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27話

試しに三人称視点で書いてみました。


こちらの方が良かったら今まで投稿した分も書き直したいと思っています。


「呪い……?」


「そうです。エレオノーラ様には5つの呪いがかけられています。さらに、体力(ルカ)魔力(マナ)の消耗も激しいため、そちらへの対処も必要です」



 リヴィエール公爵邸の物置小屋の地下室。


 部屋全体を浄化(パージ)し、創ったベッドにエレオノーラを横たわらせたソラは、インデクスで解析した状態をレオンに告げた。


 呪いは魔力─魂に直接傷を付ける禁忌の魔法で、現在、ライヒ王国では使用が禁止されており、それに関する書物は王宮で厳重に管理されている。


 そのためか、レオンは自分の母にかけられたものがどんなものなのか悟り、顔を青くさせた。



「僕は勝手に自分で作った夢に自ら入っただけだったけど、母上は……」


「はい、おそらく、クレモンスの手の者でしょう。複数の呪いをかけられるので、かなり高位の魔士だと思われます」



 クレモンス側に高位の魔士がいるとなると対応も変える必要がある、と思案するソラ。


 その横では、誰かと連絡を取っているラヴィーニがかなり険しい顔をしている。


 レオンは頼りの二人がどちらも何か考え中で話すことができないと、そっとエレオノーラの手を握った。



「ソラ」



 通話を終えたラヴィーニがソラの方を向く。



「なんだい?」


「エドゥアル達がクレモンスの使用人の捕獲を完了させたそうだ。オスカー達が途中から別行動していて、クレモンス本人の動向をさぐっているらしい」


「よかった……」



 安堵の声を出すレオンだが、ソラは無表情のまま。ラヴィーニには彼女のその表情の理由を正しく理解していた。



「ただ、クレモンスの連れに高位の魔士がいて、簡単には手を出せないとも言っていた」


「わかった」



 ソラが心配していたのは、その魔士が今、この公爵邸にいるかもしれないということ。外にいるのならば、ひとまず放っておいて大丈夫と彼女は判断した。



「それと、アルフォンス様とリュカ様、王太子のフィリップ様もここに来るらしい……ソラ、アレンに何か言った?」



 ラヴィーニはソラがレオンの夢から出てきた時からずっと持っていた疑問をぶつける。


 彼は闇精霊(テネブラエ)のことなら誰よりも詳しい。それから生まれた神獣の獏も今は彼の守護神獣だ。そして、"夢"とは闇精霊で干渉することが可能であり、獏は夢のエキスパートである。


 目の前の夢で起きたことを、彼が知らないはずがなかった。



「夢でアレンと会ったから、アルフォンス様をここに呼んでくれと頼んだんだ。まさか、こんな早いなんて思ってなかったけど」



 ラヴィーニに呆れながらそう言うソラ。


 ソラは気づいていないようだが、ジャンヌの会った時、店の中にいた男子はアレンとエドガー、ジークフリートである。彼女に付き合ってその乙女ゲームをやっていたラヴィーニは瞬時に彼らが攻略対象だと気づいたのだった。


 そして、ノワールが現れたことに一番驚いていたのはアレンだ。他の人達は剣が黒い靄を纏っていることしかわからなかったようだが、彼には精霊とラヴィーニの会話をしっかりと聞こえているようだった。


 その時から、ラヴィーニはアレンの傍にテネブラエを一人つけていたのである。ソラは前世でアレンの√をやり込んでなかったから知らないだろうが、彼のバッドエンドは凄まじいものである。ラヴィーニの中でアレンはかなりの危険人物なのだ。


 そんな理由があって、ソラが夢に入っている時にやってきたそのテネブラエの話で、ラヴィーニはレオンの夢にアレンが干渉していることを知ったのであった。



「どうして兄上が……?」



 二人の会話についていけず、慌てていたレオンだったが、自分の兄がここに来ることはわかったようで、若干怯えながら二人に尋ねる。



「魔法などで魔力が失った時は特殊な場合を除き、時間が経てばマナ値は元に戻ります。しかし、"呪い"とは魔力を囲っている器を壊すようなもので、それを治すには……」


「血縁関係の濃い者が魔力を送ることで修復できる、だよね?」


「はい、その通りです」



 ソラの言葉をついで答えるレオン。どうやらこのことはある程度常識のようだとソラは思いながら、どうやってエレオノーラを治療するか算段を立てる。



「体力と魔力の回復は呪いを治してからです。かけられた呪いは、どれも魂欠損の効果を伴うものですが、さらに効果が付け加えられており、"身体能力低下"、"毒物耐性低下"、"魔法耐性低下"、"記憶混濁"、"明晰夢"の5つ。身体への負担を最小限にするには、これらを同時に解除しなければなりません」



 レオンにもわかるように、一つ一つ噛み砕いて説明していくソラ。



「それじゃあ、僕が兄上と一緒に魔力を送っている間に、ソラとラヴィーニが付加効果の方を消す、ということ?」


「はい」



 なかなか頭がいいと感心しつつ、地下室の秘密の扉の向こうに気配を感じたソラはそちらを振り向く。


 ラヴィーニが伝えた通りの道を通って、アルフォンス達がここに来たようだった。


 ガチャ、と音を立てて扉が開く。


 扉の向こうから現れたのは、レオンと瓜二つ─少し大人びてはいるが─の少年と彼より身長が低い─おそらく、アルフォンスがかなり高い─、同年代だと思われる金髪碧眼の二人の少年。髪が短い方がリュカで、肩まである方がフィリップなのだろう。


 そして、三人の後ろからクララとアレン、フィリップとよく似た少年、リュカやクララと少し顔立ちの似ている少年が出てきた。


 さらにその後ろから、エドゥアルとティメオ、ナタンもやってきた。



「レオン……!」


「兄上!」



 レオンに駆け寄ったアルフォンスは彼を抱きしめ、そのまま視線を横たわるエレオノーラへ向ける。



「母上……」


「大丈夫だよ、兄上。ソラ達が解決できるって」


「そうか……」



 そう言ってアルフォンスは改めてソラとラヴィーニの方を向く。



「……!」



 軽く会釈する二人を、いや、ソラの方を凝視したアルフォンスは目を見開き、口をわなわなさせた。



「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない……」



 不思議に思ったソラが尋ねたが、アルフォンスはそれに首を横に振った。



「エドゥアルさん、こんなにたくさん連れてくる必要ないですよね?」


「いやー……絶対行くって聞かなくて……」



 身分の問題もあり、彼が強く出れないのはわかるが、この狭い空間にこれだけの人数がずっといて大丈夫なのかとため息をついたソラに、もうしょうがない、とラヴィーニが苦笑いを返した。



「では、改めて自己紹介を。僕、じゃなかった、私はソラ。Bランクの冒険者でこの依頼の受注者です」


「同じく、Bランクのラヴィーニです。ソラのパーティーメンバーです」



 気を取り直して、全員のそう告げる二人に、フィリップが意味ありげな笑みを浮かべながら話しかけた。



「ソラ殿、あなたは一体何者だ? ティメオやジーク達に確認したところ、昼間は銀髪碧眼の少女だったそうだが」



 フィリップのその言葉にアルフォンスとレオンが同時に視線をソラへ向ける。銀髪なんてそうそういないから、もしかしたら銀髪の持ち主である母の血縁者かもしれないと思ったのだろう。



「だからなんなのです?」


「世界樹の加護を持っているというのも、私は半信半疑だ。伝わっている形と違うのだろう?」


「ご自分で世界樹の元へ行き、確認なさっては?」


「おまっ……!」



 フィリップ相手に物怖じせず、挑発してくるように答えるソラにジークが突っかかろうとするが、当のフィリップがそれを押えた。


 バカバカしいと思いながら、ラヴィーニとお揃いのウイッグを取るソラ。現れた髪は、すぐ側で寝ているエレオノーラとそっくりで。


 そして、見せつけるかのように首の紋章を見せるソラ。さらに尖った耳がよく見えるようにとわざわざ髪を耳にかける。


 その場にいる者たちはそれぞれ驚く点は違うものの、みな驚愕の表情を浮かべていた。



「僕は世界樹の元で育ったエルフ族のソラ。それ以上でもそれ以下でもない」



 ソラのその言葉にアレンとジークフリートが反応する。それをしっかりと見ていたラヴィーニは、ソラに



「もう十分だろ? 治療を始めよう」



 と、促した。


 ラヴィーニの言葉に頷いたソラはエレオノーラの額に手を置き、魔法発動の準備をする。その反対側ではラヴィーニも準備をしつつ、彼女の手に自分のそれを重ねた。



「アルフォンス様、レオン様。エレオノーラ様の手を握って魔力を送ってください」



 先程のことで少し苛立っているソラに代わり、ラヴィーニがそう二人に言う。


 その言葉にハッとしたアルフォンスとレオンは慌ててエレオノーラの手を握り、魔力を送り始めた。


 他の者たちはそれを見守るだけ。何のために来たのだと少しキレかけたソラであったが、目の前にいるラヴィーニが、抑えて、と口パクでソラに言ったおかげで、彼女が怒りを口にすることは無かった。










❁❁❁❁❁❁










「……なんだと?」



 静かな怒気を孕んだ声とともにその男性は、報告書を持ってきた諜報員を睨みつけた。



「まあまあそう怒らずに、アレックス」


「シャルル陛下。これに怒らないで私に何を怒れと?」


「気難しいね、アレックスは……」



 幼馴染みで義兄弟である二人は例え君主と臣下の壁があったとしてもそれを感じさせない雰囲気を持っている。


 全身黒服の諜報員は改めて、この場にシャルル王が同席していることに感謝した。



「陛下、2ヶ月前から突発的に増えている魔物の襲撃をギルドと各国と連携して対応しようと我々が働いている間に、公爵邸がベルトランに乗っ取られたそうなので私は本国に戻ります」


「いきなりだなぁ……」


「エレオノーラは元々病弱なのに、今どうしているかもわからないのです。すぐに戻らないと」



 そのアレックスの言葉に報告書の写しに視線を向ける諜報員。彼の師であるダニエルから使い魔を介して受け取った密書はもう数時間前の事だ。冒険者が対策を講じており、上手くいくだろうと書かれているのだが、アレックスはもう戻る支度を始めている。



「うーん……アレックス、戻れるの?」


「私を誰だとお思いで?」


「そっかー……あはは……ねえ君、私も戻るからみんなに準備をさせてー」


「……はっ」



 いきなり話しかけられたため、反応がコンマ数秒遅れた諜報員はその遅れを取り戻すため、超速でそこから姿を消した。もちろん、音を立てずに。



「陛下も戻られるのですか」


「うん。別にベルトラン"だけ"の乱心ならいいんだけどさー。"あそこ"が絡んでくると厄介じゃん? もうやることは終わってるからいいよねー?」


「同行している官僚達は皆優秀なので大丈夫でしょう」


「そうだねー。天狼族との会談が思ったよりスムーズにいってよかったよ……」



 革張りのソファーに横になるシャルル。一国の王とは思えないほどだらけているが、この空間にいるのはアレックスのみなので大丈夫なのだろう。


 そもそも、ここは厳重に守られている王室専用の馬車の中。外から誰が見ることなどできるわけが無いのだ。



「……」


「あ、やっぱり長老が言ってた"銀髪碧眼の少女"が気になるー?」


「いえ、そんなことは……」


「無理しなくていいんだよー……新しい妻を娶れとか言ってごめん」



 声を小さくして言うシャルル。


 それにアレックスはフッと笑みをもらした。



「私の方こそ、陛下に気をつかわしてしまい、申し訳ありません。支度が整ったようなのでそろそろ行きますよ?」


「はーい……」



 気の抜けた王の返事を聞き、アレックスは魔法を発動させた。


 魔方陣により固定された転送魔法ではなく、個人の力量のみによって発動した王都への転送魔法は、その場にあった全ての馬車を包み込んだ。



よろしければ、ブクマ&感想&評価&レビューなど、お願いします。


2019年6月5日


 改訂版を投稿させていただきました!

 こちらです→https://ncode.syosetu.com/n0155fo/

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