第23話 共闘
「同業者か?」
現れた二人の格好は、俺らとそう変わりなかった。
「のようですね」
イゼリナも短剣を構えなおして敵意を二人へとぶつける。
敵意や殺意が漏れることで暗殺の対象者にバレるようなことがあるから普段、そういった感情は漏らさないのが常であるが、もう相手に見つかっているのなら話は別だ。
「僕たちはね、たぶん君たちと目的が同じはずだよ」
唐突に、男がそう言った。
敵意はないらしく自分の得物を構えるそぶりも見せない。
「どうしてそう言える?」
ブラフか……?
そんな言葉を真に受けて警戒を緩めるほど俺らは、甘くはない。
「いや、君たちの行動を見たからそう言えるんだよ」
俺らが、兵舎の見張りを殺したことか?
「僕ら、二人は内乱を止めるべく行動している」
敵か味方かもわからない同業者に対して、そこまで言うのだから向こうは俺らが食料庫を焼きに来たことを察しているのかもしれない。
「誰の手の者だ?」
二人は無言を通した。
「依頼主は言えないか」
それは信頼にも関わるところだ。
「君たちも言えないだろ?」
俺たちは、ユリアナ王女の隠密部隊―――――その存在が少しでも外部に漏れるわけにはいかない。
「それと同じことさ」
男は、そう言うとこちらへと歩み寄った。
ルカとイゼリナが短剣を構えつつ俺の前に立つ。
「ここまで言っているのに信じてもらえないのかい?}
二人にそう問いかける男にイゼリナが
「人を信じたことで失われた命を数え切れないほど見てきた」
と返した。
俺らは任務のためなら無論、人をなんの躊躇も良心の呵責もなしに騙し欺く。
それは標的となる人物においても同様で自己の利益と保身のためならいくらでも人を裏切る。
まず人を信じることができない職種だろう。
「それは、そうだね」
男は微笑むと踵を返して元の立ち位置へと戻った。
「僕らの今日のところの目的は、食料庫または武器庫を焼くことにある。これで信じてもらえるかな?」
男は、そう言って再びこちらへと近づいてきた。
ルカとイゼリナが先程と同じく得物を構えるが、さっきと比べて警戒感が薄れていた。
「どうやら信じてもらえたらしいね」
「少しだけな」
ルカは不機嫌そうにそう言って構えた短剣を降ろした。
男は、その言葉に満足げに頷くと俺の方に目を向けて一言
「共闘しないかい?」
と言った。
その言葉の意味は今から食料庫と武器庫を焼き払うことについての今夜だけの共闘関係というわけではなくこれからのこの案件に関しての、ということだろう。
「最終目的は?」
「反乱を未然に防ぐこと」
最終目的は、概ね一致している。
俺ら三人の目的もユリアナ王女に下令された反乱の未然防止だ。
「こちらも同じだ」
なら断る必要は無いだろう。
「その提案、受けよう」
「感謝するよ」
差し出された右手を俺は左手で受けた。
「とりあえず、今日の目標は食料庫か武器庫を焼き払うことでしょう?」
「そうだ」
「それなら僕らは武器庫へ行くよ」
男がそう言って二人の男女は、元来たほうへと去っていった。
遅れると気づいた砦内の兵士に怪しまれてしまうだろう。
「俺らも急ぐぞ」
今までの俺らの任務では珍しく別の組織との共闘関係となった今回の任務。
無論、相手への警戒を緩めるわけではないが、どこかに少し楽しんでいる自分がいることを否定できなかった。




