第11話 忠誠を
ヘレン・・・お前、主人公じゃないからな?
「ねぇヘレン、今日の事は内緒にして欲しいの」
町並みを一望できる高原でピンクの髪を風に揺らしながらルミアはそう言った。
「えぇ!なんでですか!?もう結構大事になってますよ!?」
「今日のお出かけはお父さんとお母さんが私の為に準備してくれたの」
ルミアは視線を落として言葉を続ける。
「きっと今日の事を知ったら自分たちのことを責めちゃうから、ね?お願い」
「・・・そうですか」
きっとこの子は抱えてきたものが大きいのだろう、自分よりも両親を心配する子供を見てそう思った。
ヘレンはわざとらしいため息を一つ零してから返事を返す。
「わかりました、内緒にします」
「ありがとう」
ルミアはうつむいたまま返事をする。自分がまっとうな命を持っていたら、ルミアが今何を思っているのか分かったのだろうか?
今までこの子をただ可愛い物として見ていた。きっとその姿は偽りなんだね。『ヘレン』と同じ仮面を被った姿なんだ。
心のどこかでそのことを感じていたのかもしれない。だから次第に、演技ではなく本当にルミア様を愛おしく想うようになった、きっとそうなのだろう。
ルミア様が愛しむ心をくれた気がする、だから、本当にあるのかもわからない自分の心に誓いを立てる。ヘレンはうつむくルミアの頭に手を乗せて、その誓いを言葉にした。
「これから私は貴方の事を守ります。ずっと、ずっと」
グシグシ頭を撫でられてようやくルミアは顔を上げヘレンを見た。
「ヘレンが危ないからダメ」
小さく首を振るルミアの口角は少し、ほんの少しだけ上がっているように見えた。
「私強いから平気ですよ~だ、ダメって言っても勝手に守っちゃいますもんね」
「・・・優しいね」
そう言ってルミアは正面に広がる町に視線を戻した。会話が途絶えて二人の間を風がすり抜けていく。
言葉の生まれない5分の間。長い長い5分間、たったの5分にどれだけの時が流れただろうか。
「少し寒くなりましたね」
無言の時を終わらせたのはヘレンだった。
「うん」
「戦い方、教えて差し上げましょうか?体を動かせば温まりますよ~」
にんまりといやらしい笑顔でルミアを誘う。
「じゃあ教えて!!」
ルミアも笑顔で答える。この笑顔も仮面だろうか?
自分には分かりそうもない疑問が浮かんで、深く考えるのが怖くなりそこで思考を止めた。
「まずは鍛錬からですね!体づくり?ってヤツです!!」
「ふーん、何するの?」
「追いかけっこしましょ!」
「お遊び?」
ルミアが疑問の目をヘレンに向ける。
「なにごとも楽しく始めた方が効率よくなるって週刊誌に書いてありました!走り回るのも体づくりの一環です!!」
「しゅうかんし?」
「いいから!気にしないで!!ルミア様が鬼です!!捕まえてごらんなさい!!さあ!!」
口が滑ったのを誤魔化すために走り出す。
「・・・ヘレンって隠し事多いんだね」
「ルミア様も人の事言えないんじゃないですか?」
「そうかも・・・」
「私たち似た者同士かもですねー!」
似た者同士。ヘレンのその言葉が耳に残ってしばらく離れなかった。
「鬼さんこっちらー!手のなるほーへ!!」
手拍子をしながら私を呼ぶ沢山の秘密を抱えた人。
沢山の内緒をもってる私はその人に向かって走り出した。
全力でルミア様が追ってくる。手を抜いて速度を落としてギリギリのところでルミア様を躱すと盛大に転んで買ったばかりの服が土まみれになってしまった。
ルミア様を指さして笑ったらムキになって追いかけてきた。結局太陽が地平線にたどり着く頃までルミア様に捕まることはなかった。紫のドレスもソバカスのある顔も泥んこだ。
ふてくされて膝を抱えるルミア様を後ろから抱え上げてそのまま草の上に座り込む。もちろんルミア様は膝の上、小さい体に手をまわして人形を抱えるような体勢はふぅっと息をついた。
ルミア様が真っ黒になった両手でアタイの左右の頬を挟むようにぺチンと叩き不機嫌そうな声で「捕まえた」と呟いた。
「フフ」
思わず笑いを零してしまった。悔しかったのかな?こっちの事を見ようとしない。
そんなルミア様を見て心の深く深くに、今一度誓いを立てる。
何があっても私は貴方を守ります。自分の腕の中にある温かく愛しい子に決して揺るがない忠誠を。
ヤバイよー、過去編が底無し沼だよー
飲まれるっ!!飲まれるっ!!
飲まれるぅぅぅぅぅぅっ!!!!!
這い上がれない!
圧倒的地下行き決定!!
あ、既になろう最下層に居たわ。




