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15話

やっと冒険者ギルドに到着。


「冒険者ギルド・ルセイア支部……ここだ」



 北大通りが始まる場所、つまり、城の北門のすぐ側に目的の建物はあった。


 冒険者達が集う場所、冒険者ギルド。来るものを拒まない掟があるため、世界中の人が冒険者ギルドに登録して活動していると言われている。


 ギルドに加盟しているメリットは多い。討伐した魔物のドロップアイテムや採取したものの売買を請け負ってくれたり、強くなると国の騎士団や研究所に推薦してくれたりする。子供でも学園への推薦があったりするらしい。


 そんな冒険者ギルドのルセイア支部の前まで来た僕らは、それぞれ考え事をしながら建物の中に入っていったのだった。今までは何かあった時のためヘッグとラタを出していたが(2人がヒト族の街を見たいと言ったのもあって)、冒険者ギルドにいる猛者達に神竜と見破られる可能性がゼロな訳ではない。2人には亜空間に入ってもらった。


 正直なところ、リヴィエール公爵家の2人やジャンヌに見られたことも失敗だったと思っている。ジャンヌは、頭が残念そうだから大丈夫かもしれないけど。



「こんにちは……」


「はーい。こんにちは、冒険者ギルド、ルセイア支部でーす」



 重厚な木製の扉を押すと、すぐのところにカウンターがあり、そこには猫族─猫に変化できる。人化していても猫みたいな耳と尻尾がある─の茶髪ポニーテールのお姉さんがいた。受付嬢だろうか。黒縁メガネが可愛い。



「冒険者ギルドへの登録に来ました」


「おおっ! 君達若いのに凄いね。頑張ればライヒ王国が運営するリュミエール学園へ行けるかもしれないし、そこでいい成績を修めればメディオ学院にも行けるかもよ?!」



 耳と尻尾とポニーテールをぴょこぴょこ動かしながら説明してくれるお姉さん。

 やはり、子供が冒険者になる理由は学園へ行っていい職業につくことなんだろうな。ちなみに一緒に胸も揺れている。デカい。



「あの、登録に年齢制限とかありますか?」



 僕とラヴィーニが一番心配してたことを彼が質問してくれた。果たして、5歳児は登録できるのだろうか。



「ないよー。そもそも、ギルドへの登録は名前のランクだけで大丈夫だから」


「そうなんですか」


「そうよ〜。一応、建前の年齢確認はするけど、見た目通りの年齢じゃない種族も多いしねー」



 良かった。


 ひとまずこれで亜空間内の眼玉と毒針が処理できる。



「それでは、冒険者ギルド内でのルールの話をするので、ちゃんと聞いてね〜」


「はい」


「ああ、まずは自己紹介かな? 私はクロエ。ルセイア北区に住む庶民の出身だけどリュミエール学園に運良く通うことが出来て、今は故郷のために働いてまーす」



 そう言って、クロエは椅子から立ち上がり優雅にお辞儀した。白いシャツに黒いベスト、ワインレッドのスカート、と落ち着いた雰囲気の服を着ているが、足首まであるスカートの中には短剣がいくつか仕込まれている気がする。ラノベとかでよくある戦闘メイドみたいに。


 それに、身のこなしに隙がない。受付嬢は冒険者同士のいざこざに割って入らないといけないし、貴族の相手をすることもあるだろうから、学園に通っていたものが多いのかも。



「ソラです。こっちは……」


「ラヴィーニです」



 僕はエルフ族だとバレたら不味いからフードを被ったままだけど、ラヴィーニはフードを外している。街中でも時々見かけたが、ここでは獣人は珍しくないようで、狐族(こぞく)─狐に変化できる種族─や猫族と天狼族はパッと見あまり違いがないので、大丈夫だろう。



「はーい、じゃあ、2人にまず説明するのは、"冒険者のランク"、"依頼のランク"、"魔物のランク"についてでーす」



 冒険者のランクはE~Sまであって、登録の際にそこの支部のギルドマスター(ランクはA)と戦い、戦闘力で最初のランクが決まる。採集とかだけでも、街から一歩出るだけで魔物がウロウロいるから多少の戦闘力が必要なのだそう。


 平均はCランクで、リュミエール学園を卒業したらDランク、メディオ学院を卒業したらCランクを自動的に貰えるらしい。上のランクに昇格するためには、ギルドが指定した魔物を監督官の元で倒す必要があるそう。


 そして、冒険者のランクで、受注できる依頼も変わってくる。ランクはE~Sまでで、基本的には、自分と同じランク以下のものが受注できる。複数人での受注が望ましい場合は依頼書に書いてあるが、ギルド側がそれを強要することはないそう。


 複数人で依頼を受注する時は、パーティー申請をギルドにしてから依頼を受注する必要があるのだが、それは登録の時にもらうギルドカードがあればできるらしい。便利なものである。


 ギルドカードはそれだけでなく、身分証やクレジットカードのようにもなるそうで絶対に失くさないようにと言われた。登録の際に血を読み込ませるから、そのものから離れた瞬間に効力を失うとも言われた。どんな魔法が使われているのか、早く解析してみたいものである。


 最後は、魔物のランク。これも冒険者のランクとリンクしていて、同じランクの魔物なら一体一で勝てるであろう強さで設定されているらしい。集団で活動する魔物はその集団に個体とは別にランクがあるそう。依頼書の確認を怠るなと言われた。


 僕が倒したクリムゾンペガサスは一個体でランクA、ラヴィーニが倒したデススピアーは一個体がランクC、女王蜂はB、集団だとAらしい。それらを倒したから後でドロップアイテムを買い取ってほしいと言うと、クロエは口をあんぐり開けてしばらく固まっていた。



「2人とも、10歳くらいなのに凄いんだね……」


「いえ、どっちも5歳です」


「ええっ?!ああ、だから年齢を気にしてたのか」



 中身はどっちも27歳ですけど。


 いや、5歳になった時に目覚めた僕よりも、ラヴィーニの方が少し年上になるのか?



「ラヴィ君、もしかして天狼族?」


「そうです」


「だからかー。獣人、特に鳥獣族と天狼族は歳がわかりにくいって言われてるからねー。私も今32歳だけど20歳くらいでしょー?とか言われるもん」



 それにしても天狼族なんて珍しいわねー、ソラちゃんも珍しい種族なのかなー? とか言いながら透明なガラス板のようなものに魔力を注ぎ込んでいくクロエ。美人だから、きっと冒険者達からナンパされるんだろうな。



「よし、これで準備完了ー。ギルドマスター呼んでくるから、これ読んでちょっと待っててねー」



 そう言ってクロエはカウンターの奥の扉へ入っていった。


 渡されたのは3枚の木の板。そこにはびっしりと文字が記されている。マエル達のを見てたからわかるけど、この世界、少なくともこの国には紙は流通していない。羊皮紙はあるがとても高価らしい。


 だから、文字が記されているのは木板か石板だ。ちなみにラヴィーニには既にラタトスクの加護を持ってもらっているので、問題ない。文字を書くのもここに来る前に大体僕が教えたから大丈夫だろう。



「ギルド内での冒険者同士の争いは厳禁。酷い時はランクを下げたり、ギルドからの除名もあるみたい」


「首突っ込むなよ、ソラ」


「わかってるよ」



 他には、他人が仕留めた魔物のドロップアイテムを奪わないこととか、ギルド職員に買取価格の文句は言わないことなどが書かれている。



「ラヴィーニ、僕さっき君が倒したデススピアーの毒針を持ってるけど……」


「別にいい。ソラは"他人"じゃないし」


「……そういう問題じゃない気がするけど」



 本人はいいと言ってるけど、規則だから今度からは気をつけてよう。


 そうして30分ほどカウンター前の椅子に座って待っていたのだが、なかなかクロエが戻らない。


 何があったのかと、失礼だと思いながら、ラヴィーニに扉の奥を確認してもらうと、



「奥の部屋で、ギルドマスターらしき男性とメイド服っぽい服を来た女性が言い争いをしてる。クロエは何も出来ずにその攻防を遠い目で見てる」



 ギルドマスターの元カノとかかな? なんてことを考えていたら、それがラヴィーニにバレたようで。



「……防音魔法かかってるけど、破って会話を聞いてみる?」



 なんて言われてしまった。


 ラヴィーニ、それ多分緊急時以外は犯罪だからね?



「まあでも気になるから、見てみるだけ見てみるか」


「うん。もうそろそろソラがじっとできる限界だと思ってた」



 さすがラヴィーニ。


 僕のことをよくわかっていらっしゃる。



「で、どうする? 扉には結界魔法がかかってるけど」


「解除がめんどくさいタイプの結界だから、このまま蹴破る」


「確かに面倒くさそう…………は?」



 ラヴィーニの返事を聞く前に右脚全体に身体強化魔法をかけ、カウンターを飛び越えて扉を蹴破る。


 ガンッと大きな音を立てて、壊れた扉の向こうには、またあんぐりと口を開けているクロエと、無精髭を生やした中年のおじさん─しかし、ガッツリ筋肉がついていることが薄い鎖帷子の上からもわかる─と、裾の長いメイド服を着たボブカットの若いお姉さん。おじさんがギルドマスターで、言い争いしてたのがお姉さんかな?



「クロエさん、大丈夫ですか?!」



 いかにもクロエを心配して突入した方を装う。



「ソラちゃん?!結界を解除するならともかく、物理で壊すなんてどれだけ強いの?!ラヴィ君も止めようとしてー!」


「止める前にやりました」


「もーー!!」


 クロエを助けに来たはずなのに僕が悪いことになってるのは置いといて、驚いた表情のまま固まっている2人に視線をやる。



「何があったか知りませんが、クロエさんの業務妨害はやめてくれません? あなた達のくだらない言い争いのせいでクロエさんが残業して翌日の業務に影響が出たらどう責任取るんですか?」



 前世の僕は自分も大好きなオンラインゲームの開発スタッフだったから残業ばっちこいで楽しく仕事していたけど、全ての人がそうとは限らないし、寧ろそうじゃない人の方が多い。無理に残業させないように部下の面倒を見るべき上司が部下の残業を作るなんて許されないと思う。


 まあ、早く登録したいのもあるんだけど。



「す、すまん。俺がギルドマスターのサイモンだ。登録希望者だろ。10歳以下の子供は種族関係なく一律Eランクからだが、今のを見るとEじゃねえからなあ。相手するからこっち来てくれ」


「申し訳ございません。私はリヴィエール公爵家のメイドのエマと申します。妹のことで少々彼と言い争いをしてしまい、ご迷惑おかけしました」



 頭をガシガシ掻きながら下げるサイモンと、スカートの裾を持って丁寧に礼をするエマは対照的だったが、言い争いをやめてくれたならいい。別に言い争いがダメな訳じゃなくて、クロエの業務妨害をやめて欲しいだけなのだ。


 それにしても、またリヴィエール公爵家か。今日は何故か関係者によく会う。


 シナリオの強制力とかじゃないといいな……



「こっちだ」


「はい」




 入口の部屋とは別の部屋に案内される。



 高校の体育館の半分くらいの大きさのそこでランク判定を行うのだろう。



「さ、どっちからやるか?」




 真ん中にたったサイモンはいつの間にかその手に2本の剣を持っていた。



次回、vs.サイモン


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