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第六話 学校

私立丸木高校。

校舎は新しく、最近できたばかり。

全校生徒1300人、偏差値50という、どこにでもありそうな普通の高校。

そこが俺達が通っている学校だ。



「あぁ、学校に着いたからもう自由になっていいわよ。」


アリアの一言とともに体が少し自由になった気がする。


「そそ、大事なことだから伝えておくけど、使い魔は主人に絶 対 服 従だからね?使い魔の意思は二の次だから。覚えておいてね。」

「う、了解…とりあえず、屋上から入るか。」


屋上に降り、アリアを背中から下ろす。


「確か、教室は4階だったかしら?」

「そ。早く行こう。」


ドアを開け、階段を降りていく。

うちの高校は4階建なので階段を降りればすぐ俺達の教室がある。

いつの間にかアリアは学校指定の上履きに履き替えていた。


ガラガラッ


教室の扉を開ける。

朝から相変わらず騒がしいクラスだ。

そして、その中でも一際騒がしい奴が手を振って歩いてきた。


「よーす!風太チャン!おはよー!」

「はぁ…おはよう。カズ。」



高橋たかはし 和久かずひさ。俺はカズと呼んでいる。俺の小さい頃からの幼馴染。コイツとは幼稚園、小学校、中学校、高校と同じ学校で、同じクラスだった。

ピタゴラスもひっくり返るような確率だが事実である。

とにかくスポーツ万能。サッカー、

野球、バスケ、なんでもできる。

クラスのムードメーカーで人気者。

親しい友達にはチャンを付けて名前を呼ぶ。

ただし、たった一つ、カズの欠点を挙げるとすれば誰もが口を揃えて、


「勉強」

と言うだろう。


成績はいつも赤点ギリギリ。小学校でもテストは満点を取ったことがなく、常に中学の時は補修の常連だった。


では、なぜこの脳筋バカがこの学校に入れたのか?


その要因がカズの真反対の方向から歩いてきた。


「おはよう。船橋くん。」

「あぁ、おはよう、委員長。」


皆本みなもと 優子ゆうこ

あだ名は委員長。

俺とは中学校で知り合った。

テストは常に100点。体力テストはすべて満点。ピアノが弾ければバイオリンも弾け、料理はうまい。そして何より美人。完全無血のパーフェクト女子高生である。

しかも、根っからの委員長気質で中学では毎年、常に学級委員に立候補して体育祭を優勝に導いたり、生徒会長になった年には校内の風紀を厳しく取り締まり、慈善活動にも力を入れ、

『丸木中学の女神』と言われたほど。

もちろん、このクラスの学級委員だ。


では、なぜここに対照的な二人が隣り合わせでいるのか?


答えは簡単。


つまり、



「それより、カズ君!今日は数学の宿題があったはずだけど!?」

「また始まったよ…一回くらい大丈夫だっつーの!!いつもお前は心配性なんだよ、優子!!」



二人は付き合っている、ということだ。



ある者からはツンデレカップル。またある者からは正反対カップル。とかなんだか好き放題言われている。


まさに美女と野獣。


ただ、カズは顔は普通にイケメン、の部類に入る、かもしれないので野獣と表すのはまぁ…


なんでも、中二の時、委員長が道端で他校の不良グループに注意して、逆に襲われてた所を偶然通りがかったカズがそのグループをボッコボコにして委員長を助けてやって、そこから交際が始まったと言われている。



ちなみに、なぜ成績の違う二人が同じ高校に通えているかというと。


まず、委員長の家のお金の問題が理由として挙がる。


小さい頃に両親を交通事故で亡くした委員長は両親の遺産と親戚の仕送りだけでなんとかやりくりしている。


当然、もっと成績のいい学校に行ける力は持っているが上に行けば行くほどお金がかかる。


親戚はもっと上を目指してもいいとは言っていたが、親戚に気を使った委員長は高偏差値の学校を蹴って、特待生としてこの学校に入学した。


一方のカズは全員が口を揃えて言うほどのバカ。普通はここに入れるはずがない。だが、そこは彼女に恵まれていた。去年の一学期で既に入学先が決まった委員長は一年間付きっ切りでカズに勉強を教え、自分と同じ学校にギリギリで入学させた。


委員長、恐るべしである。



「いいえ、むしろ心配性ぐらいの方がカズ君にはちょうどいいの!大体、高校は中学と違うんだから!油断してると留年しちゃうのよ!!」

「…なぁ優子。リュウネンってなんだ?もしかして新しいポケモンの技?」

「〜〜〜!!!このバカっ!!

知らないわよっ!留年でもなんでもしちゃいなさい!!」

「はぁ!?何がなんだかよくわかんねーけどふざけんなよ!?」

「わかってないとこがバカなのよー!

もう!!」



「はぁ…」


そう、この二人はいつもこうだ。

まぁ、0:10でカズが悪いのだが。


「ぐぬぬ、さっきから言ってることがわからんけど、とりあえずバカにされてるってことだけはわかったぞ…!

って、あれ?」

「どうかしたか?カズ。」

「いや、どうもこうもないだろ…

お前の後ろにいる女の子、誰?」



「えっ…?私!?」


しまった。バカップル二人に気をとられてアリアに気がいってなかった。

というよりアリアはまだ学校のみんなに催眠術をかけてなかったのか。



「え、あ、あぁ。これはだな…」

「え?何なに?転校生?」

(マズイ…)


委員長の大声でクラス中の視線がこっちに集まる。



その瞬間、アリアの目が強く光ったのを俺は見逃さなかった。






少し沈黙が流れた後、やっとアリアが口を開いた。


「ちょっと、何言ってるの委員長、

カズ。私よ、私。船橋 愛里。」


アリアがわざとらしく微笑む。恐らく今のタイミングでなんらかの魔法を使ったのだろう。

さて二人はどんな反応をするだろう…


「え?あ、あれ?何言ってんだ俺…

愛里…だよな。うん。」

「そ、そうね。転校生、なんかじゃないわよね。愛里さんじゃない…」


うん。オッケー。一応大丈夫っぽい。


「そうよ。全く。はぁ〜、ずっと一緒だったのに顔忘れられるなんてショックよ…」

「あ、あれ、ごめんごめん!愛里!」

「ちぇっ…良いわよ。私の事なんて覚えてないんでしょ?」

「お、覚えてるわよ!あ、愛里さん!おはよう!」

「ええ、おはよう。委員長。」


うわ、一瞬でクラスに馴染んだ…

マジでなんなんだコイツ。




キーンコーンカーンコーン

「おーい、席につけ、お前らー」


予鈴が鳴り、担任の教師が入ってくる。


「やべっ、センコーが来ちまった。

また後でな!」

「あっ、こら!カズ君!宿題!」


あわてて席に着く二人。クラスメイトがどんどん座っていく。俺も席に着こうとした時だった。


バタッ





アリアが倒れた。

あわてて膨らんだ腹で受け止める。


「!?おい、アリア!?」

「あ、はは…ちょっとミスったわね…

魔力使いすぎたかも…流石に一気に学校中のみんなに催眠術をかけたのは間違いだったかぁ…」

「なっ…お前、今そんなことを!」

「とりあえず、魔力使いすぎたから風太の席に座らせてくれるかしら…?」


よろよろと歩くアリアに肩を貸し、

俺の席まで運ぶ。と言っても俺の体に肩なんてもうないのだが…

俺の席は窓際の一番後ろ。アリアは席に着くとうつ伏せになった。



「くぅ〜…やっぱり『人間界』では魔法を使い過ぎない方がいいわね…」

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないわね。下手したら消滅するかも…」

「!?」

「けど、大丈夫。なんのために風太がいるか、忘れてるの?」

「あっ…」




なるほど。しばらく魔力供給しろってことか。


「私は寝てるから。風太もここに居て。」

「おい、俺は授業受けなきゃ…」

「風太の席なんてどこにもないわよ。ここは風太と私の席。」

「はぁ!?」





周りを見渡す。そこには今日の連絡をしている教師と退屈そうに教師の話を聞いているクラスメイト達がいたが、空白の席はどこにも無かった。


「じ、じゃあ俺はどこに…」

「どうもしないわよ。今日から風太は私の隣にずっといなさい。」

「!?」


それは困る。

それじゃ勉強できないじゃないか。

勉強は確かに嫌いだけど、やっておかないと学期末テストで痛い目を見ることになる。


「勉強しなきゃテストで点取れないだろ!」

「テストなんて大丈夫よ。魔法でちょちょいのちょいよ。それより…」

「は!?なんだよ!」





「もう限界。」




バタッ





あ、意識が落ちた。




(ちきしょおおおおおお!!)






とりあえず誰かの『不幸』を吸い込まなければ。

既にHRは終わり、みんなは授業の準備をしに廊下へ出ている。

…対象はカズでいいだろう。



(カズの『不幸』を吸い込め…!)


念じる。




変化はすぐに起こった。




「うっ!あぐっ…」


一度ムクリと膨らむと、体はどんどん膨らんでいく。


ムクムクムク!


「く、っはぁ…っ」



膨張は止まることを知らない。

それより、さっきから俺は膨張する時にこの上ない快感を味わっていた。とにかく気持ちいい。


サイズがちょうど良かったはずのジーンズはパッツパツになり、シャツからは腹が見えはじめていた。



数分後、膨張が止まった。


「はぁ、はぁ、はぁ…」


すぐさま排出する。


シュウウウ…


「ふぅ…」


膨らんでいく時も気持ち良かったが、こっちもこっちで気持ちいい。



「う、う…」


一応、アリアは起きたようだ。



「大丈夫か?」

「うん、なんとか…でも、まだ足りないかも…私寝るから、起きるまでずっと魔力ちょうだい…」

「はぁ!?おい、いくらなんでも…」

「zzz…」





寝た。





…どうやら本当にこれからの生活が大変そうだ。








深く溜息をつくと、クラス内に一時限目を知らせる予鈴が響いた。

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