第114話 帝都の終焉 その4 終戦交渉 その1
第114話投稿します。
いろいろな話が入っています。
昨日、サイネグ宰相に呼び出された、第1騎馬隊長エル・トーマス男爵はエルフを連れて戻る途中で考えをまとめようと努力していた。
「なんで私が・・生き残りだからかな」
「お前は奴隷、長いのか」エルフに聞く。
「はいご主人様、6年になります」
「そうか、どうして奴隷になった」
「はい、私はムリナ街の北の森にひっそり家族と暮らしていましたが、ある日帝国の軍隊が森を探索しに来て、幻想草をあたりに撒いて逃れようとしたのですが、ちょうどドマフラと遭遇しまして、それで逃げた方向が軍隊でした」
「それで捕まったのか」
「はいそうです」
「ではなぜ皇帝居城にいる事になった」
「私の魔道通信が700Kmも飛ぶ事に加え、捕まった軍隊が親衛隊でした・・それに母が地下に捕らわれて、私が逃げたら殺されます」
「お前の家族は母親だけか」
「母と私と妹が捕まりました。妹は行方不明です」
・・・・
「そうか、そんなエルフは他に何人いる」
「全部で10人です。みな家族が捕らえられています」
「わかった」
エル・トーマス男爵はいたたまれなくなる。
日本と戦争が始まったならともかく、対王国の時からこの体制。何かがおかしいと思う。
「腹減ってないか、まだ1日はかかるぞ」
「はい、宜しければ少しの食料と水を別けて頂けますか」
「朝と昼は食べてないのか」
「はいエルフ奴隷は1日1食です。捕らわれている母は多分2日に1食」
「そんな酷い事が起きているのか。判った。すぐに食事にしよう」
「ご主人様ありがとうございます」
トーマスは街道から少し外れて馬を降りる。エルフは・・軽い・・抱き上げて降ろした。
軽すぎる・・「お前いくつだ」「はい今年で45歳になります」
「そうか、たしかエルフの寿命は200歳だから、お前はまだ子供なのか」
「はいご主人様、エルフの中では若いと思います」
見た感じエルフは人間で言う10歳くらいに見えた。栄養も足りていないのだろう。
「そうか」とトーマスは言うと食事の支度を始めた。
「食べられない物はあるか」
「いいえご主人様」
「そうか無理しなくて良いぞ」
「お水を・・」
「そうか、これを飲め」トーマスは旅用の水筒を渡す。「全部飲んでも良いぞ、もう一つあるからな」
「有難うございます」
「城では水は飲めたのか」
「交代でトイレに行きますが、その時少しだけ飲めます」
「きついな」トーマスは思わず口にしてしまった。
トーマス達は1泊して早朝にムリナ街に向かって馬をゆっくり歩かせる。
「どうするかな」トーマスは独り言が多くなった。
・・・・
サイネグ宰相執務室のカーテンが揺れる。
「報告か」
「リリコネが日本軍に襲われ、奴隷市場とユリナリスと番頭のミサイアにアリマスナリムの番頭サリスネと奴隷が多数・・それにトルフェイ妃とルミア姫とメイド8人、護衛の騎馬隊の13名が日本に奪われました」
「それは本当か、アリマスナリムは何と申しておる」
「資金集めに苦労していると、リリコネからの荷物は完全に止まっています」
「そうか奴隷に皇族は取り戻せるか」
「ミルドに運び込まれた事は判りましたが、そこから不明です」
「何と言う事だ。この事は秘密にしてくれ。資金調達はうまくいかないか・・」
「日本軍は、ソミリアとムリナを囲んで何時でも帝都に押し寄せる事が出来ます」
「トーマスに時間稼ぎして貰うとして、ソミリアを抜けられるか」
「かなり難しいと思いますが、一人なら大丈夫と思います」
「それでは貯めた資金が持ち出せぬではないか。他にルートは無いのか」
「湖を超えるしかありません」
「キャラ村に行くのか。誰もおらぬと聞くが馬は調達できるのか」
「用意をしますが、しばらく時間がかかります」
「湖はどうするのだ」
「船は既に用意しています」
「そうか・・タイミングだな」
「キャラ村からハリタに向かうのが安全と思われます」
「まて、湖横断だけで250Kmにキャラ村からハリタまで750Kmもあるぞ。馬も2頭必要だと思うが」
「ハリタで馬車を用意します。また抜け出す時ご一緒します」
「どちらにしろ大変な旅だな」
「ではご用意をお願いします。出発は10日後」
気配は消えた。
「10日後か・・・」
・・・・
トーマスはムリナ街に戻って来た。
「隊長、無事なお戻りお待ちしておりました」
「おう、サイネグ宰相より日本と交渉しろと言われた」
「隊長がご不在の3日間に・・ムリナ街は日本軍により包囲されています。来るときも日本の検問あったのではないですか」
「確かにあった。だが帝国騎馬隊長だと言うと通してくれたぞ」
「はい、日本軍に隊長が帝都に行っており、じき戻ると伝えています」
「流石だ・・・さてリエラ、日本と交渉しろと言われた。
しかもスルホン帝国存続が優先だとよ。エルフも渡された」
「では隊長、エルフにとりあえずムリナに到着したと、また日本によって包囲されていると宰相に報告しては如何です」
「そうだな報告するか。エルフは保護しているな」
「はい別室で休ませています」
「そうか。もうしばらく休ませてくれ。体力なさそうだ」
「ええ、やせ細っていますね。師団のエルフとは体格が違います」
「こっちはとりあえず食べさせていたからな。居城は秘密が多く逃げられると困るから家族まで捕まっていると聞いた。それに加えて1日1食だと」
「それは酷ですね。仕事も支障が出るだろうに」
「そうだな、帝国はどこかおかしいと思う」
「隊長それは隊員の前では禁句でおねがいします」
「そうだな」
「それから心配事は、サリエルが向かったリリコネから報告が来ない事です」
「なにかあったとしたら大変だ。トルフェイ妃とルミア姫に何かあれば・・・」
「その可能性はあります。しかしリリコネの通信エルフは何も応答しなくなりました」
「また、南の都市、ハリタも応答しません。日本からムリナのエルフも引き渡しを要求されています」
「帝国の通信手段を奪うつもりだな」
「ええ、しかし他にも奴隷の解放を言われています」
「日本がか?」
「はい日本がです!!」
「日本は奴隷を集めて何を考えているのだ」
「私ごときが、思いも付きません」
「そうか、聡明なリエラでも判らぬか。なら日本に聞くとしようか」
「隊長それは・・・」
「なに大丈夫だ。この街に騎馬隊がいるのに攻撃しない事がなりよりだ・・・だが、交渉の為にバロッサに向かうと思っていたがこの街に来たか。早すぎるな」
「隊員が見た所、馬車の数倍の速さで鉄馬車が来たと聞きます。我々の進軍速度では測れないと思います」
「そうだな、何もかもが未知だ。慎重に行くしかないな。しばらく休めさせたらエルフに通信をさせてくれ。帝都のエルフは特別な奴隷紋が組み込まれているそうだぞ。足も片足不自由な様だ」
「帝都は何を考えているのでしょ。エルフも重要な戦略要素であるのに。ではこれで失礼します」
「おう、夕方また打合せするぞ、交渉についてだ」
「了解しました。夕方また来ます」
「たのむ。少し休む」
・・・・
羽田から外務省本庁に到着したトルフェイ后とルミア姫は会議室に通されていた。
「お母さま・・・その・・帝国は、お父様は、なぜ日本と戦ったのですか。姫にはわかりません。
こんな文明も技術も大きく進んでいる日本となぜ」
「ルミア姫、母にもわかりません。皇帝もわからないと思います」
「お母さま。相手も知らず戦っては・・・相手が野蛮人ならともかく、こんな高い建物を沢山作るような人たちと・・・信じられません。それに来る途中に乗った旅客機と言う空飛ぶ乗り物・・羽田と言う所にはたくさんありました。日本も広いので沢山の旅客機を飛ばしているのではと姫は思います。そんな国に・・」
「ルミア、気持ちはわかります。ですが皇帝は民を、国を、守るための決断をしたと思います」
「お母さま、もし日本が本気でスルホン帝国を乗っ取るつもりなら・・帝国を潰すつもりなら・・
姫は思います。もっともっと早くそうなっていると。帝国は広大な土地を持っていますが、あの「じどうしゃ」と呼ぶ鉄馬車では帝都とリリコネの街を馬車で早くて12日もかかる所、1日で着くと聞きました」
「そうですね、早いですよね。ミルドからここまで1日で来ましたもの。帝国と比較できぬ程の早さです」
「お母さま。それに空から爆弾落としたり正確に槍をあてたり、正確に狙った所に当てるなど帝国にはできません。
アトラム王国なら魔道誘導で出来るかもしれませんが、長続き出来ぬのでしょう。
なのに日本は殆どが正確であると聞きます。これは大人と子供・・いえ赤ちゃんの戦いと姫は思います」
「帝国が赤ちゃんなのですか・・いやそうかも知れません。私も皇帝居城に槍が刺さった時に卒倒しました」
「お母さま親衛隊宿舎爆破や城壁への槍とか、あんな正確な戦闘考えもできませんでした。
ですが、リリコネからここ日本に来るまで考えていました。こんな技術の差があれば帝国の兵士は太刀打ちできないと思います」
「姫はそんな事を考えていたのですね。私も速さに目を回して高さに怯えて・・そんな中考えていたとは思いませんでした」
「お母さま・・・しかもハイエルフ迄も味方につけて、途中の宗谷特別なんとかには獣人やエルフの街があると聞きます。日本が作り彼らと協力してドーザ大陸の山脈東側を開発しているとか。信じられません。
お父様の言われていた「人族最強」との考えは間違っていたのでしょうか」
「ルミア、「我々は神に選ばれた人族」と言っていましたね皇帝は、ですがハイエルフを、いや「神」を味方に付けたのは日本ではないのですか。私にはもうわかりません。リリコネでハイエルフに会って以来なにも信じられなくなりました」
「お母さまシッカリしてください。姫も同じことを思っていましたが、帝国民が少しでも傷つかず、死なずに、日本に占領されるのであれば、それはそれで良いのではないかと思います。帝国はお父様はやり過ぎたのではないかと思います。遠い日本の地で初めてそう思いました」
「ルミア、日本は私たちに普通の生活を保障してくれると言っています。私たちは帝国が滅亡したならば普通の民になるのです。
私は元々ミルダ島の当主ハリタラの娘。ある日兵士長のガリルが求婚してくれて結婚したのですが、ルミナス王朝から来た兵が病を振りまいて、島民は20名も死にました。
怒ったガリルがルミナスの兵士を切り燃やしてしまい。それからです、ガリルは怒りに任せて大型船を作り、次々と島々を占領してその島民を兵士にして、増やして行きドーザ大陸を、ルミナス王朝を倒したのです。
ですが皇帝は民が理不尽に死んでいくのを、怒っていた筈なのに、なぜこうなったのかわかりません」
「私も聞きました。民を大事に思っていた筈なのにルミナス王朝の王と妃を公開断頭刑にしたと聞きました。話のつじつまが合いません」
「皇帝になってからガリルは変わってしまったのです。かわいそうな人なのです。
そうだ、ガリルの友達と言うサイネグが取り入ってから変わってしまいました」
「サイネグ宰相ですか・・・そうなのですか。お父様・・」
・・・・
「失礼します。準備に時間がかかりお待たせしました。外務省でお二人の担当をします。斉木と言います」
「斉木さんは御幾つなのですか。まだお若いとお見受けしました」
「トルフェイ后、ふふ、まだ28歳です。よろしくお願いします」
「まぁ4つ上ですねよろしくお願いします」
「ルミア姫、よろしくお願いします。
これからお二人は日本特別在留ビザを発行しましたので、2か月毎に更新に来てくださいね。それだけは忘れずにお願いします」
「更新しなければどうなるのですか」
「はいトルフェイ后、更新しなければ援助が打ち切られます。また警察や取締官に捕まります。
強制送還になりますよ。で更新すると生活資金が支給されます」
「帝国に送り返されるのですか」「はいそうなります」
「おっお母さま・・帝国が滅亡していれば私たちは戻されると殺されますよ」
「ふふ、ルミア姫半分正解です。殺人は多分日本の警察が帝都で取り締まりを行います。ですが・・」
「斉木さん、見えところで捕まれば・・・やはり危ないと言う事ですね」
「ルミア姫正解です。それに皇帝に連なる人々を帝国民が許すか許さないかわかりません。
言える事は帝国に迫害を受けた方々は許さないのではと思っています」
「やはりそうですね。ハイエルフにも睨まれましたし。そんな程度では済みませんよね」
「さぁどうでしょ。だから日本で保護する訳ですし。宗谷特別行政区でも街があるので良かったのですが、
獣人達が・・・と言う訳です。
そ・れ・に・妃とか姫とかは今から付けません。
今からはトルフェイさんとルミアさんですが、お名前変えましょうね。
ビザにはトルミスさんとルルアミさんとなっています。センス無くてすいません」
「お母さまはトルミスさん、私はルルアミですね」
「元のお名前は絶対に名乗らないでください。それからお二人は帝国からの亡命者となっています」
「亡命ですか・・・」
「はい。ではこれから住むお部屋に案内しますから準備をお願いします」
「わかりました。お母さま行きましょう」「あっ「さま」もなしで、日本では「母さん」と言います」
「で、ではトルミス母さん行きましょう」「ルルアミ行きましょう、楽しみだわ」
「では電車で行きます。普段、日本国民は電車で移動しますから、慣れてください。
行き先ですが国分寺と言う所です」
二人は新生活が待つ住処へと向かう。どうなるのやら。
・・・・・
ハリタ領主だったソルメスタイナー伯爵は伯爵邸の地下牢に監禁されて監視されている。
「伯爵、結果だけお伝えしましょう。戦死者は帝国兵士164名、ハリタ警備兵23名、計187名死亡です。
捕虜は帝国兵士223名、警備兵士18名で241名でした。おっとあなたも捕虜ですから242名でしたね」
「そんなバカな。こうも帝国兵士が弱い訳がない。お前たち何かしたな」
「伯爵、上で言いましたよ。何が起きるかわからないので準備をしていたと、これが帝国と自衛隊の差です」
「そっ染谷殿・・・儂はどうなる」
「自分の心配ですか。それは素直に協力して頂いた場合は酌量しますが・・となりの白骨死体気になりますね。と言うか伯爵も白骨が宜しいですか?」
「たったのむ、助けてくれ」
「あれ、自衛隊をだまし討ちにして殺そうとした伯爵様が都合の良い事を言う。さすがですね、見習いたいものです」第7偵察隊染谷3等陸佐(偵察隊副隊長)が皮肉を言う。
「ううう」
「伯爵そろそろお隣さんを紹介して頂けますか。骨の様子から見るとひとりは男性、一人は女性ですよね」
「・・・」
「お答え頂けないと言う事は、自衛隊に協力しないと言う事ですね、良く分かりました」
「わっわかった。儂の屋敷の執事とメイドだ・・二人で逢引しておったので捕まえて見せしめに・・」
「何も殺す事無いですよね」
「いや違うのだ、二人は見つかった場合に飲む毒薬を持っておって・・」
「そうですか、他の執事やメイドに聞いて真実でなければ良い処遇は望まないでください」
「いっいいや儂が見せしめに殺した。下賤の出だから・・」
「帝国では裕福な者が貧しい者を殺しても罪に問われないと言うのですか」
「そっそうだ、帝国はみんなそうだ」
「そうですか、伯爵残念です。日本は犯罪者には裁判が待っています。そこで裁きをお待ちください。
今の話は録画されていますので、証拠として採用されます。また執事とメイドにも話を聞きます。
日常的な暴力は罪が重いですよ」
「たのむ、たのむ。助けてくれ」
「いや私は話を聞きに来ただけですのでなにもできません。ではそこでおやすみなさい」
「まってくれー」
染谷は元領主ソルメスタイナー・ユシリス伯爵を裁判にかけようと書類作成をしている。
屋敷のメイドや執事に聞くと日常的暴力は普通の事で、特に二人は駆け落ちしようとして捕まり、拷問を受けて死亡したと聞き取り調査をしていた。
「ひどい国だ。大改革の必要があるな」と呟く。
・・・・
「勇敢なる兵士達よ、よろしいか」
「村長結論は出ましたか」
「出た。ここでは子供の成長に必要な食料に水がない。皆でトロル街に行こうと決めた。協力してくれるか」
「わかりました。連絡を取ってみますのでお待ちください」特別班班長は第5偵察隊第2偵察小隊長に無線を入れた。
「小隊長、こちら特別班、送れ」
「こちら小隊長、詳細送れ」
「特別班より報告。キャラ村人はトロルの街に避難を決めました。護衛と輸送の手配をお願いします」
「小隊長了解。許可を取る。待て」
「特別班了解。待機します」
「村長今連絡を取りました。返事が来るまでお待ちください」
「魔道通信ができるのか」
「いえ私たちは普通の兵士です。魔法は使いません。これは技術です」
「遠くと自由に話ができる技術など聞いたことも無い」
「ええ、私たちは未来から来ましたから使えるのです」
「そうか・・だからスルホン帝国など子供と同じなのだな。ドラゴンを打ち負かす者達よ頼みますぞ」
「連絡入りますからお待ちください」
「・・・特別班、こちら小隊長送れ」
「小隊長、こちら特別班、感度良好。送れ」
「許可取りしたぞ、22APC3台とカーゴ(73式大型トラック)2台が迎えに来る。登ってきてくれ」
「特別班了解、登坂します。また報告します以上」
「小隊長了解、以上」
「村長許可が出ました。ただしここまでは車両が来られないので上まで登りましょう。怪我人とか病人とかいませんよね」
「わかった、皆の者ここにいる日本の兵士が儂らを助けてくれるそうだ。皆で崖の上まで歩いて行くぞ、支度せよ。重い物は捨ててくれ身軽にないと登れんぞ」
村民達は喜び「行きましょう村長」
「では皆さん準備してください。私たちが護衛します」
「皆いるか確認してくれ。置いていきたくないぞ」
「村長2名いないぞ」
「外か中か」
「多分外だと思う。食料取りに行ったはず」
「村長2名ですね。我々が探します。皆さんはここで隠れていてください」
「特別班から小隊長。送れ」
「こちら小隊長。報告してくれ」
「こちら特別班、村民2名不明、森に食料を取りに行ったもよう。特別班で探します」
「小隊長了解。先ほどからワイバーンが騒いでいる。それかも知れない。襲う様なら対処して欲しい。こちらも対処する。以上」
「特別班了解。個別対処します。以上」
「隊員集合、村民2名不明、崖上部ではワイバーンが興奮しているらしい。個別対処を許可。準備」
「村長、どちらに行ったか分かりますか」
「おーい、どこに行った」
「村長多分木の実の森だと思う」
「隊員さん、入り口出て右の森だと思う。名前はソカとミル」
「右の森ですね、ソカさんとミルさん。みんな聞いたな。行くぞ。出発」「了解」
特別班は8名で入り口を出て右の森に入っていく。
「ソカ、ミル。聞こえたら返事して欲しい」と言いながら歩く。
しばらく行くと木の実が実った木々の森に入った。
「誰なの」「ソカさんミルさん?」「そうだけど」
「村長から頼まれて探しに来ました。ワイバーンが騒いでいます。すぐに戻りましょう」
「それは大変。ミル戻るよ」「はい」
「・・ワイバーンが降下を始めた。こちらも対処開始する」無線が告げる。
上で機関砲が鳴っている。
「ワイバーンが来ます早く」
二人の手を持って走り出す。
「上注意。ワイバーンが落ちる」「了解」無線に答える。
「上空警戒落ちてくるワイバーンに注意」「了解」
森に2匹のワイバーンが落ちてくる。「キャーーー」
「騒がないで気づかれる」「すいません」
走り続け洞窟の入り口に着いた。「中に入って」
「我々は外でワイバーンを対処します」
そう言うと隊員は89式5.56mm小銃を構え上空を警戒する。
「不明者発見、洞窟入り口に戻りました」
「小隊長了解。すこし揺れるが我慢しろ。まるひとを撃つ」
「了解」
「全員洞窟内部で外に向かって警戒。上でまるひと射撃」
「全員個別射撃許可。連射で交代。2列」「了解」
洞窟にも爆発音が響いてくる。2匹のワイバーンが落ちて来た。
「少しでも動けば撃て」
一匹のワイバーンが歩いて向かってくる。「撃て」
ダダダと小気味よい音がワイバーンに吸い込まれていく。動かなくなった。
「まだいるぞ。まるひと準備」2名が列から抜けてまるひとを用意する。
「いけ」「了解」
2名は洞窟の外に出て上空を警戒する。
2名を見つけたワイバーンは急降下してくる。
「てっ」しゅるしゅると01式軽対戦車誘導弾が昇っていく。
ドーーンと言う音共に隊員の5m先にワイバーンが落ちる。隊員は右に走る。
洞窟の中から連射がワイバーンに吸い込まれると動かなくなる。
「のこり1匹」無線が入る。
「残り1匹。まるひと用意」
2名が戻り「まるひと」にミサイルをセットする。「バッテリー正常」
「出ます」「任せる」
2名は再度洞窟を出て対空警戒を行う。その時崖上の23RCV(23式偵察警戒車)より機関砲が発射される。
ワイバーンは対空弾をもろに受けて胴体に穴が開き、落ちてくる。
「退避」2名は間一髪で洞窟に戻った。
「警戒・・・・」ワイバーンは動かない。
「状況終了。安全確認」「了解」
「さっ皆さん坂を上りましょう」村人を見るとビックリした顔で固まっている。
目の前でワイバーンがバタバタ落ちてくる事に頭が追い付かない。
「我々が護衛しますから。大丈夫ですよ」
村人は恐る恐るではあるが隊員の誘導に従って外に出る。
・・・・
「さてと、リエラ交渉に行くぞ。5名を選抜してくれ」
「トーマス隊長、夜ですよ」
「なに顔合わせだけで今日は何もしないよ」
「ですが・・まったく隊長」
「そう、言うなよ」
トーマスとリエラに5名の騎馬はムリナ郊外に野営している第5師団に向かっている。
「誰か。名乗りなさい」
「儂は帝国第1師団第1騎馬隊隊長のエル・トーマス男爵である。日本と交渉に来た。取次ぎを頼む」
「しばらく待て」
野営地は突然全ての明かりが点き、明るくなって全容が判るようになる。
「なぁ、リエラ。これしかいないのか」
「隊長ここは本部です。兵士は闇に紛れていますよ」
「そうなのか、これが全部かと思った」
「いくら日本でもこんな人数では無理ですよ。それにムリナは東、西、南、全てに日本兵がいますよ。多分ですが北にも予備兵力を隠しています」
「リエラは鋭いな。儂と変わってくれ」
「お断りします」
「相変わらずつめてーな」
「隊長来ましたよ」
「下馬」と隊長が命令し全員で一斉に馬を降りる。エリートらしく揃っている。
「隊長は何方かな」と若い隊員が聞く。
「私が帝国第1師団第1騎馬隊隊長のエル・トーマス男爵である」
「失礼した。私は第5師団副団長崎田陸将補です。はじめまして。さて夜分にどの様なご用件ですか」
「ずいぶん自衛隊とやらは若い兵士達ですな。失礼したスルホン帝国を代表して交渉に来た」
「ほう、私は45歳ですからそんな若くないですよ。帝国との交渉ですか。判りましたが我々は交渉権を持っていません。明日昼に来ていただけますか。お手数ですが」
「いや、こちらも夜分と判って訪問している。顔合わせだけだ。明日昼また来るからよろしく」
「はい、来るとき迄手配しておきます」
「では、乗馬行くぞ」トーマス達は馬を常歩でゆっくり遠ざかって行った。
「なぁリエラ。相手賢そうだぞ、儂で務まるのか」
「隊長は男爵なのですから堂々としていてください。尊大はダメですが舐められない程度にお願いします」
「やはりかわ・・」「ダメです」「つれないな」
「戦うなら慣れてもいるのだがな」
「知っていますよ。その不器用さで伯爵の受爵を逃している事も」
「それだけは言わんでくれ」
「伯爵に一番近い将軍と言われているのに、そんなんだから」
「解っておる。嫌なのだよ貴族とか交渉とか」
「知っていますが、宰相から任命されたのでしょ。任務ですよ」
「だから、儂を交渉係にする自体が異常なことだって」
「隊長。はっきり言います。帝国師団は1つもありません。将軍で残っているのは遺憾ながら隊長お一人です。交渉係になるのは当然」
「なぁリエラ、「遺憾」とか言わなかったか」
「空耳です」
「そうなのか。まっ相手が判ったから今日は帰って飲むぞ」
「宰相への報告は明朝にしますよ。遅いですから」
「それで頼む」
んっ帝国交渉係のエル・トーマス男爵大丈夫なのか、人選ミスとしか思えないのだが。
ありがとうございました。
皆さんの評価5000を超えました。ありがとうございます。過分な評価に感謝しております。
ブックマークも1500人を超え、休む前の人数に近づいてきました。
感謝しきれません。本当にありがとうございます。
あと、ばれない様に「第1章 日本転移と自衛隊激闘編」を入れときました。
第1章も終わりに近いので、ただし第1章終わると過去話のメンテに入ります。