第103話 帝国崩壊 その6 奴隷救出作戦
第103話投稿しました。
奴隷達の救出作戦です。
同時に4隊が動きます。すごいですね。
誤字脱字報告ありがとうございます。感謝です。この話も9000文字以上になりましたので力尽きています。ハハハ乾いた笑い
時間が無い中で、第7偵察隊の野田2等陸佐は頭をフル回転させている。
第7偵察隊は第3戦闘偵察小隊と斥候小隊を共同で小型要塞都市ハリタに交渉役として向かっている為に、交易都市リリコネから西を警備していた本部と第1戦闘偵察小隊、第2戦闘偵察小隊を奴隷確保の為に向かっている。
現場を監視している第101特殊普通科連隊第3小隊から報告が次々と入ってくる。
現在は客と思われる馬車が12台も倉庫前に並んでいるらしい。方向は一方向を向いている為に後ろから脅せば走り去るだろうと野田は読んでいた。
現在時間は01時30分、間もなく到着する予定である。
野田は無線で次々と指示を出す。「よし威嚇射撃を行いながら進み、客の馬車は1つ残らず走らせろ、それでも主人を待つ馬車は後ろから壊れない程度に押してしまえ。
次に倉庫入り口を閉鎖するぞ、横づけで出られんようにしろ。22式装輪装甲車3台縦列で閉鎖する。
90式が来るまで5分の辛抱だ。
第101特殊普通科連隊第3小隊は裏から逃げる者を捕らえるか射撃で威嚇して中に留めよ。
もし抵抗する者がいれば排除も許可する。
入り口閉鎖以外の装甲車は道路の反対側に縦列で倉庫2階と屋上を狙い停止せよ。動くものがあれば威嚇射撃。矢など射かけた者は排除する。
敵無力化は戦車到着のタイミングで行う。それまでは矢や剣に注意しろ。
突入は本部特別編成隊に任せる。指揮は染谷3等陸佐に頼む。
戦車が到着次第両サイドの倉庫を潰すぞ、地下に通じる通路があるかもしれない。これは戦闘偵察小隊に調査と確保は任せる。向かって右側倉庫は第1戦闘偵察小隊、向かって左側は第2戦闘偵察小隊の担当とする。到着後ただちに調査を開始せよ。抜け道通路が確認されたら爆破して潰してくれ。倉庫外に抜けようとする者は第101特殊普通科連隊第3小隊に阻止を任せる。反撃あれば無力化して欲しい。
全員に通達、止む得ない攻撃は認める。ただし生きて捕虜化が理想だ。
現場指揮は染谷3等陸佐頼んだぞ」
「了解です。戦車到着まで10分」「了解した」
「戦車到着5分前になったら作戦開始だ」「了解」
野田は緊急作戦の承認と護送等の援護依頼をする。
「第7偵察隊野田より師団本部へ至急連絡送れ」
「師団本部、感度良好送れ」
「師団本部、奴隷市場を我と第101特殊普通科連隊第3小隊ともに強襲する。護送用ヘリの要請を求む。敵は60名以上、なお他に奴隷多数。場所はリリコネ市内倉庫街、接近時信号弾で合図を送る。送れ」
「第7偵察隊、師団本部了解、検問所より護送応援と第7飛行隊よりV-22Jオスプレイと普通科1個中隊を4機で派遣する。送れ」
「第7偵察隊了解。検問所応援及びオスプレイは倉庫街到着時、信号弾にて誘導する。オスプレイはラペリング後、リリコネ東門外にて待機。送れ」
「本部了解、検問所から73式大型トラック6台と1個普通科中隊を送る。オスプレイはリリコネ倉庫街で1個中隊垂直降下後、東門で待機了解。検問所トラック並びに応援は3時間後。オスプレイは1時間後到着予定。送れ」
「第7偵察隊了解。状況開始は5分後。以上」
「師団本部了解。健闘を祈る終了後報告を求む。追加、ハイエルフマリアを同行させる以上」
「これで良し」と野田。
奴隷解放隊の第7偵察隊は倉庫街手前でエンジンを切りタイミングを計っている。
・・・・
「隊長時間です」「了解、状況開始」
各装甲戦闘車はエンジンをふかし、倉庫街の角を一方向から30キロ程度で曲がり上部機銃を客の馬車に向かって威嚇射撃をする。
主人の帰りを待っていた馬車の御者は急いで馬車を発車させる。後ろから鉄馬車が物凄い速度で追いかけてくる。全ての馬車が発車した事を受けて封鎖陣形に入る。
倉庫内でオークションをしていた客たちは突然の騒音に驚いて入り口に殺到する。
倉庫前で護衛していた6人は突然撃たれ足を負傷してその場に転がる。
用心棒の足がもぎ取れない様に12.7mmではなく車両の上から隊員が足を狙って89式5.56mm小銃を撃ったのだ。
倉庫内部にいた用心棒は慌てて入り口を開ける。入り口前に転がっている用心棒を見て客たちは止まる。
そこに用心棒達を轢いてしまわない様に22式装輪装甲車が3台、入り口を塞ぎ車両上部から12.7mm機銃が倉庫内部を狙う。用心棒の一人が矢を射かけようとしていた。
「防衛射撃」と自衛隊員は叫び、用心棒に対して12.7mmを1発だけ撃つ。
「ひっっ」用心棒の腹に大きな穴が開いた姿を見た客たちは、裏に逃げようとして倉庫裏口を目指して走り出す。大騒ぎだ。「日本にばれた」と叫んでいる者もいる。
「ちっ嗅ぎつけやがった。ミサイア地下の抜け道を開けて客達を逃がせ」とユリナリスが指示する。
「みなさん、こちらに来てください」とミサイアは地下の扉を持ち上げて階段を下って行く。
地下の壁にブラ下がった鎖に体重をかけて下に引くと、横の石壁が崩れ、隣の倉庫へ続く道が現れた。
「どうぞ皆さん、隣の倉庫地下に続いています。ほとぼりが冷めたら隣の倉庫裏から逃がします」
「そんな大丈夫なのか」「金は奴隷はどうなる」「事前に解らなかったのか」など客たちは不満をぶつける。
「うるせ!てめぃら、ここで殺すぞ」とミサイアは本性を現した。
ミサイアはリリコネ暴力団最大組織のミルタ団の副頭領も兼任しているのだ。
客についてきた客の用心棒達は剣を抜いてミサイアをけん制する。
「なぁお前たちそんな事してる暇があるのか、ほらほらほら逃げないと日本に捕まるぞ」
「収めろ逃げるのが先だ」客の一人が言うと客の用心棒は剣を収め通路を走って行く。
「おい明かりは何処だ」「真っ暗で見えないぞ」「騙したのか」と客は口々に叫ぶ。
「はいよ明かり」とミサイアは奴隷市場地下にあった明かりを4つ持ち入って来た。
「ここはなんだ」「普通のあはは、まっとうな倉庫ですよ。入り口塞ぐから口も塞いでくれ」
なぜかミサイアは「普通の倉庫」と言う言葉に笑いが止まらない。
ミサイアは壁に下がった鎖を引くと通路が崩れた。「これで追ってこられないから安心してくれ」
「よかった」「一時はどうなるかと思った」「あの砲、死ぬかと思った」
「だんな達、しばらく黙ってくれ、奴隷市場の調査が始まったらこの倉庫裏から外に出るから、それまで静かにしてくれ」
ミサイアと客達は奴隷倉庫の右隣の倉庫地下に静かに隠れている。
・・・・・・
「お前たち相手をしてやれ」とユリナリスは言いながら地下に入っていく。
暴力団ミルタ団の用心棒達は剣を抜いて、構えているだけで、誰も向かって行く者はいない。
足元にはさっき迄仲間だった死体が転がっている。しかも腹に大きな穴が開き内臓が見えている。
一面は血だまりだ。誰も向かって行く勇気が出ない。
地下に降りたユリナリスは「ミサイアは逃げたようだな」と言うとミサイアが引いた反対側の鎖を引く。
ガラガラと壁が崩れ通路が現れた。
「仕方ない逃げるのが先だ」
ユリナリスはランプを1つ持つと通路に入っていく、やがて向こう側から鎖を引いて通路を塞ぐ。
「ばかめ、これで逃げられるが、妃に姫は惜しい事をした。高く売れるのにな」
・・・・・・
やがて応援の第1戦闘偵察小隊戦車分隊と迫撃砲分隊、小隊本部が到着した。
迫撃砲分隊各員は下車して予定通り、奴隷市場隣の倉庫探索の準備をしている。小銃分隊は待機をしていた。
1台の90式戦車で奴隷市場右の倉庫扉を破壊し、前部ライトを全て点灯して倉庫内を照らし出す。
倉庫には沢山の荷物を確認した。人や動くものはいない様だ。
90式戦車は扉の両サイドを壊しながら倉庫内へ入っていく。一部の床は土で後ろ半分は地下室の為に板張りとなっている。そこに戦車が乗ると下に落ちる。
90式戦車は誘導されて倉庫1/3の地点で停止する。車長はハッチから乗り出し砲塔上面の12.7mm重機関銃M2を握り警戒態勢を取る。
迫撃砲分隊長が指示する「良いな倉庫半分より後ろ側に地下に通じる扉があるはずだ。2人一組で調査してくれ。発見したら皆を呼べ」90式戦車の横から分隊員が2人1組でゆっくり歩いていく。
もち論その右隣倉庫の扉も、もう一台の90式戦車が破壊して内部に入り込んでいた。こちらは第1戦闘偵察小隊小銃分隊が調査を開始している。
しばらく調査して迫撃砲分隊員が「地下通路発見」と宣言した。
迫撃砲分隊は地下階段入り口に集まり、ハンドサインで、入り口を持ち上げ、両サイドから閃光発音弾を2つ放り込む。地下が突然発光、そして大音響により用心棒達は無効化されていく。分隊員は地下に殺到し、そこに居たミサイアと客、客の用心棒をタイラップで25名後ろ手に拘束する。剣は全て回収した。
「お前たちは日本で裁判にかけられる。抵抗は無駄だ大人しくしろ」と分隊長はポケット翻訳機で大陸語を伝えた。
ミサイアは「くそ、こんなの反則だろ」と文句を言う。
「他に抜け道は無いか」と分隊長は聞くが誰も答えない。
「ならここに誘導した者は誰か」と尋ねる。
皆が一人の男を見る。「お前だな、名前を聞こう」「・・・・」
「そいつはユリナリス商会番頭のミサイア。我々をここに連れて来た」「おま・・」
「ほぉお前がユリナリス商会のミサイアか、いろいろ聞きたいことがあるから一緒に来てもらおう」
「ちっ」
調査していた第1戦闘偵察小隊迫撃砲分隊長は無線で小隊本部と連絡を取る。
「小隊本部、こちら迫撃砲分隊送れ」
「小隊本部感度良好、送れ」「奴隷市場右隣地下に客と思われる人員25名確保。この倉庫から右への通路は無し、奴隷市場に抜ける通路は使用不能、繰り返す使用不能。護送応援求む。送れ」
「小隊本部了解、応援を行かせる。ユリナリス商会の人間は確保したか。送れ」
「本部、ユリナリス商会番頭確保。別に尋問の用意をして欲しい。送れ」
「本部了解。尋問できる場所を確保する。以上」
「分隊了解、以上」
小隊本部は、小銃分隊が調査している倉庫に通路はないが半数で地下を調べる様に要請する。
のこり半数は迫撃砲分隊の応援に戻す。
やがて小銃分隊より報告。
「小銃分隊より小隊本部、送れ」
「小銃本部感度良好、送れ」
「小銃分隊より報告、地下倉庫に死体と思われる遺骸多数発見。動画と写真にて検証を行う。本部より確認の為立ち合いをお願いしたい。送れ」
「小隊本部・・了解。遺骸多数詳細送れ」
「分隊了解、袋に入った死体らしきものを8体確認。確認を要請。送れ」
「小隊本部了解、立ち合いを送るそのまま待て、以上」
「分隊了解。以上」
地下通路が無い倉庫に多数の袋入り遺体を確認した小銃分隊は手分けして袋を並べ中を確認して行く。
袋の中は腐乱しているが、毛が多く動物か獣人と認められた。1つ1つ丁寧に撮影し状況を書き取り、立ち合いに来た本部隊員と確認をしていく。どうやら売れ残った奴隷の獣人達を殺害して、倉庫地下にほっていたようだ。この倉庫の地下に荷物は無く遺体だけが並べてあった。悲惨な状況に隊員達は手を合わせた。
「ユリナリス商会め、奴隷市場だけではなく、売れない奴隷の殺害までしていたとは、言語道断、裁判にかけてくれ様」と分隊長は怒りを露わにした。人の行為とは思えない悪魔の所業である。
死体がある倉庫を塞いでいた90式戦車は後退し入り口を大きく開けた。
そこに地下から死体の入った袋を担ぎ出し下が土の床に並べて置いた。
小隊本部から別の者も見分に来て写真を沢山撮っている。
-------------少し前-----
染谷3等陸佐は倉庫に到着すると同時に倉庫入り口閉鎖した22式装輪装甲車の後ろで本部隊員を指揮している。戦車や応援が来るまでの時間を稼ぐためににらみ合いを続けている。
やがて第1戦闘偵察小隊が到着、所定の作戦を開始した時。
染谷3等陸佐は「突入準備、着剣、各自防衛射撃を許可。足を狙え」
「準備は良いな、本部要員とは言え、偵察本部は別角だ、意地を見せろ」
「各自射撃用意、暗視ゴーグル閃光に注意。閃光発音弾3発用意」ハンドサインで合図を送る。ピン抜き、3.2.1.投入。
倉庫内が一瞬で発光し大音響が鳴り響く、奴隷や用心棒が照らし出されるが見ていない。目がやられるからだ。
目をやられた用心棒の足元には大きな袋も転がっている事が確認できた。
「良いか、反撃する用心棒の足だけ狙え、袋は奴隷が入っている可能性があるから撃つな。各自状況開始」
下に置いていたランプ目掛け射撃をする。ランプを消しあたりは暗くなる。
一斉に偵察本部要員の射撃が始まる。「全員前へ」と合図で22式装輪装甲車を盾にしていた要員は前進を始める。その間用心棒の足を狙い単発で何発か89式5.56mm小銃の弾ける音がする。その度「うっ」と用心棒が倒れる。
入り口近くに居た用心棒達は目を塞ぎ転げまわっている。素早く拘束していく。後続に任す事にして染谷達は前進を続ける。
本部要員は20名程が横一列になり少しずつ前進しながら敵を無効化していく。見事な連携である。
暗視ゴーグルをしながら敵の足を撃ち前進していく姿はまるで宇宙から来た様な印象を受ける。
暴力団最大組織のミルタ団に所属する用心棒50名は、すでに半数が足を撃たれ床に転がっているが剣を離さない。
しかし、次第に近づいてくる異様な集団に畏怖し、戦闘意欲が無い者もいる様だ。
用心棒達に8mとなった時、染谷は「これ以上抵抗するなら射殺する」と言い転がっても剣を離さない用心棒の近くに威嚇射撃を行う。
全員が剣を床に捨て、こちらを向いて腹ばいになる。
「よし、全員拘束しろ」
本部要員は腕を後ろに組み合わせバンドで拘束していく。外からも応援が来て拘束した用心棒を連れていく。
応援隊に拘束と護送を任せ、染谷達は慎重に地下に下って行く。
地下の明かりは持ち出され残っていないが、暗視ゴーグルには関係ない。
染谷は地下を調査開始した。鉄の檻に奴隷と思われ者が多数収容されている。
男と女、エルフも獣人もいる。それぞれ種族性別毎に別の檻に入れられている。
奴隷の人数は全部で36人も確認できた。
「大陸語は解るか」奴隷の檻の中心で染谷は大きく言う。
「わかる」「わかります」「助けて」など奴隷達は言う。
「少し静かにしてほしい。これから君たちを助ける。我々は日本国自衛隊だ。しかしユリナリス商会の用心棒や、君たちを買いに来た客達で今は手が足りない。応援がくるから、このまましばらく待ってほしい。君たちを見捨てるようなことは日本はしないと誓う。良いか」
「はい」「助かるのか」「女神様」「いくらでも待つぞ」などの声が聞こえる。
「染谷から本部、送れ」
「副隊長、感度良好です。送れ」
「奴隷市場地下に奴隷36名発見。応援要請。送れ」
「地下に36名の奴隷、応援要請受領。10分まて。現在第2戦闘偵察小隊到着、左となり倉庫の調査を開始した。終わり次第応援を派遣。送れ」
「染谷了解応援を待つ。以上」
「本部了解、奴隷たちに水や食料は必要か後ほど連絡を求む。本部以上」
染谷は部下達に地下の保全と水食糧の要不要を任せ1階に戻る。
「おい君、本部に行って写真機とビデオを借りて来てくれ検証に使うと言ってくれ」
「了解です副隊長」
「用心棒達は何かしゃべったか」「いいえ、具体的な事は何も言ってません」
「わかった。ところでこの大きな袋の見分はしたか」
「まだです」
「よし、写真機とビデオ到着次第見分を開始する。そこの吊るされた奴隷、解いてやれ」
「はい」隊員は銃剣でロープを切る。「どさ」と音がして奴隷が地面に落ちた。
「おい気を付けろ」「すいません、落とすしかなくて」
地面に落ちた奴隷は良い体格の奴隷であった。気を失っているのか寝ているのか解らないが意識はない。
「目が覚めて暴れられると困るから一応拘束してくれ」と染谷。「はい」隊員が後ろ手に拘束をする。
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遅れて到着した第2戦闘偵察小隊は作戦概要に従い、90式戦車を左側倉庫に突入させて内部に入る。
続いて小銃分隊、隣では迫撃砲分隊が89式5.56mm小銃を持ち、90式戦車の横から静かに内部に入っていく。
この二つの倉庫も商会の資材が山積みされており不審な所はないが、偵察本部より地下室が必ずある事、奴隷市場地下に潜入した副隊長より両隣の倉庫への通路が発見されており、しかも通路は塞がれていると報告がはいる。
小銃分隊は90戦車のライトを消してもらい、暗視ゴーグルで地下入り口扉を探す。2人1組になって倉庫内通路を慎重に奥まで進む。小銃分隊長は登れる荷物がある所で登り、上から全体を見ている。
「全員慎重に進め、不意打ちに注意だ。攻撃されたら各自、自由反撃許可する」
隊長は荷物の山を跨いで前に進む。「前方3m荷物がないスペースあり、慎重に進め」
隊長は荷物の山の淵まで来ると下を見る。
「敵なし、全員ここに木製扉がある、地下室への入り口と思われる。集合」
木製の持ち上げる木戸に分隊員は集まってくる。ハンドサインで分隊長は木戸を持ち上げ閃光発音弾を2発放り込む。光が治まったタイミングで地下に降りる。
一人だけ床にうずくまっている人物を見つけた。「拘束」と分隊長は指示を出し周囲を調査する。
特に荷物もない。壁に崩れた通路を見つけたが、拘束したこいつが抜けて来た穴だと判断した。
「目が目が」とユリナリスは目を両手で押さえて大声で叫んでいる。
「うるさいやつだな、拘束」と言うと部下が男を後ろ手に結束バンドで拘束して、両側から支え連れ出す。
「暗視ゴーグル外せ」と指示し、全員がスイッチを切った事を確認して、サイリュウムを5本折り周囲に投げる。ほんのり明るくなる。
「全員で調査やるぞ」「はい」
第2戦闘偵察小隊小銃分隊13名は調査を開始した。
「隊長、こんな物が」「どれ」小さな木箱が20個積まれている。
1つを降ろして見てみると、くぎの様な物で蓋が閉じられている。かなり重い。銃剣でこじ開ける。
中は金貨でいっぱいである。ユリナリス商会の隠し資金と見られた。
「すごいな。悪人は貯めこむのが趣味らしいぞ。いいか、うんざりだが表に運び出すぞ。とその前に」
「第2戦闘偵察小隊小銃分隊から本部。送れ」
「本部感度良好。送れ」
「小銃分隊から報告、奴隷市場左倉庫地下にて1名捕獲、現在地上。他地下に金貨箱20発見地上に運び出す。応援要請。送れ」
「本部了解。すまないが偵察本部応援の為、そちらに差し向ける隊はない。繰り返す小銃分隊で持ち出し見分と記録をしてほしい。本部以上」
「小銃分隊了解、以上」
「とっ言うわけだ諸君。訓練だと思って持ち出すぞ」「おー」
第2戦闘偵察小隊小銃分隊は地下の金貨箱を全て地上に運び出し並べて見分を開始した。
「すげーな」と言いながら写真を撮っていく。動画も回す。
地下で拘束した人間は偵察本部に連行していく。
なお、その隣の倉庫も同様に第2戦闘偵察小隊迫撃砲分隊が調査したが、地下には何もなかった。
第2戦闘偵察小隊迫撃砲分隊は調査後、偵察本部が調査している奴隷市場地下の応援に入った。
「染谷3等陸佐、第2戦闘偵察小隊迫撃砲分隊です。応援に参りました」
「おおご苦労。ありがたい。地下に奴隷の檻が沢山あり、檻を壊す必要がある。電動ハンドグラインダーがあると便利なのだが」
「了解、分隊で持っていますので使用します。おい工具一式取りに行って地下に集合」「了解」
迫撃砲分隊は工具を持ち地下に降りていくとサイリュウムを10本折り檻の周辺にばら撒く。
作業できるほどの明かりが確保できた。
「ガーーー」電動グラインダーで檻入り口の鍵を壊していく。
「うーーーん硬いな、全部壊すまで電池が持つかな」がんばれー
外でウィーンと発動機の音が聞こえる。
「明かり持ってきたぞ」偵察本部隊員が延長コードを引っ張りながら地下に降りてくる。
「助かります」延長コードにライトを刺すとあたりが昼間の様に明るくなった。
「まぶしい」奴隷たちはまぶしそうに後ろを向く。暗い場所に長い時間閉じ込められていたからか、目が暗闇に慣れていた。
「すまんな、しばらく我慢してくれ」と言いながら次々と鍵を壊していく。
「おぃ電気来たんだ、充電器と予備のバッテリー用意してくれ」「はいセットしました」
「ナイス。交換する」
全ての鍵を壊すのに30分は経過してしまった。
「よし鍵の開いた檻から慎重に出て欲しい。怪我しない様に注意して」
「出たらこちらに来て座ってくれ」隊員が名前と出身地を聞いていく。
中には元帝国兵士と現役の帝国兵士も混じっていた。「なんでだ、帝国は兵士も奴隷にするのか」
「知らないのですか、私の所属は帝国第5師団第3中隊です」「えっ東の山脈で戦った兵士なのか。確か港で捕虜返還したはずでは」
「そうです。その後帝国第5師団の第1中隊に捕らえられ帝都に運ばれ拷問を受けて尋問され、その後奴隷商人に売られたのです。生きているのが不思議なほどです」
「それはひどい話だ。して、そちらは」
「私は帝国第1師団騎馬隊の兵士だ、高貴な方の護衛で来たのだが、ユリナリスに騙されて薬で眠らされここに居る」
「うーん、現帝国兵であるなら捕虜とします。後ほど奴隷落ちの件で証言をお願いできますか」
「助けて貰ったんだ、証言位する。ただし仕事内容は言えない」
「それで構いません。一応捕虜扱いなので拘束させて頂きます」
「わかった。助けてくれただけで感謝している」
本部隊員に帝国兵士が捕らえられていたと報告する。
本部隊員は無線で連絡をすると、他の奴隷達とは別に管理を求められ、捕虜扱いとすることが決まる。
地下で奴隷達を解放していたころ、染谷3等陸佐は本部から機材を持ってきた隊員達と奴隷市場の見分をしている。
「凄いな現金取引か、そこらに金貨が転がっている。全て写真に撮ってから金貨を集めてくれ」
「そこの袋を開けて中を確認してくれ」
4名の隊員が袋を開ける。動画撮影も行う。
「副隊長、中から女が出てきました」「誘拐か」「どうもその様です」別の隊員が「着ている物が豪華です」「と言う事は高貴な出自と言う事だな」
「どうします」
「うーん、袋から出してくれ。そっとだぞ」
「指輪だけで凄い金額になりそうですよ副隊長」
「袋を下に敷いてその上に横にしてくれ。寝てるのか」「その様です」「薬か何かでしょうか」
「そうだな、これだけ高貴な人間なら護衛もいる筈だから、眠り薬で眠らせるほうが効率が良いと思うぞ」
染谷3等陸佐は何方の味方なのだ・・・
「まっ誘拐するならと言う事だよ」
目が覚めるまで2名で警備してくれ。
「そっちの吊るされていた奴隷も目が覚めないのか」
「うーん、そう言えばここ奴隷市場だからか荷物が無く広いな。よし、この倉庫の入り口に調査本部を仮設する」「了解」
ありがとうございます。
次回も続きを書きます。作戦中の第101特殊普通科連隊第3小隊の話を書けていないので続きにします。
本当は1万文字を超えそうなので、切りの良い所で切ったと言う事です。
次回もよろしくお願いします。