第13話 エア有罪
多分ね、本編よりも過去編の方が長い作品になる
この魔王の花。無能作者の無計画ぶりが露呈したね☆
「なんだか最近ルミアが明るくなった気がするわ」
「気のせいではないな、肉付きがよくなったし」
冷めた夕食の乗った木製の素朴なテーブルでエアとペンナがルミアの変化について話している。二人ともルミアが来るまで夕食に手をつける気はないらしい。
城内の豪華なシャンデリアにはとても似つかわない家庭的などこにでもあるテーブル。乗っている夕食もごく普通のパサパサしたパンと具材の少ない野菜スープ。
城の食卓を連想させる長テーブルは家族の距離が離れてしまうのが嫌とエアとペンナが欲しがる貴族にあげてしまった。あるのは一般家庭にあるような安そうなテーブルだ。
食事は「一番苦労してるのは国民」だと言い、豪勢な食事は誕生日とか家族の記念日ぐらいだった。それに不満そうな顏をするのはゲバルト王子しかいない、ルミアを待っているのも嫌で先に夕食に手を付けている。
料理も不満だ、預言士から以前の王族の食卓がいかに豪勢だったか聞かされているし、テーブルがショボいのも意味が解らない。なぜ自分の代がこんなに質素なのか納得がいっていない。もっと前の王の子として生まれたかったと思う程だ。
「よかった・・・あの子はどこか私たちに遠慮しているようでしたもの」
そう言ってペンナは窓に視線を向けた。嬉しい反面悲しい気持ちがあるのもまた事実であった。
母親として実の娘に遠慮をさせてきた事、そして心の拠り所になる他の何かを見つけた事、自分がその『何か』になれなかった事、様々な事で己の無力さを痛感する。
腐ってもルミアを大切に思う親。娘が本心を晒していないことは薄っすらと気が付いていた。気が付いていたからこそ問う事が出来なかった。ルミアが私たちを想い貫いている意志に踏み込むような真似もまた、できなかったのだ。よりルミアを追い詰めてしまうのではないかと、ずっと葛藤してきた。
「ごっそさん」
ゲバルトが食事を終え自室に戻っていく。
「・・・ゲバルトはルミアと逆に我がままに育ってしまったな」
エアは今のゲバルトに王たる資格が無いと思っている。それでもこれから王にふさわしく、優しくなってくれると信じていたのである。
あの日が訪れるまでは―――
ルミアが廊下をバタバタ走っている。スマホなる物を見せて貰っていたらすっかり夕食の時間を過ぎてしまった。
「ルミア様!廊下を走るのは行儀悪いですぞ!!」
大臣が走るルミアを発見し注意する。
「ごめんなさい!許して!!」
謝りはしたがそのまま走り抜けていくルミアを見て大臣は嘆く。
「最近エア国王に似てきてしまった・・・」
大臣はその晩大量に毛が抜けた。加齢かな?
「お、元気な足音がするぞ」
「あらあら、やんちゃな子みたいね」
時間に遅れて走ってくるなんて普通の事をルミアがやっている。二人は穏やかな視線を入口の扉に向け扉が開くのを待つ。
足音とは裏腹に扉は静かに開かれた。
息を切らしながらルミアは「遅くなってごめんなさい」と両親に謝罪する。
「いいさ、おいで食べよう」
父に手招きされて椅子に座る。
ルミアが冷めたスープを一口飲むと「ごめんなさい」とまた謝った。
「いいのよ、気にしないの」
母が優しく微笑みかける、その微笑みが心苦しい。私を待っていたせいでスープが冷めてしまった。質素な食事なのだからせめてスープは温かいまま飲みたかっただろうと考えてしまう。続いてエアもスープを口に運ぶ。
「・・・こんな冷めたスープ飲んだら体が冷えるな」
「ごめんなさい・・・」
ルミアがまた謝る。
「そうだ、ルミアのせいだぞ、だからこっち来なさい」
エアが椅子を引き、膝の上に来るように要求する。
「え・・・」
「ほれ、早く膝の上に来い、責任取って体を温めてくれ」
「ルミア、嫌なら嫌って言っていいですよ」
ペンナはエアに冷ややかな視線を送っている。
「えっと・・・」
ルミアは少し迷ったが立ち上がって父の膝の上に座った。
「ぬははは!苦しゅうない苦しゅうない!!」
「あなた!流石にお行儀悪いですよ!!」
「よいではないか!よいではないか!!もしや妬いてるのか?ん??んん???」
エアがどや顔でスープを手に取ろうとした。
同時にルミアはパンに手を伸ばそうとした。
「あ!」
「きゃっ!!」
同時に動いた結果、ルミアが頭からスープを浴びる形になってしまった。
「うわああぁぁあ!すまんルミアぁぁあ!大丈夫か!?」
「ほら!言わんこっちゃない!!なにしてんのよ!!」
ペンナの口調が変わり鬼が泣いて逃げ出す形相でルミアをエアの膝から降ろしてグーパンが炸裂する。
「ぐばぁ!!」
エアが殴られて地面に突っ伏す。僅かに遅れて宙に舞った椅子が床に落ちて派手な音を音を立てる。
ペンナ禁忌の最終形態下町育ち全開モードである。こうなったペンナには誰も意見することが出来なくなる。無敵無双の究極形態なのだッ!!
「ルミア、お風呂行きましょう」
「え、お父さん動かないよ?」
「どうでもいい」
「・・・はい」
部屋を出る時ペンナがエアに吐き捨てる。
「戻ってくるまでに掃除して温かいスープ用意しろ、出来て無かったら【自主規制】だからな」
力強く閉められたドアはミシッと軋んだ。誰も居なくなって数十秒してから、やっとエアは立ち上がる。
「惚れ直すわ・・・」
エアの流す鼻血は怪我のせいか、そういう癖のものか、誰も知る由はなかった。知りたくもなかった。
今回で過去編は積み木を積み終わった感じです。
後は崩すだけ。




