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戦闘国家日本 (自衛隊かく戦えり)  作者: ケイ
第1章 日本転移と自衛隊激闘編
102/251

第99話 帝国崩壊 その4

第99話を投稿します。

帝国への再爆撃・・悲惨です。

海自ドルステイン駐留艦隊も出港したようです・・

 海自ドルステイン駐留艦隊として第3護衛隊 DDH-181「ひゅうが」、DDG-175「みょうこう」、DDG-177「あたご」、DD-118「ふゆづき」の4隻に加え、第1潜水隊群第5潜水隊のSS-501「そうりゅう」SS-502「うんりゅう」SS-503「はくりゅう」SS-508「せきりゅう」計8隻に補給艦 AOE-421「さがみ」とAOE-424「はまな」がドルステイン沖に停泊していたのだが、翌朝姿を消していた。


 港町ドルステインの漁師達は、朝早くから漁をする為に準備していたのだが、日が昇り始めると、いつもいるはずの日本国の船がいない。一目見ればその灰色の異様な形の船体が目に入るはずなのに今朝は何処を見ても居る筈の船体が見えない事に、「いよいよ」かと納得するのである。


 港町ドルステインの漁師達には、ある噂が流れていた。


「日本が帝国艦隊を沈めに行くらしい」と根拠がある話ではないが、多分そういう事だろうと誰もが思っていた。


 深夜ゆっくり出港した海自ドルステイン駐留艦隊は作戦概要に従ってドーザ大陸南の海域を西にゆっくり向かっている。目的は帝国第2艦隊との海戦なのか・・・かれらだけで対処するのか・・・


 

 ドミニク郊外の臨時航空基地から未明に飛び立ったA-1軽爆撃機は獲物に近づいていた。

 彼らは上空3000mを保ちつつ交易都市リリコネから約60Km郊外に野営している、帝国第2師団を目標としている。

 帝国第2師団は直上警戒の為のワイバーンを全て帝都に送り出し、上空は全く警戒していない。いやできなかった。歩哨を立てて警戒はするのだが、まだ未明の暗さに何も見えない。



 ドミニクに作られた短距離滑走路を持つ航空基地からA-1軽爆撃機が25機飛び立ち、帝国第2師団を壊滅させる為機体にMk.82 500ポンド無誘導爆弾を3本と増槽を2本吊り下げている。合計75発である。

 

 同時刻、ドフーラ航空基地からはF-2が8機、それぞれMk.82 500ポンド無誘導爆弾を12発計96発、短射程空対空ミサイル×2、300ガロン増槽×1と最大重量で飛び立つ、つづいてF-15J(改)最新改修機が2機、Mk.82 500ポンド無誘導爆弾を6発と99式空対空誘導弾(B)を2基に増槽を吊り下げて飛び立つ。目標はムリナ街郊外50Kmにて野営している帝国第1師団である。


 帝国第1師団および第2師団の各生き残りに対して再攻撃の必要性があり、統合幕僚監部により「特攻撃-3号」が計画され承認後発令された。

 計画の要旨は同時刻に2個師団に対する同時爆撃を行い魔道通信による相互連絡を遮断し、孤立させ攻撃力を無効にする事が目的である。



 交易都市リリコネまで70Kmに近づいた帝国第2師団はハリタを出発後、一度攻撃を受けたために今度は慎重に進んでいた。


 しかし、帝国兵士は極度の緊張と師団構成が2/3となるほどの爆撃が頭から離れない。

 最初火が襲い、逃げ道が無くなりそこに爆撃である。しかもワイバーン隊の使用する10Kg爆弾の比ではない。1発で地面に15m程度の大穴と鉄の破片が降り注ぎ、馬や荷馬車に大砲などが吹き飛ばされ壊されていく。

 もちろん兵士も例外ではない。爆風と鉄の破片により爆心に近い物は手足が取れ、体は見るも無残に刻まれている。手助けしようにもどこに爆弾が落ちるのか予測できない。しかも火に囲まれ逃げ道は狭い。

 その後に空から鉄の弾が襲い逃げまわる者を次々と倒していく。本当に悪夢だ。


 こんな戦い過去に誰も経験したことがない。帝国師団は無敵だと思っていた兵士がほとんどで、こんな一方的な攻撃を受けるとは予測すらしていない。士官達も理解を超えた攻撃に、なにも命令を出せない状況であり、兵士と共に逃げ回るのが精いっぱいである。栄光ある帝国第2師団は何処に行ったのか。悔しさより恐怖が勝る経験であった。生き残った者は神に感謝している。帝国兵士は無神論者なのだが・・・


 小規模要塞都市ハリタに生き残った者はかろうじて逃げ込んだが、物資も武器も捨てて来たために、ハリタで再度武装しなければならなかった。しかもテントも食料も大砲も無い。馬車を買い集め、商人用簡易テントを集めて、どうにか野営できるところまで物資を補充できた。兵士達は軽傷の者だけ集め急いで交易都市リリコネに向けて出発した。再度爆撃される恐怖を感じながら慎重に進む。


 帝国第1師団も同様のひどい有様らしい。魔道通信がリレーで届くが、なにも収穫は無いが、どうやらドフーラから飛んできた魔道飛行隊ら・し・い・と言う所までは判明した。帝都に向かったワイバーン隊は帝都で魔道飛行隊によって全滅したらしいと連絡が入る。同じく帝都に向かった騎馬隊は行き先をドフーラに変更して先に攻撃を行うとの事、少しは安心できると思っていた。

 

 それより気がかりは帝都皇帝の居城が攻撃された事だ。元老院は完全に崩れて使い物にならないと聞いた。

 親衛隊や警備隊も全滅に近い被害を受け、帝国第2師団は帝都と皇帝を守るために西の端から駆けつけて来た。それを知っているかのように敵は魔道飛行隊で攻撃を行う・・・・


 もしかして、この再移動も知られているのではないか、知っているなら再度攻撃されるのではないか・・・

 行きたくないと思い始めているが・・・

 帝国5師団の中で勇猛果敢で知られる帝国第2師団に配属されて、期待感でいっぱいであったあの頃に戻れない。今は敵の攻撃に怯え、一度攻撃されればこちらからの反撃はできず逃げ回るだけの惨めな師団となり果てた。惨めだ・・・

 などと、帝国第2師団第5中隊長のヨシリは思っている。本来は攻城隊や砲撃隊を支援しながら師団後部を進む役目なのだが、前回の攻撃は資材や食料そしてなにより砲類を狙われ、その殆どを破壊されてしまった。

 今の第5中隊は軽症者ばかりを集めて行進している。負傷していない者は一人もいない。これも砲隊に比較的近い位置である事が災いしたのだ。

 ヨシリ自身も足の大きな裂傷と背中の火傷が治っていない。足の傷は縫ってあるが、歩くことが不便で遅くなり仕方なく馬を調達して乗馬で移動している。そうでなければ師団本体の移動速度についていけない。しかも足の裂傷は熱く発熱しているようで意識も気を抜くと朧気になる「こんな体では戦えんな」と呟くが馬の鼻息で周りには聞こえない。


 第5中隊の前には第2師団長ドン・ユリーズ伯爵の乗る豪華な馬車と参謀が乗る馬車、エルフが乗る通信隊馬車が続いている。通信隊馬車にはかわいそうな奴隷エルフが二人、姉妹だそうだ。こちらを見ている。助けてほしそうなのだが、そんな権限は中隊長には無い。中隊所属のエルフもいたのだが前回の爆撃中に鎖を外して逃がしてやった。それを「馬車ごと戦死」と報告。すんなり受け入れられた。ヨシリは兵士の中に奴隷とか民間人などは戦闘の邪魔になるだけであり、行進して敵と戦闘するだけであるから通信は不要と言う少し古い考えである。親切心ではなく単純にエルフが戦闘の邪魔と言うだけで解放したのだった。


 突然、遠くから前と同じような音が近づいてくる。

 野営の為、簡易テントで寝ていたヨシリも飛び出していく。足に痛みが走る。

「敵襲だ、起きろ逃げろ」とヨシリは力の限り叫ぶ。


 A-1軽爆撃機は5機編隊を5つ組んで、野営地を旋回して隊長が各隊の目標を戦術爆撃指示装置に入力して割り振りをしていく。

 幅3Km縦4Kmの野営地は師団長を取り囲むように簡易テントを張り、なおかつ中隊毎にまとまっている。

 そこに爆撃機が無慈悲に次々と爆弾を投下していくが、相手は簡易テントなので簡単に宙に舞い落下する。

 兵士達は声を出して逃げ回っておりパニックとなって統制が取れない。中隊長ヨシリは師団長のテントに近づくと「敵襲ですお逃げください」と言いながらテントを開ける。師団長は下着姿のままで、傍には鎖につながれたエルフが二人。ヨシリはエルフを睨みつける。

「師団長そのままでお逃げください。衣類は私が持ち出します」と言うとドン・ユリーズは下着姿のままで外に飛び出していく。エルフは震え怯えた目でヨシリを見ている。ここで殺されるのだと思っている。

 

 ヨシリは無言で戦斧を振り上げると鎖を断ち切った。「死ぬかも知れんが、ここでなくとも良いであろう」と言うと、エルフはコクコク頷き森の方によろよろと走りながら逃げていく。


「さて、儂の人生、終わりはあっけないな」と言うと一層豪華なテントは爆弾の直撃で衝撃波が襲い、吹飛ばされる。周りは火が付いたのか燃え上がっている。師団長のテント跡には大きな穴が開いているだけであった。「中隊長ーーー」何もない穴に部下が叫ぶ。


 A-1軽爆撃機は全弾投下した後に斜度機銃で逃げる兵士達を撃っている。師団が再興しない様にその戦闘力を奪っていく。ただし事前にエルフは撃ってはならんと言われているので、森に逃げ込んでいくエルフは見逃した。姉妹のエルフは森の木に登り燃える野営地を見ている。二人の目には涙が浮かんでいる。「お姉さま怖かった」とだけ言う。すでに悲惨な経験をしているはずなのに、これが一番怖かった経験となった様だ。


 帝国第2師団は殆ど壊滅状態となり、生き残りも負傷者ばかりとなった。しかも師団長ドン・ユリーズ伯爵と参謀達は、街道側に逃げたためA-1軽爆撃機の標的となり、頭上から12.7mm機銃弾が降り注ぎ生き残っている者、街道上に動ける者は皆無である。兵士達で生き残った者はハリタに戻っていく。リリコネの方が近いのだが遠くに逃げたいとの衝動により遠いハリタに無言で歩き出す。泣いて喚いて動けない者もいるのだが、無残にも無言で置いていく。


 帝国第1師団はムリナ街に約50Km地点で野営を行っていた。

 F-2とF-15Jによる合同爆撃で、息も出来ぬ程の衝撃波と爆風に囲まれ、次々と手足をもぎ取られ飛ばされていく。地獄である。師団長以下参謀など幹部は跡形もなく消し飛んだ。

 生き残りのエルフが居ればひなたとV-22Jで回収していく。

 

 この日、夜明け前に帝国第1師団と第2師団は同時に爆撃を受け、各師団死者50万人を記録していた。生き残った者は殆どが大けがをしており、またそれを救助する者もいない。かろうじて生き残ったエルフ達も怪我をしている者が殆どである。


 その時、声が聞こえて来た「エルフ達、生きている者は答えてください。私たちが迎えに行きます。生きて会いましょう」


 陸自第5偵察隊と第7偵察隊はバロッサ郊外とリリコネ郊外でそれぞれ帝国師団に対する爆撃の成果観測を行っていた。リリコネ上空にはマリアを載せたV-22Jが低空で飛んでいる。思念をエルフに届ける為である。

 今回の戦闘で亡くなったエルフもいるのだが、生存者だけでも回収しようと各偵察隊を成果観測とエルフ保護の為に出動させていた。


「私はハイエルフのマリア、あなた方を連れ戻しに来ました。鉄馬車に乗った者は日本の軍人さん。あなた方を保護します」と思念を出しながら旋回する。

 返事があった「私たちは河の近くの森に隠れています。二人です」


「鉄馬車が行きますので待っていてください。 」第7偵察隊に連絡が行き、森までライトを付けた87式偵察警戒車が探しに行く。エルフが森から恐る恐る出てくる。「発見」と連絡が入り周囲の安全を確保させる。

 発光信号弾を打ちあげると、マリアの乗るV-22Jが森の近くに着陸して、エルフを載せ再び飛び立つ。

「他に逃れたエルフはいますか、マリアが迎えに行きます」と思念で呼びかけるが反応は無い・・・


 一方ひなたも3名のエルフを回収していた。


 エルフ達はドミニクを中継してドフーラの自衛隊野戦病院に送られて治療と奴隷紋の消去を受けている。

 この後は陸路で大三角州の基地に送られ療養後に日本街にて自由に暮らす事を保証されていた。


 

 第101特殊普通科連隊第3小隊長のアルタは帝都にある本部と奴隷市場の調査について交信している。

「はい・・場所は判明しています・・・深夜、ただし毎日開催されているかは不明です・・はい・・ではその様に作戦立案します・・・解っています被害を最小に留めますが、賊を捕まえたら・・はい・・はい・・ではお願いします。別に拠点を作りそこに・・はい・・連絡いたしますのでよろしくお願いします・・以上」


 アルタは「ふぅー」とため息をつき、12名の部下に向いて説明を始める。


「諸君、奴隷市場の詳細調査については許可が下りた。

 明日から本格的に調査を行うが、その前に例の倉庫近くに監視できる場所が必要だ。できれば陸自の資材も保管できる場所が好ましい。商人らしく倉庫に住むのも良いだろう。


 サリとヌケルの二名で商業ギルドに加盟及び貸倉庫の紹介を受けてくれ、例の帝国反政府組織も引き続き調査を行うので期間は3か月間、ただし延長可能付で下見と契約をしてほしい。例の倉庫の近くが理想だ。


 それから例の倉庫付近に監視カメラを仕掛け、できれば倉庫自体に音声マイクを、これはリルケとトリルとスリスの3名で行ってくれ、資材はある物を使用して悟られない様に注意してくれ。

 端末は貸倉庫に設置予定で頼む。

 

 残りの7名は引き続き私と聞き込みだ、1800時にここに集合。

 質問はあるか」


「はい、隊長。奴隷奪還は行うのですか」とリルケ。


「良い質問だ、奴隷市場の証拠がそろい次第急襲する。捕虜や奴隷がいた場合の応援は陸自第7師団第7偵察隊が来てくれる。

 つまり証拠を集め、急襲まで小隊で行う。大きな騒ぎにしない為の作戦だが、通商代表を捕らえる事は証拠しだいで第7師団に任せると言う事だ。

 ついでに言うが昨日帝国第2師団が壊滅した。近日中に検問をリリコネ-ミルド間の帝都に向かう街道に移動させる。つまり帝都に向かう人や物資の管理を実施する。なに帝都市民の為に食料や日用品の流通は止めないそうだ。ほかに質問があるか」

 ・・・

「よし、なければ準備を開始せよ」「了解」


 第101特殊普通科連隊第3小隊は奴隷市場の調査、黒幕の証拠を探るべく聞き込みと、奴隷市場が開かれていたと思われるユリナリス商会倉庫付近に監視用機材を設置する。

 また、商人として交易都市リリコネに拠点を作る為、商業ギルドに加盟して市場参加権を得る。なんなら実際に商店を開店させても良い。情報収集と偽装にもなる。商材保管の為と小隊拠点の為に、倉庫街に物件を借りる。


 運のよい事に奴隷市場が開かれていたと思われるユリナリス商会倉庫の真裏の倉庫を借りることができた。

 ユリナリス商会倉庫と借りた倉庫の間は2m程度、隣の倉庫までは1mの路地となっており、倉庫の周りは外から入られない様に板で壁が作られている。表は倉庫が並ぶ道路となっていて馬車2台のすれ違いは楽にできる幅である。


 街の聞き込みではあまり伸展は無く、ただ噂だけは広まっているようだった「通商代表の裏の顔は暴力団であり、番頭のミサイアが組織を束ねている」と伝わって来た。


 借りた物件は倉庫街の規格となっているようで、2階と地下があり、2階には住めるようにベッドを置く場所と窓があるが仮眠程度だろう。一階は広い倉庫スペース、地下も階段はあるが倉庫スペースである。

 一階と地下に窓や換気用のダクトなどは無い。扉を閉じてしまえば暗い空間となるが壁には明かり用のランプをひっかける金具が沢山ついている。トイレは無い。

 この倉庫であれば96式装輪装甲車が4両程度隠せるほどの広さである。

 倉庫街全てが同一規格で作られ、多分改造されていると思われるが、奴隷市場の倉庫も同様の作りであるはずである。


 第101特殊普通科連隊第3小隊は宿に1800時に集合して、情報のすり合わせと機材設置状況と貸倉庫の説明を受けた。

「うむ良さそうだ、明日観測機器の端末を貸倉庫に設置と貸倉庫自体の警報機設置だな。荷物は少ないから市場から日用品を中心に仕入れて、木箱に共に入れて、午後運び入れて欲しい。

 倉庫の入り口からの目隠しをそれで行う。後は職人を呼んでテーブルと椅子を奥に設置。荷物運び人の控室と言う雰囲気にしてほしい。簡単な衝立(パーテーション)も欲しい。それと外の路地に木の壁を作るのを忘れない様に。

 偽装馬車は奥に隠して本物の荷車を3台購入、馬はまだ要らない。

 連絡用の無線機は2階に設置。アンテナもたてる必要があるが偽装しなければならない。

 他になにかあるか」


「トイレはありませんがどうします」


「1階裏に扉があったな、なら外に簡易トイレ設置だ」・・・つまり穴掘ったトイレを作ると・・


 翌朝貸倉庫を詳細に見学すると、懸念した倉庫裏や横の路地は単なる空き地で、各倉庫は裏から賊が入らない様に木の板で敷地を塞いており、倉庫間の移動はできないよう工夫されている。借りる倉庫は塞がっていないだけなので職人に壁を作らせ、トイレ用の囲いと簡単な扉を作らせる。


 その日は一日中、第101特殊普通科連隊第3小隊の拠点づくりと観測機器の設置に追われた。

 拠点としては静かで周りも倉庫の為出入りしても目立たず、荷物の出し入れはもちろん各倉庫は賊侵入警戒用に用心棒が中に居て警戒をしている。


 翌日から第101特殊普通科連隊第3小隊は奴隷市場の情報収集に入る。

 監視カメラ映像は録画して、ユリナリス商会倉庫にはレンガ色に塗ったコンクリートマイクを複数設置した。どうやら昼間の出入りは極端に少ないようだ。倉庫はレンガが厚く赤外線は探知できない。

 しかし、コンクリートマイクが中の会話を複数人分録音している。

 夜を待つ。


 闇に紛れて檻付馬車がユリナリス商会倉庫前に止まる。手枷足枷を付けた奴隷と思われる人々が複数倉庫に連れていかれる。どうやら地下が奴隷を貯めておく場所で、木製の階段を奴隷が鎖を引きずりながら降りていく音が聞こえる。


「どうやら今日も市場は開かれる様子です」と盗聴担当のサリが報告する。「監視カメラには6名の奴隷が入って行きました」


「檻付き馬車にGPSを付けてくれ、帝都ならGPSを感知できるはずだ。他なら無駄になるが」

 二人が酔っ払ったふりをしてユリナリス商会倉庫前の馬車にGPSを付ける。「おい、そんなところで吐くな、向こう行け」と用心棒に怒鳴られる。「へへ、だんな吐きそうですが吐いてませんよーー」と隊員は陽気に向こうに行く。倉庫の用心棒で控えの者は酒を飲んでいるので違和感はない。


 5日間観察した所、奴隷市場が開かれるときは頭領代理でユリナリス商会番頭のミサイアが必ず来ている事が解った。しかも奴隷は地下に並んでおり、買い付け人はそれを見て誰が良いか投票すると、一階で開かれる市場につれてこられ、競りにかけられると言うシステムらしい。もちろん現金交換なので参加者は馬車で現金や金を持ち込んでいる。


 次の開催時期は解らないが、檻付き馬車がユリナリス商会倉庫に来ると必ず開催されるのが解った。

 残念ながら檻付き馬車に着けたGPSは反応していない。帝都ではない所から来ている様だ。

有難うございます。

誤字脱字報告感謝しています。

次回も帝国崩壊を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 帝国軍第一&第二師団壊滅・・・・ トーマスが指揮する騎馬隊の原隊が壊滅したので指示待ち待機の理由が出来そうですが、果たして? 今エピソード登場の体調のヨシリ、非戦闘員…
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