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第34話 王女救出


 最初に近づいてきた六人には、銃弾をプレゼントしてやった。

 しかし弾込めする間もなく、新手が飛び込んでくる。

 それを剣で斬り捨てて行くが、どうにも数が多いです。

 血糊を拭く時間さえ与えてくれないから、剣の切れ具合は悪くなるし、腕も重くなる一方だ。

 刺突するのが一番楽な方法ではあるのだが、これだけ数いると刺突していては、敵への威圧にならない。

 振り回していれば、敵は斬られないよう間合いへの突貫のタイミングをば見極める。

 それを利用して何とか時間を稼いでいるが、それもそろそろ終わりにしたいというのが本音だ。


 「どれだけいるんだよ……」


 ちらりと共闘相手の方の様子を窺うが、ひたすら無言で剣を奮っていた。

 俺も、そいつも目の前には屍の山だ。

 何人斬ったか分からない。

 

 「この砦の全員かもね」


 深刻さなどを微塵も感じさせない風な言い方で、共闘相手の男は言ったがその声には疲れが滲んでいた。

 

 「はぁぁぁ……」

 

 この砦全員が敵とか言ったら軽く二千人を超える。

 そのことを考えると溜息しか出ない。


 「最低でもミシェル達が潜入するまで待つ必要がありそうだね」


 ミシェル……?そうか、あいつが一緒に組んでるやつの名前か。


 「そんな名前だったんだな」

 「おっと、うっかり名前を出してしまったみたいだね。さすがに僕も疲れてるらしい」


 そんな話でもしながらじゃないと、やりきれる気がしなかった。

 あいつらが潜入するのが夜半だから、まだ結構時間あるぞこれ……。


 








 つんつんとイゼリナがルカの背をつついた。


 「んぁ?どうしたんだ?」


 ルカは、寝かかってた所を起こされて不機嫌そうだ。


 「爆発音が聞こえた」


 イゼリナが、そう言うとミシェルが目を見開いた。


 「あれは、ヴァレリーの石榴の音……」

 「ヴァレリー?あぁそうか、おめーが一緒にいる男の名だな?」


 ミシェルは、コクコクと頷いた。


 「ということは、どうやらきな臭いってわけだな?」


 さっきまで寝ていたはずのルカは、すっかり目を覚ましてニヤリと不敵な笑いを浮かべた。

 三度の飯より殺しが好きなルカは、争いが始まると居ても立ってもいられなくなるのだ。


 夜半に砦に潜入すると言っても万が一のために三人が既に待機していた甲斐があった。


 「助けた方がいいかも……」


 ミシェルが、不安げな顔をして言うとイゼリナが何故?と尋ねた。

 

 「彼は、よっぽどの事がない限り石榴を使わない。石榴は、周囲の人間を大勢巻き込んで爆発する殺傷能力の高いもの。だから彼は使いたがらない」


 ミシェルは、自分のポーチから石榴を取りだし、イゼリナとルカに見せた。


 「でも、それを使っているから緊急事態かもしれないってことね?」


 イゼリナな確認するように言うと、ミシェルは頷いた。


 「なら、助けに行くしかねぇよなぁ?」


 ルカは、そう言うとイゼリナの返事を聞くことなく走り出した。


 「はぁ……」


 それを見て、イゼリナはため息をこぼさずにはいられない。


 「私も行く」


 ミシェルもあとを追うように走り出す。


 「なんの計画性も無しにあの子たちは……」


 イゼリナも珍しく愚痴を言ってその後を追う。


 「オラオラ、死にたい奴から出てこい!この【大量虐殺フェルカーモルト】のルカ様が冥府に送ってやるからよ」


 悪酔いした大酒飲みみたいな口調で、大声をあげながらルカが拳銃をぶっ放す。

 口調とは裏腹に狙いは、性格で一発で確実に一人を仕留めている。


 「く、来るなぁぁぁぁっ」


 そこにイゼリナが追い打ちをかけるように撃ち込みミシェルが斬り掛かる。

 あっという間に通路は血の匂いで充満した。


 「来るなと言われると行きたくなっちゃうよなぁ?」


 ルカの無慈悲な指は引鉄を引くことを止めない。

 弾込めが必要になれば、代わりにイゼリナが前に出て引鉄を引く。


 「こっちから声が聞こえる」


 通路の分岐をミシェルが先導しながら、駆け抜けていく。


 「どいてっ!」


 先頭を行くミシェルが、邪魔な敵に剣で斬りつけていく。


 「お、ミシェルちゃんやるねぇ!昂って来ちゃうじゃん」


 獣が獲物を前にして雄叫びをあげるように、ルカの拳銃が鋭い銃声を発する。

 ミシェルが斬り掛かったときにできた隙を埋めるために他の敵兵を葬り去っていくのだ。

 

 「しっかし段々敵が増えてきたぜ?」

 「おそらくこの先に二人がいる、ということでしょう」


 イゼリナは、弾込めをしながら冷静に分析をした。


 「皆さん、下がっててください」


 ミシェルが、立ち止まってルカとイゼリナに止まるよう促した。


 「どうかしましたか?」


 イゼリナが訊くと、ミシェルがポーチから取り出した鉄製の物体に火をつけた。

 そしてそれを投げ込む。


 「噂の石榴か?」


 ルカの質問に、眩い爆発と劈くような爆発音が答えた。


 「うわぁ……」

 「使いたくは無かったですけど……」


 イゼリナとミシェルは、その光景に何とも言えない表情を浮かべているがルカだけは違った。


 「これ、すげぇな。見てて気持ちいいぜ」


 目を爛々とさせバラバラになった敵の死体を眺めている。


 「ちょっと一個、くれ」


 戸惑いながらも渋々、ミシェルが石榴を手渡す。

 

 「笑いが止まんねぇ」


 ルカは、おもちゃを貰った子供のように(年齢的には未成年だから子供ではある)、楽しそうな表情を浮かべて着火した。

 そしてそれを敵に向かって投げ込む。


 「皆さん、こんばんは〜そして永遠におやすみなさい」


 ルカが子供じみた声音でそう叫ぶと、レナードとヴァレリーの方に向いていた敵がルカの方へと振り返る。

 そして振り返った瞬間に彼らが目撃したものは、眩い閃光だった。


 「あぁぁぁ、これ楽しいな。このルカ様にピッタリだぜ」


 なんて言ったって彼女の二つ名は【大量虐殺フェルカーモルト】なのだ。


 「うわぁ……」

 「渡したのは間違いだった……?」


 そんな彼女を見つめる二人の表情には、呆れがありありと浮かんでいる。


 「三人とも来るのを待ってたよ」


 そこにヴァレリーから敵の頭越しに声がかけられる。

 

 「さっさと殺って王女の身柄を奪還しておさらばするぞ」


 レナードも声をあげる。

 二人とも無傷のまま剣を振り続けていた。


 「このルカ様に任せな!」


 ルカが、レナードに向かっていく敵兵達に背後から斬りかかっていく。

 全く、計画どおりに進んでいない王女の救出は、ルカを除く全員が苦笑いする。

 もちろん、ルカだけは一人笑顔を浮かべている。


 

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