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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
114/251

第111話 帝都の終焉 その2 キャラ村と小規模都市ハリタ

第111話を投稿します。

長くなりました。

トロルとキャラ村でのトラブルです。

お楽しみください。

 第5偵察隊はムリナ街から街道途中に点在する村々を説得して回り、自衛隊を敵対視しない様に根回しをしながら進んでいた。


 やがて、第5偵察隊は西側で大きな街トロル街に到着して領主との交渉に入っていた。


 事前調査や各街領主からの情報により、トロル街の西側に広がる荒れ地は中型動物が、森には大型動物や魔獣が住み着いて、街道を行く旅人や商人を含め動物なども捕獲して食べられてしまうらしい。しかも困った事にドラゴンも餌を求めて飛来する地だと言う事だ。

 特に湖に近いキャラ村は毎年大型獣に魔物やドラゴンの被害があり、住人も少なく荒れ果てていると聞いた。


 第2偵察隊は帝都に一番近いソミリア街を包囲し検問を作っていた。

 第2師団本体は一部を交易都市ドミニクの警備に駐留させ、要塞都市ミルドに向かっている。


 第7師団の検問はまだリリコネ-ミルド間で機能しているが、更に第2偵察隊は帝都に近い検問を作り上げたのだ。これで南側の大都市から帝都に向かう物流は制限されてしまっている。特に交易都市リリコネから物資が止まった事は帝都に対して地味な経済封鎖として帝都民の不安を掻き立てている。

 なお、ムリナ街からの食材等については物流封鎖をしていない。


 第7師団は本部をミルドに置いている。第2師団到着後に引継ぎを行いリリコネ東郊外に移動する予定である。

 第7偵察隊は予定通り交易都市リリコネの奴隷市場を強襲し沢山の犯罪者を捕らえた。これらをミルドへの輸送を確認してから、予定通り小規模要塞都市ハリタに向かっている。現地で先行している第3戦闘偵察小隊と斥候小隊に合流する為である。


 因みに交易都市リリコネの治安維持は第7師団第11普通科連隊第4中隊が実施している。

 検問所は第1中隊に交代して、第3中隊はリリコネから部隊の引き上げを現在行っている。


 第7偵察隊は第3戦闘偵察小隊と斥候小隊が合同でハリタ領主との交渉を行っているのだが、領主が皇帝の親戚筋と言うのもあり難航している。


「お疲れ様です。野田隊長。報告します。現在までにハリタ領主、ソルメスタイナー・ユシリス伯爵と3回交渉しましたが、全てかみ合わずに流れています。拒否でもしてくれたら早く解決するのですが。膠着しています」


「状況は理解している。次は染谷に任せようと思っている」

「了解しました。明日は11時に会う約束のみしておりますので同行します」

「それはちょうど良い。染谷に直接報告して打ち合わせをお願いする」

「了解」


 第3戦闘偵察小隊堀田2等陸尉は、本部設営を指揮している染谷3等陸佐を探している。

「染谷3等陸佐殿、明日の11時にハリタ領主、ソルメスタイナー伯爵との会合があります。参加いただきたいと野田2等陸佐からの伝言です」


「了解した。交渉の詳細を報告して欲しい」


 堀田2等陸尉は3回の会合では何も成果が無い事、相手が時間稼ぎしていると思う事。

 なにより小規模要塞都市ハリタの兵士を50名程度しか見ていない事などを報告した。

 小規模要塞都市ハリタは西側からやってくる敵を足止めする目的の出城である。


「解ったが相手は何を要望しているのだ」

「はい、当初ソルメスタイナー伯爵は皇帝の遠縁にあたるからと通過に難色示していました。

 そこで許可頂いた武力での交渉に入ろうと準備していた所に使者が来て、至急に会いたいと申し入れがあり、急いで行きました所。

 ハリタでは「流行り病が蔓延」と言われ、自衛隊への協力はできないと。また病気をうつしても悪いので立ち入りは制限しているとの事。

 その後調べました所、流行性の感染症は見つかっていません。それはハリタから出て来た商人から聞いております。ただいつも以上に門から入場が厳しくなっているとの事です。

 3回目は相手から呼ばれて、いろいろ自衛隊の情報を聞き出そうとしていました。完全に時間稼ぎですね」


「帝国人に変装して潜り込むのを阻止し、そして時間稼ぎか」

「そう思います」

「やっかいだな。時間稼ぎと言う事は何を待っているのだろう・・・」

「こんなに言う事が変わる領主は初めてです」

「了解した、偵察本部の設置が終われば偵察衛星の画像で確認してもらおう。何かがハリタに向かっていれば解るだろう」

「了解、待機します」

「よろしく頼む」


 こうして第7偵察隊は情報が入るまで待機となるが、翌日の会合に間に合うのか微妙である。


 ・・・・

 第5偵察隊第1偵察小隊長の三峰はトロル街の領主に会っている最中であった。


「初めまして、日本陸上自衛隊の三峰です」

「ああ日本の兵隊だな、噂は聞いている。トロル街のベンデルバーグだ、男爵を受爵している」

「ベンデルバーグ男爵、早速ですが、トロル街の通過を認めて頂きたい」

「トロル街は西の小さな街だ、要塞都市と違って簡単な門しかない。自由に通るが良い。市場で買い物して貰えば市民も潤うと思う。是非お願いする」


「了解、できるだけ食料の買い出しをします」

「よろしく頼む。他に聞きたいことはあるかね」


「有難うございます。ところで道中聞いた噂ですが、トロルの西の森と南の荒れ地には魔物や大型獣がでるとかお聞きしています。被害はどの程度なのでしょう」


「うーん、西の森には役に立つ薬草が豊富だ、それは誰も森に入らないから荒らされないのだ。入れば大型動物や魔物が現れ襲われ、殺され食べられると誰もが知っているからな。だが毎年10人程が警告を無視して入り帰ってこない。おぬし等も入らぬことだ。ただ、トロルには、魔物等がはいってこない、不思議に思っているのだが現実なのだ」


「不思議ですね。近いのに・・他に注意する動物や魔物はいますか」

「沢山目撃されているぞ、ドマフラでも5m級、7m級、他にも中心に行けばロックゴーレムなどの魔族がいるらしいと噂になっとる。ただし本当に見た者は誰もいない。見た者は帰ってこないからな、また周辺には野生のワイバーンが多数目撃されている」

「多いですね」


「まだたくさんの種類がいるぞ・・・

 しかしだ、一番厄介なのは北東から飛んでくるドラゴンだ。北東の海を越えた先にはドラゴンが生まれる島があると聞く。そこから餌を求めて森に来るのだが・・・5年前には2匹のドラゴンが来て、湖に近いキャラ村が襲われた。

 ドラゴンは賢い、全てを食べつくさず残して増えるのを待ち、再び来る」


「それは厄介ですね。キャラ村も訪問予定です」

「そうか・・キャラ村はもう30人もいないかも知れない。漁業と農業で栄えた村だったのだがドラゴン来襲以来、村人は避難してしまってほとんど・・・当時は40人以上も食べられた」


「それは厳しいですね」

「そうなのだ、キャラ村人は森の入り口に洞窟を見つけそこに避難していると聞く。最近は行ってないからわからんし、噂の洞窟の場所も知らん」

「洞窟ですか・・・入り口から火を噴かれたら全員死んでしまいます」


「だが、村の建物は少ししか残っていないぞ。救援の為に向かったのだが、それは悲惨であった」

「そうですか・・訪問してみます」


「そうか、日本軍は強いと聞く、だがそれでも「魔の森」には行くな。強い魔物が多すぎて無理であろう」

「はい十分に気を付けます。キャラ村には支援物資をお持ちします」


 情報は聞けた。第5師団はキャラ村周辺に航空基地の建設を命令されている。

 魔物の森は厄介だ。基地を作っても魔物に警戒をしなければならない。

 しかもドラゴンとか・・前に日本に飛来した「ブルードラゴン」は手ごわかった。

 何度攻撃しても死なず上陸して一般市民を食べてしまった。国民に犠牲が出た悲惨な過去である。


 三峰はトロル街での話を偵察本部に報告した。

「了解した。偵察隊だけでは火力不足かも知れない。航空戦力は無いが火砲で何とかするか。

 早速第5師団に連絡して、偵察衛星でそのドラゴンが生まれる島とやらを確認してみよう」

「是非お願いします。以上」

 地図で確認すると魔の森は南北1000km東西に500kmもの広大な森である。

 薬草だけではなく豊かな森林資源が見込まれる。ただ昔から魔物の住む森である様で、自然は手つかずの様である。

 広大な荒れ地も南北に1100Kmも続いており帝国に近い地には帝国演習場まである。

 

「さて、キャラ村に向かうか」第5偵察隊で協議した結果、本部と本部付隊、電子偵察小隊はトロル街南郊外に本部を設置して、第1偵察小隊から第5偵察小隊と本部分遣隊をキャラ村調査に投入する事で決定した。

 電子偵察小隊が第5師団より最新衛星地図を受けとり分析を開始する。

 分析結果はミリムソーマの北1800Kmにある島にドラゴンらしい空飛ぶ生き物が3匹確認されている。

 なぜミリムソーマが大陸で一番近い都市なのに、また周辺には村が点在するのにそちらに行かないのかは不明である。ただ、トロル街の北海上にも750Km先に島があり、なにか関係しているのかとも思う。

 ただし、トロル北の島には、現在ドラゴンらしき飛行物体の確認はできていない。


 陸自第5師団は元旅団を改修強化して師団編成にした強化打撃師団である。

 最新兵器と機器で武装している。ある意味陸自第7師団程の強打撃機動師団ほどではないが、それに次ぐほどの武装をしている。

 第5偵察隊も装備は師団編成時に一新され23式偵察警戒車と22式装輪装甲車が中心となり、偵察バイクはカワサキKLX250からカワサキ「Dトラッカー2022年式」に交換されている。本来国内規制で24PSの馬力を自衛隊用に27PSまでにチューンされたモデルである。


 第5偵察隊は全小隊でキャラ村に向かっている。本部から偵察隊副隊長の時田3等陸佐が指揮を執り本部分遣隊として同行している。


 第5偵察隊はキャラ村訪問以外に、大型航空基地建設の為に視察と調査、測量を任されているが、ドラゴンと遭遇した場合の対空対処も考慮に入れている。


 陸自第5師団は要塞都市バロッサを第27機動化普通科連隊1個中隊に警備を任せ、ムリナ街を目指して移動中である。

 最終的にはムリナ街に師団本部を置き第5施設大隊に、第5特科連隊と第5高射特科連隊の半分を建設予定地のキャラ村郊外の航空基地建設の為に派遣する予定であった。

 建設予定地の護衛は第6機動化普通科連隊が担当する。


 第5偵察隊はトロル街から2日で750Km先にあるキャラ村に到着して調査を開始した。


 後続の第5施設大隊に第5特科連隊2個特科大隊( 99式自走155mmりゅう弾砲20台)、第5高射特科連隊3個高射中隊(87式自走高射機関砲計15台)と第5後方支援連隊、第6機動化普通科連隊はムリナ街から帝国演習所を通りショートカットする予定である。ムリナ街から350Km程しかない。


 時田偵察隊副隊長は、「全車停止」と指示。

「時田3等陸佐、村人は不在の様ですね」

「建物もかなり傷んでいるし燃え残りもあるな。避難しているだろうか・・だがドラゴンは5年前と聞いていたが」

 第5偵察隊はキャラ村周辺の地域割り振りをして、小隊に分かれ調査を開始した。

 

 キャラ村は朽ちかけた建物に燃え残った建物、井戸はあるが人の姿は見ない。

 畑もあるはずなのだが、荒れた地が広がっているだけであった。


 第5偵察小隊は二人一組が徒歩で各家々を回り中に人がいないか調査して回る。

 臨時偵察隊司令となった時田3等陸佐は、キャラ村の外で本部隊員と魔物や大型獣が現れないか周辺警戒に当たって、同時に各小隊の状況をモニターしている。

 魔物が現れた場合は23式指揮通信車を使い、各小隊及び偵察隊本部に状況を報告、対処を指示する事になる。

 

 第1偵察小隊は南側を受け持っている。湖の西側には小高い山脈があり直接湖には行けないのだが、南側に山脈が切れている場所があり、キャラ村の漁船が係留している事を衛星地図で確認していた。

 第1偵察小隊はそこに向かっている。漁船や魚の干場が、そして住人がいるかもしれない。


 第2偵察小隊は荒野を第1小隊の反対側、つまり魔の森南方向に進んでいる。荒野の幅は400Kmもある。


 第3偵察小隊はキャラ村から真直ぐ進んだ魔の森に向かっている。それでも300Kmの距離がある。


 第4偵察小隊はキャラ村から北西に向かい魔の森の北側を調査しようとしている。

挿絵(By みてみん)


 各偵察小隊は相互に位置情報や周辺情報を密に連絡を取りながら慎重に進む。

 魔獣やドラゴン対処については、23式偵察警戒車搭載の40mmCTA機関砲が対地対空警戒可能である。

 同行している22式装輪装甲車については上部に備えられた12.7mm機関砲と40mm自動てき弾銃により地上の魔獣は撃退できるとの判断である。もちろん01式軽対戦車誘導弾も携行している。

 

 ・・・・

 突然トロル街に滞在している電子偵察隊から全隊に警戒が発令された。

「トロル街北より大型飛行物体接近。ドラゴンと思われる。個体数不明。全隊上空警戒を厳となせ。トロル西100Kmを通過予定、現在相対距離200Km。時速300Kmで南下中」電子偵察隊の装備している対空レーダ装置 JTPS-P14の監視距離は約300Km以上である。

突然のドラゴンアラートが発令され、隊員は緊張する。


「第2偵察隊より臨時本部送れ」

「臨時本部より第2偵察隊感度良好。送れ」

「魔の森より大型獣が現れた。ドラフマ(くまもどき)と思われる。我対処」

「臨時本部、対処了解。報告求む」


「第2偵察隊より臨時本部、魔の森から出た獣はドラフマと判定。体長3mの中型」

 ・・・

「第2偵察隊より臨時本部、ドラフマ対処完了。M2による連続射撃にて無効化。以上」

「臨時本部より第2偵察隊。了解」


 魔の森から飛び出したドラフマは第2偵察隊の駆る22式装輪装甲車の12.7mm重機関銃M2により呆気なく排除された。


「臨時本部より各員、トロル本部よりドラゴンアラート発令。上空警戒厳となせ。なお自由対処を認める」


 魔の森が急に騒ぎ出した。いろいろな鳴き声が響き渡り「ざわざわ」している。

ドラゴンが飛来してきた事で鳴き始めたようだ。


「臨時本部より各員、ドラゴン目撃情報あるか報告せよ」


 ・・・

「臨時本部こちら第4偵察小隊。西魔の森方向に飛行物体確認。ドラゴンと思われる1匹のみ現認。以上」


「第3及び第2偵察小隊、第4偵察小隊と合流要請。ドラゴン対処を厳命。以上」

「第2偵察小隊了解」「第3偵察小隊了解」各小隊の間隔は約50Km最大速度で第4偵察小隊がいる方向に駆ける。

「第4小隊より報告。ドラゴンは魔の森北部上空にて停止。ファイアブレスにて森の一部を焼失させている。距離およそ100Km程度、遠い」

 森は高さ40m程度の木々が茂っており、上空は見通しがきくが、森の一部が燃えている。

 第2偵察隊なら「前に見た光景だ」とでも言うのか。

 ファイアブレスと言う事は、最初に宗谷岬へ現れたレッドドラゴンと思われる。


「各隊ドラゴンは133.195地点の第4偵察小隊、9時方向約100Kmファイアブレスにて捕食最中と思われる。急行せよ。第1偵察小隊は現状調査続行、第5偵察小隊、本部分遣隊も向かう。以上」

 一番遠い第1偵察小隊には漁港の調査続行を指示した。


「第3偵察小隊より臨時本部、現着。第4偵察小隊と共同にて対処。以上」

「第2偵察小隊、魔の森より避難動物多数、障害となり現着遅れる。魔物と動物の対処中。以上」


「臨時本部。第2偵察小隊は個別対処中了解」


 第2偵察小隊は第4偵察小隊合流の為に向かっていたが、魔の森から飛び出してくる魔物対処に走りながら攻撃を加える為に速度を落とし射撃中である。大小さまざまな動物が飛び出してくる。中には「いのししもどき」「ぶたもどき」小さい物では「うさぎもどき」これは無視できる。さらに「くまもどき」のドラフマも多数飛び出してくる。荒れ地では角の生えた「うしもどき」が群れで走り回り危険である。

 第2偵察小隊は衝突する可能性のある動物達を射撃で排除しながら北に進む。


 ・・・・・

 第4偵察小隊と合流した第3偵察小隊は23式偵察警戒車搭載の40mmCTA機関砲に対空弾を用意して待機している。その他の地上動物には22式装輪装甲車に任せていた。

 ドラゴンは一通り食べ終わると荒れ地方面に飛んできた。距離は50Kmに迫っている。


「よくこっち来るぞ。止まるな。全車前へ」

「23RCV(23式偵察警戒車)対空射撃用意。1500mまで引き付け対処」「了解」

「転舵」

「くるぞ。転舵右」

「横に捉えろ」「了解」

「ブレス来る。転舵右、よけろ」ドラゴンは動き回るAPCに火を吹くタイミングが掴めないである。

「転舵右」「転舵左」


 レッドドラゴンは飛びながらファイアブレスを出せない様だ。必ずホバリングしてから吐く。

 高速で動き回る車両に翻弄されている様にキョロキョロしていて落ち着きがない。若いのだろうか。


 40mmCTA機関砲の対空最大射程は3500m~4000mである。なお、対地能力は最大射程2500mに設定されている。

 23式偵察警戒車は捜索標定レーダ(周囲80Kmの3D探知能力)と光学目標追尾装置(最大追跡能力18Km)の両方を組み合わせ移動飛行物の追尾を行い、近接信管と内蔵された炸薬に金属破片が広範囲に金属障害物を発射して、対象物を無効化する能力が有る。

 なお、最新のADCCS(対空情報処理システム)により複数車体による相互連携が図られている。

 

 通常の40mm弾頭に対してCTA弾頭の全長は半分とコンパクトに収まっている為に搭載砲弾数は220発、その内対空弾数は60発程度である。なお発射速度は1分間に200発である。



「距離2000m高度500m依然近づいてきます」

 ・・・・

「距離1500m高度500m」「各隊対空対処開始」

 一斉に2台の23式偵察警戒車より走行しながら対空射撃が開始された。22式装輪装甲車も12.7mm機関砲を対空射撃する。

 羽に穴が開いた様に見えるが、ダメージについては、あまり効果は認められない。


 ドラゴンは攻撃された事に驚いてホバリングしている。

 23RCVと22APC(22式装輪装甲車)は転舵を繰り返し高速にてジグザグ運転する。止まらない。


「砲弾種APFSDS-T(装弾筒付翼安定徹甲弾)に変更、胴体を狙え」

 対空砲弾の鉄破片ではダメージを与えられない為に、胴体に対して貫通弾を使用する事を決めた。

「ドンドン」と23RCVの砲弾が飛び出し、ドラゴンの胴体に突き刺さる。


「グワーーギャ」ドラゴンが吠える。胴体にいくつかの穴が開き何かが流れ出ている。

「いけるぞ、もっとだ」「攻撃続行」「了解」

「22APC、射撃停止、01(マルヒト)用意、ドラゴン頭部対処開始」「了解」

 

 同行している22式装輪装甲車2隊4台から隊員が上部ハッチを開けて01式軽対戦車誘導弾を発射する。

 目標は頭部に集中させる。

 ドラゴンは頭部にダイブモードからのトップアタックを受け、01式軽対戦車誘導弾のタンデム成形炸薬弾が炸裂、メタルジェットにより頭部の鱗と頭蓋骨を焼き切られ内部を損傷した。

 ドラゴンは力なく墜落し、木々を倒し森の中に落ちた。


「間に合わなかったか」笑いながら偵察隊本部分遣隊の時田3等陸佐が到着した。


「お疲れ様です。対ドラゴンに40mmCTA機関砲の対空弾攻撃は効果認めず。対戦車用徹甲弾による胴体攻撃と01によるトップアタックが有効」


「了解した。ドーザ大陸方面隊に報告をしておく」


「なお、対象は火を噴くレッドドラゴンと認識しました」

「あの宗谷で出会った奴か」

「同じ種類と思います」


「了解した。仕事に戻るか。各隊対処完了。探査に戻れ」時田3等陸佐は指示をする。

「第2偵察小隊了解、戻ります」「第3偵察小隊了解」「第4偵察小隊了解」


「第5偵察小隊及び本部分遣隊も戻るぞ」

「了解」

「各隊魔物や大型動物対処は任せる」


「偵察隊本部、本部分遣隊、ドラゴンは対処完了、各小隊調査任務に戻る。なおドラゴン対処内容は後ほど送る。以上」

「本部分遣隊、偵察隊本部了解した。ドラゴン対処報告待っていると脇田隊長からの伝言です」


「本部分遣隊了解、以上」

「やれやれ報告書作るか・・」

 時田3等陸佐達は森から抜けてくる大型動物や魔物を対処しながら調査に戻る。


 ・・・・

 一方同時刻、第7偵察隊染谷3等陸佐(偵察隊副隊長)と堀田2等陸尉(第7偵察隊第3戦闘偵察小隊長)は23RCVを2台と22APC 6台を引き連れて、小規模要塞都市ハリタの領主ソルメスタイナー伯爵が住む屋敷へと向かっている。

 直接屋敷に装甲戦闘車を乗り入れようとの考えである。

 もちろん煮え切らない領主への脅しも入っている。


 やがて屋敷に到着し、門にいた門番に「自衛隊の堀田です、領主との面談予定時間なので来ました」と伝える。

 門番は3回も堀田を取り次いでいるので、急いで屋敷に走って行った。

「毎回これです」堀田は苦笑する。


「どっどうぞ領主がお待ちです」


「わかった」堀田は23RCVに乗りこむと「全車前へ」と指示し、屋敷の車寄せ(馬車寄せ?)に23RCVを乗り入れ、22APCは庭に待機させた。

「これは堀田殿」領主が扉を開けて呼ぶが、外のAPCにびっくりする。

「お久しぶりです伯爵、ご紹介します。こちらは本部の染谷です。こちらが領主ソルメスタイナー・ユシリス伯爵です」

「私は偵察隊副隊長染谷3等陸佐です。交渉が進んでいないので来た次第です」

「はじめまして、染谷殿、して外の鉄馬車は何ですか」

「初めましてソルメスタイナー・ユシリス伯爵。なに私の警備ですよ。お気になさらず」染谷副隊長は嘯く。


 堀田は刺激しない様に過去3回は城門から徒歩で部下5名を連れて訪問していた。それが舐められた結果だったので、今回は染谷とも打合せして強硬策にでる事にしたのだ。


「そっそれはそれは、さっどうぞ」「ええお邪魔します」染谷は部下12名を引き連れて屋敷に入っていく。

 堀田も部下10名を連れて入る。残りは緊急時の対処要員。

「大人数ですね」

「いやたいした事ありませんよ」「染谷と堀田が交渉します。他の者は警備ですから」と堀田も笑いながら伝える。


「そっそうですか・・ではどうぞ」いつもの応接に通された。伯爵はなにか焦っている様子である。

「お邪魔します。飲み物は結構です。早速交渉に入りましょう」と堀田が慣れている様子で答える。


 染谷と堀田がソファーに座り、残りの隊員は廊下と室内警備に入る。

「さて、伯爵。端的に言いまして4回目の交渉です。我々はもう待てません」

「そそそうであるか」

「ええ、本部から染谷も来ていますので今日で何かしらの結論をお願いします」堀田がキレながら言う。もちろん演技である。

「伯爵、皇帝の親戚筋であるとは認識しています。通行許可を頂けないと大変なことになります」染谷も脅す。

「儂は何も・・・」

「いえ過去3回も言い訳して通行許可を頂けていません。何かを待っている様子ですが何でしょ」


「いい・・いや何も待っていない」

「なら、なぜ許可を頂けないのですか。我々はもう待てませんよ」


「いい・・いや少し待ってくれ」

「お待ちしている帝国第2師団も敗退した事はお解りですよね。敗残兵がここハリタに逃げ込んだと情報が入っています」


「敗残兵・・など・・」

「いますよね。見ています」


「見ている・・・・」

「ええ、我々は遠くからでも見ていますよ」


「魔道使いなのか」

「魔導士は自衛隊におりませんよ。そういう技術があります」

 

 突然無線が入る。

「副隊長、ハリタ東城壁上部から攻撃を受けています。野田隊長より対処発令されました。お気をつけて」


 隊員全員の無線に入る。

「対処開始」小隊無線に堀田が日本語で伝える。


「斥候小隊は屋敷に近い南門に向かい確保して欲しい」と染谷。

「斥候小隊、屋敷を離れ南門に向かいます」


「なっなんです、突然。なに語を喋って・・」


「いや突然なのは伯爵ですよ。敗残兵を集めて攻撃を計画しましたね。ここにも来るはず」

 同時に外から12.7mm機関砲の軽快な音が複数聞こえる。 


 廊下からも「対処開始」と聞こえる。

「始まった様です」と染谷。


「伯爵。話し合いできないなら逮捕します。伯爵を拘束。応援なら来ませんよ」

「なぜだ。なぜばれた」


「ばれていませんよ。ただこんな事もあろうかと準備しているだけです」と染谷。


 堀田は窓にかかっているカーテンを開ける。

 要塞都市の至る所から煙が上がり、特に東城門が砲弾により崩されているのが見える。

 伯爵邸の門では12.7mmの攻撃を受けて帝国兵が転がっている。


「かれらは伯爵、あなたが殺したのですよ。責任を取っていただきます」

 伯爵は抵抗もせず後ろ手に拘束されている。


「偵察本部、染谷報告。送れ」

「偵察本部、副隊長お無事でしたか。送れ」


「本部、ソルメスタイナー伯爵は拘束した。東門が壊れたようだが90式は入れるか。送れ」

「副隊長、本部了解。90式はいれます。送れ」


「了解、伯爵は協力的で無いため、ハリタに各小隊90式伴い入り残兵牽制と護送の要請。送れ」

「本部了解。各戦闘偵察小隊で市内反撃拠点の探索及び対処と伯爵邸に護送車両向かわせます。以上」

「本部、染谷了解。以上」


「何語を喋っている」ソルメスタイナー伯爵は狼狽えながら聞く。

「伯爵、日本語です。ハリタの街は我々が占拠します」


「なんと言う事だ・・・」

「敗残兵を雇い、武器が揃うまで引き延ばし反撃の様ですね。あまり良くないですね」

「うううう」


 小型要塞都市ハリタの街は城壁に囲まれ、街自体はさほど大きくない。

 外で待っていた90式戦車が矢の攻撃を城門から受け、逆に90式で東門を突破され、市内に各戦闘偵察小隊の90式戦車に23式偵察警戒車と23式偵察警戒車がなだれ込む様に市内に殺到する。

 染谷はハリタの道が50tもある90式戦車の車重に耐えられるのか不安であったが、何とか石畳は耐えていたが、通過した後は石が割れてなんとも酷い有様であった。


 敗残兵は組織的に固まり攻撃するが陸上自衛隊の敵ではない。

 城壁に登り矢を射る者達は、90式戦車の120mm滑腔砲から撃たれた対戦車りゅう弾により城壁が崩され穴をあけられた。それにより城壁は不安定になり、一部が兵士を巻き込んで落下していった。


 ハリタ市内では掃討戦が繰り広げられ、帝国兵士は次々と降伏していった。

 市内のいたる建物には12.7mmによる銃弾が穴を開け、戦争の傷跡を残している。

 兵が窓から矢を射る攻撃をする場所では23式偵察警戒車が40mmCTA機関砲から対戦車用徹甲弾を、偵察隊員は84mm無反動砲(カール君)を窓に撃ちこんでいる。


「偵察本部より各隊。ハリタ城塞の全ての門を開放して欲しい。以上」

「第2戦闘偵察小隊北門を占拠開放します」

「斥候偵察小隊南門を開放します」

「第1戦闘偵察小隊西門を開放します」

「本部より第3戦闘偵察隊、屋敷に護送用中型トラックを派遣引き渡してほしい。後に第3戦闘偵察隊は市内巡回、偵察バイクに注意願う。以上」


「本部より副隊長。送れ」

「染谷だ。送れ」


「隊長より、副隊長は本部分遣隊と共に屋敷を探索。証拠を見つけて欲しい。伯爵引き渡しは第3戦闘小隊に移管。なお屋敷全員を拘束願いたい。送れ」


「染谷了解。本部をここ伯爵屋敷に、移動させる事を上申。広いし部屋も沢山ありますし快適です。以上」

「本部・・・野田2等陸佐だ。染谷3等陸佐上申受理。そちらに向かう。伯爵はその場で拘束していて欲しい。すぐ向かう。以上」

「染谷了解。伯爵屋敷にて拘束継続。お待ちしています。以上」


「と言う訳だ、第3偵察小隊は市内探査に向かってほしい。まだ残党がいる筈なので注意して欲しい」


「第3戦闘偵察小隊長堀田2等陸尉、了解しました。副隊長こそお気を付けください。屋敷内に残党がいるかも知れません」


「了解した。本部分遣隊で何とかする。それに本部自体こちらに向かっているからな。ありがとう」


 小型要塞都市ハリタは帝都西に対する内陸の守りの要であったが、ソルメスタイナー伯爵の計略により、市内で戦闘がおこり、帝国兵士が抵抗を続けているが、すぐに鎮圧され現在は敗残兵の調査が行われている。

 中には剣で22式装輪装甲車に向かってきたツワモノもいたが、剣で22式装輪装甲車を貫けるはずもなく、逆に12.7mm弾の餌食となった。一部90式戦車に登ろうとした帝国兵は車長の12.7mm重機関銃M2により撃退されている。


 結果は帝国兵士164名戦死、ハリタ警備兵23名戦死。

 帝国兵士223名捕虜、警備兵士18名捕虜である。なお潜伏している惨敗兵の探索は続けている。

 第7偵察隊の損害は軽傷者2名である。矢が腕に刺さったらしい。

 衛生兵により直ぐに消毒、止血に抗生薬を投与された。


 こうして第7偵察隊は、小規模要塞都市ハリタの占拠及び非協力的な伯爵邸の接収を行った。

 ハリタ領主邸には通信用エルフ奴隷が3人捕らえられており、第7偵察隊本部が保護をしている。

 たった今まで小型要塞都市ハリタの領主だったソルメスタイナー伯爵は、本部分遣隊が見つけた地下牢に入れられ、自衛隊員2名にて監視されている。他の牢は・・・人骨が2体ある。後の取り調べで判ると思う。

ありがとうございました。

誤字脱字報告本当にありがとうございます。助かります。

次回も帝国終焉をお送りする予定です。

また12000文字とか・・・すいません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本の設定を完全なフィクションと割り切れば国家転移モノとしては楽しめる [気になる点] 武力をちらつかせて、平和と公平を押し付けてくる集団怖すぎ [一言] 日本愛過ぎると国粋主義、共産主義…
[一言] 更新お疲れ様です。 領主の三者三様の対応の結果が・・・・ 抵抗を諦め懸命の判断のトロル街は何れ基地や中継地で潤う事でしょうが、皇族のプライドから従うを潔しとしない領主はあっけなく敗れ、かつ…
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