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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
105/251

第102話 帝国崩壊 その5

第102話を投稿します。

帝国崩壊・・・なにかいろいろ動きがある様です。

すいません12000文字を超えてしまいました。本作最長です。すいませんトホホ

しかも難産でようやく生まれました。面白いかどうかは・・・・すいません

あっ書いている途中で失敗して書き直しや不要部分の貼り付けをしてしまったりと、読み直し手直ししましたがバグが取れていないかもしれません。すいません長すぎて力尽きました。誤字脱字報告頂けると嬉しいです。きさきを后で統一しています。読みにくければ妃でも良いですよ。意味的に・・・

 帝都皇帝謁見の間

「サイネグ、サイネグを至急呼べ」と皇帝は何か慌てている。


 親衛隊隊員がサイネグ宰相執務室に走る。

「サイネグ宰相様、皇帝陛下が至急お呼びです」と息を切らせて報告する。

「そうか解った」とサイネグは仕事を途中でやめて立ち上がる。


 階段を上り、長い廊下を行くと、豪華な扉が見える。ここは居城の5階にある謁見室である。

 常時親衛隊4名が外を守っている。


「皇帝お呼びでしょうか」

「サイネグ待っていたぞ、帝国艦隊はどうなったのだ、あれから報告がないぞ」

「はい、その後港や周囲から報告を入れさせましたが、帝国第1艦隊及び第2艦隊共に音信不通が続いております」

「おのれ、アトラム王国め、個別に仕留められたか」

「いえ、皇帝、要塞港の攻撃を考えますと日本・・・または日本とアトラム王国の共闘かと思います」

「なに、日本と言うのか」サイネグは3時間前にも言っただろうと思う。なにを迷っておるのだとも思う。


「して帝国師団はいつ到着の予定なのだ。帝都の防御がないではないか」

「陛下、それは報告がありました。帝国第1師団、帝国第2師団共に全滅をしたと報告があります。日本との戦闘で・・・」

「なに全滅だと・・・なぜ言わん」

「それが・・・魔道通信が入ったのが先ほどでして、逃げた帝国兵士が街にいるとの情報で領主が捕らえ、それで判明し連絡をよこした次第です。兵士はハリタとトロルにて領主が捕らえています。その為に遅くなっています」


「なに、日本に負けたのか・・帝国師団が・・・」

「帝都にいる軍勢は警備隊各街寄せ集めで50名、親衛隊は15名です。これを全て居城に集め警備しています。街中は警備がおりませんので治安が悪くなっています」

「なに・・・・それだけなのか。治安もか・・帝都だと言うに」

「はい、それだけです」


「皇帝、ここに奴が攻めてくるのも時間の問題、日本との和解か逃げ出す事もお考えに入れてください」

「儂がにげるのか・・・なんという、どこで間違った。サイネグどこで間違った」


「皇帝できるか解りませんが、和解するふりして帝国発祥の地、ミルダ島に戻っては如何ですか、再起のチャンスもあります」


「帝都を捨てるのか・・・そんな事が・・・」


「和解交渉は帝国第1師団の騎馬隊が生き残っています。彼らに交渉を任せようと思います」

「なに生き残っているのか・・なら帝都を守らせろ。奴らを、日本を帝都に入れるな」


「皇帝、それは無理です。日本は我々が想像もしない空飛ぶ機械や帝国砲を凌駕する距離からの砲撃など騎馬隊が敵う相手ではありません。冷静なご判断を」


「戦ってはいけない相手だったのか・・」

「はい、最初に使者を出した時に未来から来たと言ってましたからね」

「お前は儂のせいだと言うのか」


「そんな事はありません。なにしろ未来からと言う事は愚者の戯言にしか聞こえませんから。皇帝は皇帝として正しい判断だと思います。日本は我々の予測を超えていただけです。情報が正確であればと悔やむところですが、その情報を信じなかった我々がいます。いまだに信じられませんが」


「そ・・・で・あるか」皇帝は力なく玉座に座っている。


「交渉して時間稼ぎをしましょう。さすれば光も見える事です」


「サイネグ頼みがある、騎馬隊の一部を王城に入れ、(きさき)と姫を連れ出してほしい」


「わかりました。行き先は何処にしますか」


「大要塞都市ツールに決まっておる。弟のドメル・スタンニ公爵が見ておるからと言うのもあるが、儂の別荘に連れて行ってくれ」


「それは良い考えです。早速手配します。ただ、皇帝、途中に日本の検問があると思いますので商人に変装させて、交易都市リリコネ経由で遠回りですが送り出します」


「その経路が良いのか」


「はい、安全かと思います」

「なら任せる。直ちに手配してくれ」

「はい手配いたします。では失礼します」


 通信室に入ったサイネグは人払いを行い、騎馬隊が駐留するムリナ街領主フォン・エルバン男爵に連絡し、騎馬隊長を呼び出してもらう。


「お待たせしました第1騎馬隊長エル・トーマス男爵です」


「まっておったぞ、トーマス。皇帝よりの密命だ。2つある」


「はい」


「1つめ、隊長自ら日本との交渉にあたれ。帝都、いや帝国存続の為の条件交渉だ」


「・・・・はい」


「2つ目は騎馬隊の一部を商人に偽装して帝都皇帝居城から后と姫を交易都市リリコネ経由で大要塞都市ツールの皇帝別荘にお連れしてくれ。途中の交易都市リリコネでは、交易都市代表のユリナリスに会ってくれ、旅に必要な資金と資材を渡すように手配する。この旅は秘密旅行であるから到着するまで連絡はしない様にしてほしい。そして后と姫の護衛もできるだけ目立たぬ様に少人数で頼む」


「・・・はい、トルフェイ(きさき)様とルミア(ひめ)様ですね。少人数では心もとないと思いますが、承ります」


「さて肝心の日本との交渉だが、帝国存続が第一条件だ、その為の帝国領地割譲などはできる限り譲歩する。細かい条件があれば詰めてくれ、最終的には儂が行き条件を決める。その後皇帝居城にて調印とする。よいな」


「はい条件等追加事項はありますか」


「今は全体が見えておらん、また日本側がどの様な条件を出すのかも不明。偽装商人の護衛として貴殿が居城に来てほしい、通信室からエルフを貸し出す。以後はそれで連絡を直接取り合う事で良いか」


「それなら安心です」


「では早速居城まで来てくれ、待っているぞ」

「了解しました」


 サイネグは執務室に戻ると一人になり、薄笑いをした。なにが可笑しいのか。



 3日ほどして偽装商人隊を護衛して第1騎馬隊長エル・トーマス男爵が居城に現れた。

「第1騎馬隊長エル・トーマス男爵だ、サイネグ宰相に面会だ。案内してくれ」と警備兵に伝える。

「お前たちはここで待て」と偽装商人隊の副長サリエルに伝える。騎馬隊副隊長は沈着冷静なリエラと勇猛なサリエルの二人がいる。頼もしい部下だ。


 サイネグ宰相の執務室に行くと「エル・トーマス男爵入ります」と入っていく。

「よく来たトーマス、皇帝に話をするからついてまいれ」「はっ」


 二人は皇帝謁見室に入ると報告をする「皇帝、第1騎馬隊のエル・トーマスが来ました。交渉とお后様お姫様の脱出をお手伝いします」

「そうかトーマスよろしく頼む」と皇帝は覇気がない。トーマスは初めてそんな皇帝ガリル3世を見た。

「命に代えましてもお守りいたします」

「ところで后たちの守りは誰だ」「はい、騎馬隊一の実力者副隊長サリエルが同行します。ご安心ください」「あいつか・・成功したら受爵を考える」「本人も名誉に思います」「では本人達に話はしてある。頼むぞ」「了解いたしました」

「皇帝、日本との交渉はトーマスに頼みます。皇帝の条件はありますか」

「そうかトーマスか、儂は死んでも構わんが姫だけは逃してくれんか」

「閣下、解りました。何としてでも無事に逃がして差し上げます」

「たのむぞ・・・」やはり覇気がない。


「それから、悲報が入りました。お体に触ると良くないのですが・・・帝国第1艦隊と帝国第2艦隊が全滅しました。相手は日本国です」


「・・・・いまなんと申した」「日本により帝国艦隊が全滅したと申し上げました」

「そんな事が・・・してもなぜ報告が遅いのだ」

「はい、帝国艦隊兵士は各港で解放されて直ぐに逃げ出し、領主が捕らえた者が証言したとの事。兵士は帝国に捕まると奴隷に落とされると報告せずに逃げ出した様でございます」


「そう・・か・・儂のやり方が間違っていたのか。兵士を見せしめに奴隷落ちや拷問した事が士気を砕き報告すらしてこない軍隊を作ってしまったのか。無念だ昔の帝国兵は何処に・・・」


「陛下お体にさわります。今からの事だけお考え下さい」


「さようだな、強者はいつか衰退するか・・・ははは」乾いた笑いを皇帝が・・・


 ・・・・


「では閣下、お后様(おきさきさま)達をお連れして出発させます」サイネグ宰相は元気に言う。どこか他人行儀である。


「では閣下失礼いたします」二人は礼をして下がる。


「トーマス先に通信室に行くぞ」「はい」



 通信室に入った二人は、通信係エルフの予備を一人トーマスに与えた。

「良いなトーマス、この指輪を体から離すな、なにかあれば力を入れると奴隷は歩けなくなる」

「奴隷紋・・・ですか・・」


「そうだ、騎馬隊にもエルフがいたから知っておるであろう。居城のエルフは更に強力な奴隷紋が施してある。逃げられやせん」

 騎馬隊にいた通信用エルフは奴隷紋では命令を実行しないと「呪いの言葉」で頭が痛くなる程度で、逃げる事はできる。

 だから鎖で繋がれていたのだが、ここのエルフは足が不自由な魔法がかけられている様だ。


「・・・わかりました」トーマスは交渉が終われば日本に渡してやろうと思っていた。それにこの通信室の情報も。通信用エルフが10人もいる。服装はそれなりに綺麗なのだが、皆やせ細っていて元気がない。みな片足を引きずっている。まるで鎖が付いている様に、この部屋全体が奴隷紋に何か作用している様に見える。


 トーマスが連れ出たエルフは部屋から出ると普通に歩けるようになっていた。


「次に后と姫の部屋に向かう」「了解しました」


「3階にある居室に向かう。女ばかりだから覚悟しろ。おぃエルフお前はここで待て。警備兵見張っていろ」「はい・・・」「はっ」なんの覚悟をと言うのか

「失礼します。サイネグです」「どうぞ」

 ドアを開けると花の匂いが体を包む。それだけで幸せな気持ちにトーマスは包まれる。

「いつも良い匂いの魔道具ですね。ですがそれは持ち出せませんよ」と宰相。


「あらそうなの」

「ええ、匂いで高貴な方だと解ってしまいますから」

「そうね、帝国に2つしかないから当然かしら」

「お支度はできていますか」

「大丈夫よ、女中5人連れて行きます」


「・・・トーマス大丈夫か」

「宰相お二人で5人ですよね。なら大丈夫ですが・・・その・・・多ければ、その・・無理と思います」

「トルフェイ后様、ルミア姫様とお二人で5人でしょうか?」


「ルミアは3人と言っていたわ」

「合計お二人を入れて10人ですか・・・トーマス」

「・・・・・・はい何とかします」


 帝都皇帝居城の西門に着けた偽装商人馬車に豪華な大型馬車が4台も混ざった。


「隊長これは目立ちすぎます」とサリエルがトーマスに文句を言う。


「最初の交易都市リリコネで交易都市代表のユリナリスに会い相談する様にとの宰相からの指示だ、あそこは大きな都市で木工作業所も馬車修理屋もある。そこで目立たぬ様に外装を細工してくれ」


「解りました、でしたらリリコネまで止まらずに走り抜けます」

「うむ、だが后様達が一緒だと忘れるな。それとこれをユリナリスに渡してくれ、宰相からの書簡だ」

「必ず届けます」

「うん、ユリナリスが資金と資材を援助してくれるそうだ」

「はい最初に寄ります」


「忘れていたが、見事トルフェイ后とルミア姫を大要塞都市ツールの皇帝別荘にお連れできれば皇帝が受爵も考えるそうだ」

「ありがたいですが・・・」サリエルが小さな声で「それまで帝国はありますか」

「それは儂には解らん」


 トーマスは西門から偽装馬車についていき、帝都南門から送り見送っている。


 サリエルは受け取った書簡を眺めている。

「これ封もしていないが不用心だな。それとも私にも読めと言う事か」と言いながら書簡を開ける。

 1枚の紙が書簡で、あて先はユリナリス。内容はトルフェイ后様、ルミア姫様が大要塞都市ツールに向かうので資金と資材を渡してほしいと、宰相の名前と宰相花紋が押してある。言われていた通りの内容だった。

 書かれた紙にインク吸い取り用の紙が2枚で挟んである。普通の書簡の形式ではあるが封をしていない事にサリエルは違和感を感じた。宰相も急いでいたと見える。


 サリエルは帝都を出ると速度を上げて交易都市リリコネに向かった。勿論途中までは街道を使うが日本の検問手前から荒野を走る。時間節約にもなる。


 しばらく行くと前に明かりが見える。

 陸自第7師団第11普通科連隊の小隊が、街道を使わずに抜けようとする旅人や商人を捕まえ尋問していた。

 突然、強力なライトを受けてサリエル達は停車する。

「お前たち待ちなさい、陸上自衛隊第7師団の検問である」


「おっまずいな」サリエルは商人のふりをして近づく。

「お前たちどこから来てどこに行く、目的を述べよ」


 目の前にムリナ街で見た「しょうじゅう」と言うのを構えた15人の兵隊が前を塞いだ。

「はい、だんな帝都から交易都市リリコネを経由してフマラ要塞港に向かう途中です。ムリナ街のフォン・エルバン男爵から頼まれて奥様とお嬢様をお連れしています。ムリナでは大きな爆発があったとかで比較的安全と言われているフマラ要塞港のエルバン男爵別荘にお連れする途中です。それに街道は夜盗が出るので近道をしている所です」


「お前たちの話に嘘はないだろうな」「はい、単なる商人です」「その割には体格の良い者が多い気がするが」

「ええ夜盗、強盗に何度も襲われて、自衛の為にムリナ領主様の私設軍で訓練をさせてもらいました」

「そうか、それで商人なのに剣を持っているのだな」

「はい、早速夜盗かと思い警戒していたところです」

「そうか、馬車と積み荷を全て調査する」「へい、どうぞ」


 陸上自衛隊第7師団第11普通科連隊第6中隊第2小隊は不審な物は無いか、隠された奴隷などを中心に検査していった。トルフェイ(きさき)、ルミア姫も偽名を名乗っている。・・・女中たちも偽名なのだが女中達に意味があるのか・・


「よし、行っても良い、気を付けてな」と陸自に言われる。

「はいありがとうございます。至る所に旦那たちのお仲間はいるのですか」


「んっ検問担当は沢山いるぞ、夜盗が現れたら叫べば助けに行くぞ」

「そんなに沢山・・・夜盗も現れないですね。安心です。では行きます」


 サリエルはトルフェイ后、ルミア姫に不都合はないか聞き、しばらく行くと大きな草むらにトイレの為に止まる。さりげなくサリエル達は背を向けて警備をする。


 特に問題もなくサリエル達は交易都市リリコネに入った。昼の時間に到着したので、そのままユリナリス商会に向かった。応接に招かれたサリエル達とトルフェイ后、ルミア姫。

 サリエルは宰相の書簡をユリナリスに渡す。


 書簡を読んでから「これから手配をしてまいります。しばらくこちらでお待ちください」とユリナリスは応接を出て行った。

「ねぇサリエル。あの者頼りになるのか」とトルフェイ后が聞く。

「宰相より、その様に聞いております」「そうか、わらわは好きではないのう」

「しばらくの我慢をお願いします。資金を受け取りませんと旅を続けることができません」

「なぜ帝都で用意しないのだ」

「はい途中で検問が入るとの情報がありまして、商人らしい金額しか持ってきておりません」

「そうか、それなら良い」


 1時間位経過してユリナリスは戻って来た。

「遅くなりすいません」と入って来た。

「遅いぞユリナリス」


「トルフェイ后様すいません。いろいろ手配がありまして、トルフェイ后様、ルミア姫様はリリコネ一番のホテルグランディアの最上階を取りました。

 最上階は階段から直ぐにドアで、奥も見通せませんので警備も少なくて済みます。

 ユリナリス商会の用心棒も6名階下に置きますので警備は万全です。

 それからお后様、お姫様の馬車ですが、当商会の工場にて改装します。

 護衛を除く騎馬隊の方々も一緒にどうぞ、工場に宿泊できます。

 多分1日あれば改装できるでしょ。明日の昼には出発できると思います。


 あっ忘れてました。資金と資材は明日出発する時にお渡しします。ホテル、食事、風呂代は全て商会にて負担します。商会の商店の代金も私どもが負担させていただきます。1日ですがリリコネを楽しんで頂けると私もうれしいですよ」


「ユリナリスそれはすまなんだ。礼を言うぞ」とトルフェイ后が頭を下げる。

「おやめ下さいトルフェイ后様、宰相から頼まれて行うのですから気になさらずにお願いします」


「そうか、では早速移動しよう」とトルフェイ后が出ていく。「お待ちください」とサリエルが慌てる。


 お客が居なくなった応接でユリナリスは「くっくっくっ」と笑う。


 后と姫、女中8人、サリエルと警備の4人は階下のユリナリス商会で商品を見て、いくつかのアクセサリーを姫様に貰い、徒歩でホテルグランディアに向かっている。商会も一番の通りにあるので、ホテルまで徒歩で30秒程度である。

「賑やかな街ね。時間があるならもっと買い物したいわ」とルミア姫が言う。気持ちは解る。


「姫様目立っては、何があるか解りません。しばらく外出はご辛抱願います」


「わかったわ、明日もユリナリス商会で宝石を見せ貰うわ、よろしいかしら」

 ルミア姫はつまらなそうな顔をしている。


 ホテルに着き女中達は荷物をボーイと手分けして最上階に運び込んでいる。

 后と姫は1階のロビーでジュースを飲んで、休んでいる。


「支配人が挨拶に来ました」付き添っていたサリエルが言う。


「本日はようこそ、当ホテルグランディアをご利用頂き有難うございます。ユリナリス様からは大切なお客様だと伺っております。当ホテルの食事飲み物は全てサービスいたしますので、ゆっくりとお楽しみください」


「よろしく頼みます」后は礼を言う。身分はムリナ領主様の奥様とご令嬢になっている。


「もし行き届かない所がございましたら、なんなりとお申し付けください」

「わかったわ」令嬢のふりをしたルミア姫が答えた。


「有難うございます。

 本日のお部屋割りですが、最上階のロイヤルスウィートとインペリアルスウィートをご用意しています。

 お女中達には最上階手前の控え部屋を3つ、護衛の方たちには控えのお部屋を2つご用意させていただいています。

 また、ユリナリス商会からの護衛の方は1階下の階段に近い部屋を4つ用意しています。


 お食事は夜の7時にロイヤルスウィートに用意をさせて頂きます。

 お女中と護衛の方には後ほど部屋にお届けします。

 他に必要な物はございますか。あればフロントに申し付けて頂ければ手配いたします」


「お母さまお風呂行きましょう」「そうね埃をあびたから風呂ね」


「ではごゆっくり、お寛ぎください。私はフロントに戻ります」



 偽装馬車の護衛についてきた騎馬隊8名はユリナリス商会の倉庫に向かっていた。

 馬車の改造を行う為に、職人も倉庫に呼んでいるとの事。


 ついた所は例の倉庫だった。

「では改造する馬車は全部で4台ですね、その他の馬車は隣の倉庫に入れてください」番頭のミサイアが言う。あやしい・・・


「では作業は我々も微力ながら手伝う。職人にも伝えてくれると良い」と騎馬隊隊員が言う。


「はい解りました。職人は今の仕事を済ませてから来るそうですので、30分程度遅れます」

「徹夜だからその程度問題ない」


「では旦那方こちらで飲み物でも、職人が来ましたらお呼びします」


「それはすまない」


 護衛の騎馬隊員は倉庫の奥に進むと大きなテーブルがあり、席に着くとあったかい紅茶が運ばれて来た。

「これは牛乳が入っているのか、初めての飲み物だ」

「ええ、リリコネでは普通に飲んでいる物で「ミルクティー」と言います。砂糖入れてどうぞ」


「これは旨いな」「アルコールはダメだと思い用意させて頂きました。お口にあったらうれしいです」

「旨い。帝都でも飲んだ事無いぞ。さすが交易都市だけある。ドーザ大陸のいろいろな物が集まるのだろう」

「はいドーザ大陸一番の交易都市ですからね。いろいろな物が集まりますよ」・・・


「疲れたのか眠くなってきた」

「お疲れなのでしょ、夜通し帝都から向かってきたのですから、職人が到着したら起こしますから、それまで寝てください」

「おお、そうかすまん・・・・」


 屈強・勇猛果敢で有名な騎馬隊も眠り薬には勝てない様だ。


「帝国兵士も自国内では危機感が足りないな」地下に通じる木戸を持ち上げて「お前ら上がってこい」


 ユリナリス商会倉庫の地下から屈強な男たちが20人も上がって来た。

「ミサイアさん地下は奴隷臭くてたまらんぜ」

「そう言うな、こいつらを裸にして地下に繋いでおけ」



「またオークションですか」「そうだ、ただ主役が現れてからの開催だ、主役は少し遅れるがな。はははは」

「へい、給料分働きますぜ」


 ミサイアは指示して、騎馬隊兵士を裸にして地下の奴隷檻に運び入れている。

「高く売れそうだな、おっと奴隷紋を付けないと」と言いながら魔道具を操作して一人一人奴隷紋を入れていく。屈強な帝国兵士も眠らされては反撃もできない。



 ホテルでは入浴を終えた后と姫が食事を取っている。

 女中や警備のサリエル達は、この後に食事を取る事になっている。

「ふう、豪華な食事ね。帝都以上だわ。お腹いっぱいだと眠くなってきたわ」

「お母さま私も眠くなりました。道中強行軍でしたから疲れが貯まっていたのでは思います」

「では顔を洗って私は寝ます。ルミア姫も早く寝なさい」

「はい、お母さま」


 后と姫はロイヤルスウィートとインペリアルスウィートに別れ顔を洗い寝室に横になると直ぐに寝てしまう。それを見た女中達は自分の部屋に戻り食事を摂る。

 警備の騎馬隊サリエル達4名も交代で食事を摂る。2名が階段を見張る。

 下の階段にはユリナリス商会が手配した用心棒が警備をしている。


 ・・・・・


 深夜動きがあった。

 ユリナリス商会の用心棒がいつの間にか30人にも増え、眠っている護衛や女中を次々と最上階に作られた隠し扉から運び出している。一階には檻付き馬車が2台も用意されている。

 次々と檻付き馬車に入れカギを締める。


「護衛も女中も食事に入れた眠り薬でぐっすりだな、仕事がし易くて良い、次は本日のメインゲストだ」ユリナリスが指示をする。

「宰相も悪だな、吸い取り紙に暗号文字をいれるとは、これで儂も大儲けだ。宰相の逃走資金も十分だろう」

 

 2台の檻付き馬車は闇夜に紛れて倉庫街に走り去っていく。

 代わりに1台の檻付き馬車が来た。


「お前たちメインゲストは丁寧にな。傷つけると価値が下がる」

「はい心得ています」


 寝室で寝ていた后と姫は袋詰めされて、用心棒の手で1階に連れてこられ、檻付き馬車にそっと仰向けで寝かされている。

「慎重にゆっくり行け」とユリナリスは言いながら馬車の後部に乗りこむ。

「お前たちも、倉庫に急ぎ来い」「はい」




 第101特殊普通科連隊第3小隊長のアルタは奴隷市場の襲撃を計画していたが、要の証拠についてはどの様にすると良いか悩んでいる。小隊全員での打ち合わせでも決定的な案が出ずに困っている。


 そこで本部に連絡を取り状況説明をすると、奴隷の確保と会頭代理の確保、そして用心棒以下参加者の拘束を伝えられた。

 襲撃して殲滅は容易なのだが、全員生きて確保となると難易度は跳ね上がる。しかも隊長以下13名での作戦では穴があり、逃げられてしまう可能性が高い。

 考えあぐねていたアルタであった。

 ・・・・


 アルタは突然「捕虜や証拠などは第7師団へ渡す事」となっている事を思い出す。

 早速本部経由で第7師団に連絡を取ると、第7師団から第7偵察隊が交易都市リリコネ近郊で監視を行っている事を知らされた。

 早速アルタは第7偵察隊に会うべく偽装馬車で、第7偵察隊が野営している思われる交易都市リリコネ西門から5Km付近にて、偵察活動を管理している偵察本部に近づいていく。


 偵察隊本部では、先に第7師団本部より連絡が入っており、特別に第101特殊普通科連隊第3小隊への協力要請を受理していた。

「第101特殊普通科連隊第3小隊長のアルタです。この度はご協力に感謝いたします」

 などと挨拶をしながら本部テントにいる事を許可された。


「同じ陸自の仲間だ、そうあらたまる事は止めてくれ。よく来てくれた、第7師団第7偵察隊の野田だ、よろしく頼む」「同じく副隊長の染谷だよろしく頼む」


「はっ野田2等陸佐殿、染谷3等陸佐殿、よろしくお願いします。自分はアルタ準陸尉であります」


「そう、硬くなるな、我々の偵察隊は少し特殊でな、戦車と偵察警戒車を含め機甲偵察隊をなしているので、他の師団と少し違う所が多いのだよ」と野田が軽く説明する。


「そう都市訪問は斥候小隊や小銃分隊に訪問させていたが、その装備だと他師団偵察小隊と変わらんのだが、今回奴隷市場襲撃となると・・・うーんオーバーキルとなる可能性が高いぞ。街中に戦車は持ち込めんだろう。こまったな」染谷は考え込んでしまう。


「染谷副隊長の言う通り、・・・そうだな装甲車だけで十分だと思うがどうかな」


「はい、十分かと思いますが状況次第だと思います。装甲車のみであれば我々の倉庫に隠せますので問題ないかと思います」


「そうか、では作戦分析に入ろう。作戦概要での問題は全員の逮捕と敵武器無効化であったな。第1戦闘偵察小隊から小銃分隊を呼ぶのでしばらく待ってくれ」


「了解、お待ちします」



 1分ほどして、例の倉庫を監視していた隊員からアルタに連絡が入る。


 昼間に帝国兵士らしき偽装した兵士が8名入っていった。その後檻付き馬車が2台、しばらくしており付馬車が1台入っていったとの報告がなされた。


「野田隊長、現在奴隷を運んでいると思われる馬車が3台に昼に帝国兵士8名、事前に警備していた用心棒が6名に夜に14人が追加され倉庫には用心棒20名、そして最後の檻付き馬車の後から用心棒30名が合流したとの事です。それににユリナリス商会会頭のユリナリスが来ているそうです。帝国兵士もいるので穏便には行かないようです」


「帝国兵士もいると言う事は帝国開催の奴隷市場なのかも知れんな。相手は60人以上か、なら戦力を小出しにできんな。包囲して正面突破し救出するしかないな。時間はどの位前だ」


「はい、報告は今でしたから確認に5分として01時15分に集合したと思います」

「よし、この場所から機動車で15分か、動くなら今しかないか」

「染谷3等陸佐、応援はどの位で到着予定か」「はい、あと5分です」


「では本部付隊から30名を先行させて、応援として第1戦闘偵察小隊と第2戦闘偵察小隊を至急呼んでほしい」

「了解ですが、まだ第2戦闘偵察小隊は10Km離れていて、戦車も含まれますが宜しいのですか」


「良い、第1戦闘偵察小隊の戦車を含む後続全隊も集めてくれ、第2戦闘偵察小隊も全隊を向かわせてくれ、現地に直接行ってもらう。アルタ準陸尉、場所は解るな」

「はい地図ではこちらになります」


「よし、交易都市リリコネ代表のユリナリスもいる事だ、会ってはいたが狡猾な人間だった。ならリリコネに戦車で乗りこんで包囲してくれ様。さすれば抵抗も少なくなるし、市民に代表の悪事も帝国の悪事も暴けると両得の計算だ」


「しかし野田隊長、大騒ぎになると思いますが」と染谷は心配する。


「作戦の事前検討はできんが、大騒ぎも計算のうちだ、すぐに準備して出発しよう」


「野田隊長有難うございます」


「染谷副隊長、アルタ準陸尉、儂の指揮偵察車に乗り、行くまでに作戦詳細を作ろうと思う」

「了解」「了解しました」


 こうして奴隷市場包囲が実行された。陸自には珍しく時間不足で検討不十分な作戦となる。


 第7偵察隊本部付隊から87式偵察警戒車が4台、22式装輪装甲車(73式装甲車退役により配備)が6台。

 これに第1戦闘偵察小隊、第2戦闘偵察小隊の小隊本部や戦車分隊を含む小隊全員が移動を開始する。

 22式装輪装甲車各4台、90式戦車が4台に82式指揮通信車2台、迫撃砲分隊の73式小型トラックに73式中型トラックと偵察バイクが本部を含めての大移動だ。各隊は別々に倉庫に向かう事になった。


 野田隊長は、唯一配備された隊長車の23式偵察警戒車から移動しながら、作戦概要を作り無線にて各種指示を出している。第101特殊普通科連隊第3小隊も第7偵察隊の指揮下に入り共同で作戦を実行する。


 第101特殊普通科連隊第3小隊は事前準備として、第7偵察隊の到着までに、ユリナリス商会倉庫群から建物裏に逃げられない様に、倉庫建物の裏口を全て障害物にて閉鎖する。その上で各ユリナリス商会倉庫の屋根に忍び寄り、ユリナリス商会倉庫全ての屋根に監視カメラを取り付けた。


 倉庫街は荷車用の大きな通りが3本あり、その間に倉庫が30程度が6列に連なっている。

 大きな通りを繋ぐ縦の通りは、倉庫街の切れた所に2本あるが、大きく倉庫街を囲む道路になっている。

 包囲するには条件が良い。



「アルタ準陸尉確認できる限りで良いが、ユリナリス商会倉庫はこの地図のどこからどこまでだ」

「はい野田2等陸佐殿、この倉庫が問題の倉庫でして、その2つ両隣までが商会の倉庫です。つまり例の倉庫を入れて5つです。この例の倉庫の真裏の倉庫が我々の本部となります」


「染谷副隊長どう思う」

「はい、包囲して全員を拘束するなら周りの建物は邪魔ですね」

「やはりそう思うか、ははは、建物の後ろはどうなっておる」

「はい、全ての建物後ろにドアがありますが、隊員が商会倉庫の全てに錠を付けて閉鎖しており、抜けられない様にしています。また裏の路地に障害物を置いて建物2階窓から抜け出そうとしても行き止まりにしています」

「うむ完璧な仕事だ。してオークションに参加する客達は馬車で来るのだな」

「はい、前回は全て倉庫前に止まっていました。夜間で倉庫前ですから邪魔ですが、よくある事で誰も気にしません」

「倉庫が5つ並んでいると言う事は、抜け道は地下にあったりするのか」

「それは不明です。内部潜入はこれからの予定でした」

「そうか・・染谷副隊長、あれやるか」

「あの作戦ですか・・深夜とは言え大騒ぎになります」

「野田隊長・・・あの作戦とはどういうことですか」

「なに簡単だよ、例の倉庫から全員を出られなくして、戦車も合流するから例の倉庫を除いて商会倉庫を全て潰してしまい。その後に突入しようと言う事だよ。元々は帝都でのテロ対策の為に立案した第7偵察隊しか不可能な作戦だよ。しかも相手は帝国兵士以下の場合だけであるが」


 なんとも大胆な作戦を考えた物である。

有難うございました。

奴隷救出作戦、なぜか皇帝の「きさき」と「ひめ」まで混じって混沌としています。

事前に作戦立案できない事が痛いです。

次は救出作戦でしょうか楽しみです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 まさかの奴隷商襲撃と宰相の脱出計画(の資金作り)&皇帝一家の脱出計画がリンク!? 成功すれば、結果的に重要人物の確保と皇帝への大きな『貸し』を作ることに^^ 騎馬隊…
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