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第55話  炎獄の手

物語の終わりが近い

物語が終わってなお

悲劇が終わることはない

運命とは、すなわち必然

抗うな、受け入れろ

「ガマ様!逃げましょう!!」

「待ってくれ!私のコレクションを持ち出さねば!!」


あんな大荷物を!?バカじゃないの!?冗談じゃない!!持ってったってどうせ直ぐに死ぬでしょ!?


「また作ればいいんですよ!私も手伝いますから!!」


元召し使いと貴族ガマはまだ避難をしていなかった。創作に集中するために外部の音を遮断していせいで近所の家が爆発して吹き飛ぶまで異変に気が付かなかったのだ。


「クソ!仕方ない!!」


ガマと元召し使いは作業室から飛び出し2階から1階への階段を駆け降りる。


幸い火の手は屋敷に回ってきたばかりで煙もほとんどない。

火に遮られる事もなく玄関まですんなりと来ることが出来た。

元召し使いが先行し玄関の扉を開く。


「ひっ!!」


大通りを我が物顔で群雄闊歩する魔族の群れが元召し使いの目に飛び込んできた。やましいことがあるのでこの屋敷の窓の数は極端に少ない。それがあだとなり外の様子を伺うことが出来なかった。転がる死体を喰らう魔族も居る。ガマの芸術家ごっこと格が違う。ガマもその光景を目の当たりにし言葉を失う。


「なんて事だ・・・」

「ここはダメです・・・ッ!裏口から出ましょう!!」

「なんて素晴らしい光景なんだ!!」


声を大にしてガマが言う。


「ちょ!?ガマ様!!」


興奮するガマの口は止まらない。


「絶景とはまさにこのこと!!」


ゴブリンが数体こちらに気が付き、意気揚々と向かってくる。


「まずい!!」


召使いが扉を閉めて鍵をかけた。


「もう少しあの景色を堪能させてくれ!!」

「バカ言わないで下さい!逃げますよ!!」


ドアの外からゴブリンが体当たりしメシメシと音を立てて金具が外れそうになる。


「あ、あぁ、行こう・・・」


ようやく状況を理解したガマが裏口へ向かう。背後からドアが破られる音が聞こえた。裏口に行くには以前マイリアンを招いた暗い部屋を通る必要がある。今まさに召使いがその部屋の扉を開いた。暗い部屋に明かりを灯す余裕などあるはずもなく記憶を頼りに部屋を進む。そんなに大きい部屋でもなければ乱雑な家具の配置をしているわけでもない。この部屋を抜ければすぐ裏口だ。


「助けて・・・」

「きゃあ!?」


ガマの製作途中の作品が元召し使いの足を掴んだ。この部屋に放置されている彼らはこの暗さに目が慣れている。


「離しなさいよ!!死に損ないが足引っ張らないで!!」

「うわぁ!なんだお前ら!!やめろ!やめろおおお!!!」


ガマもまた自身の作りかけの作品たちに捕まった。はたから見たらその光景はゾンビに喰われるシーンにしか見えないだろう。


ガリガリにやせ細り体のどこかが欠損した作りかけたちは爆発のせいで怯えており集団で助けを求めた。


部屋の外から足音が複数聞こえる。魔族達が追い付いてきたようだ。


「離せ!!死んでたまるか!!離せェ!!素材風情がぁぁぁ!!!」

「観念しろ人間ども!!」


部屋にゴブリンが飛び込んできた。


「嫌よ!私は!!私が!!私が居ないと皆が困るの!!だから・・・」


ゴブリンの鋭い牙が元召使いの喉笛に喰らいつきそのまま肉を引き千切る。食い破られた喉から血が噴き出した。


痛い 苦しい 息ができない 声がでない

怖い 嫌だ 死にたくない 死にたくない

死に・・・た・・・く・・・・・・・・・


床をのたうち回る元召使いの胸部をゴブリンが全力で踏み抜いた。


「あ゛ッ!!・・ぁ゛・・・」


最後に悲鳴を上げる権利さえも奪われて、元召使いが電池の切れた玩具のように動かなくなった。他のゴブリンが作りかけを持ち上げる。


「・・・なんだこれ?」

「構うな、全部殺せばいいだろ」

「そうだな」


持ち上げた作りかけが頭から床に叩きつけられた。ただでさえ弱っている作りかけが生きていられるはずもなかった。


「ぬわあぁあ!!!ぐげげげっげごぉッ!!」


ガマが奇声をあげて作りかけたちを振り払う。火事場の馬鹿力というやつだ。


走った、扉に向かって。手を伸ばした、ドアノブに。

作りかけが足に縋る。頭を踏みつけ引き剥がす。

死に物狂いで伸ばした手が扉に届く。逃げ道を開け放った。

逃げれる、逃げ切れる!!


「や・・・「よぉ人間、どこ行くんだ?」


開かれた扉の前に首がない人型魔族が立っている。


「見逃し・・・・・・・・・」


首無しの腕がガマの胸部を貫く。ガマもまたそれ以降動くことはなかった。


「よ!お楽しみ中か?」

「ん?なんだ、見ない顏だな、人間・・・じゃないか、その落ち着きようは」

「はは!冗談やめろよ!俺は人間キライなの!」

「やはり魔族か、どこで合流した?我らの仲間ではないだろう?」

「ハァ・・・俺は人間より魔族の方がキライなんだよ、虫唾が走る呼び方するな」


青髪の青年の周囲に氷柱が複数生成される。


「!?」

「俺、悪党だからさ~・・・」


氷柱が首無しの体を穴だらけにした。


「不意打ちとかだまし討ちとか大好きなんだな~!!メンゴメンゴ!!」

「・・・・なにもの・・・・だ・・?」

「あ?首ねぇくせに喋んな」


一回り大きい氷柱を作り出し首無しに止めを刺した。


「ん・・・この人間死んでら、んじゃ次行こうかねっと・・・フスー!フス―!!口笛ムズイなこれどうやんだ??」


ぶつくさ独り言をつぶやきながら大通りへ向かう。


裏口値段へ続く道には魔族の死体が詰みあがっていた。

物語の終わりが近い

物語が終わってなお

悲劇が終わることはない

運命とは、すなわち必然

だからって抗わないなんて絶対に嫌だ

私は絶対に受け入れない

どれだけの時間に置き去りにされようと

私はチャルに会いに行くよ

それだけじゃないよ

どれだけの罪の重圧を背負おうと

私はこの世界を滅ぼすよ

チャル、あなたとは違う方法で

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