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あれから幾許の時間が経過したのかを知ることはできない。
世界が白に包まれてからまだ数秒しか経過していないのかもしれないし、何時間も何日も何年も経過したのかもしれなかった。
気付いた時にはただ広い無機質なプラスチックのようなメタリックのような壁と床に囲まれた広いエリアに立っていた。そしてその向かいには一人の男が立ってこちらを見つめていた。
「『夢幻大陸パンゲア』プレイしていただきありがとうございました。」
髪の毛をキチっと七三に分け、眼鏡をかけスーツを着た男が物腰柔らかく喋りだした。
「長い間、ご愛好いただいておりました本ゲームですが2075年3月31日24時を持ちましてサービスを終了させていただいております。」
「おります?一体今はいつなんだ?」
「本日は2076年1月18日となっています。本ゲームがサービス終了を宣言し、運営を停止してから294日経過しております。」
「俺は……一体何をしていたんだ……」
ランサムの狼狽えにも男は柔らかくそして冷静にゆっくりと語りだす。
「お客様、ユーザーネーム『ランサム』さまは、サービスを終了させていただきましてから本日まで眠りにつかれていたようです。」
「眠り……?ここはどこなんだ」
「このエリアは簡単に言えばデバッグルームとなっております。」
「デバッグルーム?世界は終了したんじゃないのか?」
「左様でございます。ランサムさまには、非常に長い間、本ゲームをご愛好いただいておりました。従って、今回は特別にあるご提案をさせていただきたく参りました。」
「提案?」
「そうです、提案です。ですが、そのご提案の前にまずはランサムさまの現在置かれている状況を再確認させていただかなければなりません。」
「状況だと……?」
「ランサムさまは、非常に長い間パンゲア内にログインをされていたため、頭が混乱しておられるのです。」
「ははは……そうだよ。その通りだ、俺は混乱している。どうなっているんだこれは、そしてお前は誰なんだ」
ランサムの前に立つ男は、静かに一礼し、顔をあげる際にずれた眼鏡を元に戻した。
「申し遅れました。わたくしは、本ゲームの開発者兼ゲームマスターであるサイトウと申します。以後お見知り置きを。」
「サイトウ……」
「ユーザーからはマスターサイトーとして愛されていたもんですよ。」
サイトウは、指をパチンと鳴らすと周囲の床に二つの円が浮かびあがった。
それは幾何学的な模様が絡まり合い、赤色であったり緑色であったりと絶えず色が変化している。するとそこにブォォンという小さな音と共に二人の人間が現れた。




