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第8話  暗殺者、罠にはまる



  第8話 暗殺者は罠にはまる





 教会の馬車と荷車、そして聖騎士たちが遠ざかっていくのを見届けて隠れていた曲がり角から出る。

 

 「教会に麻薬を運び込むようですね」

 

 まさか、教会が絡んでいるとは思わなかった。

 

 「教会に行こうぜー!! なんだったらまたあんときみたいに皆殺しにすりゃいいだろ」


 ルカ……お前ってやつは…。

 もはやかける言葉がない。


 「じゃ、追うか」

 

 ときおり物陰に隠れつつ三人はリステリカたちの襲撃に警戒しながら移動した。

 レッザーラ黒教会の大聖堂、ルーバンミュンスターに尾行対象の騎士たちは入っていった。


 「昼間じゃ通行証なしに侵入するのは難しいぜ? 前回は門にいる番兵をぶっ殺して通行証を奪って侵入したけどな」


 ルカの言葉の通り、警戒は厳重だった。

 通行証というのは、レッザーラ黒教会の教徒たちが持つもので、それを見せることで教会に入ることができたり教会直営の店の商品を安く購入できたりするというものだ。


 「俺ら、教徒じゃないんだよな。じゃ、夜にでもやろうか」

 「つまんねーな。こういうのは昼間からやるから気分が高揚すんだろう?」


 それは、お前だけだと思うのだが。


 「極力、無駄な殺生は控えたい」

 「同意です」


 イゼリナもそう思うらしい。

 俺らは殺生を仕事にして生きてるだけだ。

 殺しには慣れているが、したくてしているわけじゃない。

 

 「というわけでどっか適当にぶらぶらして夜が更けるのを待とう」

 「あいよー」

 「はい」


 ここは大聖堂があり巡礼者がが集まることから多くの店があり発展している。

 どこへ行こうか……。


 「どっか行きたいところはあるか?」

 「そーだな……飯屋」

 

 ルカは、食欲旺盛なのでいつもお腹を空かせている。

 というかお腹のすいてない時を見たためしがない。


 「衣料品店」


 イゼリナは服を新調したいらしい。


 「わかった。でも服を持ったまま任務はできないから今日は、どれを買うかだけ選んで終わったら買おう」

 







 「そろそろ夕方だな」


 あっという間に時間は過ぎていった。


 「教会前に戻ろう」

 「そうだな」


 夕方は人通りが多い。

 西の空は茜色に染まり東の空からは夜が近づいていた。


 「ほら、そろそろだぜ?」


 ルカが教会の方向を指さす。

 教会の門は締まり、警護の騎士たちも奥へと去っていった。


 「あいつらは、この後一部の聖騎士を残して教会からいなくなることは以前調べた。あと三十分もしたら突入できるぜ?」

 

 調べて突入したくせにこいつは以前、中にいた奴らを皆殺しにしたんだよなぁ。


 「いけるぜって言われても人通りが多いならやりたくないぞ?」

 「教団関係者が中にいてくれたほうがやりやすいだろ?」


 確かに麻薬の利用目的を訊くだとか、黒幕を訊くということをするのであれば教団関係者がいる方がいいだろう。


 「あいつらは、この後帰っちまうんだよ」


 だったら今行くしかないだろうな。


 「わかった。イゼリナもそれでいいか?」

 「構わない」

 「裏口に急ぐぞ」


 ルカが先頭を歩いて行く。

 裏口から、帰るらしいが……。


 「ほら、ここだ」


 裏口の門は表に比べると小さい。

 少し離れたところでスタンバイすることにした。

 しばらく待っていると、法衣をまとったいかにも教団関係者といった風体の男が五人ほど出てきた。


 「お!! カモがネギしょってきたぞ。法衣を奪ってそのまま中に入っちまおう。善は急げだ」


 果たしてこれは善といえるのだろうか。

 ルカは、男たちのもとに駆けていき急所への蹴りやパンチを加えて五人のうち三人から法衣を剥ぐ。


 「お前らも手伝え」


 裏口付近は人通りが少ないので人目につく心配は少ないのだが、やはりこういったことは急いだほうがいい。

 気を失っている五人を裏口付近から少し離れたところにある倉庫に入れて近くにあった縄で縛っておいた。

 帰るときにでもほどいてやればいいだろう。


 「急いで探し出すぜ!!」


 俺とイゼリナは初めてだがルカはここに来るのは二度目。

 彼女を先頭に案内人として大聖堂の中を早足で進む。

 ときおり通りかかる教団関係者には会釈をしてごまかしつつ……。

 法衣を着ていたよかったと思った。

 

 「この扉の向こうにおそらく麻薬は運び込まれたはずだ」


 隈なく探して最後の場所となったのが礼拝堂。

 表の入り口から最も近い施設はこの礼拝堂だ。

 懐から短剣を取り出す。

 

 「いくぞ」


 そう言って俺は扉を開け放つ。

 するとそこには、この扉を囲むように人が集まっていた。


 「待っていたよ。君たちが騙されてここに来るのをね」


 リステリカが笑いながら運び込まれた荷車に積まれていたものを覆う麻布をどける。

 

 「ここにあるのは小麦粉なのさ。あんなのに騙されるなんてね。愉快、愉快」


 まわりにいたリステリカの配下たちも醜悪な笑みを浮かべた。

 そこに立派な法衣をまとった男が出てきた。


 「これはね、飢えている人たちにパンを作ってあげようと思ってね。そのために購入したんだよ」


 俺たちは騙されていたのか。

 ルカの方を見ると唇をかんでいた。

 イゼリナは、驚いたような顔をしている。


 「私たちで君らをあの世へ送ってあげよう。すぐに逝かせてあげるからね」


 リステリカは、妖艶な笑みを浮かべると短剣を構えた。

 


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