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第10話




  第10話  




 「…あいつらは仕留めそこなったか……」


 司教はうなだれた。


 「お前があいつらを雇ったのか」


 ルカが短剣を司教の首に回しながらそう言う。

 司教は、かぶりを横に振り否定した。


 「じゃぁ誰があいつらを雇った!! 言え!!」


 ルカの短剣が司教の皮膚を削ぎ始めた。

 司教が苦痛に顔をゆがめる。

 短剣の先端から血がしたたり落ちた。


 「わっ分かった、言う!! 言うからやめてくれ!!」


 司教は苦痛に耐えかねたのか息を荒げながらそう言った。


 「我らは……少々の麻薬の密輸ルートの確保に協力をした……。その見返りに密売用の麻薬の一部を手数料としてもらった」


 やはり、麻薬に関わっていたのか。


 「誰が、密輸ルートの確保を依頼したんだ?」


 俺はつとめて優しい声音で訊いた。

 こういう場合、脅すような訊き方をしても相手が恐怖心にかられるだけですぐに自白させることができない。


 「……言えない」

 「お前の首元に短剣があることはわかってるよなぁ? 立場を考えてもの言えや!!」


 ルカがさっき司教の首に付けた傷口に短剣の先を押し当てる。


 「っ!? 神は私をお試しになられている……」

 「わけわかんねーことほざいてんじゃねぇーよ!!」


 ルカが剣先を押し込む。


 「ウグッァァァァ!!」


 部屋に絶叫がこだました。


 「司教猊下!?」


 執務室の扉の向こうから駆けつけてきたらしい聖騎士たちの声が聞こえる。


 「イゼリナ!!」


 俺はイゼリナに扉の鍵をかけるように言う。


 「もう、かけてあります」


 さすがだな。

 これであいつらは入ってくることができないだろう。

 目線を司教へと戻す。


 「ルカ、気絶されても困るからその辺にしとけ」

 「あいよ」


 司教は、息も絶え絶えという感じだ。


 「受け取った密売用の麻薬はどうした?」


 その流れによっては事件はますます厄介な方向へと向かうだろう。


 「もう、麻薬に関わったことがバレてる時点で神に見放されてるんじゃないか? 言ったほうが身のためだろう」


 司教の表情は諦めへと変わりそれと同時に苦痛から解放されたような表情になった。

 苦痛に耐えることはとても困難なことだろう。


 「……麻薬は…白教会の信仰地域へと撒いた」

 「ひと悶着を起こそうっていう考えか」

 

 司教は否定しなかった。

 いまだに両教会には遺恨がある。

 

 「これは、俺らの管轄外だな」

 「めんどくせーことはこれ以上増やしたくないぜ?」

 「もとよりそのつもりだ」


 あと訊くべきことは一つか。


 「手数料以外の麻薬はどこへ流した?」


 俺らの今後の活動に一番大きくかかわる内容だ。

 司教は、黙りこくってしまった。


 「ルカ、短剣をくれ」


 俺はルカに渡された短剣を司教の眼前に―――薄い紙が数枚入るかという近さに突き付けた。


 「外にはお客さんがお待ちだ。早くしてくれ」


 聖騎士たちの声が外から聞こえる。

 おそらくどうこの扉を破るかを算段しているんだろう。

 手荒なことはしたくないが……こうするよりほかはないだろう。


 「ヒィッ!! 言おう!! その短剣を下げてくれ」


 そんな大声でしゃべる力がまだあったか。


 「司教猊下!?」


 聖騎士たちが騒ぎ出した。

 聖騎士たちの救援をはやめさせることが狙いだったか。

 ルカが司教に蹴りをいれる。


 「ぐぶふぉッ!?」


 今の一発で内臓をやられたのか吐血した。


 「がふぉっ!!」

 「早く言え!! 手荒なことはこれ以上したくない」


 ルカがさらに蹴りを入れようとしたので制止した。


 「ルカ!! 待て」


 俺は床に転がる司教の顔の前にかがむ。


 「言ってくれ」


 司教は聖騎士たちがいる扉の方に目をやったが観念したのか口を割った。


 「……麻薬は…伯爵領……へ……」

 

 もうそこまで事態は進んでいたか……。

 詳しく聞きたいが司教は衰弱している。

 これ以上は無理か……。


 「レナード、外から火薬のにおいがする!!」


 イゼリナが珍しく慌てた声でそう言った。

 扉を爆砕するつもりか。


 「これ以上は事情聴取ができない、ルカ、イゼリナ!! 退くぞ」

 「事情聴取という名の拷問じゃね?」


 拷問してたのはお前だろうに……。

 

 「とりあえず港へ急ぐ」


 そう言った瞬間、扉が爆発で砕けた。

 俺らは窓を執務室の椅子で叩き割りそこから外へと逃げだした。


 「いたぞ!!」


 そんな声を後ろに聞きながら。


事件解決に一歩前進

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