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第27話 慰問の裏側で


 「王都に放った密偵の報告によれば、王女殿下が我らの東方領へ慰問に来るとか」


 反乱―――――彼らにとっては聖戦のようなものに加担する主要な貴族が、コルドベルク丘陵に整備された砦へと集まっていた。

 フィリップ公爵の根拠地にして彼らの活動の拠点でもある砦は、先日の何者かによる放火騒ぎの後始末を終えたばかりだった。


 「我らにとりこれは、朗報といえましょう。なにせ愚かにも向こうから敵地であるこちらへといらしていただけるのですからな」


 シーザリオ伯爵は饒舌にそう言った。


 「シーザリオ伯、口が過ぎるのではないか?」

 「おぉ、私としたことが少し口が回りすぎてしまいました。いやぁ、失敬、失敬」


 いかにも芝居がかったように伯爵は、手で禿頭を叩いた。

 

 「だが、これは好機だな」


 フィリップ公爵は口角をニヤリと曲げた。


 「まことにもって天啓ですなぁ」

 「さよう、さよう」


 まわりの貴族もこぞって同意を示す。

 彼らにとって天啓にも思える理由は、覚悟していた戦を行わずに独立を勝ち取れるように思えたからだ。

 戦うとなれば金銭だけでなく、糧食、武器が必要になる。

 しかし、何者かによる放火により砦に貯蓄されていた反乱のための糧食、武器といった資材は焼かれてしまっていた。

 彼らは一旦、反乱を起こすことを諦めるしかなかった。

 だが、そこに一つの朗報が舞い込んだのだ。

 反乱を諦めかけていたところに、王女が慰問に来るという。

 反乱に加担する貴族たちとしては、王女の身柄と引き換えに様々なことを国王に対して要求すれば独立が叶えられると考えたのだ。

 彼らにとっての独立へのハードルは、何段も低くなったかのように思えた。


 「このままいけば、我らが独立をする日は近い。今のうちに、何を要求すれば良いのかを考えておけばよかろうと考えるが……?」


 シーザリオ伯爵が、提案すると公爵は鷹揚おうように頷いた。


 「さすがシーザリオ伯、目の付け所が違いますな」

 「独立以外にも、まだまだ要求できることはたくさんありそうですな。なにせ、人質は王女殿下ですからなぁ」


 居並ぶ貴族たちに、それが尊大な態度だと反対する者は誰一人もいない。

 何を要求しようかという方向に話題は移っていく。


 「我々は独立した後、此処に集った諸君ら一人一人が自領を王国としそれらをまとめて連合王国としていこうと考えている」


 フィリップ公爵は、今後の展望について述べた。

 一つ王国となる、とすれば反乱に加担する貴族内での対立が起きることは明白だからだ。


 「そのために必要となる物を要求すればいいわけですな」


 シーザリオ伯爵は、公爵の言わんとしていることを補足した。

 

 「その通りだ。わしとしてはニースの港の権限をこちら側に譲渡してもらうことを要求したいが、貴公らは、どうかな?」


 海岸線沿いにある主要な貿易港は、王家直轄の土地となっており、その利権のほとんどを王家が独占していた。

 貿易から得られる財は、貴族諸侯にとっては魅力的で公爵も例外ではなかった。


 「まことに良い案ですな。私としては、東部国境守備隊の引き渡しも要求したいところですな」


 国境守備隊は、王家直属の部隊でそれなりの戦力を持っている。

 連合王国となった後も、国境は存在するわけで有力な軍隊を持つことも彼らにとっては必要なのだ。


 「対等な国の立場としての対応も要求すべきでは?」

 「貿易時の関税撤廃はどうだろうか?」


 そういった調子で次々と要求する内容は増えていき最終的に十箇条ほどにまで膨れ上がった。

 その後、これらの要求は『十箇条の要求書』としてまとめられ書簡として王都に送る手筈が整えられた。

 そして、王女が慰問に来る日が訪れた――――――。



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