第7話 巨人の名を冠する者
息抜き回
「ルミア様、そのドレス似合いますね」
店主が持ってきてくれた紫のドレスを買ってそのまま着て出てきた。その帰りにヘレンが改めてドレスを褒めてくれたのだ。
「そ、そう?えへへ・・・」
褒められるは嬉しい、初めて自分で選んだ物がこの服で良かったと思う。頬をほんのり紅潮させて照れ笑いする様子はルミアには珍しく年相応だ。
「はい!似合ってます!!あ、そうだ、お城に戻る前にどこかで食べて行きません?お腹すいちゃって」
ヘレンが自分のお腹をさすりながらルミアに提案する。本来自分の都合で姫に何かを提案することなど許されないはずなのだが現在の王家はゲバルト以外は心が広い。多少引っぱたく位しても許してくれる。
「うん、いいよ!どんなのがあるの?」
当然ルミアはヘレンの提案をすんなりと受け入れる。実はルミアも少しお腹がすいていたので丁度いい提案だった。ただ、外の食事など知るはずもないので結局はヘレンに全部まかせることになった。
「ステーキがいいです!!」
ということで昼食はステーキになった。
再びヘレンが手を引き今度は食事処に連れていく。
「なんかいい匂いしてきた・・・」
ルミアが鼻をスンスン鳴らすと肉を焼く香ばしい香りが鼻腔を一杯にする。この匂いは空腹感を酷く増長させる。
「あそこが肉料理専門店です!いや~何時来てもいい匂い!!」
肉料理店は他の建物より背が低い、一階建てでその代わりに横に長くガッシリとした印象を受ける。
「さっきの服屋さんよりも人が多いね」
「なんせお昼時ですからね、みんなお腹すいてるんですよ」
店内はほぼ満席でガヤガヤと騒がしい。「こちらへ」と店員に案内され空ている奥の窓際の席に座る。
「これがメニューですよ!!どれがいいですか!?」
元気よくヘレンがメニューを見せてくるが料理名だけではルミアにはよくわからない。だからヘレンの負担が少ない一番安いやつを選ぶことにした。
「コレ!!」
ルミアが指さしたのはソーセージのグリルだった。
値段800マドル。金銭価値は日本円とほぼ同等である。
「ルミア様遠慮なさってますね?」
ヘレンがジト目でルミアの目を真っ直ぐ見据えた。誰がどう見ても不服といった表情である。
「え、えっと・・・」
テーブルに乗り出してたじろぐルミアに詰め寄りながら言葉を投げかける。
「知ってるんですよ?ルミア様に遠慮癖があるの。さっき洋服自分で選んだ時みたいな素直な可愛いルミア様が見たいな~」
「で、でもヘレンにはさっき服も買ってもらったし・・・」
「はい出た~遠慮癖~、大丈夫ですよ、私結構お金あります。それに今日の分のお金はエア様に言えば貰えることになってますし」
「ほんと?じゃあ・・・」
父親がお金を出してくれると分かりルミアは安心して今一度メニューに目を通す。
「これ」
「!?」
ヘレンの顏が引きつった。
「マジっすかルミア様」
「? え、ダメ??」
ヘレンの顔色を伺ううルミア、指さしたメニューは自分でもよくわかっていない。名前の響きで決めただけだった。
「いや・・・いえ、大丈夫です」
「? そう」
今し方遠慮癖どうのとなじってしまったがためにルミアを止めることができない。なぜならメッチャ言いにくいからだ、自分で選ばせて結局ダメって言いづらい、ひたすらに言いづらい。
ルミアが選んだメニューは
・ゴライアススコーピオン姿蒸しのハーブ添え
・値段5963マドル
ゴライアスは簡単に言うと巨人という意味。スコーピオンは言わずもがなサソリである。
因みにゴライアスの名を冠する生物は地球にも存在する。興味がある方はゴライアスバードイーターを検索してみるといいだろう。・・・自己責任で。
ゴライアススコーピオンは魔族である。巨大サソリの魔族だ。大型の昆虫魔族の姿蒸し、それがルミアが選んだメニューなのだ。
なんで肉料理専門店で虫の魔族扱ってんだよぉ!!
ハードル高すぎるだろ!!しかもサソリってオイ!!値段も5963って、「ご苦労さん」になってるし!!これ悪ふざけだろ!いい加減にしろよ!!
笑顔で店員を呼びながらヘレンが心の中で毒づく、サソリだけに。
「えー・・・っとぉ・・・こちらのメニューは30分ほどお時間を頂きますが本当によろしいです・・・か??」
店員も顏引きつってるじゃねーかっ!!メニューから外せバッキャロー!!
「はい、大丈夫で~っす!楽しみですねルミア様」
止めろ!今すぐキャンセルするんだアタイ!!やっぱりやめますと言えアタイ!!ルミア様の為にも!!
「・・・顔色わるい?どうしたの?やっぱりさっきのやめた方がいい?」
「いえいえ、大丈夫ですよ!大きいみたいですから私も食べます!!」
アタイのバカァァァアアァァアアァ!!!止めろぉ!!せっかくの提案をなに蹴ってるだよぉ!!
嫌だよぉぉ・・・!食べたくないよぉぉぉ・・・!
あ、ルミア様の笑顔可愛い。
じゃねぇだろ!!知ってるぞゴライアススコーピオン!でけぇんだぞアレ!!気持ちワルイんだぞ!?
イノシシ位のサイズ余裕であるからな!?複眼の形一つ一つがしっかり視認できるんだぞ!!普通に人間襲う奴だからね!!それ料理するとかどんな神経してんの!?もう決めた、この店の常連やめた!!二度と来るかこんな店!!チクショー、ネット繋がってればスマホで写メってインスタでボロクソに書いてやるのに!!
へレンの毒は心の中で垂れ流され続けた。そして約30分後。
店員が二人がかりで慎重に大皿を運んでくる。なんかいい料理が出てくるときによく見る銀のドーム型の蓋、クロッシュが被さっていてサソリの姿は見えない。
運ぶ店員の顏も引きつっていた。
関わった奴片っ端からドン引きしてるじゃねーかコンチキショォォォォォォ!!!
予定していたよりもヘレンの尻尾が出てしまった。
でも仕方ないね、ゴライアスだからね。
次回、過去編ラストなう。




