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第22話 侵入




 「この辺から登るぞ?」

 「以外に急ですね」

 「見るからに面倒で嫌になるぜ」


 イゼリナやルカの言うことは確かにその通りで砦の北面の崖はかなりの傾斜があった。

 

 「鍵縄なんかはなくても簡単に登れるだろう?」


 自分で言うのは、少しあれだが俺らは一線級の暗殺者だ。

 その身体能力もその辺の兵士なんかに比べれば遥かに高いはずだった。

 

 「文句言ってる暇があったらさっさと行くぞ」


 イゼリナは無言でうなずくと地面に手を着くことなく軽い足取りで上へ上へと飛び上がっていった。

 ルカもそれに追随していく。

 少し注意を他のところに向けていれば、すぐにでも闇に溶け込んでしまうような速さだ。


 「中に人影はないです」


 先行するイゼリナが砦を囲む壁の内側を覗いた。


 「食料庫から一番、近い小屋はどこだ?」


 この場合の小屋というのは、物置などではなく見張り番の兵士達の寝泊まりをする小屋のことだ。


 「これをまっすぐ行って突き当りの左」


 イゼリナは、地図を記憶していたため即座にそう答えた。 

 瞬間的な記憶能力も暗殺者に求められる素質だ。


 「とりあえず、それを外側から封じるぞ」


 ここは、普請途中の場所だから木の端材や工具なんかはいくらでもその辺にある。


 「毒でも焚くのか?」


 ルカが生き生きとした目で訊いてきたのでかぶりを振った。


 「そんな気の利いたものはない」


 突き当りを左に曲がる。

 そこには、確かに大きな小屋があった。

 小屋というよりかは少し小さめの兵舎といった方が正しいのかもしれない。


 「イゼリナ、見張りはいるか?」


 イゼリナが兵舎の入り口の様子をうかがう。


 「二人いる。酩酊めいていし煙草を吸っている」


 油断しているということか。


 「わかった。とりあえず無力化するぞ」


 ルカとイゼリナが腰のポーチから短剣を抜くと背後から二人に忍び寄る。

 熟練の二人の接近に見張りは気付かない。


 「なぁお前、兵役が終わったらどうすんだ?」

 「あぁ?そうだなぁ……実家が店をやってるんでその手伝いでも―――――――カヒュッ!?」


 今後について話し合う見張りの兵士の言葉は、最後まで続かない。

 口に布を押し当ててルカとイゼリナがそれぞれに喉に押し付けた短剣を引いた。

 噴き上がった血が壁や地面を打つ音が聞こえた。


 「お前らに未来なんて来ねぇぜ」


 ルカは、男の着ていた服で血糊を拭った。

 壁に寄りかかるように骸となった男たちを二人は乱雑に足で転がし兵舎の裏手の窪みへと運んだ。

 そして土をその場にあったスコップで掘り返しひっくり返す。

 それで入り口付近の血だまりは消えた。

 さらに運んだ時に地面に付着した血痕も同様に消した。


 「扉を開けれないように細工するぞ?」


 窓のない仮設の兵舎で脱出可能な場所は入り口だけだった。

 その入り口の扉近くに細工を施していく。

 内側から外へ押し開けるタイプの扉だ、扉の開閉する範囲内に障害となる物を用意すれば扉は開けられない。

 いくつかのある程度しっかりした木片を扉近くの地面に差し込むだけでよかった。


 「これで最初の段階が終わったな」


 一仕事終えたことに安堵の息を漏らす。

 そのとき、ルカが背後の闇に向かって殺気を飛ばした。


 「どうしたっ!?」


 ルカがある一点を睨みつけ、短剣を構える。


 「お客様らしいぜ?」


 ルカがそう言うと、それに応えるように闇の中から声をかけられた。


 「不法侵入に殺害……随分と手荒な真似をする」


 闇から現れたのは、二人の男女だった。


 


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