第110話 帝都の終焉 その1 日本の決断
第110話を投稿します。
スルホン帝国壊滅後の建国プロセスに関する話となります。
ご意見もあろうかと思いますが・・・
よろしくお願いします。
当壁総理と佐野官房長官、そして高野防衛大臣が総理官邸で密談して早くも5日が経過している。
当壁総理は再度、首相官邸地下に作られた大会議室にて「国家安全保障会議」を開催する予定である。
・・・
「皆さんお集まりいただいてありがとうございます」司会が話を進める。
「本日は、首相以下内閣全大臣と各省副大臣及び事務次官、各庁長官及び事務官をお呼びして、日本政府がスルホン帝国に対する制裁及び統治についてお話しさせていただきたと思います。
時間は長くなる予定ですので途中に休憩を設けて行う予定ですが、本日は方向性を決めてしまいたいとの総理の意向でございます。
では当壁総理お願いします」
「みなさんお忙しい中ご参席してありがとうございます。
本日は先にお渡ししたスルホン帝国に対する戦後補償と統治について、具体的に話し合い決めようと思います。
本日の内容はスルホン帝国に対してとても重い内容となります。
それはスルホン帝国解体後のドーザ大陸をどの様に民主主義へ移行させるかと言う、重要かつ重大な施策を作らねばなりません。各省には相互協力を前提に案を出して頂きたい。
時間は5日間差し上げましたが、大変ではあったと思います。
しかし、ドーザ大陸に平和で公平な世界を、ドーザ大陸民に幸せを分け与えなければ、日本がここまで参戦してきた意味がございません。
防衛省には、全ての責任をもってドーザ大陸平定をお願いしてきましたが、この作戦は帝都を残すだけとなっています。
今日ここで施策の方向を決めませんと、帝国崩壊後に民の生活も混乱を極め、我々がドーザ大陸から得る物は無くなります。
ここをうまくやる事で日本にとって大きな取引先及び鉱物など資源輸入が可能となります。
統治する方法は沢山ありますが、日本も過去に学び一番日本にとって大陸にとって良い方法を模索し、実施したいと思います。ご協力をお願いします」
当壁総理は皆を前に頭を下げる。それだけ重要な施策である事を強調した。
・・・・・
「では、ドーザ大陸及び帝国の状況について説明を防衛省よりお願いします」司会が空気を読み指名した。
「・・はい、高野防衛大臣です。状況についてご説明いたします。
総理の後方スクリーンに出しますのでご覧ください」
高野は密会時に出した地図を参加者全員に見せる。
「説明いたします。黄色い線は現在、帝国より割譲された地区です。
山脈東側は日本が調査し開発した地域でございます。
そしてチロルの森でスルホン帝国3個師団と陸自第2師団が中心となり戦闘が発生しました。
表向きの理由は「帝国側は割譲した土地を取り戻す」との理由でしたが、裏の理由は割譲してそこを帝国独自の戦法「人の波」で日本を敗北させる事だと調査が済んでいます。
このだまし討ちに対して日本は特別時限立法ですが「通称:スルホン帝国制裁法」をご承認頂き、この結果、防衛省としては、ドーザ大陸方面隊を設立し3個師団と最新の兵器を持ってドーザ大陸を東から帝都に向けて協力都市を確保しつつ、非協力的な都市については領主捕獲と陸自による自治をしております。
結果は地図に赤い丸が書いてありますが、これが現在日本に協力頂ける都市群となります」
「ほとんど日本の協力都市になっているぞ」「これならいけそうだ」「すごいな」
「えーと、続けます。
現在ドーザ方面隊はドフーラに本部を置き、3500m級滑走路2本に1000m級滑走路を持つドフーラ航空基地を完成させ稼働しております。
これにより、ドーザ大陸東部の補給は問題がありません。
また、アトラム王国に向かった、日本交渉艦隊は別の目的を持ちアトラム王国南ロータス港に向かい、交渉は外務省交渉団に殆どお任せして、艦隊は2つに別れ、別途、帝国ドルステイン港を借り上げドルステイン港駐留艦隊を派遣しておりました。
この海自3艦隊において帝国第1艦隊と同じく第2艦隊を殲滅。帝国艦隊本拠地である要塞港2つと予備の要塞港1つを無力化させています。
また、皇帝に対する圧力を高めるために、帝都親衛隊と帝都防衛隊の両隊を壊滅同然までに攻撃をしております。これにより帝都の治安は乱れており、元帝国兵士で構成される第101特殊普通科連隊を帝都及び帝都周辺都市に潜入させています。情報は逐次入っております。
この元帝国兵で構成される第101特殊普通科連隊は予想以上の働きをしており、帝都攻撃の目標設定及び誘導。リリコネ奴隷市場の解散と首謀者の拘束、現在奴隷となった人々と首謀者、その仲間、また奴隷を買いに来た商人達はドフーラで取り調べを実施しています。
参考までですが、リリコネで捕獲した奴隷に皇妃と皇女が含まれていました。帝国の治安がそこまで悪化している証拠であります。
皇妃と皇女の扱いについても議論頂くと助かります。
では最後に、スルホン帝国制裁法の進捗についてご説明申し上げます。
補助作戦のきつつき作戦は帝国の各都市を日本の協力下に置くことで帝都を孤立させる作戦ですが、これは西側都市を残すのみとなっております。
しかし、ドーザ大陸西側は皇帝の親戚が多く統治しており、難航が予測されています。
防衛省としてはドーザ大陸全土の協力が得られる前に帝国を崩壊すべく用意を完了しています。
また、西側物流拠点として、小型要塞都市ハリタ北部の荒れ地に航空基地を建設予定です。ただし現状ではまだ見通しが立っておりません。
ハリタ領主次第ですがハリタ領主は非協力的なので最終手段をここ3日以内に取る手筈となっています。
以上です。長くなりましたがお手元の資料は会議終了後に回収させていただきます」
「高野防衛大臣ありがとうございました。
まとめますと、帝国の戦闘力は壊滅に等しく、ドーザ大陸におきまして2/3の地区から協力を取り付け、一部の都市には治安維持の為に陸自が入っていると言う認識で間違いありませんか」
「はいその認識で間違いありません」
「有難うございます。当壁総理どうぞ」
「防衛省はじめ各自衛隊員は大変困難な仕事をキチンとして頂いた。称賛すべきと思う。
我々内閣と各省庁はドーザ大陸という新天地に対し、今後どの様なプロセスで「平和で公平な国」に持っていくかと言う問題である。皆さんの忌憚ない意見を期待しています」
・・・・
「佐野官房長官どうかな」当壁総理は意見が出てこない為、指名した。
「・・・はい、大変重く、しかも他国の統治などとは戦後初めての事で、どれが正解なのかはわかっておりませんが、内閣府との協議で少し興味深い意見がありましたので、高坂事務官説明をお願いする」
「はい、内閣府の高坂です。普段は日本や諸外国の政策分析をしております。
外務省との二重チェックの意味がありますが、人数的に・・・まっそれは置いておいて。
外務省が専門だと思いますが、諸外国がもちろん日本も含めて過去の統治や属国、植民地などを研究させて頂いて、今回の帝国統治について考えますに、現在街や村の治安維持は領主が行っています。
そしてその領主は元帝国軍人が受爵して管理しているか、西側都市は皇族に繋がる者に任されています。
これは帝国が西から来たことが大きく、ついでアトラム王国との戦争は全て西側の為、防衛に信頼できる者を配置した結果だと分析されます。
異論があれば後ほど聞きます。
そこで、帝国を崩壊させた後ですが、大きな国にまとめておいても各都市領主の力が強い事もあり、反乱が起きる可能性が高いと予測されます。
結果として、各都市に領地線引きをはっきりさせ、日本がその為の地図を提供して、各領主に引き続き治安維持と統治とこれが重要なのですが、領地の発展をさせる事で帝国は小さな国家群に変える事が出来ます。
日本は小国家連合組織を、及び帝都に小国家会議施設を作っては如何かなと思っております」
「面白い提案だ。他には意見はあるか」
「はい、外務省の佐藤です」
「おお、佐藤大臣お願いする」
「えー、内閣府でお示し頂いた提案なのですが、外務省も同じく小国連合を考えておりました。
外務省としては具体的に、小国は都市ごとではなく、いくつかの都市を合併させてある程度の領地を広くする事で、経済も運輸も回るのではないかと思っています。
試算によりますとドーザ大陸に4つまたは5つの国、他には日本直轄地を加え6個の国に未開発の北東部をアメリカ国家として割譲する約束もあり、他の領事館についても軍事力がありませんので、植民地は考えずに租界に近い自治区などの施策が有効ではと思います。
自治区の実際は、安定迄警察組織や消防、保健所が手伝う事で都市を作り移住を、森の開拓と鉱山の採掘を自衛隊が中心になり協力をする。他には学校や工場、商店などを民間企業や文科省、厚生労働省の協力により、東京23区の様な特別自治区を作る事は如何かなと思います」
「面白い。経産省はどうだ」
「はい、我々は統治に対して知識を持ちませんが、ドーザ大陸については森の資源、山の資源がほとんど手つかずで残されています。
問題はその採取方法なのですが、民間組織や企業を利用すると比較的スムースに進むと考えられます。
その場合は治安が問題となります。
各国との連携と保護が得られませんと民間人を派遣自体無理となります。
そのあたりは防衛省と警察庁、海上保安庁にご説明頂ければと思いますが、現在の案でもドーザ大陸を1つの国とする事でも対処は可能と判断しています。
また総務省にも後ほど説明頂きたいのですが、産業と共に広告宣伝が必要と判断しています。
将来的にドーザ大陸へのテレビ、ラジオ放送についてはお考えがあるのかお願いします」
「我々も宜しいですか」
「お願いする」
「厚労省です。我々もドーザ大陸開発には多くの技術を持つ日本人が不可欠で、教えるにしても習う事にしても、最初は留学と言う事で来ますが、最終的には現地に派遣する方が効率的ではあります。ですので、経産省と同様に邦人の安全確保が最優先と考えおります。
特に民間人を使ったODAも実施すると思いますが、自衛隊だけではダメで、民間人指導者が必要だと結論づけました」
「そうだなODAは考えに入れている。文科省は如何だ」
「はい、我々は将来ドーザ大陸に学校建設をするにしても研究施設を作るしても先ほどの邦人保護が必要不可欠と思います。
また重要な問題ではありますが、どこまでの技術流出をさせるのかも問題です。
特に火器類も国防衛には必要となると思いますが、危険なのですぐには真似できないと思いますが、将来的に真似され日本に危険が無い様にしたいと考えます。
では本省の方針として、技術や一般教育については日本の方法を広めていけると考えています。
必要なら教育者を派遣します」
「総務省お願いする」
「はい総務省としまして、無線に関する問題は大きいです。特に国が沢山出来た場合のPKOや選挙の方式を整える必要があり、政権放送は便利なツールとなります。最初はラジオ程度でも可能と思います。
また、災害対策や国際戦略も見直しを随時かけてはいますが、災害級モンスター来襲や海難等考えなければならない事が多すぎます。
そこで、先ほどの国際組織の創生などは有効手段と思います。
それにより、我々が持つ自治のやり方を広めることができ、人材育成も容易となります。
当壁総理確認なのですが、アトラム王国に対してはODAのみの施策で宜しいのですか。
2つの大国を相手にするのは、日本の体力的に無理があります」
「うーん、そうだな。2大国は無理があるな。アトラム王国については現在スメタナ王が日本に向かっておる最中だ。その交渉次第で内容も変わると思っているが、アトラム王国は元々農業国である為、平和さえ訪れれば、そして日本の農業改革が根付けば、大きな食料輸出国ができると考えている。
現在の国内自給率は75%まで上がってはおるが、国内経済はインフレを抑止できていない状況である。
国内に物は少なくなり、国際取引もできない現状での国内消費だけでは先細りが見えている。
そこで私は暫定だが、アトラム王国については海外取引大国として期待をドーザ大陸については国内消費の延長での輸出を考えている。現状で帝国から何かを輸入する状態ではないし、帝国が崩壊してもしばらくは同様の状況が継続する。
ですから、皆さんもドーザ大陸における産業の発展、農業、漁業、鉱業、工業を考えて頂きたい。
結果全て日本経済に反映してくると考えています」
「当壁総理良く分かりました。では、各省庁はこの流れで施策を考えて欲しい。また、邦人保護は帝国崩壊後に防衛省が中心となり警察庁、海上保安庁、総務省消防庁、及び厚労省社会・援護局(復員局)を考えて頂きたい。
当壁総理大きな枠としてドーザ大陸施策はどの様に考えますか」佐野官房長官がまとめて聞く。
「うん、少し考えたのだが、先ほどの都市群をいくつかの国家としてまとめる案にはメリットも多い、問題は選挙なのだが、それはPKOとして自衛隊に任せたいと思う。
防衛省、外務省、総務省が共同して、先ほどの案を国会を通せる法案として根拠も含め調整して欲しい。
もちろん、お集まりの各省庁も計画の一角を担うと考え、仔細部分の補完をお願いする。
最終調整は内閣府で行う。それで良いか佐野官房長官」
「はい仕方ありません」
「では皆さんご苦労様です。ただしこれからがもっと忙しくなります。皆様のご努力があれば、輸出入できる国が2つ以上見込め、相手にもメリットが大きい。頼みましたよ。
では最後にスルホン帝国に対する賠償請求ですが、帝国自体の領土取り上げと皇族財産の没収。悪徳商人も多いと聞きます。これらも逮捕後没収で宜しいかと思います。
それから、奴隷として売られる所だった皇妃と皇女は日本で保護します。
ただし、日本人と同様の生活保障であり、帝国に戻すと皇族を売り飛ばそうとする者達が何をするか解らない為の措置であります。ですので日本で保護する事に決めました。
幸い皇女はお若いようですので、日本の学校で学んで頂こうと思います。生活ですがお二人には平均的日本人的生活を与えます。メイド執事も捕らえていますが、それは大三角州で仕事を斡旋して生活頂きます。
私の考えは以上ですが、質問などありますか」
・・・・
「無いようですので、このメンバーを新国家建国の為に国家建設方針、法律策定などの方策を作り上げるプロジェクトとして・・・内閣府管轄プロジェクトとして本日より発足をさせます。
うーんプロジェクト名は「ドーザ大陸新国家」までは判っているのだが、「建設」なのか「擁立」なのかだな」
「はい。防衛省としては当分の間、各領主に協力を要請しており、幸い協力的領主も少なくありません。
そこで建設でも擁立でもなく、「ドーザ大陸平定及び新国家樹立に関するプロジェクト」にして頂き、
各領主の協力をより一層取り付け領地問題も解決したいと考えております」
「高野防衛大臣の言う通りかもしれない。
当分の間は日本が積極的に治安維持を行い。PKOによる選挙を実施、国として認めて行くプロセスとなるだろう。現行の各領主はそのまま街の統治をお願いして、後ほど国としての線引きを行おうと思う」
「高野防衛大臣ところで、協力的でない領主はどの様になっている」
「はい、武力による治安維持を行い、最終的には領主として協力させています」
「そうか、それは難題だな」
「それがそうでもありません。各領主は本来領主軍として農兵などを持っており、これを帝国に差し出している形に一応はなっています。
つまり、各領地の治安を守る領主の警備隊は極端に少なく、治安維持の為の兵は少ない状況であります。
自衛隊に協力的領主でも治安維持をお願いされるケースがほとんどです。
理由としては魔物や害獣が現れた場合の討伐隊が作れない事です」
「なるほど、それで自衛隊に協力を求めるか・・それは農業や漁業、山林業などに人手が足りぬではないか。・・・・よしわかった。
自衛隊はそのまま現地の治安維持に努めて欲しい。概要や方法は防衛省に任せる。人員は多いに越したことはないからな。
確か捕虜が沢山いた筈だと思うが、新しい考え方を説明して教育したのち故郷にお帰り願おう。
領主も人手が戻れば経済を発展させることができる様になるだろうし、日本の負担も少し減る。
それに大三角州・・・宗谷特別自治区には警察も消防も病院も外務省出張所も自治行政もあるのだろう。
それをモデルケースとして、各国にそれを広める方法を考えて欲しい。
まとめとして、内閣府はその他の立法案をお願いするとともに、プロジェクト承認を進めてください。
外務省は内閣府及び防衛省と調整して素案確定を目指してください。各国の国境も含め素案に入れてください。各省庁はこの原則に沿って調整を始めてください。
以上で第4回国家安全保障会議を終えます。お疲れさまでした」
当壁総理大臣が集めた国家安全保障会議はドーザ大陸帝国崩壊後の国家建国を目指す事になった。
幾つかの都市を統合して4~5程度の国を作り、それぞれを統治方法の指導する事で概ね方針決定をした。
各省庁は政府の方針に従い、民間企業を含めた方策策定に入る。
ドーザ大陸は皇帝の思いを無視して日本による統治とその後の独立を目指して計画は進んでいった。
ありがとうございます。
帝国も人手不足で経済は貧困が続いています。
日本の施策により復活できるのでしょうか。
次回も終焉の続きをお送りします。
誤字脱字よろしくお願いします。接続詞が間違っている箇所が沢山あり、訂正に時間がかかりました。
漏れている所がまだあると思います・・・ダメなのですがすいません。