第12話 それはズルイ
なんか評価ポイントバグってない?コレ。
現在評価者3名で32ポイントあるのってバグってない??
評価ポイントっておひとり様10ポイントまででしょ??
俺の勘違い?3名で30ポイント超えるのって不可能ちゃうの???
え?よくわからない。
自分で星母マリアの年表整理しようとした時ぐらいにわけわからなくなってる。
二人で泥んこでお城に帰ったらヘレンは他の召使いにこっぴどく怒られていた。私が間に入って怒らないように頼もうとしたらヘレンが私にベロをちょろっと出してウィンクした。「大丈夫」ということみたい。
だけど結局「私がわがまま言ったの、怒らないで」って言い残してきた。
お父さんとお母さんの所に行くとお父さんが泥んこの私を指さして大笑いしてた。お母さんは走ってきて「怪我はないか」と心配してくれた。お父さんとお母さんと一緒に居たお兄ちゃんは遠巻きに私の心配をするフリをしている。
「それにしても無事で良かったよ、町で食事処が襲撃される事件があったそうだからな」
「ほんと、気が気じゃなかったわルミアに何かあったらって」
「襲撃のあった店の店主は気の毒ではあるがな・・・金銭目的ではなさそうとの報告が上がっているが私怨か何か・・・?」
何度も髭に指を通しながらエア国王は呟いた。
私が居なければ死ななくて済んだ人が居た。でも無事でよかったと言ってくれる人も居る。守ると言ってくれた人も。私はどうすればいいのかわからない・・・死ねばいいのか、生きていてもいいのか。
でも、今日ヘレンと居たら生きてても許されるって、少しだけ思った。
「ねぇ、お父さん明日また外に行っていい?ヘレンと」
「・・・ヘレンとなら、まぁいいか?」
僅かに間があったがエアは首を縦に振った。
「あなた!襲撃の犯人も目的もわかってないのに!?危険すぎます!!」
ペンナがエアを叱りつけた。当然だろう、事件のなにもかもがわかってないのだ。無意味に危険にさらすだけというのが普通の見解だろう。
「・・・だそうだ、悪いけど外には行かせられないな。ごめんな、隠し通路から外にいくんじゃないぞ」
さっきのヘレンと同じだ。お父さんが私にウィンクした。
「隠し通路から出ろ」ということのようだ。
―― 二ヶ月後 ――
「ほら!またナイフを握る所!!下になってますよ!!」
「あ、ほんとだ・・・」
二人で初めて追いかけっこをした場所はすっかり二人の秘密の遊び場兼特訓所になっていた。人はまず来ない穴場だし城の隠し通路の一つがこの場所に繋がっているしで出入りに便利なのである。しかも景色も良い。
現在ルミアはナイフを使った戦い方の基礎をヘレンに教えて貰っている。
「次行きましょう、よっこらしょっと」
ヘレンが案山子のような物を持ってきて地面に設置する。
「なにその人形」
「次は狙った場所を的確にブッ刺す練習です」
「簡単そう」
「簡単そうに思えますが意外と難しいですよ?」
人形にはピンクのカツラが被せられている。カツラの向きからするにルミアに背中を向けている形だ。
「ふーん、どこ刺せばいい?」
ヘレンが待ってましたと言わんばかりにいつものイヤらしい笑みを浮かべる。
「こっこでぇ~っす!!」
人形をクルンと回して正面をルミアに向ける。
「プッ!!」
ルミアが不意を突かれて噴き出した。人形には不細工で悪意がたっぷりトッピングされている似顔絵。胴体の部分にはでかでかと『ゲバルトのクソ兄貴』と行書体(超達筆)で書かれている。
「笑わない、笑わない、笑わない・・・」
ルミアがブツブツ言いながら下を見て肩をプルプルさせている。
「ルミア様、ルミア様、これこれ」
ヘレンに言われて込み上げてくる笑いを噛み殺しながら慎重に顔を上げる。するとヘレンが人形の『ゲバルトのクソ兄貴』と書かれた部分を下からめくる。
『でべそ』
「ブフォ!!」
悪意の下から悪意がコンニチワ。でべその絵と文字(ビバ達筆☆)
ルミアがその場にうずくまって背中が痙攣してるかのように震えている。
「わ・・・らって・・・ない・・・!!」
「意地っ張りですねー、どう見ても笑って崩れ落ちてるじゃないですか。笑い終わったらでべそのど真ん中刺して下さい」
「ズルイ!!こんなの笑うよ!!」
「あ、認めましたねトレーニングに追いかけっこ追加します」
「鬼ぃ・・・」
ヘレンが絶対にギリギリで躱してくるので追いかけっこはルミアが一番嫌いなトレーニングである。逆にヘレンは一番好きなトレーニングである。可愛いルミアが必死に追ってくるから。
ルミアがあまりに嫌な顔をするのでトレーニング中に笑ったら追加するという条件で無理やり実行している。今回も半ば強硬手段である。
昨日は自分の口に入れ歯を入れてきた。しかも、どこで用意したのか出っ歯の入れ歯である。もはや手段を選ぶつもりはないらしい。
結局追いかけっこで夕暮れまでヘレンを捕まえられなかった。流石に二ヵ月もやっているとすっ転んで泥んこになることは無くなっているが。
「今日もダメだった・・・」
夕日を見ながらルミアは膝を抱える。
「ルミア様、今日は面白い物持ってきましたよ!」
ルミアとは対照的な表情のヘレンが顏を覗き込んでくる。こればかりは少々憎らしく感じてしまう。
「・・・何?」
ヘレンが取り出したのは掌よりもやや大きい黒く薄っぺらい縦長の四角い板だ。ツヤツヤしており角は危険がないように丸くなっている。
「ルミア様立って!夕日を後ろにしてぇ・・・」
ヘレンがルミアを立たせて黒い板の縁をカチカチといじっている。「よし」とヘレンが言ってルミアの小さな肩に手をまわして黒い板を自分の正面にもってきた。
「はい!チーズ!!」
カシャシャシャシャシャ!!
「!」
黒い板から聞いたことのない音が鳴りルミアは少しばかり驚いて目をパチクリさせる。
「あっべ、連射機能になってた・・・あ、逆光補正かけてない黒人より黒くなってる・・・久々だからなー、操作方法忘れちゃったぁ。どーすんだったかな・・・えーっと・・・ここをこーしてぇ・・・」
ヘレンが何かブツブツ言っているが何のことだかルミアにはまるでわからない。
「それ何?」
「今説明します、ちょっともう一回!!はい、チーズ!ほらルミア様ピースピース!」
ヘレンに言われるままに指の形をVの字にしてヘレンと同じように顔の近くに持っていく。
ポピン!
さっきと違う音がした。不可思議極まりない黒い板にルミアは首を傾げることしかできないでいる。
「だー!今度ムービーになってるしッ!!もっかい!!はい、チーズ!!」
カシャ!
「よーし、撮れた!」
満足そうなヘレンだがルミアの頭にはクエスチョンマークしかない。
「ほらルミア様見て下さい!」
ヘレンがいそいそと黒い板をルミアの眼前まで持ってくる。
「へ?ナニコレ??鏡???」
ルミアが目を丸くする。夕日を背負った自分とルミアが黒い板の中に居るからだ。しかも先ほど取ったポーズのまま固まっている。
「これはスマホの写メというヤツです写メはその時の景色とかをそのまま紙とか機械の中に残す手段ですね」
「よくわからないけどスゴイ・・・」
ルミアはまさに開いた口が塞がらない状態だ。
「このスマホのことももちろん皆に内緒ですよ?私とルミア様だけの秘密です」
「ねぇヘレン・・・」
「なんですか?」
「・・・ううん、なんでもない」
ヘレンは何者なのか聞こうとしたけど秘密にしてる事なら聞かない方がいいと思った。
「気になります?私の正体。私は実は名の知れた怪盗なんですよ?色んな国で盗みしてきました」
聞かないようにしたのにヘレンの方から話し始めた。今まで内緒にしていたのに。理由はよくわからない。でも悪い気はしない、守ってくれると言ってくれたから?・・・それだけではない気もするけど。
「私は怪盗零面相って呼ばれてます、無地の真っ白なお面付けてたらいつの間にか顔が無い的な呼ばれ方になってましたね」
「・・・なんで泥棒しようと思ったの?」
しばらく答えが返ってこなかった。黙って答えを待っているとヘレンは「う~ん」と唸った後に「さあ、よくわからないです」とあっけらかんと答えた。
「えぇ・・・」
正直肩透かしな返答だった。
「でも、もしかしたら寂しかったのかもしれない、誰かに構って欲しかったのかも」
「・・・よくわからない」
ルミアが座り込んで夕日を眺める。
「フフ、自分でもよくわかんないですもん」
隣にヘレンも座り一緒に夕日を見る。
「お城の物はなにか盗んだ?」
ルミアが夕日を見たまま訊ねてくる。その通りだ、この城に来たのは盗みが目的で予告状も出した。
「そうですよ、でもエア国王に見つかっちゃて盗むの止めたんです」
「お父さん、泥棒を雇って・・・いだだだ!」
頬っぺたを膨らませたヘレンに頬っぺたをギュ―っと抓られた。
「もう足洗いました~」
不機嫌そうな声でヘレンは手を放してくれない。
「いはい、いはい!!はなひへ!!はなひへ~!!」
そう、足を洗ったのだ。あの匣を青龍教に持ち帰る気はもうない。だから私は未だにここに居る。居場所をくれた、愛しい人達の居るこの場所に。
もうそろそろ、もうそろそろマジで過去編終わる。
早くて次回、それかその次。
長かった、この過去編は元々ヘレンはサラッと流して終わる予定だったのに・・・
この話は『ギッティ冒険譚』での過去編の予定だったのに・・・




