幕間
『こんな所にいたくない。心躍る冒険がしたい。』
神社や寺院で手を合わせて願い事をする時、必ずそんなことを思っていたような気がする。七夕の時、短冊に書いた願い事もいつもこんな内容だった。
そう、それで両親や兄弟、先生や友達に大笑いされた気がする。
でも、それももう遠い日のこと。
遠い日に遠いところの幸せだった記憶。
大笑いした人は死んでしまって、その短冊を書いた学校は無くなって。
私以外の全てが無くなって。
私はバカバカしくて、泣きそうになった。
何が"私"以外?
私だって死んでいるのに。私が死ななかったら、世界は、みんなは、あんなふうにならずに済んだのに。
二度と、あんなことしちゃいけないんだ。
だから、私は探さなくちゃいけない。
最後の力を使って、たとえ私がどんな姿になろうとも。探して、見守らなきゃいけない。そのために私は今ここにいるんだから。
一度深呼吸をして、私の頭上にある晄に手を伸ばす。
次の瞬間、その晄から誰かの手が伸びてきて、私の手を掴んで持ち上げた。当然、私の体も晄の向こう側に来る。
「大丈夫か?」
「あ、うん……」
まだ朧気な視界だが、誰かがいて、私に話しかけていることはわかる。
失敗は許されない、と意気込んでいると、もう一度その声が聞こえた。
「初めまして、俺はルカ。お前は?」
「私は──茉愛」
❁❁❁❁❁❁❁
ああ。
僕はいつもこの夢を視る。
『……ご、めん』
『違う、君のせいじゃない。だから、お願いだから、死なないでくれ……!』
ああ。
その人はいつも僕を庇って死ぬ。
『行くぞ、──』
『……はい、ジークフリート様』
ああ。
僕はいったい何時までこの夢を視続ければいいのだろう。
親に捨てられ、ジークフリートという名の少年に拾われ、彼の下僕としてありとあらゆる事柄を叩き込まれ、彼の性欲の相手をして、密かに想いを寄せていた相手に庇われる夢を、
僕はいったい何時まで視続ければいいのだろう。
せめて、夢の中であっても想いを寄せた彼の名を知りたいのに。
それすら、この夢は赦してくれない。
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次から本編です。