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17.5話

とても短い幕間です。

22日,23日は更新できません。

その後の3日間で各日二回ずつ更新する予定です。


「……」









 誰かに呼ばれたような気がして、そちらを見たのだけれど、そこには誰もいなくて。



 まあ、そうだろうな、と思う。




 だって、こんな真っ暗闇の世界に自分以外の誰かがいるわけないのだから。






 いつからここにいるのだろう。いつになったらここから出られるのだろう。







 いや、もしかしたら、自分が本気でここから出たいと思っていないからここから出られないのかもしれない。










 そう、これは(サンクチュアリ)なんだ。


 仕事が忙しい父も病気で寝込んでいる母も学園に通っていて会えない兄もいない、夢。







 だけど、瞼を閉じれば、父がいて母がいて兄がいる風景を見ることができる。友人のジークやアレン、エドガーもいる。ずっとそうであって欲しいと望んでいた世界がそこにある。










 それに、そこには話でしか聞いたことのないの姉の姿もある。母と同じ色の綺麗な髪をクルクル弄りながら、柔らかく微笑んでいる。





 ねえ、姉上。





 僕、ずっと貴女に会いたかったんだ。






 その幻想(サンクチュアリ)にそう声をかけてみる。






 でも、姉は自分の声に反応しない。





 自分以外の人達と話して笑っている。






 自分は見てくれない。









 それでも、姉がそこにいてくれたらいいと思ってしまう自分がいる。









 生まれてすぐに死んでしまった姉がいてくれたら、父も母も兄も悲しまずに済むだろう。











 父は姉のために取り寄せたたくさんのドレスやおもちゃもまだ大事に持っている。

 赤ちゃん用のだけではなく、大きいサイズの服なんかもあった。父はそれほど娘が生まれてくるのを楽しみにしていたのだ。




 母はそんな父の様子とお腹を痛めて生んだ子が自らの腕の中で冷たくなっていくのが耐えられず、ずっと寝込んでいる。その次に生まれてきた自分が男だったのもあるのだろう。





 兄も頬から赤みが消えていく姉の様子をよく覚えているようで、誰もいない姉の部屋に時々一人でこもって静かに泣いていた。まるで姉に懺悔でもするかのように。







 使用人達も姉のことを知っていて、自分がその事を聞こうとすると、決まって悲しそうな顔をする。友人達だって、姉が生きていたら、という話をよくする。




 自分が─僕だけが姉のことを知らない。






 そうしているうちに、疲れてしまったのかもしれない。姉のことを考えるのをやめてしまったからかもしれない。姉の代わりにもならない僕はやっぱりいらないのだろうか。









 こんな何もない空間にいるのは。













 もう、そんなことを考えることさえも嫌になってしまった。












❁❁❁❁❁❁









「ソラ、よくそれやるね」


「うん?」


 公爵邸へ向かう路地。エマとエドゥアルに付いて行ってる時、ラヴィーニにそう言われた。



「なんの事だい?」


「毛先をくるくる指で弄る癖」


「ああ」



 確かに、ラヴィーニと手を繋いでいるのとは反対の手で髪を弄っていた。前世からの癖だ。



「ソラがそうしている時は、何か気になることがあるけど、確信じゃないから誰にも言えないし、自分からも何もできない時」


「僕より詳しいじゃないか」


「まあね……何かあった?」



 ラヴィーニが心配そうに尋ねてくる。


 彼にならこの違和感を話してもいいかもしれない。



「君が言った通り、確信じゃないのだが、少し精霊達の様子が変なんだ」


「変? ……テネブラエ達は特に変化がないけど」


「うん。テネブラエ以外の精霊の様子がおかしいんだ。泣いたり、怒ったり、怯えたりとか明確な行動を取ってくれてたらまだ何かしようがあるのだけど、僕が勝手に違和感を感じているだけなんだ」


「ヘッグとラタには伝えた?」


「それが、今世界樹の方へ一時的に精神だけで行っているみたいで……連絡が取れないんだ」



 そう。2人ならこの違和感の正体を知っているかもと思って問いかけたのだが、亜空間には2人ともおらず、そこに残っていた思念─置き手紙みたいな─から世界樹へ向かったことが分かっただけだったのだ。シエルに何かあったのか心配だが、こちらもこちらで変な現象が起こっている。


 もしかしたら、この精霊達への違和感はシエルに関係があるのかもしれないと思ったが、そうならばテネブラエ達にも変化があるはずなのだ。


 なのに、彼らはいつも通り。そこにさえ違和感を感じてしまうほどにいつも通りなのだ。








「一体何が起こっているんだ……?」










❁❁❁❁❁❁










『真実はいつも見えないものであり、偽りはいつも世界に蔓延しているものである』



 時空を司る神竜(ウロボロス)は遠いところから歌姫を見守っていた。



『運命などありはしない。あるのは必然のみ。全ての物事は存在する意味を持っている。そう、この宇宙が始まった時から』



 時と無の神竜は笑う。




『時の一族であり、歌姫であり、特異点であるお前がこの世界をどう変えるのか……しかと見させてもらおう……一度世界を壊したものよ』







 神竜は巨大な歯車の上に乗っかっていた。








 その歯車を、"輪廻の歯車"、とそれを認識できるもの達は、原初の盟約は、呼んでいる。







よろしければ、ブクマ&感想&評価&レビューなど、お願いします。

更新通知などはこちら→@Myua_Sorairo

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