第9話 暗殺者罠にはまる 2
第9話
俺は、ここから撤退するために入ってきた扉に手をかけた。
「そっちに逃げても無駄だよ。後ろには聖騎士が控えているからね。それといちおう確かめてみるかい? 麻薬か小麦粉かを」
リステリカが投げてきた小麦粉の袋を開けて小麦粉かどうかを確かめながら、外の気配を探る。
確かに外に気配を感じることができた。
そして、この粉は間違いなく小麦粉だ。
すべて、荷車の積み荷が同じ包装であることからここにあるのは、おそらくすべて小麦粉なのだろう。
ルカや、イゼリナにも首を振って小麦粉であったことを伝える。
「聖騎士たちには君らがここから逃げた場合、対処するように伝えてある。だからここで殺り合って逝け!!」
前門の虎、後門の狼といったところか。
「それでは、私は失礼しよう」
立派の法衣に身を包んだ男はオルガンの近くの壁へと消えていった。
あそこが隠し扉か……。
「死ねやー!! クソったれがー!!」
ルカが暗殺者たちの中に突貫する。
これでは多勢に無勢だ、俺とイゼリナもルカを追って暗殺者たちの中に突っ込んでいく。
数はリステリカを除いて十三人か。
少し数が多いな。
「くっ!! 次から……次へと、湧いてきやがって!!」
ルカは苦戦している。
このままじゃ分が悪いな。
敵が密集しているためいろんなところから白刃が襲ってくる。
それを防ぐので手いっぱいだ。
「それでも『フェルカーモルト』のルカ様なのですか?」
リステリカが煽ってくる。
「クソが」
ルカが怒りに任せて短剣をふるう。
その圧に一瞬敵の暗殺者が怯んだ。
その隙を逃さずルカとイゼリナが短剣で暗殺者を薙ぐ。
何人かが勢いよく血を噴いて倒れた。
俺はポケットの中に手を突っ込み煙球を手にする。
それに片手で持ち敵の攻撃を防いでいる間にキャンドルから火をもらう。
幸いにもここは礼拝堂なので多くのキャンドルがあるのだ。
そして敵の方に投げつける。
すると煙球は、爆ぜて中から煙が立ち上る。
「ルカ、イゼリナ、退くぞ!! ついてこい」
さっき、男が消えた隠し扉のある所へ向かう。
やっぱりあった。
軽く手で押すと壁の一部が内側へと開いた。
隠し通路の中は暗い。
近くにあったキャンドルをもってそれを光源にして進む。
「どこへ消えた!?」
そんな声が後ろから聞こえてきた。
その声で扉を閉め忘れたことに気づき、イゼリナが隠し通路の扉を閉める。
「助かったようだ。一時退却するか?」
ルカは、首を振った。
「あの中には、麻薬はあったはずだ」
確かに四人も護衛を付けた商人と十数人の聖騎士を連れてあれをとりに来た、教会は小麦にしては少しやりすぎているかもしれない。
小麦粉だというのはブラフか……?
「いちおう、確かめていくか?」
「ああ。司教の執務室はこっちだぜ」
ルカは、走り出した。
大聖堂は布教の中心となる教会であるため敷地が広い。
「あそこだ!!」
ルカが、指を指した。
そこには白色の鎧を装着した聖騎士が剣を構えて立っていた。
「ここは通さぬ」
数は四人か……。
「押し通る!!」
ルカとイゼリナが走ってきた勢いのまま聖騎士に突っ込む。
カキィィン!! と剣のぶつかる鋭い音が石造りの回廊に響く。
「急ぐぞ!!」
いつ、暗殺者と残りの聖騎士が来るかわからないので俺も聖騎士へと突っ込む。
そして鋭く突いた。
普通の人から見れば目にもとまらぬ速さだろう。
しかし、聖騎士もそれに合わせるように剣を振る速さをあげてきた。
俺は前に出ると聖騎士に誤認させるために前に足を出した。
それに合わせて聖騎士が一歩さがる。
俺はその動きを待って飛び下がった。
「ルカ、イゼリナ!! 退け」
俺は腰にあるポシェットの中から砂の入った筒を取り出し筒から砂を手の上へと出す。
「くらえ!!」
それを、前にいた聖騎士たちに投げつける。
目つぶしだ。
剣と剣でやり合うべきなのだが時間を浪費しないためにはこういう手を使うのは仕方ないだろう。
聖騎士たちが剣を構えながら目を押さえる。
視覚を奪ってしまえばどうとにでもなるだろう。
ルカとイゼリナに目くばせをして聖騎士たちに剣の側面で打撃を与える。
四人の聖騎士たちは倒れ伏した。
「ルカ、ここに司教がさっきの男がいるんだな?」
「おそらく」
重たい扉なので、ルカとイゼリナ、俺に分かれてとってを持ち扉を開ける。
きしむような音がしてゆっくりと扉は開いた。
そこには、さっきの男がいた。
「…あいつらは仕留めそこなったか……」
司教は、こちらを睨み据えるとそう言った。




