第112話 帝都の終焉 その3 王族と皇族
第112話を投稿します。よろしくお願いします。
キャラ村住人を見つけたようです。
あれ、お姫様と皇女が東京に来るようです。
キャラ村調査に出動した第5偵察隊はドラゴン対処を終えたのだが、「魔の森」から避難?
飛び出してくる大型動物などの対処で調査は進んでいない。
第5偵察隊第4偵察小隊は、ドラゴンや大型獣の対処で、もう弾薬が尽きかけて、一度燃料と補給の為に荒れ地の集合地点に戻っていた。
第2偵察小隊はドラゴン対処に間に合わなかったが、周辺調査を続行して、「魔の森」に少し入り込んでいる。
「隊長、いやな雰囲気です。道もありませんし、どうしますか」
「そうだな、村の住民が洞窟を探して住み着いているらしいとの情報があるから、「魔の森」を探すしかないだろう。周囲警戒を厳となせ」
「小隊長報告します。前回給油から280Km走っています。3回目の燃料補給も考えませんと、止まります」
「一度給油に戻るか。途中でドラゴン退治に向かったから燃料消費が激しいのか」
「第2偵察小隊より臨時本部。送れ」
「臨時本部感度良好。送れ」
「我、補給の為、集合地点に向かう。送れ」
「臨時本部、第2偵察小隊補給、了解。向かえ。以上」
「第2偵察小隊了解。以上」
「よし向かうぞ、合流して補給が完了後に昼食とするか」
「了解」
第5偵察本部より偵察小隊に対して燃料補給車が派遣されている。偵察本部の22APCを3台従えた3トン半燃料タンク車2台と弾薬等補給車(大トラ)4台は、荒れ地の真ん中で周辺警戒しながら偵察小隊を待っている。
「隊長、補給地点が見えました。先に・・第2偵察小隊も補給に来ているようですね」
「了解した」
「補給分遣隊、こちら第4偵察小隊現着。補給と給油を頼む」
「了解。順番に給油するので、先に水と食料に弾薬を渡す」
「いつも助かる。先に補給物資を受け取る。以上」
「補給分遣隊了解。以上」
第4偵察小隊はゆっくり集合地点に行き、補給物資を先に受け取る。
給油は第2偵察小隊の後ろに付く。
「補給状況確認」「了解。弾薬食料水の補給完了。燃料も全隊完了しました」
「よし、では休憩終わり。出発する。全車前へ」
第2偵察隊と第4偵察隊は再び調査に戻っていった。
第5偵察隊第2偵察小隊は魔の森に入り、木々を避けて通れるところを探して進んでいる。2台の22APCと23RCV(23式偵察警戒車)は横に広がり進行している。
「隊長この先が少し開けています。岩場でしょうか?」
「注意して進め、あっ上空警戒。ワイバーンがいるぞ。対空対処用意」
光学目標追尾装置のモニターを覗いていた第2偵察小隊隊長が警戒を発令する。
「了解」
「先行している22APC(22式装輪装甲車)より報告。岩場上にワイバーン6匹が着地しています」
「よし、崖に気を付けて進行。下に何かあるか確認してほしい」
「22APC1了解」
「22APC2報告。下に降りる道発見。荷重に耐えられるか不明。慎重に進む。以上」
第2偵察隊の第3班は下に通じる道を発見したが、22APCの荷重22トンと23RCVの24トンに耐えられるか見る為に車外に出て徒歩で確認して行く。
「周囲警戒厳となせ。森からも飛び出すから注意しろ」第3班車長からの指示が飛ぶ。班長は上部ハッチから周囲警戒を行いながら道を確認する隊員を警備する。
「班長、行けそうにありません」
道は手掘りらしく道幅3m程度だが、すぐ崖となり補強はされていない。
強度がなさそうでAPCの車重には無理な様子であった。
「一度戻って報告」「了解」
・・・
連絡を受けて第2偵察隊が崖路の手前に集合した。
「第3班から報告。崖下に続く道にAPC乗り入れは危険。徒歩による調査を続行します」
「偵察小隊長了解。しばらく待て、応援を出す」
「各班に連絡。徒歩で調査予定。各APCは森と対空警戒。坂道に行かせるな」
「了解」
こうして第2偵察小隊は車両に射撃手と操縦手を残して9名の特別班を作り坂道を徒歩で警戒しながら下って行く。
「第2偵察小隊。臨時本部送れ」
「臨時本部感度良好、送れ」
「了解。233.766地点に崖下に通じる手掘りの道発見。APCでの踏破無理と判断。以後徒歩にて調査続行。送れ」
「臨時本部了解。十分に注意して進め。対処は任せる。以上」
「第2偵察小隊了解。以上」
「集合。徒歩で下に向かう。装備点検。まるひとも携行」
「はっ装備点検」曹長が点検を始める。
徒歩班はオートバイ偵察隊2台を含め総員9名で向かう。
「バイク隊はゆっくり先行。徒歩班が続く」
手掘りのなだらかな坂道は確実に下に通じている。
「各員、上空と周囲警戒しながらゆっくり進め」「了解」
「小隊長から特別班」
「こちら特別班」
「現在、特別班視認不可。距離はどの位だ」
「特別班、APC地点から1Km程度下っています。崖沿いに続いているのでこちらからもAPC視認不可」
「了解。ワイバーンが動き出したら警戒警報を送る」
「特別班了解」
しばらく崖沿いのなだらかな坂道を下って行くと、先に焚火跡が見えてくる。
「坂道のこり1Km程度、下に大きな焚火の跡を認める」
「小隊長了解。慎重に調査願う」「了解」
やがて全長5Km程度の坂道を下りて行った特別班は大きな広場と大きな焚火跡を発見調査している。
「人だ」突然大陸語で叫ばれた。隊員達は銃を構え警戒態勢に入る。
「私たちは日本の自衛隊です。キャラ村の皆さんを探してここまで来ました。皆さんはキャラ村の住人ですか?」
「ちょっとまて。村長を呼んでくる」若い男性が村長を呼びに行った。他に2名がいる。
「特別班、崖下に人を発見。聞き取り調査に移行します」
「小隊長了解」
・・・・
「お前たちは日本と言う国の自衛隊と言ったか?」
「はい、私たちは日本と言う国の自衛隊です。トロル街のベンデルバーグ男爵から、キャラ村人が見えないと心配しており、私たちが調査していた所です」
「ベンデルバーグ男爵が、そうかそうか、いつも世話になっている。少し長くなるが良いか」
「ええ、皆さんの無事とキャラ村放棄の理由が知りたいと思います」
「そうか、ではこちらに来て欲しい」
第5偵察隊第2偵察小隊特別班は、村長に案内されて大きな洞窟に入っていく。洞窟の入り口は太い木を束ねて柵になって侵入を防いでいる。
「キャラ村が5年前、ドラゴンに襲われたのは聞いておるかの」「ええ聞いております」
「それで村人の半分が焼き殺され食べられてしまった。奴らは全て食べつくさずに増えるまで待つのだよ。
だから次来るまでの対策をみんなで話し合ったのだが・・・
荒れ地にカラミタが群れでいるであろう」
「すいませんカラミタと言う生物は知らないです。もしかして4つ足で角が生えて群れを作っている動物ですか?」
「そうだ、それがカラミタと言う動物。捕まえて飼えばミルクが取れる貴重な動物なのだ」
「それがどうしました」
「普段はそんなに気性の荒くないカラミタなのだが、ワイバーンに追われて再建中のキャラ村に押し寄せて・・・わしらは逃げるしか出来なんだ」
「そんな事が・・・」
「なにしろ500匹以上が押し寄せて来て、儂らは東の崖迄逃げていたのだが・・・去った後は再建できぬ程荒らされて・・・干し魚や野菜がすっかりなくなって、生活ができなくなった。それでキャラ村を捨てたのだ」
「経緯は解りました。大変でしたね。それでこの地をどうして見つけたのですか」
「このドテスム大洞窟は元々キャラ村の遺体を葬る所。ドラゴンには全て食べられたが、カラミタの時は2名が逃げ遅れて・・と言うよりみんなを避難させる為に最後まで残った二人なのですよ」
「勇敢だったのですね」
「そうなのだ、彼らは儂たち老人や女、子供を先に逃がしてくれて、自分達は最後に・・・そして暴走したカラミタの角に刺され死んでしまった。二人はロアとミル、優秀な漁師だった・・それで漁師はいなくなって、みんなで遺体を運びながらここに逃げ込んだと言う事だ」
「状況は理解しましたが、魔の森は魔物や大型動物がいると思いますが、我々もここにたどり着くまでに何度も遭遇しました」
「それなのだが、昔からドテスム大洞窟に行くために、特別な薬草とカラミタの油を混ぜた物を焚いて動物避けにしているのだが、暴走カラミタやドラゴンには効かなかった」
「そんな物があるのですね。状況は理解しました。3人の若者を見ましたが」
「それは5年前にロアとミルに助けられた子供達だよ」
「なるほど納得しました。それで村長これからここに住み続けるのですか。上にはワイバーンがいましたが」
「なにワイバーンとな、いつもは遺体をここに置くとワイバーンは鳥葬の様に骨だけにしてくれるのだが、めったに生きている人は襲わない。死肉などは無いのになぜ集まる・・・わしらでも食べる気であろうか」
「そうなのですね、先ほど・・と言っても3時間も前なのですが、魔の森北にドラゴンが現れ火を吹いて森の一部を焼きました。幸い我々自衛隊がドラゴンと戦い勝ちましたが、その後に魔の森からたくさんの動物が荒れ地に逃げ出していました。その対処に時間がかかりました」
「なにドラゴンと戦い勝ったと言うのか」
「はい、我々は間に合いませんでしたが、仲間が退治してくれました」
「そうかそなた達はドラゴンより強いと申すか。凄い事だ。そうか、実はこのドテスム大洞窟には言い伝えがあって、この洞窟の奥には地底湖があり魔物が住むと言われている。我々はその住処の一部を借りているだけなのだ」
「魔物ですか、具体的には何が住んでいますか」
「大きな水トカゲらしいのだが、気配は感じる事は出来るのだが見た者はいない。そんな奥には誰も行かないからの」
「村長、村民は今何人程度いますか」
「今、村民は増えておらんよ。かえって老人が3人死んでおる。全部で27人程だよ」
「ここに住み続けるのですか」
「いや、いつかは出てどこかに村をと思っている」
「でしたら一時的にでもトロル街にでも避難を考えませんでしたか」
「トロル街までは遠いし魔物にでも会えば「動物避けの薬」も効かないので考えてもいなかった。それにドテスム大洞窟の方がなじみがあるので、ここに避難をと考えていた」
「私たちが護衛しますのでトロル街に行きませんか」
「いや私たちキャラ村では金も食料も売れる物もない。行っても死ぬだけだ」
「本部にかけあってみます。許可が取れれば我々がトロル街で保護して生活できるようにしますので、如何ですか。いつまでもここには住めないでしょう」
「ここは食料も命がけで取ってくるしかなくてな。夜は動物に警戒して、奥にも行けないから飲み水も雨が降るのを待っている。そんな生活なのだよ」
「行くなら許可を取ります」
「少し待ってくれ、村人全員で相談する」
「解りました。私たちは外で許可を取ってきます」
特別班はドテスム大洞窟の外に出て、小隊長に現状報告をした。
「小隊長、感ありますか。こちら特別班、報告です」
「感度弱し、だが通じている。こちら小隊長、報告して欲しい」
「特別班崖下に到着。言われた通り洞窟にキャラ村住人27名との事」
「了解、キャラ村人を現認したか」
「こちら特別班、全員の現認はできていません、村長と話をしました」
「小隊長了解。内容を送れ」
「了解。仔細は戻ってから報告しますが、キャラ村から逃げた村民はここの洞窟で生活。最低限の生活で栄養状態と摂水不良と認められます」
「了解。して村長の意向はどうか」
「現在村人達で話し合っています。すこしお待ちください」
「小隊長了解。方向が出たら本部と掛け合う。以上」
「特別班了解。以上」
特別班班長達は洞窟中に戻る。
「村長、今連絡を取りました。村の意向でどうするか決めます。ですが、私としてはここにいつまでも住み続けるのは無理があると思います。どうか私たちと行きませんか?」
「保護してもらえるのか」
「本部と掛け合います。皆さんの希望に沿った内容にします」
「そうかありがとう。キャラ村はもうだめだと思っておる。だから全員でここに避難をしてきた。
だがここで村人を増やせる状態ではない。何しろ女子供と老人。そしてやっと成人した男が3人。
しかしなにより、生活が難しい。人数分の食料が取れるとは限らないし、飲み水も残り少し・・」
「厳しすぎる環境です。で結論か方向性は出ましたか」
「儂たち老人は死ぬだけだから問題はないのだが、若者たちが・・・ここで生活すると譲らないのだ」
「そうですか・・・残念です。・・・」
・・・・
「そうだ少しお待ちください」
再び外に特別班長は出て連絡を取る。
「小隊長、こちら特別班」
「こちら小隊長、待っていたぞ」
「報告します。意見が別れているそうです。それで食料を取りに戻らせても良いですか」
「了解した。全員分は無いぞ。臨時本部に連絡する」
「はいキャラ村用の物資があれば全員を説得できると思います」
「よし、臨時本部に連絡するが、小隊の予備食料と水なら渡せるから取りに来て欲しい」
「特別班了解バイク班に行かせます。以上」
「了解した。用意する。以上」
特別班長は偵察バイク班に伝えるとバイク班は坂道を上り小隊の元に戻り、予備の食料と水を持って再び下の洞窟入り口に戻って来た。
「村長、我々の持っている食料と水をお持ちしました。沢山はありませんがお渡しします」
「そうかすまんな」
「よし、食料温め開始。水は・・全員分あるな一人一人渡して人数確認をして欲しい」
「了解」
「食料は人数の半分しかないので、二人で一つを食べてもらう。本部と合流できれば沢山あります。水は一人1本渡しますのでゆっくり食べて飲んでください」
住民の人数を確認しながら水を渡し、温めた食料を渡す。隊員は自分達の分の食料も渡している。
住民たちは久しぶりのまともな食事に涙する者もいる。
・・・・
アトラム王国の国王を乗せた交渉団本体は既に横須賀沖を通り、横浜沖まで来ている。
「これが日本なのですね。白く大きな建物ばかりですね」
「ソフィア王女様、ここは荷物を貯めて置く倉庫なのです。機能的に作っているので無機質なのです」
「そうなのですね、星崎さん」
外務省職員で最初にアトラム王国に上陸した外務省担当官の星崎は国王達とDDH-182「いせ」に乗船して、いろいろなお手伝いをしている。なお、外務省政務官の富沢副団長はアトラム王国に残りいろいろな手配をしている。かなり忙しいらしい。
「おっスフィーナ妃もおいでになられました」
「ソフィア王女、見えないと思いましたら、こちらにいらしたのですね」
「はいお母さま、日本の景色を見たくて来てしまいました」
「実は私も見て見たかったのです」
「お母さま、私を口実にしましたね。ふふふ」
「はいそうですよ。そうでなければ部屋に閉じ込められてしまう所でした」
「あらあらお母さま」
「もっと綺麗な景色が見られると思ったのですが、意外とつまりません」
「そうですね、お母さま」
「王妃に王女ここは倉庫が並んでいるので、船の先をご覧ください。「みなとみらい」と言いましてホテルや買い物できる高い建物や遊園地と呼ばれる遊ぶことができる物が見えますよ。まだ遠いですが」
「星崎さんあの高い塔はなんですの」
「あれは、横浜の「ランドマークタワー」と言いまして、中にホテルとレストランに買い物できるショップが沢山入っています。その下もショッピング街となっています」
「まぁ、あの塔がホテルなのですね。凄いわ」
「向こうにある白い建物や帆の形をした建物もホテルです」
「あの変な形の物はなんですか」
「ソフィア王女様、あれはガントリークレーンと言いまして荷物を船から降ろしたり載せたりする機械です。基本人が乗って操作しています」
「たくさん並んでいますね」
「はい、船を岸壁に横づけしてたくさんのクレーンで一度に作業できます。早く次の船に移るためです」
「あの四角の物が降ろした荷物なのですか」
「はい、積むのか降ろしたのかは判りませんが、あれがコンテナと呼ばれる荷物です」
「そういえば南ロータスの港にも2つありましたね」
「はい日本で工事させて頂いてガントリークレーンを2基設置させていただきました」
「そうか、あの荷物大型トラックと言う物に直接乗せて移動できるのですね。王都でも見ました」
「はい、日本からの品物を王城に届けるためにコンテナを運びました」
ソフィア王女は好奇心が溢れ出ている。
「王女様、まだ驚くのは早いです。ここは横浜と言いまして、皆さんを日本に上陸頂くための玄関です。
日本の首都「東京」はまだ大きい街ですよ」
「ここも十分に高い建物ばかりありますが、ここよりも大きいのですか」
「はい、車も人も多く、高い建物もたくさんあります」
「早く見てみたいのです」
「今しばらくお待ちください。ソフィア王女様」
王族を乗せたDDH-182「いせ」と日本交渉第2艦隊は長い航海を終えようとしていた。
今回は横須賀ではなく、横浜米軍施設「ノースドック」を借りて交渉団を上陸させる予定であった。
すでに海上自衛隊のMCH-101が3機、待機しており、防衛省に運ぶ手配となっている。
・・・・
一方、第7師団第7偵察隊に助け出された皇族達は要塞都市ミルドの第7師団が接収している元領主ルキラ伯爵邸を改装して本部として使っている。
ルキラ伯爵は伯爵邸の地下牢に幽閉されている。武力で対抗しようとしたつもりが逆に捕らえられ、伯爵邸を接収されてしまった。これで要塞都市ミルドは自衛隊の管理下に置かれているが、街の人々は自由に外出も買い物もできる。自衛隊が管理している分、前より治安は良くなって、夜でも人が出歩き経済は潤っている。
しかも、街出入りの税や住民税、売上税も一時免除となっている。
領主が捕まり悲惨なはずなのだが、住民たちは自衛隊を大歓迎している。
なにしろ逆らう荒くれ者達は自衛隊が逮捕して、領主がいる地下牢に入れられているのだ。
護衛兵も生き残りは手当てをされて休暇を与えられている。伯爵の命令に従っただけなので、無罪であると自衛隊から言い渡されていて、少しの給金を与えられていた。(伯爵から接収した財産の一部を分配)
トルフェイ后とルミア姫とお付きの女中8人の待つ第5会議室に一人の自衛官が入って来た。
「入ります。第7師団参謀長の守屋1等陸佐です。皆さんの処遇について決まりましたのでお伝えします」
「守屋殿、やはり奴隷か捕虜なのですか」とルミア姫が聞く。
「慌てない様に願います。今から説明しますので」
「はい、わかりました。なにが有ろうとも受け入れようと思います。例え公開死刑でも」
「ははは、面白いですね。日本は裁判をしますのでいきなり死刑はありません。戦闘以外では」
「裁判・・帝国では皇帝の側近者による裁判だから最初から判決は決まってます」
「あの、少し黙ってください」「あぅ」
「では伝えます。メイド達8名は奴隷紋を取るために宗谷特別自治区に送られます。現地でハイエルフに奴隷紋を取っていただきます」
「まだハイエルフ達はいるのですね」
「お答えできません」「はぃ・・」
「では次に、トルフェイ后とルミア姫には、帝国に戻しても良いのですが、戦火に巻き込まれてなにが有るか判りませんので、戦争が終わるまで日本にて保護します」
「日本に行くのですか・・見世物に・・」
「最初に言うべきでしたね。日本はスルホン帝国と違います。人を弄ぶような事はしません。そして首都「東京」で保護します。お二人には自分の事は自分でやって頂きます。料理、掃除、洗濯など全てです。日本国民と同様に暮らして頂き日本はどういう国なのか、また日本国民はどういう考え方をしているのか、同時に日本語についても勉強して頂きます」
「あのー私もお母さまも料理も洗濯も掃除もした事はありません」と控えめにルミア姫は説明する。
「ええ判っています。ですが帝国が無くなればお二人は自分で生きていかなければなりません。その訓練です。最初はいろいろと教えてくれる方を付けますから勉強してください。敵国ですが日本の一般国民と同様な生活を保障します。衣食住について保証はします。ただし最低限ですが」
「はい判りました」
「まぁまぁ大変な事になりそうですね。ルミア姫。できるかしら」
「お母さま私たちへの罰でしょ。やって見せます」
「ルミア姫は逞しいですね。期待していますよ」
「お母さまも一緒にするのです。他人事ではないのですよ」
「まぁ厳しい」
こうして二人の保護を日本政府は考えた。戻してしまうのが一番簡単なのだか、死なれても困るのでこの判断となった。
何しろ国内ではニュースで帝国皇族、トルフェイ后とルミア姫を保護したと流れているのである。
保護・・・
「ご自身達の処遇についてはご理解宜しいですか」
「はい理解しました」
「では明日皆さんを移送します。
最初にここミルドからドフーラに向かいます。そこから乗り換えて宗谷特別行政区空港に向かい。
メイド達とはそこでお別れです。
お二人はそこに外務省担当官が迎えに来ますので旅客機で羽田と言う東京の街に向かいます。
外務省担当官に従ってください。よろしいですか」
「はい」トルフェイ后とルミア姫とメイド達8名は了解したようだ。
翌日、ヘリポートにオスプレイが到着してドフーラへ奴隷達とトルフェイ后とルミア姫とメイドを運んでいく。1機では無理なので3機でドフーラに向かう。
ドフーラに作られたドフーラ航空基地のヘリポートに降ろされた一行は、駐機しているC-2輸送機に乗せられて宗谷特別行政区航空基地に運ばれる。そこで奴隷達とメイド達は行政区役所に連れていかれ、奴隷紋が取れていない者は、トラックにてハイエルフの村に行き、奴隷紋を族長に取って頂く。
トルフェイ后とルミア姫は宗谷特別区航空基地で外務省担当官に引き渡され、宗谷特別区空港に連れてこられ、一般客と一緒に旅客機に乗せられ羽田に向かう。
「お母さま。ドーザ大陸の東の果てにこんな大きな街ができているとは知りませんでした」
「昔、東の地で日本と帝国の戦いがおきて帝国は負けたと聞いていましたが、これ程の街を作るほどの文明とは知りませんでした」
「そうですお母さま、飛ぶ機械とか早く走る大型馬車とか、兵士は魔道杖を全員持っているし、帝国が勝てるわけありません。帝国は槍と剣と弓矢に良くて大砲です。それでは無理ではないかと姫は思います」
「いつの間に帝国の演習を見ていたのですか」
「はい、行くと兵士達に喜ばれるので、たまに見に行っていました」
「そうなのですね。知りませんでした」
「本当は力があれば、騎士として戦場に立ちたかったのですが・・」
「そんな危険事はさせられません」
「お母さまの気持ちはわかりますが、姫も帝国民の一人として戦いたかったのです。
でもご安心ください。姫は模擬試合で新兵に負けましたから諦めました」
「その新兵は生きているのですか」
「わかりません」ぉぃぉぃ姫様。
「そろそろ羽田に到着します。シートベルトをしてください」外務省担当官が丁寧に伝える。
「はい、こうですね」「そうです。お母さまも見てあげてください」
「はい。お母さまこうですよ」
「あらあらまぁ」お后様は元のキャラに戻ったようだ。
やがてふんわりと着陸してボーディングブリッジが横付けされた。
「はい降りますが一番最後に出ますのでお待ちください」
「わかりました」
・・・・
「では降りましょう」
「はい」おっと姫様とお后様はまだベルトをしていた。立ち上がれない。
「あっベルト外してからお立ち下さい」「はい・・・」ルミア姫は恥ずかしそうだ。
航空機を下りた皇族一行は外務省担当官の案内でVIP通路から外に出て、黒塗りの国産車に乗り外務省に向かっている。
ルミア姫は外にくぎ付けで、建物、人々の服装、自動車などどれも見た事無い物ばかりであった。
「お母さま凄い街です」
「本当ですね。高い建物がたくさん・・土地が狭いのかしら。それで上に住んでいるのかしら」
「お母さま素晴らしい。その通りと姫も思います」
「あれ、なんなのでしょ」
「どれですか。お母さま」
前に首都高のジャンクションが見えて来た。
「大きな橋ですね」
「いえ、この道は首都高速と言いまして高速で走る自動車専用道路なのです。前に見えるのがジャンクション(立体交差)と言う、行く方向を変える道路です。目的地方面の道路に入ると目的地が近くなります」
「そうなのですね。平面しかない帝国で上に向かうのは橋しかありませんでした」
「最初の開催されたオリンピックですから、もう60年位前に完成しました」
「オリンピックて何の事ですか」
「はい、ルミア姫様、世界中の猛者が集まり競技を通して世界交流する場です。最近は2021年に開催されました。流行り病で2020年の予定が1年遅れまして」
「こんな進んだ文明を持つのに「流行り病」ですか、不思議ですね」
「トルフェイ后様、最近の研究ではウイルスと言う人間に悪さをする物が変異して、過去の対策を無効にしてしまう事が判っています。ですから常に新しいウイルスや細菌と戦っています」
「お母さま・・帝都も3年前に突然熱が出て、それがいろいろな人に移って大勢が亡くなりました。それがそうなのですね」
「帝都で流行った熱については判りませんが、多分ウイルスか細菌の仕業と思います」
「日本ではそのウイルス、細菌とかに打ち勝つ方法は見つけているのですよね」
「はい姫様、研究者が毎日研究して戦い方を生み出しています。ですから殆どの病気は治し方が判っています。ですが新種については対策まで1年以上かかるのが通例です」
「そうなのですね」
「お二人そろそろつきます」
・・・
「こちらが外務省です。お二人はここでいろいろ聞かれますが、できるだけお答えください」
「はい、わかりました」
不思議な事に、アトラム王国のスフィーナ妃やソフィア王女、スルホン帝国のトルフェイ后とルミア姫が同時期に日本の東京に集まっていたがお互いの事情は知らなかった。外務省も言うつもりもない。
ただし、扱いに相当な差が出ていた。
国賓と保護した皇族・・・
ありがとうございました。
次回はまだ未定です。
アトラム王国のインフラと魔獣退治にミソラ達の話、帝都の終焉、そろそろ帝都に対し動きがあるようですし、たくさんの予定があります。
あっショートショートすいませんでした。プライベートで少し腹立つ事があり、短編に怒りをぶつけてみました。お気になさらないでください。
誤字脱字報告ありがとうございます。毎回感謝しております。(お前がしっかりしろと・・)