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『蒼穹の歌姫』と呼ばれた少女は、サンクチュアリを探して旅をする。  作者: Myua
1章:異世界への転生と世界樹シエル
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8話

vsヴィゾーヴニル。


そして、やっと題名回収。


この話で1章完結になります。


「我が名はヴィゾーヴニル。聖竜フレースヴェルグ様第一の眷属である。今代の歌姫よ、そなたに歌姫たる資格があるかどうか、この私が見極めてやろう!」


 力強い、女性のような声でヴィゾーヴニルは言った。


「ヴィゾーヴニルよ、僕が歌姫、ソラだ。どういうつもりでここに来たのかは知らないが、世界樹に手出しはさせない!」


 発言内容からして、僕に用があるそうなのだが、シエルに傷を付けられるわけにはいかない。


 シエルに限らず、植物はその場から動くことは出来ないが、そのかわりに必要なものが自ずと集まるようにできている。だからといって、害になるものもやってくるから、そこは動ける僕らが対処しなければならない。というか、そのために守り人達はいるのだろう。


 僕は準備万端だった魔法を発動し、僕とヴィゾーヴニルの周りにを包み込むような大きな結界を作った。目の端で世界樹を確認すると、ヴィゾーヴニルが開けた穴の修復は既に終わっているようだ。守り人達が心配そうにこちらを見上げているが、大丈夫だと精一杯の笑顔を見せた。


「ソラ」


「ラタ。ヘッグのいる空間に入っていてくれ。何かあったらヘッグに守ってもらうんだ」


「そんな……」


「早く!」


「……わかった」


 守り人達には笑ってみせたが、正直なところ、100%勝てると確信しているわけではない。もちろん、色々訓練してきたからそこそこ強いとは思うが、少なくとも体力耐久の面では相手の方が断然有利だ。弓を使うにしても、今持っている練習用のでは相手にならないだろう。


 何とか相手の攻撃を避けまくって、魔法を撃つしかない。


 戦闘能力がほとんどないラタトスクをヘッグに預け、僕はヴィゾーヴニルと対峙した。


__________________


《ヴィゾーヴニル》


・聖竜フレースヴェルグの眷属。神器レーヴァテインの守護者。


・種族▹▸神竜族


・ルカ値▹▸499900/500000


・マナ値▹▸299995/300000


・属性▹▸光


・加護▹▸聖竜(フレースヴェルグ)の加護


・スキル▹▸物理攻撃耐性・物理攻撃軽減・魔法攻撃軽減・魔法攻撃耐性・状態異常耐性・状態異常軽減・自己再生・全方位感知・瞬間移動・聖竜のブレス・聖竜の咆哮・竜の目・光呼びし者

__________________



 ヴィゾーヴニルのステータスを見ると、ルカ値・マナ値は異常に多いが、スキルは少ない─少なくとも、僕はこれの倍以上スキルを持っている─と一瞬思うが、違う視点から考えると、"この神竜はこれだけのスキルで完成されている"のだ。


 そして、僕の今の能力だと、スキル一つ一つの説明を見ることが出来ない。自分も持っているものはわかるが、知らないものは名前から想像はできるが、実際は何があるのかわかるだけだ。油断は絶対にしてはいけない。ただ、"レーヴァテイン"だけは全く想像もつかないため、対策ができないのが悩みだ。


 僕は自身の周りにも何重に結界を張り、ヴィゾーヴニルの金色の瞳を見つめた。



「……ほう。今まで、ほとんどの歌姫は私の"聖竜の咆哮"だけで意識が刈り取られていたのだが……その容姿、今回の歌姫はエルフ族の身体を得たのか。これは少しは楽しめそうか?」



 どうやら、"聖竜の咆哮"には対象の意識を刈り取る効果があるらしい。


『"影竜の咆哮"には、自身の攻撃力と防御力を上げる効果もあるぞ』


「ありがとう、ヘッグ」


 ヘッグと五感を同調させておいたのは正解だったようだ。


『俺も出ようか?』


「いや、これは僕が受けるべき試練なのだから、できる所まで僕一人でやるよ。お願いしたことだけよろしく頼む」


 そういうと、ヘッグは深いため息をついて、


『わかった。ソラよ、お主の守護神獣になった以上、俺もラタトスクもお主の力の一部であること、忘れるでないぞ。それと、神竜の弱点は竜族において共通である逆鱗だが、神竜の鱗は同じ神竜の鱗でも傷つけることは難しいくらいには硬い』


 と言った。


「……ありがとう」


 そう言ってくれるだけで、少し勇気づけられたよ。


 それに、ヘッグのおかげで倒す算段がついた。


「ソラ、回復や身体強化とかのサポートは私がやるから、攻撃を全力で」


「おっけー、フレゥール、無理はしないで、後、ここ─僕の肩の上─から絶対に離れないように」


「ええ」


 ヴィゾーヴニルは僕から攻撃してくるのを待っているのか、先程から空中で待機したままだ。本当に、一体どうしてここに来たのだろう。


 僕を試す? それこそ、なんのために?


「ヴィゾーヴニルよ、何故ここに来た?僕を試すのは何のためだ?」


「歌姫のみが使える専用の神器─レーヴァテインをそなたが使えるかどうか試しにきた。愛しき主のためにわざわざ来てやったが……まあ、今回も無理であろうな。レーヴァテインを使えたのは、今まで10数人いた歌姫のうちのたったの2人だ」


 僕に歌姫たる資格があるか、か。そんなの僕にはわからない。


 ただ、僕に人生をもう一度与えてくれたシエル達に礼を─世界を救うという─したいのと、自身の罪滅ぼしをしたいだけ。それを成すためにその神器とやらが必要ならば、僕は何としてもそれを手に入れなければいけない。


 歌姫が10数人しかいなかったことは少々驚きだ。今までの歌姫がどんな人かは知らないが、もっといると思ってた。


 まあ、どんなことがあろうが勝つだけだ。


 そのための下準備は、もう出来た。




「今回も無理? そんなの、やってみないとわからないだろ! 火炎球(フレイム・スフィア)!」



 そう叫んで魔法を発動させる。


 ヴィゾーヴニルを火の玉で包む魔法だ。




 発動は上手くいったようで、先程まで白い竜がいたところでは、それより大きな火球が轟轟と音を立ている。


 これだけでやられるとは思わないが、少しは体力を削りたい。







 火の玉が消えないよう、結界内の空気を調節しながら、次の魔法を編み出す。





氷獄フリージング・プリズン!!」






 時間停止をして、火の玉を消した後、氷の牢獄を作る。そして時間停止を解除。






 熱した後に冷やすとその物質は脆くなる。どんなに頑丈な神竜の鱗でも、だ。


 どんなに強力な"耐性"や"軽減"を持っていても、ただの"自然現象"に対抗することは難しい。なぜならそれは"攻撃"ではなく、"自然現象"だからだ。


 時間停止は何故か特別な練習をしなくてもできるようになった。時の一族のエルフさまさまである。



『ソラ。準備ができたぞ』




 ヘッグに頼んだことも完了したらしい。




「さあ、ヴィゾーヴニル。終わりだ」





 ヘッグと五感だけでなく、その硬い漆黒の鱗までも同調させる。





 パキパキと音を立てながら僕の皮膚がヘッグの鱗に覆われていく。





 そして、その鱗は黒い弓と1本の矢を作りあげる。








 弓矢を構え、その矢に8属性の"魔素"を纏わせる。







 もう一度時間停止を行い、氷獄を解く。







 硬い神竜の鱗を破るなら、脆くした後で、同じ神竜の鱗を使えばいい。








「僕の勝ちだ」












「───!!!!」









 矢を放ち、ヴィゾーヴニルの逆鱗にそれが突き刺さった後も、僕はその場に留まり、絶叫するヴィゾーヴニルを眺めていた。











❁❁❁❁❁❁









「行っちゃうの?」


「寂しーよー」


「ソラ、またここに帰ってきてね」


 ヴィゾーヴニルと戦った夜が明けて。僕は守り人達が繋いでくれた、イル島の外へ行く魔法陣の中にいた。



 イル島と接続されている地上界の地点は3つ。南の大陸に住む鳥獣族の神殿、最東端の島国に住む鬼族の祠、そして、天狼族(フェンリル)の住むネジュ山の山頂。僕が向かうのはネジュ山山頂だ。なぜなら、



「ソラ、本当にごめんなさい」


「気にしないで、フレゥール。僕は君達に出会えて本当に良かったと思っているよ」



 戦いが終わった後、フレゥールから聞かされたのは、僕をヒト族の国で拾った時の真実だった。


 か細い息をしている僕を最初に見つけたフレゥールは、すぐに仲間に知らせようと思ったのだが、僕がヒト族の女性に見つかってしまい、入っていた籠ごと川から引き上げられたことによって、その場に留まり、彼女に黙って僕を連れていこうとしたらしい。本来なら、ヒト族に神霊を見ることは出来ないから簡単な事のはずだった。


 しかし、その女性は見ることはできずとも、神霊の存在を感じることができたらしく、フレゥールは女性にその子を連れていくなら、せめてこれから手紙を書くからそれを持たせてくれと頼まれたらしい。


 フレゥールは手紙と僕をその女性から渡され、他の守り人達の元に戻った。手紙のこともすぐに話そうとしたそうなのだが、僕に会えたことに喜んでいる仲間になかなか言い出すことが出来なかったらしい。

 フレゥールは手紙の中身を知らないらしいが、それを僕が読んだら、自分達の前から消えてしまうと思ったからだとも言っていた。僕が文字を勉強した本は、その時に女性から貰ったものだったらしい。


 僕がそんなことでフレゥールを嫌いになるはずないし、この世界で僕の故郷はここだから、絶対に帰ってくると言うと、フレゥールは大泣きしだし、それにつられた他の守り人達も泣き出してしまい、みんなで川の字になって寝たのであった。前世の小さいときは、幼馴染み達とそういうふうに寝るのが常だったので、懐かしく嬉しかった。


 フレゥールから渡された手紙の差出人名欄には、『ルーシー・ド・ルグラン』と書かれており、宛先名欄には『エレオノーラ・ド・リヴィエール』と書かれている。フレゥールによると、『エレオノーラ』という人物に赤子─つまり僕─から渡してくれ、との事だったので、今世の僕と関係が深い人なのだろう。


 そんなわけで、僕が生まれたライヒ王国に手紙を届けに行くため、ライヒ王国に近いネジュ山に魔法陣を繋いでもらったのだ。ヘッグがネジュ山に紋章を持つものがいる、と言ったのもあるけれど。それは不確かなことなので、あまり本気にはしていない。




「それじゃ、行ってくる」


「行ってきまーす!」


「「「「行ってらっしゃーい!」」」」



 こうして、背中にヴィゾーヴニルから貰った神器(レーヴァテイン)を背負いながら、ニーズヘッグとラタトスクと共に、魔法陣の向こうへ行ったのだった。






 ふと、ヴィゾーヴニルに言われたことを思い出す。




『よく聞け、私を倒せるほど強い今代の歌姫よ』



『僕の名前はソラだ』



『ではソラよ。レーヴァテインは授けてやろう。しかし、忠告だ。私はそなたと同じくらい強かった2人の歌姫─今までレーヴァテインを使えたのもこの2人だ─の結末を見ている。その最期は壮絶なものだった』



『……』



『そなたは確かに強い。だが、過信してはならぬ。手の届かぬものを守ろうとしてはならぬ。2人は─初代歌姫マナと10人目の歌姫詩月(ゆづき)はそうして死んでいったのだ』



『手の、届かぬもの……』



『私の力ではそなたをフレースヴェルグ様の元に連れていくことは出来ない。どうか、その身を滅ぼす前に、ラニアケアの奥─サンクチュアリまで来てくれ……』


 そう言って、それが何かさえも説明せずにヴィゾーヴニルは消えていった。神竜だから消滅はしないのだろうけど。


 神器レーヴァテインは白磁の弓─先端に蒼い宝石のついた─だった。弦と矢はどうしたのかと思っていたら、ラタが魔法で作るのだと教えてくれた。

 これがなかなか難しかったりするのだが、それ以上に僕は、弓についている宝石が不気味だった。
















「なあ、ヘッグ。ネジュ山に住んでいるのは天狼族なんだよな?何の紋章の一族なんだ?」


 ネジュ山の山頂へワープしている途中にすぐ横にいるヘッグに聞いてみた。


「──闇の一族だ。紋章は特別なことをしない限り見えないが、紋章を持つものを見つける方法はある」


「どうやって?」


「瞳を見るのだ」


「瞳?」


「ああ。闇の紋章を持つものは瞳が魔法を─精霊を─跳ね返す鏡になっている。最初の闇の紋章持ちの狼少女は、"闇の忌み子"と呼ばれていたな」


「ふーん」


「まっ、8万年も前のことだがな」













❁❁❁❁❁❁












 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……






 なんで? 俺は、俺は、俺は……







 光が届かぬ牢獄の中で、彼自身の心の中で、彼は今日も声にならない声を上げ続ける。







 助けて、と。

















 誰か、俺を殺して、と。



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