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第53話 決意の火炎

ゲバルトがティアラから宝石を外していなければ

ルミアの頭部は無くなっていた。

灼熱の炎が町を覆い薄暗い空を朱く照らしている。


「うわぁあ!!」

「助けてぐれぇ!!だずげでぐでぇ!!!!」

「この子だけはどうか・・・どうかッ!!」


町を彩るのは燃える家屋による伴奏と焼かれるか裂かれるかした人間による悲鳴という歌唱。


燃え盛る家とは対照的な冷たい石畳に足の踏み場に困る程、おびただしい人間の死体が転がっている。


「ヒヒッ!絶景だねぇ・・・」


イロウが町の惨状を眺めていたのはかつてエアがゲバルトの誕生を発表した広間だった。積み重ねた死体の上に腰掛け満足げに笑みを浮かべる。


「いい働きをするじゃないかぇ・・・私の兵士たちはぁ・・・」


暫くしてイロウは重い腰を上げた。


「ヒヒ!最後に城から町でも見下してみるかねぇ・・・」


―― ルミアの秘密の場所 ――


ゲバルトは自分に従順な兵士数名を引き連れ、隠し通路から城の外に脱出していた。その中にはマイリアンの姿もあった。

しかし、出た先にも魔族が待ち構えていた。ゴブリンをはじめとした下級魔族たちだが魔族は魔族、人間からしたら十分脅威だ。


「ボクちんは死にたくない!お前らボクちんの盾になれ!!」


必死の形相でゲバルトは叫んだ。


「ふざけんじゃねぇ!!付き合ってらんねぇ!テメェが死ね!」


兵士達がゲバルトに反発し魔族達の前に突き飛ばした。自身のの命を捧げられるほど兵士は忠実ではなかった。


「うわぁ!!嫌だ!ボクちんは王様だぞ!!やめろ!来るな!来るなぁ!!!」


魔族たちを前にゲバルトは恐怖で足腰が立たない。

魔族たちはゲバルトを囲むが攻撃する様子がない。


「今のうちだ!」


ゲバルトを囮に兵士たちは逃げ出す。だが、兵士の一人が空を指差した、その手震えている。


「あれ・・・」


それを見た兵士たちは武器を手放し膝をついた。


ガーゴイルの大群が兵士たちを見下していたのだ。ガーゴイル一体だけだったら力を合わせて何とか倒すことが出来たであろう。だが数えるのが億劫になるほどが空にあった。それこそ世界を救うような勇者でも現れない限り希望など、救いなどない。


選ばれし勇者も、選んだ勇者も、もう居ない。


「じょ、冗談じゃねぇ・・・俺は死なないぞ・・・」


マイリアンがひとり後退りして来た道を戻る。空の連中を相手するぐらいなら、ゲバルトを囲んでた魔族共を突破する方がまだ可能性があると判断し他の兵士を見捨てたのだ。


「その服装・・・貴様王族だな?」

「ヒィィィィィィ!か、金が欲しいならいくらでもやるから見逃してくれぇ!!」

「ルミアはどこだに居る?大人しく差し出せ」

「ルミア!?居ない!樹海に行ったっきり戻ってきてない!!」

「嘘をつくな」


ゴブリンがゲバルトの腕を踏みつけた。ミシミシと骨が悲鳴をあげる。


「うわぁぁ!痛い!!!痛い!!本当なんだ!居ないんだ!!信じてくれぇ!!」

「もういい」


ゴブリンが足に体重を掛けるとゲバルトの左腕は小枝のように音をたて本来曲がるはずのない方向へひしゃげた。


「ひぎゃああぁぁあ!!」


涙と涎を垂れ流しながらも視界の端にこそこそ通り抜けようしているマイリアンの姿を捉えた。


「マイリアンァァン!!!だずげろお!!」

「!」


ゲバルトの叫びで魔族たちはマイリアンの存在に気がついた。


「糞野郎がっ!!せっかくバレずに逃げられたのによぉ!!!」


マイリアンはゲバルトに構うことなく、逃げようとしている。


「頼む・・!助けてくれたらお前に王座を譲るぞぉ!!!!」


マイリアンの動きがビタリと止まった。


万が一王になれたら?自分がゲバルトのように、権力を自在に振る舞えるなら?こんな話乗らない手はない!!もう二度とそんなチャンスなんて訪れない!!


「まかせて下さい!!このマイリアン・ヘクター・バールが必ずやゲバルト王をお救いしましょう!!」


マイリアンの体から淡い光が漏れだした。蒼いその光は退魔の色。覚醒したのだ。


退魔の魔力は魔族に対する最も有効な対抗手段であり発現した者の身体能力も大幅に上昇する。


発現の条件は『危機的状況下で護るべき相手と共に生き延びる覚悟を決めたとき』である。見て分かる通り条件が限定的すぎる為発現する者は非常に少ない。だが、強欲マイリアンは私利私欲により歪んだ形で覚醒の条件を満たしたのだ。


「なんだ!?力が、いくらでも湧いてきやがる!!ハハッ!!こんなカス共に負ける気がしねぇ!!」


退魔の光を見た魔族たちはゲバルトの周囲から離れてマイリアンを警戒する。


「こいよ、化物共!!ぶっ殺してやるぜ!」


マイリアンは大股を開き槍を構える。その表情は自信に満ち溢れていた。


少し離れた場所から悲鳴が聞こえる、声の主は一緒に居た兵士たちだろう。流石にガーゴイル大群は部が悪い。早くこの場を切り抜けてしまった方がいい。


「来ないならこっちから行くぜぇ!!」


マイリアンが突進してゴブリンの腹部を槍で貫く。


「ぐがぁぁぁ!!!」


退魔の魔力により槍を突き刺した部分が硫酸でもひっかけられたようにみるみる焼け爛れ溶けていく。ゴブリンから槍を引き抜き、間髪入れずに爛れた風穴に蹴りをお見舞いしてやった。


ゴブリンは地面に倒れバタバタと手足を暴れさせていたが程無くして動かなくなった。その光景に恐怖心を抱いた他の魔族たちは距離を置きマイリアンの出方を伺う。


「ハハ!最高の気分だ!!」


マイリアンは弓の弦から放たれた矢の如く真っ直ぐに一番近い魔族に襲い掛かる。ターゲットはオークだ。


「ブゴォォォ!」


オークは全身から空気を全部吐き出したような鼻息を鳴らしながら荒削りのこん棒をバットのように振るった。


「イエェェイ!遅いぜ!!」


マイリアンは自分の頭目掛けてきた横振りのこん棒を跳躍で避けて見せた。少し頭を下げれば十分避けることが出来たのに、わざわざ危険性が高い避け方を選んだのだ。それだけマイリアンは調子に乗っている。


マイリアンの足が地面に付く時にはオークはこん棒を渾身の力を込めて振り下ろす体制が整っている。


やべぇ!


時すでに遅し。この姿勢では避けるのは間に合わない。振り下ろされるこん棒を前にマイリアンの記憶が走馬灯のように駆け巡った。


目を反射的に閉じて来たるこん棒に備える備えると言っても対策の取りようもないが。


「・・・・?」


しかし、こん棒が振り下ろされることはなかった。


マイリアンが恐る恐る目を開くと、オークの前に空色の髪の青年が立っている。オークが無言で倒れた、すでに絶命している。


「誰だ!?」

「誰だって?通りすがりの悪党でーす」


既に周囲の魔族は全員命を失っている。


「お、お前がやったのか!?あの一瞬で!?」

「うるせーな、文句あっか?殺すぞクソが、人間キライなん・・・」


悪態を付く青髪の青年は言葉の途中で、ゲバルトと目が合い言葉を止める。


「おい、そこのヘタレ野郎」


ゲバルトに青年が歩みよったかと思えば、そのまま胸倉を掴んで無理やり立たせた。


「うわぁ!!なにするんだ!この無礼者め!マイリアン!助けろ!!」

「ハイ!!」


青年の後ろからマイリアンが槍を突き出すが青年はマイリアンの方を見もせず躱す。その後に鬱陶しそうな視線をマイリアンに向けた。


「邪魔」


マイリアンは顔面を蹴られて鼻血を垂らしながら無様に転んだ。


「うげぇあぁ!!」


青年が改めてゲバルトの顏を見る。


「ひィ!!」


「お前、なんか魂の状態が変なんだよな・・・どれ」


青年がゲバルトに平手打ちをかました。

痛そうな音が響く。


「いだぁ!!このや・・・・?なんだこの感覚・・・??」


「あ、治ったぽいな。じゃ、悪党は忙しいから、じゃーな。その辺で勝手に死んでろ」


最後まで悪態をついたまま青年は町の方駆けていった。


ゲバルトはなにが起きたのかさっぱりわからないがとりあえず助かったのは分かった。それと妙に頭がすっきりしている。

19年の人生の中で今が最も冷静になっていることもわかった。


「・・・マイリアン大丈夫か?」

「は、はいぃ・・・」


マイリアンも大した怪我はしてない。まだ、諦めてはいけない。


「今来た道を戻る、ボクちんに付いてきて欲しい」

「え!?」

「大丈夫、事が済んだら王座は渡すよ」

「はい!!このマイリアン・ヘクター・バールどこにでもついていきますとも!!」


たちまちご機嫌になったマイリアンが元気に敬礼する、この分だとさっきと同じような失敗を繰り返しそうだ。でもそんなことはもうどうでもいい。


「このまま死んだら、あの世でパパに合わせる顏が無いんだ・・・」


いや、もう繕いようのない事を散々してきた。ボクちんは地獄行き確定してる。


ゲバルトは懐からルミアが装着したティアラに付いていた赤い宝石を取り出し眺める。


どうせ城に来るんだろう?

預言士・・・おんなじクズ同士、一緒に地獄に行こう。

あらゆる神々が星母マリアを狙い転生者や転移者を送り込む。

だが・・・いかなる能力を与えようともこの世界の覇権を握るには至らない。

この話は、この物語とはかかわりは薄い。

だがまったく無関係というわけでもない。

預言士イロウの最終目的も結果としてマリアの神の為。

全ては神託。聖書とは神に選ばれし天使が持つ神の書物。

これから起きる運命がかかれている。

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