第113話 アトラム王国インフラ建設 その3
第113話を投稿します。
アトラム王国のインフラ整備計画と王国依頼による第42即応機動連隊の害獣退治が始まります。
最初は荒れ地の予定だそうです。
アトラム王国とのODA(Official Development Assistance(政府開発援助))によって、南ロータス港の横付け岸壁と荷揚げ施設の建設及び南ロータス・王都間の流通道路を陸自第8師団第8施設大隊が中心となり完成させていた。
「すごい技術ですね。この道何を使って作っているのですか」
建設を見学しているアトラム王国人が聞く。
少し照れながら工事担当官は説明する。
「日本では一般的なのですがセメントに砂利や砂を混ぜてコンクリートを作り、施工しています。本当はアスファルトが一般的なのですが、重量のある車両が通る道についてはコンクリートが丈夫で長持ちします」
「へーコンクリートですか、知りませんでした」
「コンクリについてはアトラム王国でも作れます。構造も簡単ですから。
一応先に完成させる予定の道路と港湾施設については完成しましたので、次は他を整備する為の施設づくりとなります。
これは共同型開発となりますので、アトラム王国の方々に働きながら勉強して頂きます。それにより我々がいなくなってもアトラム王国民だけで工事ができる様になります」
「ほぉ作り方教えてくれるのか、それは楽しみだ」
「アトラム王国王室の意向でもあります。もうすぐ募集が始まると思います。興味があれば応募できますよ」
「それは是非、国が豊かになるのは楽しみでもありますよ」
「有難うございます。それが私たちも楽しみです」
・・・・
「失礼します」
「富沢臨時団長殿、良くぞまいられた」
「タイラグ宰相、ご無沙汰しています」
「さっこちらに」
「早速ですが、日本が当初考えた施設等については完成しました。
南ロータス港と王都を結ぶ幹線道路、南ロータス港の岸壁工事と湾岸施設。
それに車両基地に王都ロータス間の定期バス運行、そして今、王都西側の広大な荒れ地を農地に変える計画を立てている最中です。調査は済みましたのでいよいよ取り掛かれます」
「聞いている。王都-南ロータス港間の定期バスで王都ブリシアシティーの人口も増えた気がする。そして次の計画もあるのだろう、物凄い機械を何台も入れて工事。国民皆わくわくしておる」
「有難うございます。そこでODAの本質である貸与国参加プロジェクトを開始したいと思い参上しました」
「貸与国参加なんとかと言うのは何ですか」
「はい、簡単に言うと我々がいなくなっても、技術提供と技術移転を行い、アトラム王国民が道路や施設、特に農園を守る事ができる様にする事です」
「なるほど、我が国が保守や新たな道路に施設が作れるようになり、農園を作り管理できれば、他の地にも同じものが作れると言う事か」
「ご明察です」
「だが・・・・王都西の荒れ地と北の森には強い魔物が多数いる事が判っており、今でも商人や旅人が食われておる。それに盗賊も現れる。そんな地を開発できるのだろうか」
「はい、日本政府はそこも考えております」
「して、具体的には」
「はい、まず目の前の魔物や盗賊などは日本がある程度対応します。その後は日本政府との正式な国交条約締結と相互協力条約等が締結されれば、日本政府から古い武器等をお譲りする事は可能となり、アトラム王国の軍隊による討伐もできる様になります」
「船貸与されるのか。あんな強力な物でなくて良い。せめて東の海に現れる大ウミヘビとか他の海中巨大生物を退治したい。それに今後増えるであろう帝国からの難民取り締まり」
「ええ、国交と相互協力の締結後になりますが、アトラム王国の支配地区確定と日本と同様に200海里の排他的経済水域の線引きができます。つまりここまではアトラム王国の海だと主張でき巡視艇などによる巡回や救助もできます」
「それは願っても無い事だ」
「その為の支援も考えています」
「ますます楽しみだ」
「まずは、日本国による魔物と盗賊退治について決議頂ければ先に動きます。そして人材募集をお願いして、農業技術移転をいたしましょう。現在は日本の学者が農業基礎を王都高級学校にて講義をしています。これを根付かせてアトラム王国を農業大国にいたしましょう」
「うんうん。頼むぞ。儂は3公爵と協議して元老院に提案をする。アトラム王国としての損失は何もないから通るであろう」
「是非お願いします。自衛隊は工事に対して自分達の防御のみを実践していましたから、大規模討伐となると大きな成果が期待できます」
「富沢臨時団長殿良くぞ申された。期待していますぞ」
「最後にタイラグ宰相、臨時が取れまして正式に団長となりました。
また日本交渉団はスメタナ王が日本に到着しましたので政府に権限が戻されました。
本日より日本国開発援助団の団長です。改めてよろしくお願いします。
唐沢団長は元の日本交渉第1艦隊司令に戻ります。
アトラム王国として帝国の危険もなくなりましたのでその様になりました。
そして日本国開発援助団の副団長として新たに陸上自衛隊より外澤1等陸佐、前田2等陸佐が就任しました。
外澤は陸自第42即応機動連隊長です。
前田は陸自第8施設大隊長です。
お会いした事もあると思いますが、後日改めて紹介させていただきます。
日本交渉第1艦隊は、アトラム王国駐留艦隊と名称が変わりまして引き続き唐沢司令が就任しました」
「あはは、そうか富沢日本国開発援助団長、改めてアトラム王国を代表してよろしくお願いします」
「ははは」二人は仲良しなのか・・・
翌日、元老院により、「日本政府による魔獣及び盗賊討伐に関する決議」が満場一致で採択され日本側に通達された。これを根拠に、アトラム王国に全隊が終結完了している陸自第42即応機動連隊が正式に動き出す事になる。
今までは作業に入っている陸自第8師団第8施設大隊の護衛を中心に実施していたが、今回よりアトラム王国において陸自第42即応機動連隊の独自作戦が実施できるようになった。
ここ南ロータス港郊外に作られた駐屯地に陸自第8師団第8施設大隊と陸自第42即応機動連隊の幹部が集められている。
「日本国開発援助団長に就任した富沢です。よろしくお願いします。
では前に並んでいる外澤1等陸佐と前田2等陸佐のお二人が開発援助団の副団長に就任しました。
(一部拍手が起きる)
今後の予定をお話しします。
まず日本国開発援助団の予定ですが、調査を終えた王都東側荒れ地の大規模灌漑工事、そして偶然発見した遊水地を使って計画的用水路を、更に王都~中央ロータス~アリア街までの街道整備、南ロータス街~西ロータス街の街道整備と西ロータス港の護岸工事。
南ロータス港に荷物倉庫建設とコンテナヤードを、この駐屯地の集積場から南ロータス港東側への移設を順次現地人を採用して取り掛かります。
採用はアトラム王国に建設作業団を組織して、我々が指導しながら工事を行います。
後ほど・・1週間後に日本から民間船団によりセメントプラントに大型原油タンクと民間建設機器が届きます。これらの整備についても移管できるまでの教育を民間会社が行います。
ですので、この駐屯地に目的別の教室を建設します。
そして、陸自第42即応機動連隊ですが、昨日アトラム王国にて「日本政府による魔獣及び盗賊討伐に関する決議」が決定されました。
第42即応機動連隊には独自に作戦立案をお願いして、農園予定の荒れ地から魔獣の駆逐及びアトラム王国北側を中心に現れる魔物の駆逐をお願いしたい。なお、盗賊もいるらしいのでこれもお願いします。
第42即応機動連隊には後方部隊としてアトラム王国第2師団がバックアップに入りますので、捕らえた魔物や盗賊の回収は王立第2師団に任せたいと思います。作戦の邪魔にならない様に位置を指定してあげてください。以上です。では副団長から詳細をお願いします。
最初は第42即応機動連隊からですね」
「はい、隊長の外澤です。最初に中央ロータス街に向かい分屯地を作り拠点とします。
最初は荒れ地を次に北側森と街道を中心に行こうと思います」
「では前田2等陸佐どうぞ」
「前田です。第8施設大隊は最初に荒れ地を農園に開拓をしていきます、同時並行に農園の灌漑と用水路の建設と排水路の作成をします。計画は後ほど」
「有難うございます。我々日本国開発援助団は日本より与えられた予算の範囲内でアトラム王国に対し最大限の効果的事業の展開をしなければなりません。その為の駆除と工事であります。
後ほど民間人としてアトラム王国人も入りますが、下地はここにいる自衛隊の皆さんにかかっています。
早く終わらせて、祖国で待っている家族に会いに戻りましょう。
ここで私が聞いている日本の帝国や王国の様子について報告します。
外務省からの情報なので、皆さんの方が詳細情報があるかもしれませんが、とりあえず大雑把な情報としてお聞きください。
アトラム王国の王族と留学団及び教育者は横浜に到着して外務省にて現在細かい事項を調整中です。
アトラム王国一行については国賓として迎賓館赤坂離宮に滞在しています。
留学団については都内研修所に分散して研修を開始しています。
魔法に関する牧師、教師は文科省国立教育政策研究所にて人材発掘の計画を作っていると聞きます。
また剣士については、防衛省にて予定を作成中との事。
帝国についてですが、帝都は完全に包囲していると聞いています。また皇族のスフィーナ妃やソフィア王女については外務省が保護して東京にて一般人と同様な生活指導をしています。
帝国が滅亡すると内戦の危機もありますので慎重に政府は考えていると思います。
また、帝都西側に大型機が発着可能な航空基地の建設が始まっているようです。
更にドーザ西側都市の制圧を続けていて、ドーザ大陸西側に大型航空基地が完成するとアトラム王国に対する空路の補給が可能になります。
どちらにしてもドーザ大陸が平定されると、空路により日本からアトラム王国に向かう事が可能になりますので皆さんも頑張ってください。
大規模農園が完成すると日本の食料事情も回復されますからご家族も楽になると思います。
以上でございます」
「あっ前田隊長。例の計画は進めていますか?」
「団長、王都に公衆入浴施設を複数作る計画ですね」
「ええ、衛生観念を発達させるためにも入浴習慣が必要と思います」
「そうですね、病気予防にも体力回復にもなります。計画はしていますが温泉があれば一気に進むと思います。王都の水量はありますから温泉が欲しい所ですね」
「そうですか、手は足りますか?足りなければアトラム王国にも協力して頂きますよ」
「それは少しお待ちください。王都東側の山脈か森に何かないか調べたいのですがその部分は手が足りません」
「そうですか・・本国と相談してみます。第8師団を呼べると早くなりますか」
「はいそれは防衛の為にも願ってもない事です」
「そうですか。やってみます。決まればこの駐屯地も大きくしないとダメですね」
「嬉しい誤算となりますから、立派な物を作って見せます」
「期待してください」
・・・・
「よし集まったな。では始める」外澤1等陸佐は皆を見渡して始める。
「各隊到着以後事故もなくご苦労。
第42即応機動連隊の計画を発表する。モニターを見て欲しい。
アトラム王国の西側地図だ。この北の森までの駆除をここから行う。
現在までに大型動物は数種類、魔物と呼ばれる特性を持った動物が15種見つかっている。
やはり魔物がやっかいだ。
それと団長から特別に王都ブリシアシティーの東側森及び山脈の調査依頼を受けた。
これは温泉等の有効資産がないかの調査と鉱石等の調査を継続して欲しいとの要請だ。
偵察隊がいれば彼らの領分なのだが、我々だけで行わなければならない。
そこで、中央ロータス街の西側に駐屯地を作り、そこを拠点として動き回る予定だ。
駐屯地構築は第8施設大隊の第3施設中隊が手伝ってくれる。
またアトラム王国第2師団が同じく中央ロータス街の東側に駐屯地を作るそうだ。
ただ、アトラム王国第2師団の農兵は故郷に戻り規模は500人程度らしい。
そこで馬車と冒険者と言うフリーランスを雇って退治した魔物や盗賊は彼らに渡して我々の行動を妨げない様にお願いしている。
「では詳細に説明する。
黄色い線で囲った所が我々の担当地区である。
広大だが先に南側を順次安全地帯に変えていく。第8施設大隊が農園予定地の周囲に柵と魔物除けの魔道具を埋めていく予定だ。
我々はこの地区に現れるまたは住処とする魔獣や大型動物を駆逐していくが、最悪は駆除でよろしいが、出来るなら捕獲を考えて欲しい。
その為の大型罠をアトラム王国に依頼している。
最初に調査退治する魔物について判明しているリストだ、特性と特徴はアトラム王国よりの情報だ」
各隊長に配られたリストは以下の通りである。
荒れ地魔物リスト
・マンティコア:大きなライオン型:特徴 しっぽが蛇、毒矢をだす。 :危険ランクA
・フキマニ:大型の狼型 :特徴 敏速で攻撃を回避,牙に注意:危険ランクB
・アンリン:中型のアリ :特徴 蟻酸を吹く、剣は解かされる:危険ランクB
・ワイガー:大陸でドマフラくま型:特徴 角が生えたクマ :危険ランクC
・コボルト:人型小型 :特徴 群れで行動する武器が得意 :危険ランクEただし群はD
・ばふふ:中型のいのしし型 :特徴 角があり刺さると痛い :危険ランクE
・マモモン:20センチ級ネズミ :特徴 攻撃はしない、逃げ足は速い:危険ランク外ただし害獣
・キラモ:日本で言う羊 :特徴 攻撃はしない、逃げ足は速い:危険ランク外 家畜に最適
・ミンスク:小型の猫、顔はリス型:特徴 かわいい攻撃はしない :危険ランク外
森魔獣リスト
・ミノタウロス:大きな牛人型 :特徴 凶暴、力が強い、知性高い :危険ランクA使役可能
・オーガ:大きな人型 :特徴 食人、凶暴、力が強い :危険ランクA
・オーク:大きな豚人型 :特徴 食人、凶暴、力が強い :危険ランクB
・リザード:人型トカゲ :特徴 凶暴、力が強い :危険ランクC群はB
・ゾンビ:人型、元死体 :特徴 食人、凶暴、知性は無い :危険ランクD
・妖精族:とても小さな人型飛ぶ :特徴 知性高い、魔法強力、 :危険ランク外話をする事
・盗賊:人 :特徴 10人以上で襲う。魔法も使う:危険ランクD 捕らえる
「これ以外にも森の奥には目撃情報の無い魔物がいるらしい。本格的な異世界魔獣退治となる。
群れをなすものは要注意だ」
「隊長了解ですが、捕獲とはどういう」
「説明する。日本とアトラム王国との話で、動物園・・もとい魔獣園を作る話となった。ここで魔獣をみて置けばであった場合の対処もできるだろうと言う事だ。王立陸軍学校には魔物の動態保存に骨格保存があるので、これに追加して作ると言う計画だ」
「魔獣園ですか隊長。日本にも作りたいですね」
「今回の成果次第だ。それに海にも不明生物がいるからな。魔獣園に魔物水族館もできるぞ」
「頑張ります」
「そうだ、日本の家族に見せてやれ。お父さんはこれと戦ったのだと」(笑)
「以上で計画説明は終わりだ。早速中央ロータス街に移動をする2日間で準備せよ。以上だ」
全員立ち上がり「はっ了解」と敬礼する。
・・・・
それから2日後、南ロータス街郊外に作られた駐屯地を第42即応機動連隊は第8施設大隊第3施設中隊を伴い中央ロータス街西側に駐屯すべく出発する。
なお、今回の作戦で第8師団がアトラム王国に上陸するまで、アトラム王国駐留艦隊より荷物搬送用に海自よりUH-60Jを2機、陸自輸送隊よりCH-47JAを2機借りている。その為のヘリポートを作らねばならない。
日本国開発援助団長に就任した富沢は更なるアトラム王国開発の為に熊本に駐屯する第8師団の派遣を政府に打診している。対ワイバーン対ドラゴンを意識しての要請である。
・・・・
第8施設大隊第3施設中隊はあっという間に中央ロータスの西側に駐屯地と言う名の陣地構築を行い、ヘリポートまで完成していた。
駐屯地建物は簡易建築ではあるが、本部機能としては充実している。電気等については風力と太陽光で供給をしている。特に風力は中央ロータス街では風が強く風力風車6基で駐屯地殆どの電力をまかなえた。
嬉しい誤算である。
基礎工事が終了したので、野営して手伝っていた第42即応機動連隊は次々と駐屯地に入り、本格的活動を開始した。
王立第2師団は中央ロータス街東南に拠点を作り、自衛隊への協力体制を作り出している。
特に中央ロータス街や近隣の町から冒険者ギルドを通じて雇い魔物退治は自衛隊が行うが、その道案内と魔物の種別報告を託された。
第42即応機動連隊は従来の特科、高射、戦車などを1つの連隊として組織した新しい部隊である。
その特徴は1連隊で全ての範囲を防御する事が可能であり、高速機動部隊としても機能する。
第42即応機動連隊は新旧取り交ぜた兵器群を扱い作戦を実施するいわば統合陸戦部隊である。
その兵器類は、16式機動戦闘車、96式装輪装甲車、82式指揮通信車、軽装甲機動車、高機動車
73式小型トラック、73式中型トラック、73式大型トラック、01式軽対戦車誘導弾、中距離多目的誘導弾
93式近距離地対空誘導弾(近SAM)、81mm迫撃砲 L16、120mm迫撃砲 RTの構成である。
特科が弱気もするが魔獣討伐には最適であろうと思う。
「さて諸君、準備は整った。魔獣狩りに行こう」「了解」
「アトラム王国魔獣駆除作戦1、今より状況開始する。総員対処開始。中隊長お願いする」
「第1普通科中隊了解、状況開始」「第2普通科中隊了解、状況開始」「第3普通科中隊了解、状況開始」「火力支援中隊計画に従い分散し追随」「第1機動戦闘車中隊各小銃小隊に分散随伴開始します」
「第2機動戦闘車中隊同様に各小銃小隊に分散随伴開始します」
中央ロータス駐屯地から各隊が一斉に出発した。
魔獣を駆除または捕獲した場合は本部より檻付き大型トラックが来て回収を行い、駐屯地で分類調査を行った後に王立第2師団に引き渡され、王都に運ぶ手順となっている。
また各小銃小隊の駆る96式装輪装甲車には案内人として魔物に詳しい冒険者及び王国兵士が1名同行している。
「目視発見23時方向。目標4匹」
「あれは何かわかりますか」案内人に尋ねる。
「あれはフキマニです。凶暴ですが問題ないでしょ」
「よし、3匹は排除、1匹は捕獲」
「了解」
「フキマニ向かってきます」
「そのまま進め」ゴンゴンゴンゴンと4回も当たる音が聞こえる。「車長確認」
「後方に轢死動物4匹認める」
「第2班確認して欲しい。瀕死の場合は射殺を許可」
「第2班了解」「第2班報告。フキマニ全て轢死以上」
「捕獲は無理だったか。仕方ない」あらま轢き殺してしまいましたか・・・
「本部、こちら第2普通科中隊第3小銃小隊、フキマニ4匹遭遇全て轢死、地点155.766、回収願う」
「本部了解。回収班を送る。以上」
第42即応機動連隊本部より、檻付き大型トラックに冒険者と王国兵士を乗せて魔物の回収に向かう。
・・・・
「捕獲できなかったか。トキナさんフキマニはどうやって捕らえますか」
「我々は餌を撒いて網で捕らえます。ですが暴れるので頸動脈を切り死亡させます。生きて捕らえる事は無いです」
「そうですか、麻酔薬でもあれば良いのだが」
「麻酔・・眠らせる事ですか」
「ええそうです」
「それなら私はスリープの魔法が使えます」
「その名の通り眠らせるのですか、どれでも有効ですか」
「フキマニ程度なら大丈夫でしょう。それ以上の大型は無理ですが・・」
「便利ですね、次遭遇したらお願いします」「わかりました」
小隊長・・普通に対応しているが良いのか。
「トキナさん、次はどの地点でしょう」
「えーと、地図ではこの地点ですね」
「なにがいますか」
「マモモンの巣穴が発見されています」
「マモモンと言うと大鼠ですか。害獣ですね」
「はいその通りです。全て駆除で大丈夫と思います」
「了解です。転舵左45度」しばらく行くとマモモンの巣穴が見えて来た。
「何ですかあれは、アフリカのあり塚の様に盛り上がっています」
「あれがマモモンの巣穴です。大きいですね女王がいると思います」
「そうなのですね」
「ええ女王マモモンは卵を産みますから確実に殺さないと」
「たっ卵なのですか」「ええ卵です」哺乳類と思っていたが卵から生まれるとか・・生態系興味深い。
「目標まで500m」「全車停止」「第3小銃小隊より迫撃砲分隊及び火力支援分隊、目標500m先いけますか」
「迫撃砲分隊可能です」「火力支援分隊500m後退します」「第3小銃小隊了解、迫撃準備お願いします」「了解」「了解」
第3小銃小隊はマモモンの巣穴が穴ではなく盛り上がっている為に直接攻撃を諦めた。巣の地下に部屋が広がっているらしい。穴が開けば小銃でも手りゅう弾でも使えるのだが、最初はモーターによる迫撃を選択した。
「迫撃砲分隊準備完了」「火力支援分隊少し待て」
「了解、我巣穴に行き発煙信号弾を地上に発射する。それを目標にお願いする」
「迫撃分隊了解」「火力支援分隊了解、なお目標より200m離れた後に対処開始する」
「了解した」
・・・・
「火力支援分隊準備完了」
「第3小銃小隊了解。各迫撃は3発お願いしたい。その後我が調査、生きていれば小銃及び手りゅう弾にて対処予定。以上」
「了解」「了解」
「第3小銃小隊了解。では発煙信号弾を発射に向かう。発煙確認後射撃よろしく」
「さて、いくぞ」第3小銃小隊長は96式装輪装甲車の上部ハッチから身を乗り出し手には信号拳銃を持っている。
96式装輪装甲車の走行振動に驚いたマモモンが数匹飛び出してくる。
96式装輪装甲車は止まらず、その大ネズミ、ヌートリアと言うよりカピバラに似たマモモンを4匹轢いてしまう。少しだけ「かわいい」ので後悔した。
「発射」第3小銃小隊長は21.5mm信号けん銃(53式信号拳銃)を巣に向かって発射した。赤い煙が出る。
「全速退避」96式装輪装甲車は最高時速に近い速度で巣から離れる。
「第3小銃小隊長、退避完了、後は頼む」「迫撃分隊了解」「火力支援分隊了解」
突然後方から迫撃砲が発射される。迫撃分隊が81㎜迫撃砲1基、火力支援分隊が120㎜迫撃砲1基である。
各3発計6発がマモモンの巣に命中する。土煙が6m程度も上がる。
「迫撃分隊発射終了」「火力支援分隊同じく終了」
「第3小銃小隊長了解、我調査開始、待機お願いする」
第3小銃小隊長は2両のWAPCでゆっくり巣穴に近づく。高さ1mもあった巣の塔が直径5mの穴に変わっている。
「総員下車、単射許可。整列。曹長」「よし、動くマモモンは射殺。穴下部に卵があるはずだ。確認したら全て壊せ。行くぞ」
「穴に近づき過ぎるな。落ちるぞ」
・・・
「1m手前で停止。何か確認できるか」
「数匹の死体が確認できます」
「卵は見えないか」
「ここからでは見えません」
「外周沿いに調査開始」
「卵発見、カピ・・マモモン死体の下に見えます」
「よし手りゅう弾による攻撃をする。曹長5発だ」「了解」
「第2班5発用意」「了解」「ではカウント行くぞ、3.2.1.ピン抜け。投げ。退避」
5発のM26破片手りゅう弾が穴に放り込まれ、4秒後に一斉に爆発した。横穴らしい部屋から8匹のマモモンが飛び出す。
「射撃開始、撃ち漏らすな」
ダダダと単発音が複数響き渡りマモモンは全て排除した。
「警戒しながら穴1mまで接近。トキナさん女王はいますか」
「ここからでは見えませんね。死んでいるのは全て兵隊でしょ。・・・・あの斜面を撃っていただけますか」
「あそこですか。曹長」
「あの場所だ、連射、撃て」
ひと際大きいカピ・・いやマモモンが飛び出してきた。
「撃て、逃すな」隊員は一斉に女王マモモンに撃ち続けた。
「撃ち方止め」「トキナさん如何ですか」
「あれが女王です。お腹が少し膨れているので、まだ卵を持っているかと思います」
「そうですか、卵はどのくらいでふ化しますか」
「持ち帰った者が言うには7日温めたと聞いています」
「了解です。すぐにふ化する訳ではないのですね。卵事回収もお願いしましょう」
「第3小銃小隊から回収分隊」「こちら回収分隊フキマニ4匹回収しました」
「その場所から西南2Km地点にマモモンを十数匹回収願いたい。特に女王は卵を持っている様だ」
「回収分隊了解向かいます」
こうして第42即応機動連隊はアトラム王国害獣駆除専門部隊となってしまった。
盗賊や強い魔物退治は、また後程・・・
ありがとうございます。
最近抽選で「アレクサ君」が当たりました。なんか便利です。
作品を書いているときテンションが上がる曲をかけてノリノリで書いています。
曲は・・・メインがMAXです。(笑) ハイエルフの話書くぞ!
ショートショートご評価有難うございます。また、ざわざわした時書くと思います。
生暖かい目で見て頂けると有り難いです。