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第29話 慰問3



 砦の門の周辺には、すでに東部諸侯の兵がズラッと並んで待機している。

 

 「チッ……用意がいいな」


 列を整えて居並ぶ兵たちは、さながら王宮の儀仗兵のようだ。


 ここは、一般の住民の立ち入りが禁止されているエリアだ。

 通常ならこういう王族などの貴賓の来訪する場合、王宮の屋内以外は一般に公開されるはずなのだが何故か、一般への公開はされていない。

 つまりは――――――そういうことだ。


 「確実にやる気みたいだね。で、どうする?」


 共闘を申し出た相方が訊いてくる。

 逆に考えれば、一般住民の立ち入りが禁じられているということは俺たちの姿が多くの人へ露見しないということだった。


 「そうだな、ひとあてして王女の身を奪えないのなら一旦退いて街に降りてきた砦内の人間と入れ替わって再侵入でもするさ」


 突入するにも多勢に無勢だ。

 長くその場に居続ければ、囲まれてしまうことは間違いない。


 「了解したよ。タイミングは任せるね」


 共闘関係の相方は、そう言うとそれっきり黙った。

 やがて、馬のいななきと轡の音が聞こえてきた。

 王女殿下の隊列だ。

 様子を伺っていると列を整え居並ぶ兵士の中から豪奢な服を纏った痩身の男が現れた。

 王女殿下の隊列に対してうやうやしく頭を下げる。

 隊列が居並ぶ兵士たちの前に止まると馬車の中から王女殿下が姿を見せた。


 「おぉ王女殿下、よくぞ姿をみせられた」


 痩身の男は芝居くさくそう言って手を前で出した。


 「連絡もなかったのに迎え入れる用意があるとは、さすがに公爵は優秀な部下を持っているな」


 王女殿下が握手に応じるべく手を差し出しながら言った。

 そして二人の手が合わさった瞬間――――――痩身に似合わぬ力強さで男は握ったままの手を引いた。

 

 「何をっ!?」


 王女殿下は、そのまま手を引かれて前に倒れた。


 「丁重に部屋に送って差し上げろ!!傷物には、するな!!」


 痩身の男の命に従って数人がかりで王女殿下を拘束し後ろへと引きずっていく。


 「何をするか!?離せ!!」


 喚く王女殿下を見てようやく事態が飲み込めたのか王宮警護の騎士の一人が声を上げた。


 「王女殿下をお守りしろ!!」


 騎士たちが居並ぶ兵たちに馬をぶつけて突撃をする。

 門周辺のいたるところで斬り合いが始まった。


 「どさくさに紛れて王女の身を奪還するぞ。ただし殺すのは東部諸侯の兵のみだ。いいな?」

 「ようやくルカ様の出番ってわけだな!!」


 その場にいた俺を含めた五人の中で一番にルカが拳銃をぶっ放しながら突っ込んでいく。


 「俺達も続くぞ!!」


 乾いた音が次々に響く。

 ルカが入り乱れる兵士たちの中を駆け抜け次々に引鉄を引いていた。

 

 「なんの音だ!?」

 「熱い、腹が熱いぃぃぃぃぃぃっ」


 腹を撃ち抜かれた兵は、剣を取り落として苦悶の表情を浮かべている。

 聞きなれない音によってその場は、さらに混乱を極めた。

 建物内に王女殿下を連れて逃げ込もうとした兵士もその足を止めた。

 まずは一人目――――――その兵士を撃ち殺すための射線上にいる敵の頭部を狙う。

 二人目――――――俺に向かって指をさし叫ぼうとした兵士の喉笛を撃ち抜く。


 「こ、こいつがヒュッ!?」


 その声は途中で途切れた。

 三人目――――――ようやく王女殿下を連れ去ろうとする兵の一人に狙いをつけた。

 引鉄を引く。

 その直後に、その男は脳漿をあたりに振りまいて倒れた。

 四人目――――――再び射線上に入ってきた兵士に狙いをつけた。

 その瞬間、その兵士が膝を折って倒れた。

 

 「よく見てるな」

 「長い付き合いですから」


 兵士の膝を撃ち抜いたのはイゼリナだ。

 五人目――――――間髪入れずに王女殿下を取り巻く兵士の心臓のあたりを撃ち抜く。

 六人目――――――これを撃ったら弾込めしないとな……。

 倒れた兵士の周りの兵士の眉間を撃つ。

 血潮を噴き上げて倒れた。


 「くっ……退路を断たれる前に一旦退くぞ!!」


 門の内側にいる兵士は、気付けば増えていて騎兵の数は逆に減っていた。

 

 「これは、厳しいかもね」


 中心の共闘相手も弾を撃ち尽くしたのか、弾込めをし直しながら参ったと言いたげな表情を浮かべた。


 「このままでは、俺らも押し包まれるな」


 すでに敵は、組織的な動きを見せ始めていた。

 混乱から立ち直りつつあることうの証拠だ。


 「ルカ、退くぞ!!」


 一番、敵の懐に近い場所で短剣を振るっているルカに告げた。


 「あきらめんのか?」

 

 心外そうな顔をするが周囲の様子を見て、さすがのルカも同意した。


 「あいよ!!」


 短剣を振り回す速度を上げて的確に相手の急所を貫きつつルカは退路を切り開く。

 俺達四人もそれぞれに引鉄を引きルカの撤退を支援する。

 やがて外套を血に染めたルカがこちらへ来ると砦を囲むように設けられた柵から外へ飛び降り砦を後にした。

 そのとき、俺の目は王城勤めの侍女の服を着る一人の女性が、俺達に気をとられた兵士たちの後を縫うように駆けたのを見逃さなかった。


 


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