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第6話  暗殺者、裏通りにて



第6話



  


 血で汚してしまった宿から逃げ、俺たちはバーで夜を明かした。

 幸いにも、宿屋の台帳には偽名を書いておいたのでめんどくさいことは避けることができると思う。

 死体は夜とはいえ担いで街を移動するわけにはいかずそのままにしてきた。


 「もう少しスマートに殺りたかったな」

 「あれは、プロの暗殺者としてどうかと思うぞ?」


 花瓶を投げていたルカに言われる筋合いはない、と思ったが。

 割れる音は目立つ。


 「しょうがないだろ。久しぶりの殺しだったんだから」


 【冥府からの使者】《オルクス》の解体後、暗殺の仕事なんかがあるはずなく俺らは体こそ鍛えはするが殺しはしてなかったのだ。

 朝の街は、活気にあふれている。

 それは、あくまでも表の通りなんかの話だ。

 奥まったところにある通りは閑散としている。

 そのためか、犯罪行為が横行するのだ。

 

 「てめぇら、ちょっと待てやぁ!!」


 見るからに渡世人らしい男たちが数人絡んできた。

 裏商人や同業者を探すのなら裏通りなんだが、裏通りはごみの溜まり場だ。


 「なんだ?」


 後ろも前も囲まれてしまった。

 このままでは通してもらえそうもない。


 「いい女を連れてんなぁ?」

 「それは、こいつらをよく知らないから言えることだぞ」


 ルカとイゼリナにキッと睨まれた。

 事実は認めるべきだと思うんだが。


 「そいつらをこっちに貸してくれや。そうしたらここは通してやる」

 

 ああ……こいつらは死にたいのか。

 以前にも、こういう場面があったんだがルカとイゼリナはちょうどいい練習機会だとか何とか言って素手で八人を相手にしていた気がする。

 

 「と、言ってるが貸してやってもいいか?」


 ルカとイゼリナに聞いてみる。

 俺は平和的解決を望むぞ?


 「数は六人か……朝食前の軽い運動にはなるな。これ全員を殺っていいのか?」

 

 この返事はバットエンドを迎えるやつだ。


 「好きにしろ」


 この返事は渡世人ルカとイゼリナの両方に対してのものだ。

 

 「へぇ……兄ちゃんよぅ、こいつらとヤらせてくれんのか? 兄ちゃんは話が分かるねぇ」

 

 渡世人の男たちは下卑た笑みを浮かべている。


 「好きにしろ、ただし後悔するぞ?」

 

 俺は、ルカとイゼリナの後ろに下がった。


 「ヒャッハー!!」

 「へヘヘ」


 渡世人とルカはそれぞれ別の意味で笑みをこぼしている。

 何人かの男どもがズボンのチャックを下ろし始めた。


 「一発目は俺にヤらせろよな」


 一方のルカはこぶしを握って油断しきった男どもに突っ込んでいく。

 イゼリナも同じだ。

 

 「なっ!? このアマ、てめぇ何しやがんだ!!」


 男たちが殴られる、蹴られる。

 そしてあっという間に六人が地に倒れた。


 「このアマ!! まとめて孕み袋にしてやるぜ!!」


 頭目らしい男が短剣を出して突きだす。


 「遅いんだなー」


 ルカは突きだされた短剣を躱して股間に膝蹴りを見舞う。


 「ウオッ!! グぅ……」


 それだけで男はうずくまった。


 「おいおい、あっけねぇなぁ。まだ殺しちゃいないぜ?」


 ルカは物足りなそうな眼をしている。


 「てめぇら……。ぶっ殺して」


 続きはイゼリナによって遮られた。


 「黙れ」


 頭にかかと蹴りをくらわせる。


 「お!! イゼリナにしては珍しいな?」


 ルカは楽しそうだ。


 「自分の身の程も知らないごみどもに虫唾がはしった。ただそれだけ」

 「本当に?」


 日頃、殺しに積極的ではないイゼリナがこうしてとどめを刺すのは珍しい。

 それはルカの仕事だ。


 「じゃ、そろそろ行くぞ」


 俺らは、リステリカたちに仕掛けられるのを待ちつつ裏商人を探すことにした。

 





 その姿を建物のバルコニーから気配を消してこっそり窺がう姿があった。

 

 「あいつらはバカか。殺せと命令したのに私情に、はしったか。だがまぁいい……次の策に移るだけのことだ」


 表通りの喧騒の裏―――それは、ある種の日常的な光景だった。

 

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