逃げ回っていた時には、もう数えるのを辞めてしまって」
「わかりました。大体150歳ですね、それで登録しておきます」
「お願いします」
「では、次に希望を聞きます。やってみたい仕事とか、できそうな仕事とかありますか。今は無くても職業訓練までに決めて頂ければ良いですから、とりあえず希望だけ聞きます」
「あのーミミも私も成人したばかりで、仕事を決めていなかったので良く分かりません」
「そうですか。逃げるのに懸命ですから仕方ない事です。帝国で通信奴隷をなさっていたエルフの方々は、レストランの給仕とか、ホテルの従業員とか、空港の警備や航空会社の地上職員とかいろいろです」
「良く分かりません」
「わかりました。職業訓練が始まるまでにいろいろ見て、この仕事がしたいと言うのを決めてくださいね。
そうしたら、その職業に会う訓練を受けられます」
「仕事するとお給料が貰えるのですか」
「ええ、そうですよ。最初の1年は決まった額になりますが、それ以後はその会社の内容によって上がります。仕事の内容によっても金額は変わります。獣人族でしたら、力仕事の給料は高めに設定されています。
各種族の特性が出る仕事は高めが設定されていますよ」
「そのーエルフならどれが・・」
「えーとエルフさんなら、レストランや酒場の給仕が給料一番少ないですがチップが入ります。次がホテルの係員ですね。
それも客室係は低いですが時間も決まっているので、他に勉強したい事があるエルフさんには人気です。
ホテルですと他にはフロント係、接客担当、レストランなどいろいろあります。
フロント係が時間は不規則になりますが給料は一番高いと思います。
エルフさんが働いている仕事で一番給料が高いのが空港の地上職員です。
これは試験があり合格しないと仕事に入れません。次が空港警備ですね。
これも力が無いと無理かと思います。この様にいろいろありますよ」
「難しいのですね」
「そんな事はありませんよ。希望が決まれば職業訓練が2か月受けられます。
そうそう、車の免許も取れますからバス運転手のエルフさんもいますよ。少ないですがね」
「わかりました。日本語覚える1か月間で、いろいろ見てみます」
「はいお願いします」
・・・・
「手続きは終わりました。
これが特別滞在許可書です。無くさないでください。
警察や自衛隊の方から見せてくださいと言われたら見せてあげてください。
不法入国者ではないとの証明になります。
それから、これが滞在する宿舎の番号と鍵です。3か月間は勉強期間なので1人部屋ですが、3か月過ぎたら宿舎の大部屋か個人で借りた部屋を選ぶことができます。種族と男女別になっています。
では3か月間は難民の勉強期間と言う事で1週間に2万円支給されます。ここに取りに来てください。
今日から1週間分の2万円です。食事は3食、宿舎と教室に付属した食堂で出ます。
教室と食堂はこの建物の隣になります。隣の食堂は昼しかやっていませんので気を付けてください。
それと銀行口座作ると便利ですよ。
強盗はいないと思いますが、もしそんな目にあったら警察に届けてください。
住民全員の写真がありますので犯人は直ぐにわかります。貴方もそんな事はしないでくださいね。
追放となりますから」
「はい頑張ります」
「では手続きは以上となりますので、宿舎に行きがてら、そこの自衛官に案内して貰ってください」
「はい、いろいろありがとうございます」
「新しい人生。楽しんでくださいね。では早速街に出てみてください」
「はい」
ソミアは日本式に礼をすると、佐竹と一緒に建物を出た。
「ソミアさん、事務的な対応でしたが大丈夫でしたか」
「はい佐竹さん、良くして頂いているので文句などありません」
「そうですか、良かった。ここが街の中心部になります。この建物覚えてくださいね。
これが宗谷特別行政区の地図です。覚えるまで無くさないでください」
「有難うございます。でもこの街、帝都より大きいですね」
「そうですね。空港に自衛隊の駐屯地や基地に、向こうが港で沢山の船が荷物を運んでいますよ。獣人も荷揚げの仕事をしています。正直、力持ちで助かっています」
「お店もホテルもたくさん。道が綺麗で車も沢山走っていますね」
「ええ、でも首都東京はこんな物ではありません。私も地方出身なのですが、東京や大阪では毎日お祭り程の人が出ています」
「お祭りなのですか」
「いえ、田舎はお祭りぐらいしか人が集まらないのですが、大都市は毎日がお祭りのような人出です」
「ここも十分に人が多いです」
「そうですね、ここも人が増えました。エルフにドワーフ、獣人はいろいろと、それに日本人と、確か最新統計では5万人が住んでいると聞きます」
「エルフはどの位いるのですか」
「確か・・・エルフ族は8000人位と思います」
「意外と多いですね」
「ええ、避難した村ごと来たり、難民として帝国から逃げて来たりと多いのです」
・・・
「早速ですが、ソミアさん。お財布買いましょうか」
「さ・い・ふですか・・」
「お金をしまう袋です」「ああ」
「ここが100円ショップですから、必要な物はここが一番安いです」
佐竹は100円ショップに入っていった。
「ソミアさん、最初はこの袋などはどうですか。透明で無い物が良いので」
「これ可愛いです」「はは」
佐竹は日本でも有名なキャラクターがついた袋を選んだ。
「他には歯磨き粉にシャンプーに洗顔石鹸に綿棒と・・・いろいろありますが、宿舎にもあります。合わなければここで買ってください」
「いろいろありがとうございます」
「次に服屋さんに行きましょう」
「ソミアさんあれが信号機です。道を横断する時に確認します。今は赤ですから止まって。青になったら渡ります。見た事無いと思うので注意してくださいね」
「はい、青で渡るのですね」「そうです」
・・・
「ソミアさん、今変わりましたよ。車が止まっているのを確認して渡ります」「はーい」「走らなくても時間はありますよ」
・・・
「ここです。日本でも有名なショップですよ。安くおしゃれしたければ、ここをお勧めします。
最初は服に下着も靴下と靴もくれるのですが、そのデザインが・・・みなさん2週間くらいでここに買いに来ます。ははは」
「この服よりましだと思います」
ソミアの着ている服は結構ボロボロである。
「ええそうかも知れませんが、皆さん買いに来るのでお知らせしておきます」
「有難うございます」
「ソミアさん、他にもフルーツショップにケーキ。レストランなどがありますが、最初の内はお金使わないで貯めてください。衣食住付なのでお金使わないでも生活はできますから。
それからここが銀行です。ハンコを作るか指紋で口座が作れます。指紋は毎回汚れるので皆さんはハンコを作りますよ。ここがハンコ屋です。作りますか?」
「はい作ります」
「では」佐竹はハンコ屋に入った。
「えーとハンコお願いします」「お名前は」「「ソミア」でお願いします」「カタカナで良いですか」
「ソミアさんどうします」「カタカナって日本語ですか」「そうですよ」
「ではカタカナで」「はいよ、すぐできるよ」
・・・
すぐにできた。
「これがソミアさんのハンコですよ。早速口座作りに行きましょう」
「はい」ソミアはなんだか楽しくなってきた。
無事、口座開設とキャッシュカードを作り、残った全額を口座に入れた。
「次回からも、貰った金額は口座に入れると良いです。ATMで入れたり引き出したりできます。
使い方は銀行の方に聞いてください。一回やると解ります」
「ソミアさん高い所から街を見てみますか」
「あの塔ですか」
「あれはホテルですね、最上階は一般客も登る事が出来ます。行きましょう」
「はい」
二人は1階横の展望室エレベータに向かう。「一人700円ですって高いですよね」
「ははは、ここより高い建物ありませんから、それに港も一望できます。奢りますよ」
「そんな申し訳ないです」「いいからいいから」
二人はチケットを買って展望エレベータに60秒乗り、展望室に到着した。
「うわー広いです。周り全てガラスですね。ドラゴンとかワイバーンとか大丈夫なのですか」
「ははは、来たら自衛隊が対処しますので、ここまでは来られないでしょ」
ソミアは目に焼き付ける様に一生懸命見ている。
「ソミアさん高さは大丈夫ですか。299mあります」
「日本ってすごいですよね」
「いやまだまだです、東京にあるスカイツリー634mもあるのですよ。日本一高い建物です」
「日本には高い建物沢山あるのですね。いつか行ってみたい」
「この建物も、2階から74階まではホテルで、その上に100mの鉄塔が立っていて無線中継やテレビ放送を流しています。宿舎にもテレビがあります」
「ソミアさんあそこが港です。大きな船がたくさんありますね。灰色の船は海上自衛隊の補給艦です」
「すごい・・・」
佐竹は展望台にあるジュースショップで「タピオカミルクティー」を2つ買ってきた。
「佐竹さんこれは何ですか」
「タピオカミルクティーと言いまして、中にタピオカが入っています。太いストローでタピオカごと飲みます。
気を付けないと肺の方にタピオカが入るとむせます」
「ズー、ゴホゴホ」「気を付けて、少しずつ飲んでください」
「難しいです」「はは」「エルフには人気なのですがね」
・・・
「では宿舎に行きましょう」
「いよいよですね」
「ええ、勉強する建物から徒歩5分位ですかね」
「近いですね」
佐竹とソミアは表通りを渡り、静かな裏通りに進む。
「ここです。私は入れないので管理人を呼びますね」
佐竹はインターホンを押し、管理人を外に呼び出した。
「こちらが今日からお世話になるソミアさんです」
「まぁまぁ、かわいいエルフさんですね。よろしくね女性エルフ宿舎の管理している「ソメイユ」です。困った事があれば魔道通信で呼んでね。では案内しますね」
「はいよろしくお願いします。佐竹さんお世話になりました」
「いえいえ、仕事ですから。ではお元気で」
佐竹とお別れしたソミアは館内を案内されて2階の自室へと入った。
ベッドと洗面所にトイレがついた小さい部屋だが、勉強机がありがたかった。
それに支給された制服に、下着と靴下が3組、靴とカバンも支給されている。
休憩室(談話室)にはテレビが、宿舎の食堂は1階、風呂も1階である。
ソミアの新しい生活が始まる記念日であった。
・・・・
「お父様、お母さま、ソフィアは、日本でお買い物がしたいです」
日本に国賓として招待された事になっているスメタナ王と家族は、迎賓館「赤坂離宮」で宿泊をしているのだが、王女は買い物に、ついでに東京を見てみたくなり、王と王妃にワガママを言っていた。
「王女よ、日本で使えるお金は持ってきておらんぞ。どうするのだ」
「お父様、金貨が日本でお金に交換できると冒険者から聞きました。金貨を交換して買い物がしたいと思います」
「ソフィアはしっかりしています。私もソフィアと共に出かけたいと思いますが王様、如何でしょうか」
「王妃も王女もであるか・・・私も出かけたいのだが、まだ打ち合わせがあると聞く。ん・・・・」
王妃と王女は王を睨む。
「わかった。わかった。無駄遣いしないようにな。私もいずれ買い物に行くのだからな」
「王様、ありがとうございます。ソフィアいくら位用意しましょう」
「お母さま価値が判りませんので、日本の外務省に相談しましょう」
「ソフィアは賢いですね。早速そうしましょう」
スフィーナ妃は外務省担当官に来てもらい、アトラム王国金貨と日本円の交換をお願いする。
前回冒険者達が1枚の金貨で約8万円になったのを外務省担当者は覚えていた。
ただし、金の値段は海外取引がないので、固定したままであった。
「はい、前回アトラム王国の冒険者が来られた時に1枚の金貨が8万円ほどになっています。今回も同様と思いますよ」
「担当官様、8万円と言うのはどの程度の価値なのでしょう」とソフィアは聞く。
「はい王女様、3枚で日本人の月額給料と同じ額で、うーん、ダイアのネックレス程度は買えます」
「まぁ、お母さま宝石が買えるらしいですよ」
「では、外務省担当官様、100枚ほど交換したいのですが」とスフィーナ妃は金貨を出す。
「かしこまりました。百貨店と言うお店がありますのでご案内します。いつが宜しいですか」
「お母さま、今からで宜しいですか」
「まぁソフィアったら待ち遠しいのですね」「ええ」
「では担当官様、今からで宜しいですか」
「はい、少しお待ちください。手配をいろいろ致しますので」
「王様、スフィーナとソフィアは買い物に出かけていきます。王様は欲しい物はありますか」
「スフィーナ妃よ、私が欲しい物は私が買うぞ。そなた達は自分達の欲しい物を買ってきなさい」
「お父様、ありがとうございます。ソフィアはお父様を尊敬いたしております」
こうして外務省担当官の手配により、黒塗りの車と百貨店の手配がなされたのだった。
「担当官様、交換は何処でするのですか」
「はい、スフィーナ妃様、百貨店に着きましたら最初に交換いたします。その後、必要な物をお買いください」
「あらあら、楽しみですね。ソフィア」
「はいお母さま。ソフィアも楽しみです」
こうして二人は王を残して銀座のデパートに出かけて行った。
「到着いたしました。最初は8階にある貴賓室にご案内します」
と言うと担当官はドアを開ける。
デパートの顧客担当が駆け寄り挨拶をすると、二人をエレベータに案内して貴賓室に通した。
「お客様、こちらで金貨と日本円の交換をいたします。金貨100枚で宜しいですか」
「ええ、お願いします。これです」スフィーナは金貨の入った袋を渡す。
「では、数え換金いたしますので、それまで店内をご案内しますが、最初は何が宜しいですか」
ソフィアは日本で着やすい行動的な服が欲しかった。
「そのーあなたが着ているような動きやすい服が見たいのですが」
「まぁソフィア。狩でもするのですか」
「ええ、お母さま、王国兵士の訓練や自衛隊の方々の工事と言う物を見て見たくて、汚れても良いような動きやすい服があればなと思っていました」
「はい、お嬢様、服は4階になります。行きましょう」
二人は婦人服のフロアーに案内される。
「まぁまぁお母さま、素敵な服がたくさん」
「ソフィア。少し露出しすぎではないですか」
「お母さま、日本ではこの服が普通に着られる物です」と担当者が案内する。
「お母さま、これ素敵です」ソフィアはビジネスウーマンの着るスーツに目が留まる。
「お嬢様、それは日本の女性の仕事着です」
「ソフィア地味すぎるわよ。せめてこちらにしなさい」スフィーナ妃の選んだものはワンピースである。しかもピンクで裾が短い。足はどうするのか。
「お嬢様、これは今日本で流行っている物でして、下に黒のパンツを合わせるのが流行っています」
担当者は、ピンクのミニワンピに黒のパンツを合わせて見せ、その上からベージュのカシュクールワンピース(長袖)を合わせる。
「まぁ可愛い」ソフィアは気に入ったようだ。「馬に乗るのに最適よね」
「お嬢様、馬ですか・・・ならこれは如何でしょう」ピンクのトップスに黒のパンツにカシュクールワンピース(長袖)を合わせみる。「これならトップスを中にも入れられますし、馬でも大丈夫です」
「でも・・ミニワンピが良いです。可愛いので」
「ソフィア、お客様の前ではダメですよ」
「そうですかお母さま、可愛いのに」
「お嬢様、こちらのニットにパンツの組み合わせもお勧めです」
「その方がソフィアが可愛く見えます」
「えーお母さま、もっと普段着て泥だらけになっても良い物がソフィアはうれしいです」
どこまでアクティブなお嬢様なのだ。
「なら・・・お嬢様、日本にはGパンと言うパンツがあります。元々労働者の作業着でしたがおしゃれなデザインに厚めの生地を組み合わせた。アクティプなパンツとなっています。乗馬でも穴が開いたりしませんよ」
担当者はブランド物のGパンを出してきた。
「生地が丈夫ですね。これが良いです」
「まぁソフィア、どんな作業するのでしょう」
「担当者さん、このGパン気に入りました。このミニワンピもパンツも、全部ください」
「かしこまりました」
「まぁまぁソフィアったら。私には良い物がありませんね」
「お母さまは、毎日ドレスですからアトラム王国で作れますけど、こんな服はアトラム王国で買えませんから。うふふふ」
「まぁ冷たいのね。ソフィア」
王妃と王女は水を得た魚の様に、デパートの屋上から地下までを回り、いろいろ日本の品を買いあさる。
担当者(外商担当)は換金した金額内から引き落として行き、最後に宝飾品売り場に来てしまった。
「お母さま、この変なの何でしょ」
「お嬢様、これは時計です。腕にはめるかポケットに入れます」
「へぇー時計ですか・・こんな小さなものが時計なのですね」
「ソフィア。宝石も付いていますよ」
「便利で可愛い。これ欲しいです」
「私も欲しいですわ」
「でしたら、王様とお妃様と王女様で同じデザインの物を買われたら如何です」売り込み上手な担当者だ。
「でも今日は二人しか来ていませんが」
「私どもが、今日お買い上げいただいた物全てお届けいたしますので、その時王様にも合うように調整させて頂きます」
「そうね。王も寂しいでしょうから買ってきましょう。良いわねソフィア」
「ソフィアこれが良いのです」
「お嬢様、それは良い物をお選びで、ペアにもなっていますので、ご家族で揃えられます」
「お母さま、これにしましょう。私はピンクが良いです」
「では私は銀で、王様は金かしら」
「家族でお揃い・・・ソフィア嬉しいです」
「お妃様、お姫様、お揃いで揃えさせていただきます」
お妃様は銀の文字盤に銀のバンドの組み換えができるセット。
お姫様はピンクの文字盤にいろいろな皮のバンドのセット品。
王様には金の文字盤に金と銀と黒皮のバンドのセット。
3つとも文字盤の色違いサイズ違いでデザインは同じである。
「お父様喜ぶかしら」「ソフィアの選んだものですから、喜びますよ」
「そうだと嬉しいです」
スフィーナ妃とソフィア王女は金貨100枚を換金して手数料を差し引き800万円の買い物をしている。
中にはアトラム王国には無い果物や、ボールペンにノートなどの実用品。化粧品は王妃が買い込んだ。
王女は服が中心で、特に時計がお気に入り。他にもデジタル表示のスポーツタイプを買っている。
どの国も王族は買い物の額が桁違いである。
早速、迎賓館に戻って来たスフィーナ妃やソフィア王女は王に成果の報告をしている。
百貨店外商部の担当者は王の腕に時計をはめて、長さを調整している。
「これが時計なのか・・なんと言う小ささ」
「そうよお父様、ソフィアがお父様の為に選んだのよ」
「ソフィア、お前の選んだこの時計。一生大切にするぞ」
「お父様もお母さまとソフィア同じデザインですのよ」「おおお」
「ソフィアは買い物上手である」
「お父様に褒められた。うふふ」
こうして楽しい時は終わり、翌日には「赤坂離宮」朝日の間で、当壁総理とスメタナ王による国交調印式が行われる。
その後、迎賓館から皇居に向かい、第126代徳仁天皇にご挨拶を申し上げる。
そして皇居にてアトラム王国国交調印記念式典を行い会食となる予定である。
・・・・
「いやだな。気が重い」ミソラは羽田に向かう飛行機でぼやいている。
「覚悟を決めなさい」とトムスに言われる。
「そうだよ、ミソラがアトラム王国に戻らないで冒険旅するから、こんなことに」とミリナ。
「ミリナは行きたくなかったのか」とドネルグ。
「いや・・・」
「結局、みんなで冒険したから、みんなで怒られよう」とタトル。
「そうね。ミソラだけが怒られるのもパーティーとしてどうかと思うよ」とソラ。
「そうね。みんなで行きましょう」とミルネ。
「えー王様怖い」ミリナは本気で怖がっている。過去になにが有った。
「そんな怒られないと思うよ」とミミがハイエルフを代表して言う。
「だってミソラ達はアトラム王国と日本の懸け橋でしょう。褒められると思うけど」とレイナ。
「そうだと良いのですが」とミソラ。
「そろそろ着くのかしら」ベルトサインが付き各自のベルトを乗務員が確認していく。
政府専用機であるから乗務員も空自の女性隊員である。
「まもなく当機は羽田国際空港に着陸いたします。羽田よりは特別通路を使用してバスにてホテルにご案内いたします。なお、明日に予定されているアトラム王国国交調印式が無事済みましたら、当日夜に皇居で記念式典と食事会を行いますので、皆さまはそれまでの間、ホテルにてご寛ぎください」
「ミソラ調印だって。凄いね」ミリナは本気で驚いている。
「ミリナの大好きな食べ物いっぱいの食事会だぞ」ドネルグが揶揄う。
「・・・」ミリナは着陸が怖いのか黙り込む。
羽田に着陸した一同は、ボーディングブリッジではなく、バスで通路に向かい、そのまま歩いて進むと大型バスが待っていた。
「皆さま、このバスでホテルまでご案内します」
みんなが乗りこむのを確認した搭乗員(自衛隊員)は運転手に「ゆっくり前へ」と指示する。
運転手も自衛隊員なのか。
都内をゆっくり大型バスが進む。
ミソラ達は久しぶりに見る東京にくぎ付けであった。
「前は横浜-東京間はヘリコプター使っていたけど、道路から見上げるのも良い物だ」とタトル。
「そうよね、高いと怖いだけで景色見る余裕がなかったものね」とミリナ。
「久しぶりの東京。楽しみだわ」とナナが声を出す。
「族長様は初めての東京ですよね」とレイナが聞く。
『初めてです。凄い建物や車の数・・・やはりハイエルフの里が私には良いです。』
「族長様は日本からどの様な要請を受けたのでしょう」
『日本から、アトラム王国の国王が来ているから会って欲しいと言われました。』
「ああ、族長そうだったのですね。あのハイエルフに見捨てられたと言われる国」
隣でミソラが聞いて、「申し訳ない」と思っていてた。
『世の中が平和になるのは良い事です。戦争などくだらない事はやめて国の発展に民の幸せの為に国王は仕事するべきなのです。そうでないとハイエルフは祟ります。』
「・・・族長様・・ホラービデオの見過ぎです」
自衛隊置き土産のビデオとDVDの話であった。太陽光発電によって少しの電気が来ている。
「しかも族長様が言うと、余計に怖いです」と女神教信者のミリナが言う。
『ふふふ』族長も冗談を言うのか。いや思うのか・・思念だから。
やがてホテルに到着した。
中から支配人と数人が出て来て挨拶をする。
ミソラ達もハイエルフ達も有名人なのだ。
ホテルの最高の部屋をみんなにあてがわれ、ミソラ達は少し落ち着かない。
「ベッドフワフワ、王宮に泊まっている様で落ち着かない」
「そお、私は好きよ」と同室になったミルネが横になりながら言う。
「そういえば食事は最上階と言っていたと思うけど、行ってみる?」
「ミリナが心配だから行ってみる」
ホテル最上階の展望レストランで案の定ミリナはいた。
「みんな遅いよ。もう食べているよ。美味しいよ」口に物を入れながらもぐもぐミリナは言う。
「お子様は食べ方汚い」とミルネが怒る。
「向こうにハイエルフ様がいるよ。挨拶だけしておく」
ミソラはハイエルフが食事している席に向かい「明日もよろしくお願いします」と挨拶だけする。
「ミソラ、ハイエルフ様達何食べていた」
「ミリナ。族長はサラダかな。他のナナさん達は普通に肉食べていたよ」
「ハイエルフ様は草食か木の実と聞いていたのだが、国に帰ったら変える必要があるね」
「ああ、そういう事、ミリナは信徒だったから「教えが違う」とでも言うの」
「うーん、それも良いけど枢機卿が認めるかな」
「教会ってめんどくさい組織なのね」
「そうなの、ミルネ、面倒くさいのよ」
「だったら抜ければ良いのに」
「それがね、ミルネ、ミリナが抜けようとすると「治癒魔法は使わせない」と言うのよ。横暴よね」
「トップヒーラーのミリナでも、そんなこと言われるんだ。それに魔法を禁止する方法ってないよね」
「うん、だから治療店とか出せなくなるんだって」
「うへーハイエルフ様に潰して・・本当されるからダメかな」
「そうだね、教会とは距離取って付き合う方が良いと思うよ」
ミソラが締める。ここまでの話もハイエルフ様に聞こえていると思っている。
静かに食事しているとミソラの他のメンバーが食事にきた。
「なあミソラ、日本の牛だよな、前に一度食って忘れなれない」
「トムス、早く座って「肉」と叫ぶと早く来るよ」
「よし「肉」」とトムスは叫ぶ。
「はしたないぞ、冗談に決まっているだろう」とドネルグ。
「クソー、ミリナめ・・後で頭ぐりぐりしてやる」
「トムスお上品にしてね」と言いながらミリナは食べ終わって部屋に逃げる。
「くそー」それも下品よ。ハイエルフ様に頭焼かれるわよ。とソラまで言う。
「うう」
トムス、タトル、ソラは席に着くと、ステーキコースを頼む。
「なぁ、明日スメタナ王に会うのだろ。少し正装した方が良くないか」
「タトル正装持っていたのか」
「いやドネルグに預かってもらっていた。前に王に旅立つ報告をする時に」
「あっ俺もだった。ソラも預かってもらっているのか」「もちろんよ。汚れたら嫌だもの」
「そうかみんなドネルグに預かってもらっていたか」
タトルはドネルグに「後でみんなの正装出しておいて欲しい」と伝える。「わかったー」
「1時間後に全員ミソラの部屋に集合だね」とドネルグ。
「はーい」
ミソラ・ミルネの部屋で正装の衣装を受け取ったみんなは各部屋に戻っていく。
「ねぇ、ミリナ・・・入るのか」ドネルグが心配する。
「身長も伸びたからどうしよう」
「しかたないわね。外務省から支給された礼金が残っているから、それで買いましょう。確かホテルの地下にはショッピングできるエリアがあったはず。ダメなら、明日までにそれを直し貰うとしましょう」
ミソラとミリナにドネルグは地下のショッピングエリアで服を選んでいた。
中学3年生程度の身長のミリナに会う服は少ない。
「ミソラこれが良い」「それね・・なんか学生みたい」「これはドレスだから、これにしたら」
「えっピンク嫌い。緑が良い」「そんな事・・緑のドレスってありますか」
「はいお客様、奥から出しますのでお待ちください」
・・・
奥から出て来たのは、薄い布を使った緑のドレスだ、上品に見える。
「おっミリナ。これ良くないか。着て見て」ドネルグも良いと思った。
・・・
「おっ似合うな。どうだミソラ」「うん良いと思う」
「ではお嬢さん、これください。明日着るのでその様にお願いします」
「はいかしこまりました。タグは全て切っておきますね」
・・・
「お召しになって戻られますか」
「いや脱がして持って帰ります。お菓子で汚すので」
「まぁ」「ミソラそれは・・・」ミリナは涙目である。
・・・・
迎賓館「朝日の間」に皆さんは11時に集合している。
「スメタナ王、この良き日に国交を正式に調印頂けるとは、国民に変わりお礼申し上げます」
「いや当壁総理大臣。我が国も日本の恩恵に与かれ発展していきます。両国間で不幸な事件は起きましたが、それをお互いの誤解を解き、よき友としてここに居られる事を誇りに思います」
「スメタナ王、不幸な事件はお互いの認識が不足していた事に他なりません。ですが両国はこれからの発展的関係に期待しております」
「スメタナ王、本日はテレビ中継も入りますので国民が見ている前で両国の友好を示す事ができます。我々としては農業国としての生産を期待しているのです。他にも畜産が可能ならば肉や牛乳などが、そして加工できればソーセージやチーズなども。知識は日本にあります。後はスメタナ王としての決断次第です。
日本は定期便を航路ですがアトラム王国に開設を考えています」
「日本と我が国は交易も可能と申すか。今でも自衛隊の方々に宮廷風呂の様な市民の風呂を作り健康と体力回復の為に入浴を推奨している所です。実にありがたい」
「そうですか、アトラム王国の国民の健康まで、いやスメタナ王これからが我が国とアトラム王国の発展の為に重要であると考えます。のちのち相互安全協定を結べば、我が国の一部の力と貴国兵士訓練の場が、また貴国が他国に攻撃された場合は、我々が助けに行きます。ですが先に国交協定の締結をお願いします。さすれば我が国は今以上に貴国に有益な事業を展開できます」
「そうであるか、貴国1国に我が国のインフラから農業経営まで頼ってしまって心苦しい事ではある」
「スメタナ王、アトラム王国が発展頂ければ我が国にも富が回ってきます。もちろん正規の価格ですが、我々は元の世界では世界経済の中心の1つの国でした。お役に立ててうれしいのです」
・・・
「当壁総理。そろそろお時間です」佐野官房長官が遠慮がちに言う。
「そうであった、協定条約を締結いたしましょう」
「あいわかった」
二人は2通の同様内容が書かれた条約にサインをして交換をし、再度サインして、交換して終わった。
佐野官房長官が説明する。
「国民の皆さん、我が国は転移してから約1年半かかりましたが、親友と呼べる国と国交協定を締結いたしました。将来的には食物の輸入や技術の輸出など両国の関係はますます良くなると思います」
と佐野官房長官がテレビに説明する。
佐野官房長官はスメタナ王に「次は天皇陛下との面談でございます。
日本国の国王「徳仁天皇」第126代天皇であります。普段は「皇居」と言います城におられます。
日本は政治と国王は別だと法律に明記されています。
日本の天皇家は2600年以上も続いておりますので、お会い頂ける事が国賓である証明となります」
「そうであるか、日本の国王は政治には口出ししないのだな・・過去に大きな犠牲があったと聞いたが法律でそんな事を。よし心してお会いに行こうと思う。それにしても126代目とは凄い事であるな。2600年以上か・・我が国にもそんな繁栄を齎せたいと思う」
「ではお支度できましたら、迎賓館玄関にお車がお待ちしております。馬車も用意できるのですが、国王様は馬車は見飽きていると思いまして車にしました」
「ハイラムで行ってはダメかの」
「それは後日違う場所でお願いします」
「そうか解った。妃と姫も行くぞ」「はい」「はい王様」
3人が乗った黒塗りのリムジンはすべる様に都内を走り、皇居に滑り込む。
先に到着している佐野官房長官と宮内庁職員が並んでいる中を王は堂々と歩いていく。
白い手袋をした職員が「こちらでお待ちください」と下がり、代わりに別の職員が桜茶と和菓子を持って入って来た。
「これは桜茶と申しまして縁起の良いお茶とされています。和菓子は季節を反映した「春の和菓子」となっております。お茶に会うように甘さは控えております」と説明する。
当壁総理と佐野官房長官も同席してお茶を堪能する。
「王宮での接待は考えた方が良いな。スフィーナ妃、何か提案してやって欲しい」
「はい王様、この威厳ある部屋に、おいしいお茶と菓子。日本は洗練されています」
「スメタナ王、天皇陛下は過去にいくつもの国をまとめ上げて、国際的には「エンペラー」と呼ばれていますが、皇帝と言う呼び方はスルホン帝国を思い起こすので、普通に「天皇陛下」で宜しいと思います」
「当壁総理。皇帝であるのか、わかった我も「天皇陛下」で言うぞ」
・・・
「ではご準備が整いましたのでご案内します」
一行は謁見室ではなく、同格を表す段差のない部屋に通された。
天皇ご夫妻は立ってスメタナ王達を迎える。挨拶し握手して「こちらに」と座る位置を進める。
スメタナ王は一国の王が、しかも皇帝がこのように丁寧に迎えて頂ける事に感激をした。
しかも、アトラム王国語である。驚いた。
通訳はついているのだが、天皇陛下と皇后は殆どアトラム王国語で話をする。こんな接待を受けた事が無い国王は感無量である。
「私たちは友人です。いつでも、また日本においでください。お待ちしてます」
天皇陛下のお優しいお言葉にスメタナ王はもう一度日本に来る事を誓うのである。
当壁総理や佐野官房長官も同席した楽しい時間は直ぐに2時間も経過し、宮内庁職員が呼びに来た。
スメタナ王も妃も姫様も別れを惜しみながら皇居から迎賓館へと向かう。
「姫は初めて、威厳と言う物を感じました。凄い事です」
「ソフィアそうでしたね。物凄い威厳と後ろを何かに守られていました。失礼かと思い良く見なかったのですが守られていました」
「2600年以上も天皇家が続いていると聞いたが、先祖に守られているのでは、私は話す事を考えるだけで精いっぱいであった。ははは。世界は広い」
「17時から記念式典と食事会ですね。同じドレスはダメでしょうから着替えますね」
「そうだな儂も着替えるとするか」
スメタナ王一行は「赤坂離宮」に到着すると直ぐに着替えを行う。
30分前に黒塗りのリムジンが迎えにきた。国王一行は家臣の上位者も連れて乗りこむ。
一方、都内ホテルにもマイクロバスが2台横付けされる。
「みんな行きますよ。乗り遅れないでね」
ハイエルフも、もう一台のマイクロバスに乗りこむ。
一行を乗せたマイクロバスは、安全運転で皇居に向かっている。
彼らも記念式典と食事会に向かう所であった。
やがて皇居の宴会場前に到着した。
「うわー広いね。席が沢山あるよ」
「ミリナそっちは食事会の宴会場。式典は隣の宴会場です」とミソラ。
宴会場は奥が一段上がっており、椅子が並べられている。
様々に着飾った者達がシャンパンを片手に立っている。
ミソラ達も入り口で、ジュースを貰い人に紛れる。
ハイエルフ達は別の部屋に通された様だった。
・・・
やがて、低音量のBGMが流れる。日本の古風な曲の様だと思ったら・・雅楽隊が演奏していた。
正面に向かって右側に並んで演奏している。
天皇家とスメタナ王家が並んで入場して、ひな壇に立つ。
天皇の発声で乾杯をする。雰囲気は和やかだ。
・・・
突然「冒険者ミソラ様御一行、前にお越しくださいと言われる」
「げっ」
仕方なくミソラ一行はスメタナ王の前に並び、アトラム王国流の礼をする。
「ようやく会えたな、冒険者ミソラと一行」
「はい、王様その節はありがとうございました」
天皇陛下からもお言葉を賜る。
「皆さんは被災した国民に元気を与え、アトラム王国の事を広めて頂きました。この良き日もそなた達の努力の結果です。私からも隣人になれた事、あなた方にお礼を申します」
「天皇陛下、ありがたきお言葉頂き幸せでございます」とミソラ。
「そなた達、忘れている事は無いか」とスメタナ王。
やはり来てしまった。
「はい、国王の命に基づき、異国に旅立つことをお許し頂き、その上旅に必要資金や船を用意いただき、無事旅を終えました。スメタナ王に報告は遅くなりましたが、当初の予定を全て終わらせここに参上いたしました」
「であるな、報告はもう良い。そなた達の結果が、この様に大国日本との友情に発展させてくれた。
ミソラよ、いや王国公爵家ロレンシア家の長女よ、そなたの活躍は国の誇りだ」
ミソラは嫌な汗が出て来た。
「ここにアトラム王国スメタナ王として宣言する。冒険者ミソラ・ロレンシアに爵位を授け、アトラム王国準男爵位とする。本日よりミソラ・ローマン準男爵を名乗りなさい。
さらに、(皆ギクっとした)冒険者トムス、タトル、魔導士のソラ、ミルネ、荷物持ちのドネルグ、聖魔法のミリナの6名は爵位騎士爵を与える。そしてアトラム王国B級冒険者からAA冒険者へとランクを上昇させて、国立ギルドメンバーとする。
そなた達は、本日よりローマン騎士爵を名乗りなさい」
「いえ王様そんな・・」「不服でもあるのか?」「いえございません」「よし」
「ではミソラ・ローマン準男爵とローマン騎士爵の皆さんに仕事だ。ふふ。(一同震える)
アトラム王国と日本の懸け橋になったそなた達ではあるが、日本の半分だけだ。
そなた達は日本において残りの地域に講演をしてアトラム王国を理解させていただきたい」
「おおそれは良い事を」当壁総理が手を叩く。やがて拍手の波となる。
「スメタナ王。日本の子供たちの憧れでもあります。是非に、講演は全て日本政府が予定を作ります」
「良かったのう。ミソラ・ローマン準男爵。やりがいがあろう」
「はい・・・スメタナ王ありがとうございます」
「なお冒険者達の叙爵式はアトラム王国に戻ってから行うが、後日証書をそれぞれの家族に預ける事にする。
家族のいない者は城にて保管するから取りに来てくれ。
よいか、アトラム王国を代表する貴族となったのだから、くれぐれも日本に失礼な真似はしないよう願う。よいな」
「はい・・」
この良き日にミソラは爵位第9位のミソラ・ローマン準男爵に、他のメンバーは爵位第10位、トムスはトムス・ローマン騎士爵、タトルもタトル・ローマン騎士爵、ソラ・ローマン騎士爵、ミルネ・ローマン騎士爵、荷物持ちのドネルグ・ローマン騎士爵、聖魔法のミリナ・ローマン騎士爵となった。いや、なってしまったのだ。
ミソラ以外は、平民なのにである。
王の命令で日本国内を講演して回る事も決まってしまった。爵位が上がれば家名も変更される。
どうなるのかミソラ達・・・
ここでまた説明が
「本日はミソラさん達冒険者が授爵すると言う良き日となりました。ここで日本政府からスメタナ王にもお知らせがあります」
スメタナ王はキョロキョロしている。事前に何も聞かされていない。
横のドアからオーラを纏ったハイエルフが登場してきた。
「おおおお、女神様」スメタナ王はうっすら涙目である。
「お目にかかれて感激です」すっかりスメタナ王は泣いている。
「失態をお見せした」と国王は照れ気味です。
「スメタナ王、宴会がありますから、その場で募る話も如何でしょう」と天皇陛下に言われ。
その場ではアトラム王国流の最敬礼を行い。待機している。
やがて、「お食事の用意が整いました。皆様を順番にご案内いたしますので、今しばらくはこの場でお待ちください」
宮内庁職員が、リストを持ち招待客を呼び込む。席が決まっているので順序良く案内する。
「お腹すいたねー」「ミリナは貴族になってもミリナだな」とドルネグ。「そういうドネルグだって貴族でしょ。貴族で荷物持ちなんて聞いた事無いよ」「確かにその通りだ。ははは。だが収納魔法は貴重なんだぞ」
やがて全員が宴会場に案内されて着席して待っている。
天皇ご一家とアトラム王国王一家がひな壇に着席して、参加者代表の当壁総理が乾杯の義を伝え祝宴は始まった。ハイエルフは別卓で食事をしている。スメタナ王は近寄り、改めて心からのお礼を述べる。
「明日迎賓館に向かいます。その時に詳しいお話をいたしましょう」とナナが伝える。
「はい、お待ちしております」と言いながら王はひな壇に戻っていった。
和洋のフルコースとアルコールで王は珍しく酔ってしまった。
「あらあら、珍しい」
姫も王妃もご機嫌である。アトラム王国以上の宴会に内容も部屋も飛びぬけている。
戻ったらどこから手を付けましょう。スフィーナ妃は王宮の改革をしようと考えを巡らせている。
なお、蛇足だが18時のニュースに締結式、記念式典とミソラ達の叙爵が速報で流れた。
19時のニュース特番では食事会の様子が30分にも渡って放送された。その中にはハイエルフも映っていた。
国民の大騒ぎは、また別の機会に。
ありがとうございます。
次はスルホン帝国の終戦交渉なのですが・・・いろいろな思惑がありうまくいくのでしょうか。
ミソラは元々貴族の長女であるから良いとして、平民も貴族にしてしまうスメタナ王。何か考えていなければ良いのですが・・・
「ハイラム」と日本の空を飛ぶ日は来るのでしょうか。